医用画像情報学特論 B11R106H Comparison of the manual and computer-aided techniques for evaluation of wrist synovitis using dynamic contrast-enhanced MRI on a dedicated scanner 専用スキャナを用いた上でのダイナミックMRI造影を使用する手首滑膜炎の評価のための マニュアルとCAD技術の比較 目的:臨床検査や,生検サンプルの免疫組織学,シンチグラフィ,レントゲンなどの関節リウマチにお ける滑膜炎の評価のための従来の方法にはいくつかの欠点がある.MRI は規格化に欠けていて, 労力のかかる得点法を用いてデータを分析する. 方法:本研究は,手首 MRI の定量分析のためのコンピュータ支援方法(CAD)を紹介する. 滑膜炎の評価は,患者の動き減少アルゴリズムに関連して半自動化しているモデルベース法を使 用することで実行された.この手法は,従来 ROI がベースの技術と比較された. 結果:CAD 技術は頑健で再現可能な結果を出した.動き減少アルゴリズムの適用は SN 比を改善させた. 結論:関節リウマチにおける,手首の横断面および縦断面の MRI 検査における診断決定に,コンピュー タ・ソフトウェアの使用は有益である場合があった. 【1.序論】 関節リウマチ(RA)の早期検診は,抗関節炎剤の最大の効力を考慮するのに不可欠である.そのうえ, 疾患活動性の正確な観察が最適な治療方法の選択に必要である.臨床検査や活膜の生検サンプルの免疫 組織学,シンチグラフィ,レントゲン,超音波ドップラー法などの疾患活動性の評価の為の従来の診断 法にはいくつかの制限がある.それは,免疫組織学における感度の不足や侵襲的技術の必要性,隣接し た領域の活膜炎のレベルのバラつきや,シンチグラフィにおける放射性物質の管理や超音波検査におけ る不十分な規格化などが挙げられる.ダイナミック造影磁気共鳴画像法(DCE-MRI)は,RA を持つ患者 の滑膜炎の評価の為の非侵襲的画像診断法として考えられている. 手首と中手指節関節(MCP)のための MRI データ解析の手法を開発することを目的として OMERACT グループにより多くの成果は得られた.OMERACT-RAMRIS スコア(Rheumatoid Arthritis MRI Scoring System:関節リウマチ MRI スコアリングシステム)は,再現可能であるが,長い収集と評価時 間によって臨床の使用は制限がある.その上、滑膜炎の初期変化を検出する為には滑膜炎スコアは厳密 であるため有用ではなかった. DCE-MRI はガドリニウムの注入前と注入中にて MRI シーケンスの収集に基づいている. DCE-MRI は RA が活動性か非活動性かを区別する.この方法は,迅速で,非侵襲的で,RA の臨床や検査上の特徴 に追加情報を提供する. 膝関節において,DCE-MRI は炎症の組織学の兆候と互いによく関連して,ま た,造影 T1 強調画像における増強する滑膜の体積変化の早期治療反応に高い感度を持つ. DCE-MRI のデータは、関心領域(ROI)のような準定量的技術を用いてよく解析された.ROI から信号 強度対時間曲線を得る.炎症性血管拡張や潅流パターンに依存する,増強と相対的増大の早期割合は, 病気の活動性を測定するために計算される.しかし,この方法は再現性と信頼性に欠けている. この研究では,手首の DCE-MRI の定量分析のための CAD 法を導入する.この手法は,手関節から取 得された DCE-MRI データにおける滑膜炎の定量的な評価のためのモデルベースの手引きに基づいてい る.また,患者の動きを減少させる機能性アルゴリズムは,手の動きに関連したアーチファクトを減少 させるために適用された. 【2.構成要素と方法】 2.1.患者データ 対症症例研究で行った.46 個の対象が,DCE-MRI で撮像されて,ACR 評価基準に応じて記録された. 32 個が RA 患者(女性 27 人,平均年齢 59.5±12.5 歳,平均罹病期間 86.8±81.6 カ月).6 個が血清反応 陰性関節炎と乾癬の存在によって乾癬性関節炎(PsA)が診断されている患者(女性 3 人,平均年齢 54.7 ±14.6 歳,平均罹病期間 45.2±27.5 カ月).4 個が早期未分類関節炎(EUA)を伴う患者(女性 4 人,平均 年齢 38±14.9 歳,平均罹病期間 6.3±3.2 カ月). 4 個が正常対症群(男性 3 人,平均年齢 47.5±29.3 歳). 検査前 24 時間は激しい手首の運動を禁止した. DAS44 のスコアは MRI 検査の 1 時間以内に計算された. 