目指すべきクラウド導入のROIの実現: クラウドへの

ビジネスホワイトペーパー
目指すべきクラウド導入の
ROI の実現
クラウドへの移行前に2つの要素で コスト削減効果を確認
目指すべきクラウド導入のROIの実現
目次
2
ワークロードに合った適切なクラウド
を使用する
3 2つの評価基準でテストを行い、クラ
ウドを使用すべきか否かを確認する
4 IT資産と総容量をどの程度効率的に
使用できているのかを把握する
4
5
5
7
詳細な財務 / 技術分析に時間と労力を投入する前に、クラ
ウドがもたらす IT コストの削減効果を理解しておくことが
重要です。本書で示す結論は、特にクラウドに移行する組
織を対象に HPE が実施した、投資対効果 (ROI) の分析結
果に基づいています。
容量の平均使用率を把握する
成果を把握する
詳細な分析を行う
アプリケーションの管理とビジネス
の継続性について考える
8
P2
間接的なメリットを把握する
クラウドへの移行でビジネスに大きなメリットがもたらされるというのは、誰もが知るところで
すが、多くの場合、ビジネスにおける生産性の改善や向上は測定することが難しく、財務面にお
ける効果との相関関係を示すのは容易ではありません。こうしたメリットは確かなもので、ビジ
ネスを大幅に向上させるものの、クラウドへの移行は、実施後に IT システムおよびサービスに
関する負荷が軽減されるかどうか、という基準のみで進められるケースが多くを占めています。
そして実際に効果が得られるかどうかは、状況次第というのが実情です。
ワークロードに合った適切なクラウドを使用する
クラウドのメリットは確かなもので、ビ
ジネスを大幅に向上させるものの、クラ
ウドへの移行は、実施後にITシステムお
計算機を取り出す前に、お客様のワークロードとその関連データに合ったクラウドを見極めるこ
とが大切で、当然のことながら、すべてのワークロードに対応可能なクラウドは存在しません。
しかし、クラウドは各タイプで価格が異なることが明らかである一方、投入した金額に対して得
られる効果も大きく異なるということが必ずしも明確というわけではありません。
よびサービスに関する負荷が軽減される
かどうか、という基準のみで進められる
ケースが多くを占めています。そして実
際に効果が得られるかどうかは、状況次
第というのが実情です。
そこで多くの企業は、各ワークロードの要件と適切なクラウドを合致させるため、ハイブリッド
アプローチを採用しています。そしてベンダー側も、プライベート / マネージドプライベート /
マネージド仮想プライベートクラウド、パブリッククラウド、あるいはいずれかを組み合わせた
ハイブリッドなど、いくつかのタイプのクラウドを用意しており、クラウドソリューションは、
価格や投資対効果など、多くの点でさまざまに異なります。特に大きな違いが見られるのは、以
下のような点です。
• 課金方法 - 時間単位、分単位、月単位など
• 基本料金と含まれるサービス、追加料金
• お客様側に最低限求められる作業
• サービスレベル契約 (SLA) - アップタイムの確約、影響の大きい機能停止が発生した場合のサ
ポートなど
• カスタマーサポートのレベル - ヘルプデスクの電話対応など
• 高可用性 / ディザスタ・リカバリオプション
• 物理 / 仮想サーバーの提供の有無
• データが保管されている物理的な場所を管理できるかどうか
• ベンダーが IT スタックの増加に対応し、基本的なコンピューティング機能を提供できるか、ま
たはオペレーティングシステム (OS) レイヤーを管理できるかどうか
• 他の IT 運用担当者と連携できるかどうか
• 業界固有の規制や認証に関するコンプライアンス要件
目指すべきクラウド導入のROIの実現
P3
ここでは、自分の家と同じように、クラウドでのワークロードとデータのホスティングについて
考えてみるとわかりやすいでしょう。住居と同様、クラウドにも管理、プライバシー、セキュリ
ティ、および所有権のレベルが違うオプションが複数あり、価格も大きく異なります。一戸建て
の住宅を所有して、自らすべてを管理するという選択肢がある一方、マンションやアパートでは、
住居の所有権とプライバシーを確保し、建物全体、共用スペース、ガレージ、建物の保守管理費用、
さらに場合によっては一部の光熱費を他の住人とシェアすることも可能ですが、この場合、エン
トランスが共用スペースであったり、隣人の声が聞こえたりなど、ある程度のプライバシーとセ
