管理会計 担当 ; 浅田 孝幸

管理会計
担当 浅田 孝幸
『管理会計・入門ー
戦略経営のためのマネジリアル・アカ
ウンティング』、有斐閣 、1998
目
第 1章
第 2章
第 3章
第 4章
第 5章
第 6章
第 7章
第 8章
第 9章
第10章
第11章
第12章
第13章
第14章
第15章
次
管理会計のフレームワーク
管理会計の歴史
原価計算制度と原価情報
ABC/ABMと原価情報
総合的会計情報システムにおける管理会計
全社戦略のための管理会計
事業戦略のための管理会計
製品開発のための管理会計
短期利益計画
予算管理
生産管理会計
事業部製組織と業績管理会計
研究・開発活動のための管理会計
マーケティングのための管理会計
投資計画のための管理会計
第1章 管理会計のフレームワーク
1.管理会計の学習の意義
2.管理会計と財務会計
3.管理会計と資源配分
4.管理会計と人間・組織との関係
5.管理会計と意思決定支援との関係
第1章 管理会計のフレームワーク
1.管理会計の学習の意義
管理会計の機能
① 戦略・計画策定:財務計画としての管理会計
② 短期の予算管理、原価管理:プラニングとしての管理会計
③ 個別問題への意思決定の支援
管理会計とは
企業経営において必要な財務関連数値の生成方法。
それをもとにした財務データを主な対象に、また非財務数値を、
その経営者・経営管理者の目的に応じて、彼らの
意思決定の目的に適合的な情報として提供するシステム
管理会計システムとそれにかかわる企業と
市場の関係
経営環境
企業経営者
管理者
企業目的
利潤最大化
管理会計:現在、将来
がどうなりうるかを経
済的価値(過去の会計
情報を中心にして)で
示す情報に関連
企業
資源
組織
構造
全社計画
戦略立案
プログラム
計画・管理
責任計画
業績評価
管
理
会
計
シ
ス
テ
ム
会計データ・物量データ
経営者・経営管理者の目的
① 利潤最大化に貢献
② 株主、経営者、従業員、労働組合、顧客、供給者、政府、
地方自治体などとの関係を調節する同時に、長期的には
企業の利益、すなわち株主の目的の達成に貢献するように
機能することが重要である。
管理会計の領域
企業
非営利組織
企業組織を対象した管理会計の意義
企業目的の実現に各部分が貢献しているか、あるいはしうるを
予測し、その結果を測定、意思決定に管理会計システムが
利用される。
2.管理会計と財務会計
管理会計の意義
①製品やサービスが、経済
的に見合った価格に準じ
て作られ、売れているか。
②経営者のねらいが実現さ
れ、株主から提供された
資本に見合う利益を上げ
ているかをチェックする
こと。
財務会計の意義
①市場システムと企業システムを
結びつけるもの。
②資本を提供した資本家に見返り
として配当やキャピタル・ゲイン
と会計報告を通じて結びつける
③個別の企業システムへの
投資決定に必要な情報提供
④現在の経営者をモニタリング
3.管理会計と資源配分
管理会計の意義
資源配分を明らかにすること
1.どの活動にどれだけ資源が必要かを明
活動
らかにする
2.ヒト、設備、キャッシュなどの資源をどの
程度有効に活用するか
3.現在の問題と将来の問題にどの程度
資源を割り振るか
4.管理会計と人間・組織との関係
管理会計は内部会計とも呼ばれている。
なぜなら、企業システムの経営に関し
て会計情報を生成、活用する側面があ
るから。
経営における会計情報の重要性
自動車の運転と同じように企業の経営者は会計
情報を用いて運営する。
経営者が毎日の企業の状況をみるのに、速度計
や回転計にあたるものが、経営日報と呼ばれるも
のであり、1日の販売高、生産高、生産コストなど
が実績として報告されます。
Column 1
コントロール
コントロールとは、
人と情報との相互作用によって手段を操作する
ことで、ある目的を達成することをさしている。
企業経営
目的 :利益獲得
手段:管理会計システム
情報:会計情報
人:経営者、管理者
。
コントロールとは人と人との関係が問題
5.管理会計と意思決定支援との関係
情報システムと会計
会計情報は、会計システムを通じて利用
される情報である。企業内で生成される多様な
データと統合され、経営者に有用な情報となる。
支
援
シ
ス
