C.T.ホーングレンほか、渡邊俊輔監訳 『マネジメント・アカウンティング』 明治大学経営学部 鈴木研一ゼミナール 担当:岩田 幸久 高橋 雄太 第3章 コストビヘイビアの測定 コストビヘイビアの測定 ・ 組織の活動が、コスト水準にどう影響するかを理解し定量化すること。 ・ コストとコストドライバーの関係を理解することで、 あらゆる組織のマネジャーは次のことができるようになる。 ・ ・ ・ ・ 新しい製造方式やサービス方法を評価する。 ・ ・ ・ 効果的なマネジメントコントロールシステムを設計する。 短期販売の意思決定を正しく行なう 短期の生産の意思決定を行なう。 将来の活動の影響を計画したり、予算化する。 長期の意思決定を正しく行なう。 正確で有用な製品原価計算システムを設計する。 線形のコストビヘイビア ・ コストが固定費または変動費であると仮定されることからグラフ上は 直線で示すことができる活動。 ・ マネジメントアカウンティングを印刷するとき ・ 操業度によって変化するコスト(印刷工のコスト、用紙代、インク代、製本費用) アウトプットと容易に結びつく(印刷冊数によって変化) ・ 編集者に払う賃金・給料 アウトプットと容易に結びつけられない ・アウトプットに跡づけにくいコストを理解・把握することは困難。 ・実際、多くの組織では単一のコストドライバーと線形関係を用いている。 線形のコストビヘイビア《図表3-1》 正常操業圏 コ ス ト 線形の コストビヘイビア 活動ないしコストドライバーレベル 準固定費のビヘイビアパターン ・ 準固定費 資源とコストを分割できない固まりとして利用するしかないため、 一定の活動の幅ごとに急激に変化するコスト。 ・ コストの固まりが比較的大きく、広い活動幅にわたる場合 その活動幅に渡って、固定費と考えられる。 ・ コストの固まりが比較的小さく狭い活動幅にわたる場合 会計担当者は準固定費を変動費として扱う。 準固定費のビヘイビア《図表3-2》 A.リース料 B.スーパーマーケットのレジ係の賃金 正常操業圏 正常操業圏 実際の コストビヘイビア リ ー ス 料 実際の コストビヘイビア 賃 金 およその変動費 およその固定費 石油とガスの探索活動 40 一時間あたりの買物客数 440 準変動費のビヘイビアパターン① ・ 準変動費 固定費のビヘイビアと変動費のビヘイビアの両方の要素が含まれているコスト。 準変動費では、固定費に加えて変動費が発生。 準変動費総額は、固定費に変動費を足したもの。 ・ Parkview Medical Centerの月次の施設メンテナンス部門費 ・ メンテナンス職員の給与と設備コストは、一ヶ月あたり$10,000で固定的。 ・ 清掃用消耗品と補修材料は、病院によって提供される1患者日あたり$5のレートで変化。 1.コスト計画: この病院では来月には4,000患者日を提供すると予測。 施設メンテナンス部門費の予測額は、 固定費$10,000と変動費$20,000(4,000患者日×1患者日あたり$5)で合計.$30,000。 2.マネジャーへのフィードバックの提供:1ヶ月に4,000患者日を計画どうりに提供したとき、 実際のメンテナンス費が$34,000であったとする。 3.資源の最も効果的な利用に関する意思決定: たとえばマネジャーは、フロアを手作業で清掃するのに 余分にかかる時間の変動費と、高度に自動化された フロア清掃機器を購入するのにかかる固定費の 長期的なトレードオフを考慮する。 準変動費のビヘイビアパターン②(図表3-3) 正常操業圏 施 設 メ ン テ ナ ン ス 部 門 費 1患者日あたり$5 変動費 総額 $10,000 固定費 1,000 5,000 月次患者日数 製品・サービスの意思決定とバリューチェーン バリューチェーンの全体で マネジャーはコストビヘイビアに 影響を与えている。 ・ プロセスや製品の設計、 品質水準、製品特性、 流通チャネルなどの選択による。 