キュリティも犠牲になります。
表 1: 住居タイプに例えた利用可能なクラウドオプションの説明
住居タイプ
相当するクラウド
所有するもの
共有するもの
プライバシー/セキュリティ
コストモデル
一戸建て住宅
サイト内のオンプレミス
すべて
なし
共有するものがないため、プライバ
CAPEX
のプライベートクラウド
マンション
データセンターに配備し
シーとセキュリティの問題は最小限。
住居および住居の備品
たプライベートクラウド
アパート
コミュニティの保守管理費用、
隣人との距離は近いが、専用のプラ
共用設備、その他サービス
イベートスペースはある。
仮想プライベートクラ
一定期間スペースを借りるが、
建物全体、エレベーター、廊下、 アラームシステム、専用のリビング
ウド
住居の備品は所有
ガレージ、その他共用スペース
CAPEX
OPEX
スペースなど、ある程度のセキュリ
ティは確保されている。アパート自
体を所有するわけではないため、大
きな現金支出はない。
ホテル
パブリッククラウド
長期的な契約はなく、必要なと
すべて
限定的。自分の部屋に昨晩誰が泊まっ
きにチェックイン / アウトする。
ていたかを知る人物が存在する。上
電話、インターネット、ルーム
下左右の宿泊者が毎日変わる可能性
サービスなど、利用するものす
はあるが、自らの意思で退室でき、
べてに料金が加算される
ペナルティもない。
OPEX
こうした自分の「住居」をワークロードのニーズに合致させれば、お客様のビジネス、IT 要件、
および予算の制約に合った、最もコスト効果の高いソリューションが実現します。
価格やオプションが大きく異なるため、クラウドの比較が容易でないことは言うまでもなく、まっ
たく「同一の条件」で比較を行って、ニーズに最適なソリューションを見つけるのは難しいでしょ
う。クラウドソリューションは、すべてのサービスを含めた価格が設定されている場合もあれば、
基本料金を支払い、必要な機能に「チェックを入れて」追加する、アラカルト方式になっている
ものもあります。多く場合、こうした追加機能にも価格が設定されており、総額を計算したとき
に驚いてしまうこともあるため、最初に計算を行ってから必要なオプションを検討し、最終的な
価格を把握しておくことをお勧めします。
2 つの評価基準でテストを行い、クラウドを使用すべきか否か
を確認する
ビジネスニーズに合う適切なクラウドが見つかったら、いくつかの重要な要素に目を向け、詳細
を検討するに値するクラウドモデルであるかどうかを見極めます。それではここで、クラウドの
決定に影響を与える次の 2 つの要素について考えてみましょう。
• IT 資産と容量の現在の使用効率はどの程度か
ここでは、自分の家と同じように、ク
ラウドでのワークロードとデータのホ
スティングについて考えてみるとわか
りやすいでしょう。住居と同様、クラ
ウドにも管理、プライバシー、セキュ
リティ、および所有権のレベルが違う
オプションが複数あり、価格も大きく
異なります。
• 容量の平均使用率はどの程度か
これら 2 つは、コスト削減に最も大きく影響する、最も一般的な要素で、クラウドに移行すれば、
生産性の向上、市場投入期間の短縮、柔軟性の向上など、間接的なメリットも多数もたらされます。
また、タイプが異なるクラウドからは、それぞれ別のアプリケーションおよびソフトウェア管理
機能が提供され、クラウドベンダーが、ハイパーバイザーまたは OS レイヤー、さらにはアプリケー
ション自体に至るまでのあらゆる要素を管理できるため、ソフトウェアのメンテナンス、アップ
目指すべきクラウド導入のROIの実現
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グレード、パッチに伴う継続的なコストが不要になります。したがって、お客様が検討しなけれ
ばならないのは、こうしたソフトウェアアプリケーションの管理に必要なコストと、クラウドベ
ンダーの提供するサービスが、関連するすべてのコストを考慮しても低額であるかどうか、とい
うことになります。
詳細な分析にリソースを投入する前に、最初に挙げたこれら 2 つの使用率に関する要素に基づい
て、どの程度のコスト削減が可能かを判断することが重要です。ニーズに最適と考えるクラウド
モデルがあるかどうかにかかわらず、これらの要素を検討すると、従来の IT 環境でワークロー
