C.T.ホーグレンほか、渡辺俊輔監訳 『マネジメント・アカウンティング』 明治大学経営学部 鈴木研一ゼミナール 担当 池戸 聡 坂本 謙太 第1章 管理会計と企業組織 管理会計と財務会計 会計システム 組織の活動に関する情報を収集、構成、伝達するための公式の 仕組み 管理会計とは マネジャーが組織の目的を実現するために役立つ情報を認識、測 定、収集、分析、作成、説明、伝達するプロセス 財務会計とは 株主、仕入先、銀行、政府機関などの外部意思決定者のための 情報を作成する会計の分野 不可欠な管理会計 管理会計の役割 組織のマネジャーが重要な問題を解決するのに役立つ 組織のマネジャー 有益なコスト情報を要求 管理会計担当者 理解しやすい形でコスト情報を提供 マネジャーの行動がどのようにコストや最終損益に影響する かを理解するのに役立つ 管理会計担当者=財務・事業戦略アドバイザー 会計情報 会計情報の基本的な目的 意思決定のために役立つ情報であること 「誰か」~会計情報の利用者 企業の社長 製造マネージャー 病院や学校の運営者 投資家、など 会計情報を理解することにより、情報に基づいた優れた意思決定が 可能になる 会計情報の利用者 会計情報の利用者は、一般的に以下の3つに分類できる 短期計画や日常業務のコントロールのために会計情報を利用す る「企業内部のマネージャー」 非経常的な意思決定や、全社的な方針・長期計画の編成のため に会計情報を利用する「企業内部のマネージャー」 非経常的な意思決定 例えば、設備投資、製品・サービスの価格決定、どの製品 に力を入れるべきか、など 投資家や行政機関など、その企業についての意思決定を行うた めに会計情報を利用する「外部の関係者」 会計の領域 企業内部のマネージャーも外部の関係者も会計情報を利用するが、 どのように利用するかは異なる 従って、要求する会計情報の種類も異なる 企業内部のマネージャーのための会計を「管理会計」、外部の関係者 のための会計を「財務会計」という 管理会計と財務会計の相違は、次のスライドに示す 両者にはこのような相違があるにもかかわらず、ほとんどの組 織では、前述の3タイプ全ての利用者のニーズに応じた、汎用 的な会計システムが選択されている そして多くの組織においては、まず外部関係者から課された法 的な要請を満たした会計システムが構築され、内部のマネー ジャーのニーズは無視されることが多い 管理会計と財務会計の相違 (図表1-1) 管理会計 財務会計 主要な利用者 組織内部の各層のマネージャー 外部関係者 ( ただし、組織内部のマネジャーも 同様に利用する) 選択の自由 コスト・ 便益バランス以外の制約は ない 一般に認められた会計原則( G A A P) による制約 行動上の含蓄 測定と報告がいかにしてマネージャ 経済事象をいかに測定し伝達するか ーの日々の行動に影響を与えるか についての関心 についての関心 行動上の配慮は二次的なものであ るが、報告された結果に基づく 重役 の報酬が彼らに行動に影響を与え るかもしれない 時間の焦点 未来志向: 過去の記録と同様、予算も公式の 使用法である( 例えば、19X 9年の 予算対19X 9年の実際業績 過去志向: 歴史的評価( 例えば、19X 9年の実 際業績対19X 8年の実際業績) 期間 柔軟性に富む 1時間単位から10年間、15年間 柔軟性に劣る 通常、1年間か四半期間 報告書 詳細な報告書: 要約的な報告書: 企業、製品、部門、地域などの詳細 主に企業全体に対する関心 な部分への関心 活動の描写 分野はあまり明確には定義されて 分野はより明確に定義されている いない 関連する学問分野を軽く 参照する 経済学、決定科学、行動科学に深く 関連している 会計情報の利用方法 優れた会計情報というものは、以下の3つを満たすものであり、組織 が目的を達成することに貢献する 業績記録 うまくやっているのか、いないのか データの収集と分類 注意喚起 どの問題に注目すべきか 企業内部のマネージャーが、業務上の問題や欠点、 非効率、または機会に注目するために役立つ情報を 報告・解釈すること 問題解決 どれが最善か 考えうる行動案の予想される結果を定量化し、最善 