これらの意思決定は組織の業績に貢献すべきであり、コストと便益の枠内で行われるべきである。 キャパシティの決定 ・ キャパシティコスト 品質などの製品・サービスの属性を保ちつつ必要な量の生産や、サービス提供を 可能にする固定費。 ・ 固定的なキャパシティコストは経済が悪化し需要が落ち込んでいるときに回収できない。 ・ 需要が長期的に変動する業種では、キャパシティの意思決定を慎重に行わなければならない。 既決固定費と裁量固定費 ・ 既決固定費 施設・設備・基本的な組織を有することから生じるコスト。 組織で発生せざるを得ない、または通常は回避しようとしない大きな分割不能なコストの固まり。 ex.) 抵当やリースの支払い、長期不債の利子、固定資産税、保険料、主要な従業員の給料など。 ・ 裁量固定費 組織目標を達成するために期間計画作成プロセスの一部として経営者が決定したコスト。 ex.) 広告費、販売促進費、PR費、研究開発費、寄付金、従業員訓練プログラム費、 経営コンサルティングサービス費 Marietta Corporationの例 固定費 広告宣伝費 減価償却費 従業員教育費 経営者の給与 抵当支払 固定資産税 研究開発費 計 ・ ・ 固定費 計画値 $ 30,000 400,00 100,000 800,000 250,000 600,000 1,500,000 $3,680,000 既決 減価償却費 抵当支払 固定資産税 小計 裁量(節約可能) 広告宣伝費 従業員訓練費 経営者の給与 研究開発費 小計 合計 計画値 $ 400,000 250,000 600,000 $1,250,000 $ 30,000 100,000 800,000 1,500,000 $2,430,000 $3,680,000 固定費を削減すれば損益分岐店は下がり、ある水準の売上高における利益は増加する。 既決固定費と裁量固定費を区別することは、 どのコストを削減できるかを明らかにする第一歩となる。 技術に関する意思決定 ハイテク 人間 労働集約的生産 伝統的な銀行サービス ・ (or) ロボット生産 ATM 環境の変化に対応するための組織のポジションが決まる。 ・ 技術は ・・・ 製品・サービスのコストに大きな影響を与える。 コスト管理インセンティブ ・将来のコストは経営者が従業員にコスト管理を行わせる インセンティブにも影響を受ける。 ・マネジャーは、コスとビヘイビア情報をコストの予測値の設定に利用し、 従業員の受け取る報酬は、その予測値を達成することに結びつく。 原価測定 ・原価測定(第一ステップ) 適切なコストドライバーの関数としての原価見積、あるいは原価予測。 ・原価測定を将来の予測水準コストドライバー活動における 将来のコストの見積に利用すること。(第二ステップ) コストドライバーと明確に結びついたコストの測定は容易。 特定のコストドライバーに跡付けられるので、システムはコストを識別するだけで測定できる。 コストドライバーと明確な結びつきがないコスト、複数のコストドライバーを有するコストは測定困難。 コストとコストドライバーの間の関係を仮定する。 原価関数の形式 ・原価関数 コストとコストドライバーの関係を記述するために、マネジャーが利用する代数方程式。 施設メンテナンス部門費=固定メンテナンス費総額+変動メンテナンス費総額 =月間固定メンテナンス費+(患者日あたり変動費×患者日数) Y=施設メンテナンス部門費総額 F=固定メンテナンス費 V=患者日あたり変動費 X=患者日数におけるコストドライバー活動 Y=F+VX 線形の原価関数 または Y=$10,000+$5,00X 関数選択のための規準 ・正確で有用な原価関数を得るには、 2つの原則-もっともらしさと信頼性-を適用すべき。 1.原価関数はもっともらしい、ないしは納得できるものでなければならない。 コストと活動を直接観察し、可能であれば、 コストとコストドライバーの関係がもっともらしいことの 最善の証拠。 