テ
ム
意
思
決
定
会
計
情
報
主要A製品の売上高の低減はB社の強力な製
品Cによる影響とA製品の高価格にあると仮設
を立てる。
⇒A製品ラインの数量や売上、地域別の売上
を追跡し、今後の製品構成戦略を考える。また、
他社のCの売上高と自社の 製品の売上高比
較からどの時点とどの地域でA製品に力を入
れるべきかを分析する。
1章で学んだキーワード
管理会計
企業システム
コスト
利益
管理(コントロール)
財務会計
資源配分
第2章 管理会計の歴史
1.管理関係の発展経過
2.管理会計モデル
3.管理会計と大企業
4.管理会計と情報システムの変遷
5.管理会計の課題
第2章 管理会計の歴史
管理会計の発展
経営管理の革新
アメリカにおいて19世紀末から発展
した大企業組織の革新的試みと管
理会計の関連性
戦後の日本の自動車産業における
マネジメント
コントロールの発展 管理会計の発展
戦略計画
戦略経営
イノベーション
第3次産業においても情報システム
の活用により、コストに関する分析
手法の発展から収益に関する新た
な視点を提供
1.管理会計の発展経過
アメリカでの発展
アメリカにおける管理会計の萌芽
19世紀からのアメリカでの産業革新:繊維、鉄鋼、化学、
大手小売チェーンなどのイノベーションに起因
繊維産業
イギリス
資本集約度
労働資本の希少性から設備投資を行う
管理方法として標準原価計算を活用
現場における能率管理に大きな貢献をし、
生産技術としてのIE(生産工学)の将来
の発展につながっていく。
鉄鋼産業
1トン当たりの鉄鋼の原価を測定し、管理する手法が非常に
発展した。そして原料の投入をできるだけ節約することが
能率の向上になり、同時に利益獲得につながった。
鉄道会社
能率の概念が活用された。
1トン・キロ当たりのコストと管理する概念が管理指標として、
1850年前後から。使われたとされる。
Column 2
イノベーション
イノベーション:革新と訳され、ある手段、方法・製品など、
これまで市場になかったものを創造し、経営・社会に大きな
インパクトを与える行為・事象をさす。だとえば、自動車、
ワープロ、パソコンなどは、それぞれ馬車、タイプライター、
計算機にとって代わったイノベーションである。
20世紀前半における管理会計の発展 1
デュポン
1920年代
ROI(Return on Investment)を開発
:各事業に投資された資本との関係で、利益を図るが、
経営効率性をみるうえで重要な意味を持つ。
ROI=売上高利益率*資本回転率
利益率の推移
シアーズ・ローバック
資産効率の推移
利益構造の
変化を追跡
大手小売企業
売上高粗利益率管理 →各商品の利益率や店舗の
利益業績を評価
在庫回転率
→各店舗における不良在庫の
チェックを行う手段を獲得
20世紀前半における管理会計の発展 2
フォード
1920年代
フォード社はGM社に生産能率では勝ったが、市場競争
で敗れた。
理由 市場が消費者の嗜好や購買力により
セグメント化させていた。
それぞれのお好みにあった自動車を製造・販売する組
織と管理会計を提案された。
事業部制組織
ROI
戦後における管理会計の革新
1860年代 科学的管理運動による標準原価計算の進歩
生産能率管理の革新
1920年代 事業管理手法としてROI手法の進歩
事業管理の革新
売上高粗利益率管理
店舗管理の革新
戦後
日本やドイツにおける管理会計の革新
キャプランとジョンソン(Kaplan and Johnson)
戦後における大きな革新は財務会計を中心にした会計の
ために、管理会計が実務における適合性を喪失したことが
指摘されている。
管理会計研究者の実務への関心を刺激した。
管理会計の戦後の発展で特質すべき4点がある。
戦後における管理会計の革新 2
戦後の発展で特質すべきもの
①全社的利益管理と総合予算管理システムの普及と利用
②製品開発管理のためのマネジメントとして原価企画の生成
③活動に注目するABC (activity-based costing
:活動基準原価計算)の生成
④分権管理制度としてのROIやRI(Residual Income:残余利
益)などの管理システムの普及と一層の精緻化(EVAの普
及:Economic Value-Added)
