要 望 書 当町においては、平成 25 年 3 月、警戒区域の解除及び避難指示区 域の見直しが施行され、帰還困難区域・居住制限区域・避難指示解 除準備区域の 3 つの区域に再編されてから、少しずつではあります が復旧の兆しが見えつつあります。 しかしながら、震災及び原発事故の発生から 4 年余りが経過した 今もなお、全町民が避難を強いられていることに変わりはなく、原 発事故の収束や生活再建の見通しが立たない中での長期的な避難生 活により、町民の精神的・肉体的疲労はもはや耐え難いものとなっ ております。 つきましては、福島第一原発の廃炉措置及び福島第二原発の安全 性の確保・確立は勿論のこと、古里・富岡町の早期復旧復興と町民 の生活再建を実現するため、政権与党であり、責任政党である自由 民主党に対し、次の事項を強く要望いたします。 記 第1 帰還困難区域・森林における除染の実施 第2 賠償控除分の早期⽀払いと相当期間の⾒直し 第3 賠償期間等の⾒直し(営業損害・就労不能損害) 第4 イノベーション・コースト構想の具現化等による産業集積 第5 JR 常磐線の早期全線開通 第1 帰還困難区域・森林における除染の実施 ○当町の帰還困難区域は全町の約 15%の面積と約 30%の人口を有し ており、総延長約 2 ㎞の全国有数の桜並木や日本一に輝いた JR 常 磐線夜ノ森駅構内のつつじ、水戸・仙台間を結んだ古道“陸前浜 街道”沿線の松並木、約 200 年前に植栽されたやぶ椿の群生など 数々の重要な観光資源があり、四季を通じて多くの観光客が地域 を訪れていた。 ○このため、帰還困難区域の再生・復活は今後の町全体の復興のた めには欠かせないものとなっているが、帰還困難区域の本格除染 は一部を除き実施されていない。 ○国は、帰還困難区域の除染は重要検討課題としつつ、町の復興計 画に復興の絵姿を示すことで除染を行うとしているが、絵姿論議 に関わらず、帰還困難区域の除染を行うことで地域全体の空間線 量を低減させることこそが福島での生活、賑わいを取り戻せるこ とに繋がり、ひいては、福島の復興を牽引する国の強い姿勢であ るため、最優先的に取り組むべきで課題である。 ○よって、真の町の復興には帰還困難区域の除染は必要であり、町 民の抱える不安や今後想定される風評被害を払拭するためにも、 帰還困難区域の早期かつ徹底した除染を要望する。 ○また、当町の豊かな森林資源の中で里山、特に生活拠点に隣接し ている森林等については町民が日常的にレクリエーションや山の 幸を求めて立ち入る生活にかかせないエリアであるため、帰還困 難区域同様の除染を要望する。 第2 賠償控除分の早期⽀払いと相当期間の⾒直し ○平成 25 年 3 月の原子力損害現地対策本部長通達により、区域設定 による避難指示解除見込み時期が示され、帰還困難区域を除く区 域は解除見込み時期に基づく精神的損害と不動産(宅地、建物、田 畑、山林等)に係る財物賠償は、6 年全損に対し 5 年分と 1 年分が 控除されている。 ○当町における除染などの安全確保策や日常生活に必要となる機能 の回復は、国が示す避難指示解除見込み時期である平成 28 年 3 月 末までに完了することは極めて困難なものと判断される。 ○よって、多くの避難者の生活再建を支援する考えのもと賠償控除 分の早期支払いを要望する。 ○また、避難指示解除後の相当期間については、当町が全町避難で 三区域に分かれている特殊性を把握し、避難者の生活や事業再建 のための必要な期間を適切に判断されるよう要望する。 第3 賠償期間等の⾒直し(営業損害・就労不能損害) 〔営業損害について〕 ○営業損害の賠償は、農林業以外の業種に対する賠償終期について、 現在見直しを検討している状況にあるが、除染やインフラ復旧後 に帰町し、事業再開を目指している地元に根差した個人・法人事 業主にとって、避難指示が解除される前の段階で営業損害の賠償 が打ち切られることは認められるものではない。 ○よって、賠償期間は避難指示解除までは延長し、避難指示の解除 後の帰還した際の賠償についても、事業者の個別事情により終期 が判断されるよう強く要望する。 ○また、農林業の賠償期限である平成 28 年 12 月以降の考えについ ても、除染の遅れに加え、表土剥ぎ取りによる地力回復にも時間 を要し事業再開が果たせる状況にあるかの確認を十分に踏まえ、 適切な対応が取られるよう要望する。 〔就労不能損害について〕 ○就労不能損害の賠償は、事故から 4 年(平成 27 年 2 月まで)が賠償 され、さらなる期間延長の要件は、 「生命・身体的損害によるもの」、 「障害をもたれている方等やむを得ない個別事情を持つ場合」と 限定的である。 ○しかし、東京電力の賠償終期によって意に沿わぬ職種、または条 件で再就職をするも、事故前より減収となる場合は、生活基盤を 築くためにも減収分の賠償は必要であり賠償継続すべきである。 ○よって、被害者の個別具体的な実情に基づき賠償するとしている が、しっかりと個別事情を斟酌して賠償されるよう改善を要望す る。 第4 イノベーション・コースト構想の具現化等による産業集積 ○原子力発電所事故に伴う放射能汚染、全町民の長期避難等により、 本町の基幹産業であった農業を始め、原発被災地で息づいていた 各種産業の再生は極めて困難な状況にある。 ○国においては、 「イノベーション・コースト構想」や東京電力の送 電網を活用した再生可能エネルギー施設の導入拡大など、原発被 災地の復興に寄与する新たな産業創設や産業集積を推進しており、 これらは、被災地の再生と自立にとって必要不可欠であるととも に当町はもとより原発被災自治体が寄せる期待も非常に大きい。 ○国は、これらの構想を絵に描いた餅にすることなく、中長期の展 望も視野に入れ、当町が求める国際産学官連携拠点(国際共同研 究棟)の設置を始めとする拠点施設の早期整備、新たな産業集積 等の実現に向け、財源の確保や各種規制の柔軟運用等も含め、着 実に取り組むよう要望する。 第5 JR 常磐線の早期全線開通 ○JR常磐線全線開通に向けた見通しは、相馬駅・浜吉田駅間の平成 29年春の運転再開を皮切りに、当町にある富岡駅及び夜ノ森駅に 関しては、竜田駅・富岡駅間は、平成30年以内を目処にできるだ け早い時期、富岡駅・浪江駅間は、時期は未定であるものの除染 や異常時の利用者の安全確保策を完了した後で再開するとしてい る。 ○当町においては、町民の帰還や未来の富岡町の姿を見据えながら、 医療・福祉施設や商業施設を集中した復興拠点の整備を始めとす る「ふるさとの復興」、長期化する避難生活を送る町民の「心の 復興」を計画の基本理念とした「富岡町災害復興計画(第二次)」 を、早ければ平成29年4月の帰還開始を掲げ、平成27年6月に策定 することを目指している。 ○このため、町の復興の先駆けとなる富岡駅の再開、更には、浜通 りを縦断するJR常磐線の全線開通は、地域全体の復旧・復興を力 強く後押しするものと期待を寄せている。 ○よって、当町における復興・まちづくりのさらなる加速化を実現 するため、JR常磐線の早期全線開通を要望する。
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