ドを維持した方がコスト効果が高いのか、それともクラウドに移行した方が良いのかが明確にな
ります。この方法は厳密な測定結果が得られるものではないため、移行にあたっては詳細な分析
を行うことをお勧めしますが、これらの要素を活用すれば、どの程度のコスト削減効果が得られ
るのかを確認できます。
IT 資産と総容量をどの程度効率的に使用できているのかを把握
する
お客様の選択したクラウドが、現状より低コストでコンピューティング機能を提供するものであ
れば、コスト削減効果が得られます。また、クラウドベンダーは IT のエキスパートであり、スケー
ルメリットをもたらします。コストが著しく高い場合、クラウドはコスト削減に貢献しますが、
可能な限り効率的に、またはそれに近い状態で IT 環境を運用していると、その効果は失われ始
めます。
既存の IT インフラストラクチャの運用効率を測定する動的な基準は複数あり、たとえば、ホス
トあたりのサーバーイメージ数の割合、ホストとして動作する物理サーバーの割合、サーバーイ
メージに対する IT リソースの割合、( 場所によって変動することの多い ) IT ハードウェア、スタッ
フ、および電力コストなどが挙げられます。
私たちの経験から、この中でホストあたりのサーバーイメージ数の割合 (「仮想化率」) が有効
な測定基準と言えます。サーバーには、物理サーバーとして使用され、一切仮想化されないもの
もあれば、最大限まで拡張され、物理マシンあたりのイメージ数が 20 を超えるものもあり、こ
の割合が高いほど、削減効果が低くなります。
容量の平均使用率を把握する
クラウドの決定に影響を与える次の
2つの要素が使用されます。
これらは、コスト削減に最も大きく
影響する、最も一般的な要素です。
• IT資産と容量の現在の使用効率
はどの程度か
• 容量の平均使用率はどの程度か
クラウドによるコスト削減効果を見極めるうえで次に重要となるのが、使用可能なすべての容量
をどの程度使用しているか、ということで、その考えは 未使用容量 = コストの無駄という実に
シンプルなものです。さまざまな理由から、一部の企業では今後の成長の可能性、または容量に
対する各方面からの需要に備えて IT 資産に設備投資を行っていますが、このようなコストは削
減、あるいはビジネスの他の部分に投入することが可能な場合があります。一般的な企業は、予
想される需要のピーク期間と将来の成長という 2 つの要素に対応するために総容量を確保してい
ます。
IT に対する需要は、大部分の企業で大きく異なり、業界の動向や実行しているアプリケーショ
ンの影響を受けることも少なくありません。需要の変動も、時間、日、週、そして場合によって
は、サイクルや季節単位などさまざまで、機能停止やパフォーマンスの低下は許容されないため、
ピーク時の需要に対応できるよう、十分な容量を確保しておくことが依然として必要とされてい
ます。容量が未使用、または過剰な状態は、適切な管理や計画ができていないことが原因となっ
ている場合もあり、各部門が必要なハードウェアを注文して、その一部しか使用していない、あ
るいはプロジェクトが当初想定していたスピードで進まず、購入した IT 容量がアイドル状態と
なり、別の目的に活用されていないか、活用できていないといったケースも見受けられます。
目指すべきクラウド導入のROIの実現
P5
ホストあたりの物理サーバー数の割合が
50%の場合に得られるROI
ホストあたりの物理サーバー数の割合が100%の場合に得られるROI
50
50
45
収益なし
ホスト当たりの平均仮想サーバー数
ホスト当たりの平均仮想サーバー数
45
40
損
35
益
30
25
25
20
%
分
岐
RO
I
15
25% ROI未満
10
55%
60%
65%
70%
75%
80%
85%
90%
95%
100%
20% ROI
15% ROI
20% ROI
岐
RO
>25% ROI未満
10
35%
40%
45%
50%
55%
60%
65%
70%
75%
80%
85%
90%
95%
100%
容量の平均使用率
容量の平均使用率
25% ROI
%
分
I
15
5
50%
25
20
0
45%
益
25
0
40%
損
35
30
5
35%
収益なし
40
5% ROI
Breakeven
図1. ホストあたりの物理サーバー数の割合が50%の場合に得られるROI
25% ROI
20% ROI
15% ROI
20% ROI