2.管理会計モデル
予算管理モデル
マネジメント
コントロールモデル
PPM
(Product portfolio
management)
工場、販売の現場での業務意思決定に
会計情報を活用。分業の調節に利用。
経営者の全社的計画、その管理手法として活
用(全社計画・プログラム・予算)。
全社戦略に必要な製品別の分析方法:市場の
製品別売上成長率と当核製品事業での自社の
市場シェアーを尺度に各製品事業を評価する。
価値連鎖モデル
利益目標水準を前提にコストと売上水準をプロ
セスの連鎖としてシミュレーションする。
短期利益計画
単年度の利益・収益・コストの計画、損益分岐
点分析モデルを活用。
正味現在価値
モデル(資本予算)
特定のプロジェクトを単位に、資本予算、設備投資期間計
画としてキャシュフローやリスクを考慮して、プロジェクトの
採否の評価を実施。
3.管理会計と大企業史
大企業における管理会計のイノベーション
1920年代 インベストメント・センターを前提した事業部制
1970年代 日本企業による経営革新の影響
Ex) ボーイング社
垂直的
内部製造
1980年
Column 3
設計、最終製品の組立、品質検査に特化
日本・中国社に本体、部品加工などの委託
設計と組立に関連した管理会計が原価企画
日本から始まった原価計画はアメリカの航空機製造
メーカーにも移植されていた。
TOC(theory of constraint)
エリヤフ・ゴールドラットにより1990年出版された。生産管理
に関する理論の1つで、生産過程の中のボトルネックに注
目し、どのようにそれを発見し取り除くといったように、制約
要因を遂次的に分析するための方法論。
ABCとTOC理論
ABC(activity-based costing):
正確に間接費を製品やサービスに配賦するもの。
さまざまな管理費用が発生し、知らない間(情報の非対称
性)に競争力を喪失する。
半導体
産業
大きな固定費をもっている。最新の製品ですら
2年程度で陳腐化してします。固定費を無視した
のでは、資本コストは回収できない。
精度の高い原価計算システムが開発された。
TOC理論(theory of constraint)
製造もできるだけキャッシュの回収を短期的に行うべきだ
とする考え方である。
時間あたりの
売上高ー材料費=粗付加価値
付加価値に注目
製造総時間
4.管理会計と情報システムの変遷
情報システムの一部として会計
情報システムの一部として会計
ERP:総合パッケージ・ソフト
生産管理・原価管理・財務管理・会計管理など複数
の機能を同時に達成するために、データベースを
部門間で共有する。
管理会計は、情報システムや社内コンサルティング手法
として組織や情報システムのデザインにかかわる役割が
大きくなっているといえる。
情報システムの発展
EDP (electric data processing)
簿記
MIS(management information system)
取引の自動化、コンピュータ
の容量と計算の制約
DSS(decision support systems)
意思決定モデルをベースにそれに
必要な会計データベース多数開発
EIS (executive information
support systems)
外部と内部のデータベース利用
クライアント・サーバ・システム
イントラネット
仕訳が機械に置き換えられた
戦略モデルを含む方向に進み
始めたが実現できなかった。
定型的意思決定問題へ
の支援に成果があった。
機械の処理能力や記憶能力
向上。シミュレーション・モデル
の利用・進化
コミュニケーション・ツール
部署・地域関係なく自由に低
コストで伝達されるようになった。
5.管理会計の課題
管理会計の大きなテーマ
経済そのものがモノからサービス、知的価値に競争力
の源泉が移っている
今後は知的資産をどのように生産するかといったマネ
ジメントが重要な問題である。
またそれが市場取引をベースにできれば、おのずと価
格は決定される。
組織の中で生成された物的なものと一体化して価値を
もつときどのように価値付けをするか。
2章で学んだキーワード
ROI
科学的管理運
ABC
DSS
売上高粗利益率管理
原価企画
EDP
MIS
EIS