2.2.DCE-MRI エサオテ製ジェノバの手首 MRI0.2T で実行された.RA 患者において,最も厳しく影響を受ける手首, すなわち対称性障害において主要な部位を検査した.手はニュートラル・ポジション(中立位置)で固定し た.視野(FOV)は前腕の末端,手根骨および中手骨の評価を考慮した 120mm であった.橈骨手根関節は, FOV のセンターに置かれた.ダイナミックフレームは橈尺関節の末端で橈骨の長軸に垂直に置かれた. スライス厚は 5mm で,スライスギャップ厚は 0.3mm であった.撮像方法はスピンエコー法を用いた (TR/TE=100/16ms,マトリクス=160×128,FOV=150×150). まず,非造影画像を取得し,Gd-DTPA を 0.2ml/kg 静脈内ボーラス注入した.同時に 3 種の DCE-MRI スライスの収集をした. 患者の動きによって引き起こされたアーチファクトを除去するために,動き減少アルゴリズムは Dynamika-RA ソフトウェアに組み込まれた.DCE-MRI は,結果の一貫性を評価するために,不変性の RA をもつ 4 人の患者と,2 つの正常対照群と区別して 3 日間繰り返された. 2.3. データ分析 2.3.1. 従来の ROI 手法 ROI は,手首の中央で背面の領域に相当する,最も増強して見える領域に位置付けられた.ここで, 腱付着部と滑液鞘は ROI に含めない.ROI の中の増強速度(RE)と早期増強速度(REE)は,次のように計 算された. S0 と St は、造影剤注入前と注入 t 秒後における SN 比である. ROI で測定された信号とバックグラ ウンドノイズの標準偏差の間における比率として計算された.REE は 55 秒以内において増強が最大で 曲線の傾斜に対応する. RE は増強の定常状態を示す. 2.3.2. モデルベース法(コンピュータ支援解析) アーチファクトの減少後,疾患活動性は信号強度を分析するモデルベース法を用いて測定された.信 号強度対時間曲線は区分線形モデルによって近似された.また,造影剤摂取パターンを基準として次の 4つのグループに分類された.(A)著しい増強や定常状態が無い(B)持続摂取状態(C)停滞状態(D)排出状 態.区分による色付けは,時間的 DCE-MRI 検査においてガドリニウムの摂取パターンの外観を与える 造影前画像の上に重ね合わせられた. 炎症活動の分布と体積を定量化するために,増強した画素の数(Ntotal),連続した増強を含んでいるピ クセル数(Npersistent),増強停滞期(Nplateau),増強排泄期(Nwash-out)など,これらの組み合わせは ガドリニウム摂取図から抽出された.また,最大増強率 (ME),初期増強率(IRE),および増強の開始時 間(Tonset)はモデルから抜粋された.Gd-DTPA 摂取情報と同様に,ME,IRE および Tonset などが視覚 補助のパラメタとして解剖学的画像上に時間的スライスから抽出され,重ね合わせられた. ME,IRE,Tonset,Ntotal,Npersistent,Nplateau,Nwash-out は,画像全体か,ROI において自 動的に計算された.ROI は ME と IRE の最も高い領域に置かれた.また,従来の RE と REE を評価し て,同じ ROI の範囲内で自動的に ME と IRE を得た. 2.4. 統計学的評価 正規分布である場合,スチューデントのt検定を用いて比較した.別の場合では,ウイルコクソン検 定やマンホイットニーの U 検定などのノンパラメトリック法やクラシカルヲリス法の一方分散解析によ って比較した.頻度はフィッシャーの正確確信度法で比較した. 観察者間の再現性と信頼性は,クラス内の相関係数(ICC)と k 統計量を用いて評価した.測定間の相関 関係はスピアマンの順位相関係数が用いられた.P 値が 0.05 より少ない場合に有意差を認めた.感度の 変化は標準化された応答手段(SRM,標準偏差の変化で割られた変化)と効果量(標準偏差の基礎値で割ら れた変化)で評価された. 【3.結果】 活動性関節炎は RA 患者のフォローアップにおいて大きく変化しなかった.DAS44 スコアの中央値は 初回の MRI 検査の時は 4.0(3.5-4.4)で,2 回目の時は 3.8(3.4-3.9)であった(ウイルコクソン検定 p=0.12). 3.1. 時間経過においての再現性 ROI 法において REE と RE のクラス内統計相関係数は 0.02 と 0.99 であった.検査の間の平均変化は, 対照群において REE44.9%と RE31%で高かった.