の案を選択することを可能にする 営利組織と非営利組織の会計 営利組織 例えば、会計事務所、法律事務所、経営コンサルタント、不動産業 運送業、銀行、保険企業、ホテルなど 非営利組織 病院、学校、図書館、博物館、政府機関など この二つの組織のマネジャーや会計担当者は多くの点で共通 これら組織におけるシステム導入の標語は単純さである 単純さは会計システムの設計にとっても素晴らしい標語 複雑さはデータの収集や分析にかかるコストを増大させ、期待さ れる便益を上回ってしまう コスト・便益と行動上の考慮事項 マネージャーは、会計システムの設計や会計方法の選択において、 以下の2つの事柄に配慮すべきである コストと便益のバランス 予想されるコストを見込まれる便益と比べてみることをいい、 まず第1に考慮すべき 行動上の含意事項 マネジャーの行動に対する会計システムの影響 つまり、管理会計は、会計情報のコストと収益のバランスであると同時 に、行動への影響の重要性を認識することに結びついていると言える マネジメントプロセス マネジメントプロセス 計画とコントロールのサイクルにおける一連の活動 意思決定 マネジメントプロセスの中核をなす ある目的を達成するための代替的な行動案の中から目的に 適ったものを選択すること 計画とコントロールの本質 二つの意思決定 計画の意思決定(planning) 目標を設定し、どのように達成するかの概要を示す コントロールの意思決定(action-evaluation) 目標を達成するために計画を実行し、フィードバックする 計画は行動を決定し、行動はフィードバックを生み、フィー ドバックは次の計画に影響する このサイクルを次の図で示す マネジメントプロセス マネジメントプロセス 計画 計画と実行 に対する 訂正・修正 実 行 コントロール 評 価 (フィードバック) マネジメントプロセスと会計 マネジメントプロセス 計画 計画と実行 に対する 訂正・修正 (図表1-2) 会計システム 予 算 実 行 活動の記録・測定・分類 コントロール 評 価 業績報告書 (フィードバック) ※業績報告書は予算と比較される 解説 図表の右上は、会計が計画を予算として表すことによって、計画を公 式化することを示している 予算 活動計画の定量的な表現であり、(必要があれば)計画を調整 し、経営計画を実行させるための主要な仕組み 予算なしでは、計画は必要な焦点が定まらないであろう 図表の右下は、会計がコントロールを、業績報告書をまとめることに よって、公式化することを示している 業績報告書 実績と予算との比較を意味する包括的な用語 計画と結果を比較し、計画からの逸脱である差異を示す ことによって、フィードバックを提供する 例示 (図表1-3加筆) 簡単な業績報告書の例~ある弁護士事務所 予算額 収益:弁護士報酬 各種費用 純損益 10000 8000 2000 実際額 1,0500 9000 1500 差異 500 1000 △500 (単位:千㌦) 原因 … … … 差異の扱い(1)-例外管理 業績報告書は、予算と実際の結果を比較することにより、マネー ジャーに予算目標を達成するように動機付け 業績報告書は、例外事項(実際額が予算額と大きく異なる項目)の調 査を促す それによって、業務が計画通りに実行されるようになるか、または 計画自体が修正される これを例外管理という 例外管理においては、計画から逸脱した部分に注目し、滞りなく実行 されていると思われる部分は無視する そうすることによってマネージャーは、計画通りに進んでいる業務 には、関わらなくて済むようになる 差異の扱い(2)-十分な裁量と柔軟性 計画からの逸脱が、マネージャーの予期せぬ機会であった場合には、 それを追求することができるように、計画は十分な裁量と柔軟性を備 えていなければならない 事態が進展したため、予定外の行動をとる必要が生じた場合には、 マネージャーは適切な行動をとれるようでなければならない つまりコントロールは、自由を妨げるものであってはならない
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