5% ROI
Breakeven
図2. ホストあたりの物理サーバー数の割合が100%の場合に得られるROI
クラウドなら、実際に必要な容量のみを確保して、よりスムーズに需要に対応することが可能で、
調達とプロビジョニングのプロセスが、週または月単位から、場合によっては文字通り数時間に
まで短縮されるため、必要に応じた新しいサーバーのプロビジョニングが容易に行えるようにな
ります。また、プロジェクトが想定通りに進まない場合は、プロビジョニングしたサーバーを簡
単かつ迅速に停止できるため、これまでは購入済みという状態でしかなかったサーバーを、必要
に応じて別の目的に使用することが可能になります。
お客様のワークロードとその関連デー
図 1 と 2 は、投資対効果 (ROI) の損益分岐点の変動範囲を簡単に確認できる、お客様向けのワー
クショップで使用したモデルに基づくもので、それぞれのグラフに、所定の ROI を達成するの
に必要な仮想化率と容量使用率を示しています。仮想化率は、ホストとして使用する物理マシン
数とホストあたりのサーバーイメージ数の 2 つの要素が基本となるため、2 つの図では、それぞ
れホストとして使用する物理マシンの割合を変えています。
タに合ったクラウドを見極めることが
大切で、すべてのワークロードに対応
可能なクラウドは存在しません。
成果を把握する
これらの図が示すように、仮想化率、または容量の平均使用率が低いほど、クラウドへの移行で
期待できる ROI が高くなります。ここでの考え方は実にシンプルで、たとえば、現在の容量の
平均使用率が 70% を下回っており、ホストあたりの仮想マシン (VM) の平均数が 10 台未満であ
れば、確実な ROI が期待できる一方、ホストサーバーあたりのインスタンス数が 20 個で、容量
使用率が 85% の場合は、クラウドに移行しても大きな削減効果が得られません。
お客様の環境が損益分岐点上、またはそれに近い状態にある場合は、ビジネスにおける投資の価
値を向上させるであろう別の要素とメリットが存在するため、引き続き分析を行う価値があると
考えられます。このようなときは詳細な分析を行うことで、クラウドがビジネスに適しているか
どうかをさらに明確にします。
詳細な分析を行う
2 つの要素に基づいて行ったテストの結果は、クラウドへの移行が有効であるかどうかを高いレ
ベルで判断するのに役立ちます。結果から ROI が 10% 向上すると判断した場合、クラウドへの
移行を進めた方が良いのは明らかですが、ROI が損益分岐点を下回ると推定される場合は、そこ
で立ち止まるべきでしょう。
この 2 要素テストの結果により、クラウドへの移行に関する分析を続けることを決定したら、難
しい作業に取り掛からねばなりません。まず、現在の総所有コスト (TCO) とワークロードの実
行および管理に必要な毎月のコストを確認する必要があります。これらの計算は大部分がわかり
やすく明瞭ですが、一部が見落とされることも少なくないため、注意が必要です。このようなコ
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ハードウェア
ソフトウェア
データセンター
人件費
ビジネスの継続性
直接経費
• サーバー
• ストレージ
• ネットワーク
• メンテナンスおよび
• 仮想化
• ストレージ管理
• セキュリティ
• ファイアウォール
• メンテナンス
• 容量の過剰/不足
• ライフサイクル管理
• 先行投資費用
• 購買費
• 廃棄に関する費用
• テクノロジーのロックイン
• 管理ソフトウェア
• アップグレードの費用
• ライセンス管理
• バックアップの費用
• 購買費
• 法務に関する費用
保証規約
• 設備
• 給料
• スペース
• 給付金
• 電力
• あらゆる負荷に関する
費用
• 冷暖房および換気の空調設備
• 帯域幅
• SLA
• ディザスタ・リカバリ
• 冗長性
別途検討が必要な間接費
• 導入
• スペースの管理
• 契約に関する費用
• 購買費
• 労働稼働率
• 人材採用に関する費用
• IT担当者以外の人材
• トレーニング
• 監査
• コンプライアンス
• 業界固有の規制事項
ストはすべて削減、または排除可能であるため、TCO の算出時にそれぞれを分析に含めること
が大切ですが、一部のコストは算出と測定が難しく、また、多くの場合、コストは分析を行う部