2.実際の活動水準におけるコストを原価関数で見積もった結果・・・ 実際に観察されたコストと信頼性を持って一致しなければならない。 活動分析の重要性 ・活動分析 適切なコストドライバーと、製品生産やサービス提供のコストへの影響を明らかにするプロセス。 ・原価予測 将来のコストを予測するために、将来の期待活動水準に原価尺度を適用すること。 自動塗装装置を利用するJupiter自動車工場の例。 ・装置を調整するコストは、自動車の生産台数に対しては固定的。 ・支援コストと自動車の生産台数との間には明確な原価関係はない。 ・コストは生産した自動車の色数や仕上げタイプ数によって大きく変化する。 ・活動分析では、考えられる様々なコストドライバーについて、もっともらしさと信頼性を検討する。 ・より正確なコストビヘイビアの利用によって意思決定を改善することの 期待便益がコストドライバーを探すことの期待コストを上回らなければならない。 原価関数の測定方法 (1).工学的分析 (2).勘定科目分析 (3).高低点分析 (4).ビジュアルフィット分析 (5).単純最小自乗回帰 (6).多重最小自乗回帰 ・マネジャーは コストビヘイビア測定で大きな失敗を避けるため複数の方法を適用することが多い。 工学的分析 ・工学的分析 製品・サービスに必要な材料、消耗品、労働、支援サービス設備の体系的なレビューが必要。 コストがいくらであったかではなく、いくらであるべきかという点からコストビヘイビアを測定する。 分析担当者は、組織で同様なコストをかけたことがあるならば、 新製品・サービスにも工学的分析を利用できる。 なぜか・・・ 製品・サービスに直接に携わっている 従業員からの情報を利用できるから。 工学的分析の活用 ・Parkview Medical Center の施設メンテナンス費(病院管理者アシスタントの調査) ・施設メンテナンス職員にインタビューを行い、活動を観察。 ・最ももっともらしいコストドライバーは患者日数と確信。 ・現行の部門給料と設備コストから月間固定費約$10,000と見積もる。 ・変動費は1患者日あたり$5と見積もる。 ・ 月次の予想患者日を予測し準変動費関数に代入 Y=$10,000/月+($5×患者日) ・ 患者日を4,000と予測する場合 Y=$10,000+($5×4,000患者日)=$30,000 勘定科目分析① ・勘定科目分析 操業度関連のコストドライバーを選択し、各勘定を変動費か固定費に分類する。 ・Parkview Medical Center の施設メンテナンス費(3,700患者日) 月次コスト 19×8年1月の合計額 監督者の給与と福利厚生費 時間作業者の賃金と福利厚生費 設備の減価償却費とリース料 設備修繕費 清掃消耗品 施設メンテナンス費合計 $3,800 14,674 5,873 5,604 7,472 $37,423 固定費と変動費 に分類 月次コスト 19×8年1月 の合計額 固定費 監督者の給与と福利厚生費 時間作業者の賃金と福利厚生費 設備の減価償却費とリース料 設備修繕費 清掃消耗品 施設メンテナンス費合計 $3,800 14,674 5,873 5,604 7,472 $37,423 $3,800 変動費 14,674 5,873 $9,673 5,604 7,472 $27,750 勘定科目分析② 月間固定費=$9,673 1患者日あたり変動費=$27,750÷3,700患者日 =$7,50/患者日 ・ 勘定科目分析で測定した代数的な準変動費関数 Y=$9,673/月+($7,50×患者日) ・勘定科目分析は・・・ ・工学的分析よりも費用がかからないが、関連するコスト勘定とコストドライバーの記録が必要。 ・工学的分析と同様、分析担当者が判断に基づいて 各コストを変動費か固定費に分類するため、主観的である。
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