「ビジネス入門Ⅱ」 第14講 25 損益分岐点分析 (1)利益計画 利益計画とは、将来の活動の大きさを検討することを通じて、利益の額や、目標とす る売上高などの企業目標を設定する計画である。 ↓ 利益は、入口取引(資金投下活動)と出口取引(営業活動)との差額であるから、 入口と出口の取引の差額と 取引の数(販売数量)に関係する。 ↓ そこで、比較的近い将来の利益計画の決定にあたっては、 ① 現在の原価(入口取引の金額) ② 目標にする販売量ないし生産量、販売金額 を基に、シミュレーションを行う。 (2)損益分岐点分析(CVP分析) 原価(cost) 販売量・生産量(volume) の3者の関係から、損益分岐点を計算する手法。 利益(profit) 損益分岐点分析(CVP分析) (仮定) 短期の利益分析であり、販売量と比例的に発生する費目(変動費)とそうでない 費目(固定費)がある。 ↓ 変動費と固定費の合計としての総費用と売上を比較して、利益を計算。 売上高-(変動費+固定費)=0 S ← 損益分岐点(利益ゼロ) -( VC + FC )=0 この式を展開しますと、S - VC = FC → S×(1-VC/S)=FC 損益分岐点売上高(BES)は S FC = 1- VC VC S S - 60 - = 変動費率 「ビジネス入門Ⅱ」 第14講 〔CVP関係図〕 売上高・費用 売上高 利 益 変動費 総費用 固定費 BES 売上高 (2)目標利益を達成する売上高 損益分岐点分析を応用して、目標利益を達成する売上高を計算する。 (損益分岐点売上高) 売上高-(変動費+固定費)=0 S -( VC + FC )=0 製品1単位あたり販売価格:p 製品の販売量 :x 製品1単位あたり変動費 :v S=px VC=vx 上記の式は、下記のとおりになる。 px -( vx + FC )=0 利益を得るということは、この右辺がプラスになるということ 目標利益をP'とすると、 px -( vx + FC )=P' (p-v)x x = FC + = (目標売上高)S'= px = FC + P' P' (p-v) p(FC+P') = (p-v) - 61 - FC + P' 1/p(p-v) = FC + P' 1- v p 「ビジネス入門Ⅱ」 第14講 ◎ 損益分岐点分析問題の解き方 ① 問題文の指示に従い、「売上高 -(変動費+固定費)=利益」の式を作る。 ↓ ↓ 販売単価×数量 1個あたり変動費×数量 ② 上記の式を、「(販売単価-1個当たりの変動費)×数量=固定費+利益」にする。 ③ 数量 固定費+利益 = を計算する。 (販売単価-1個当たりの変動費) ④ 売上金額を計算する。 販売単価 × 数量 = 売上高 (例題) ある企業の次年度の製品販売価格を1個あたり200円、製品1個あたりの変動費 80円、 固定費を 2,400,000円であったとした場合、次の問に答えなさい。 (1)損益分岐点の売上高を求めなさい。 (計算過程)販売量をXとすると、 200X-80X-2,400,000=0 2,400,000 X = = 20,000個 200-80 売上高は、200×20,000=4,000,000円 (答) 4,000,000円 (2)目標営業利益 600,000円を達成するための売上高を求めなさい。 (計算過程)販売量をYとすると、 200Y-80Y-2,400,000=600,000 3,000,000 Y = = 25,000個 200-80 売上高は、200×250,000=5,000,000円 (答)5,000,000 円 - 62 - 「ビジネス入門Ⅱ」 第14講 26 業務的意思決定 (1)意思決定とは 意思決定とは、経営上の個別の問題に関して、 これを解決するための様々な方策(代替案)のなかから、 最も適切なものを選び出すこと(選択する)。 (意思決定のプロセス) ① 問題の認識と分析 → 解決しなければならない問題の発見 ② 代替案の探索 → 解決策(代替案)の探索 ③ 代替案の評価 → 探し出した解決策(代替案)の効果を数値化 併せて、数値化できない効果についても検討 ④ 代替案の選択 → 解決策(代替案)の選択 (意思決定) (2)意思決定に際して使われる特殊原価概念 関連原価 → 代替案を選択する上で、その意思決定に関連性をもつ原価 代替案の選択 ↓ 未 来 原 価 → 差額原価 ・ 増分原価 ↑ 意思決定に伴う原価の変化額(差額 会計情報の基本は、支出原価 無関連原価 ← 歴史的な原価(過去の結果) → 意思決定に関連性がなく、代替案の選択に何ら影響を与えない原価 埋没原価 ← 原価の発生がすでに過去の意思決定によつて確定している原価 (sunk costs) (過去原価)で、代替案の選択に無関連な原価 機会原価 ← 代替案の選択において、生じる逸失利益のこと。 (opportunity cost) 経営資源が限られているとき、複数の代替案からひとつを選ぶと、 他の案は選択できなくなることがある。このとき、他の案から得 られるであろう利益を断念したことになる。このような断念した 利益のうち最大の金額を機会原価という。 - 63 - 「ビジネス入門Ⅱ」 第14講 (例題)A社は電器製品を製造している会社である。ある製品を製造する際に使用する電 機部品について、現在、自社製造しておりその製造原価は下記の資料の通りで1個 あたり13,000円かかっている。 今回、外部の部品メーカーから、その部品を1個あたり10,000円で納入するという 申し入れを受けた。この申し入れを受けるべきか否か検討しなさい。 なお、自社製造するためにこの部品専用の製造機械を保有しており、固定製造間接 費は全額この機械の減価償却費の配賦額である。この製造機械は特殊な機械であり、 他の部品製作には使用できず、また処分価格もゼロとする。 (資 原価要素 料) 製造原価 直接材料費 4,000円 直接労務費 2,500円 変動製造間接費 1,000円 固定製造間接費 5,500円 製造原価計 13,000円 (解答欄) - 64 - 「ビジネス入門Ⅱ」 第14講 (損益分岐点分析の例題解答例) (1)損益分岐点の売上高を求めなさい。 (計算過程)販売量をXとすると、 200X-80X-2,400,000=0 2,400,000 X = = 20,000個 200-80 売上高は、200×20,000=4,000,000円 (答) 4,000,000円 (2)目標営業利益 600,000円を達成するための売上高を求めなさい。 (計算過程)販売量をYとすると、 200Y-80Y-2,400,000=600,000 3,000,000 Y = = 25,000個 200-80 売上高は、200×250,000=5,000,000円 (答)5,000,000 円 (業務的意思決定の解答例) 表面上だけ見ると、外注の方が単価は3,000円(13,000円-10,000円)安く、有利で あるが、自社製造に係る製造機械の減価償却費相当額の原価5,500円が、外注に切り替 えたとしても発生する埋没原価として発生しており、これを加味して検討することが必 要である。 埋没原価は無関連原価で、意思決定に際しては、控除する必要があるので、これを控 除して差額原価を計算すると、外注10,000円-自製(13,000円-5,500円)=2,500円の 原価増加になるため、外注せずに自製を続けるべきである。 (外注) (自製) 外注単価 10,000円 13,000円 埋没原価 直接材料費 4,000円 直接労務費 2,500円 変動製造間接費 1,000円 固定製造間接費 5,500円 5,500円 - 65 - 7,500円
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