これに反して, RA 患者においては REE25.2%と RE5.5%で低かった.同じデータが CAD 法で解析されたとき,再現性は,ME0.89 と,IRE0.78 と, Tonset0.95 と,Ntotal0.90 と,Nplateau0.97 と,Nwashout0.92 であった. 3.2. ROI がベースの測定値の再現性 画像全体と,ROI の中において計算された IRE と ME の間の統計相関係数は,0.87 と 0.85 であった. IRE と ME のクラス内統計相関係数は, 0.91 と 0.89 であった. 3.3. REE 対 IRE と RE 対 ME の間における相関関係 REE と IRE の傾斜を表すパラメタの間の統計相関係数は 0.31 であり,ME と RE の間の統計相関係 数は 0.76 であった. 3.4. ME,IRE および Gd 摂取統計における相関関係 ME と IRE と Ntotal,Npersistent,Nplateau,Nwash-out との間には重要な相関関係は見られなか った.RA または乾癬性関節炎の患者において得られた ROI の間には,グループ差が全く無かった. 【4.考察】 DCE-MRI で ROI を選択することによって,炎症の信頼できる測定値を得ることが可能である.その 測定値は,臨床および検査成績の特徴と互いに関連する.従来の ROI 法の主なデメリットは,最も著し く滑液の増強した領域に ROI を配置しなくてはならないことである.この領域の選択はかなり観察者に 頼っている.元の結果を再現するために,Dynamika-RA と ROI 基準の解析は 1 人の観察者だけによっ て実行された.その観察者は,最も効率的な ROI 配置に,ROI とパラメトリックマップの中でリアルタ イムにおいて計算された統計情報を利用した.しかし,ROI 基準の解析で得られた結果の再現性は低か った. 本研究では,炎症の領域全体を覆った大まかな ROI と小さい ROI とで比較された.従来の方法で得ら れた測定より,大まかな ROI から抽出された測定結果が,臨床上のデータでよく関連するのが解った. 観察者が色図によって誘導されたとき,結果の再現性はかなり増加した. 従来法と CAD 法の両方の再現性を評価するために,不変性 RA 患者 4 人と健常人 2 人を撮像した.多 くの変動が,手法の固有誤差と滑膜炎の実際の変化とどれほど相応するのか解析するために,DAS44 ス コアは MRI 検査の 1 時間後に計算された.DAS44 スコアが著しく変化しなかった事は,REE に得られ た成績不良が,手法の固有誤差が原因である可能性を大きく示している.その上,再現性が乏しいので, 疾患活動性の測定として従来の ROI 手法で得られた REE は使用できない.これに反して,CAD 法を使 用する全自動解析は,頑健であり,0.78 と高い再現性を示した.データが自動化された方法で処理され た際,内部または観察者間の変動は無かった.観察者は,ソフトウェアパッケージを使用して,運動補 正を実行するか,解析においていくつの画像を用いるのかなどの初期設定のみ操作出来た. CAD 法で得られた ME と IRE は,滑膜の状態を反映して,RE と REE の従来の測定と互いに適度に 関連する.同じ ROI の中で測定された REE と IRE は,RE と ME より著しく関連が見られなかった. こ れは従来の REE が 55 秒間で評価されているためである.従来、ROI は患者の動きによってぶれるだろ う部位に置かれるが,ソフトウェアの動き減少アルゴリズムを使用することによって克服する.ガドリ ニウム摂取図から評価された滑液活動の ME と IRE のパラメタの間には著しい相関関係は見られなかっ た.潅流と滑液体積測定の更なる研究が,信頼できる総合的な増強解析に必要である. 欠点として,調査対象集団が少なく,正常対照以外の重い疾患の患者を含んでいたことが挙げられる. また,冠状か矢状面で収集する場合,同様の結果が得られるとは限らない. 【5.結論】 患者の動き減少アルゴリズムと同時に使用される CAD 法は,SN 比の改善を確実にする. ME,IRE, Tonset およびガドリニウム摂取図は RA 患者での炎症活動の正確な評価を可能にする.計算機統計は複 雑なダイナミック MRI データの信頼できる定量分析を可能にする.最終的に,患者の状態と治療反応の 評価のために画像全体か ROI の中のすべてのパラメタがコンピュータ・ソフトウェアで測定して用いら れる.
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