門が直接支払うものではないため、無視されがちです。これに関しては以前、データセンターの
稼働と冷却に投入されていた相当な額の電力コストが、部門のコストとして計上されていなかっ
たために、分析から除外されてしまったというケースがありました。
図3. TCOにおける直接/間接コストの一覧
コストにはさまざまなものがあるため、どこから着手すれば良いのか判断するのは容易ではあり
ません。現在の支出の状況を把握したいのであれば、それを監視しているスタッフにコンタクト
を取ることから始め、設備投資費と運用コストを含む、過去 1 年間の実際の支出を財務チームに
確認しなければなりません。また、ハードウェアをいつ購入したのかを追跡し、サーバー、ソフ
トウェア、およびネットワーク機器をリフレッシュするタイミングを見極めることも必要です。
財務部門には、以下のような点から確認していくのが有効です。
• IT スタッフ
• 各サーバーとそれに関連する保証のコスト
• ネットワーク機器とそれに関連する保証のコスト
• ハードウェアのリフレッシュサイクル
• ストレージコスト
• 設備コスト - 特に電源 / 冷却関連
• ソフトウェアのメンテナンス、アップグレード、およびパッチのコスト
• 継続性に関する要件 - バックアップおよびディザスタ・リカバリ
• これらすべての要素の増大の可能性
お客様の選択したクラウドが、所有す
るデータセンターにおいてサービスを
構築/管理するより低コストでコンピュ
ーティング機能を提供するものであれ
ば、コスト削減効果が得られます。
また、額が小さく測定するのは難しいですが、間接コストも忘れずに計上しなければなりません。
たとえばリストには、スタッフ関連のコスト ( 給料、ボーナス、給付金、交通費、さらに場合に
よっては設備の割り当てなどの各従業員のコスト ) が含まれていますが、従業員の 1 人が退職し
た場合、どのようなことが起きるでしょうか。従業員が退職すれば、後任者を採用してトレーニ
ングを行う必要がありますが、そこに至るまでに、残りのスタッフに負荷がかかり、コストへの
影響が生じる可能性があります。
目指すべきクラウド導入のROIの実現
P7
また、サーバーとネットワーク機器のコストを考慮に入れることをお勧めしていますが、新たに
機器を購入すると必ず、購買および法務部門が関係してくることを忘れてはなりません。こうし
た場合に発生するコストを測定するのは容易ではありませんが、たとえば、管理スタッフの直接
コストに 5% の額を追加するなど、何かしらの妥当な基準を設けておくと良いでしょう。このよ
うにすれば、結果をゆがめることなく、合理的にコストを説明することが可能になります。
現在のコストとクラウドがもたらすコスト削減効果を比較するときは、必ず同等レベルのサービ
スを対象としなければなりません。お客様の IT 環境は、期待通りのパフォーマンスを発揮して
いますか。それともお客様は、目標を迅速に達成するための手段として、クラウドへの移行を検
討していますか。現在よりパフォーマンスが著しく高い、またはコストが相当低いサービスを提
供するクラウドを探しているのであれば、これらのグラフは違ったものとなり、自分自身で同じ
ようなレベルのサービスを再現するのに必要な投資の額を比較しなければなりません。
クラウドの詳細をより正確に把握するには、引き続き新たな分析を行うことが重要で、技術チー
ムがワークロードを最適化するソリューションの構築に関わるようになると、想定やコストが変
わり、ROI にも変化がもたらされることになります。
アプリケーションの管理とビジネスの継続性について考える
これらのコストは主に、基盤となるインフラストラクチャに関わるものですが、インフラストラ
クチャがサポートするアプリケーションを無視することはできません。こうしたアプリケーショ
ンは、必要となるクラウドのタイプとそれに関連するビジネス継続性の要件に大きく影響します。
多くのクラウドベンダーは、アプリケーションを発展させ、全体を as-a-Service モデルで提供す
ることが可能です。こうしたモデルは、先行投資費から設備投資費 (CAPEX)、毎月の運用コス
ト (OPEX) に至るまでの、アプリケーション購入の財務構造を変化させるもので、投資を運用コ
ストに変えるだけでなく、アプリケーションの管理とメンテナンスに伴う継続的なコストにも変
化をもたらします。
マネージドアプリケーションを購入すれば、プロバイダーが管理を行ってくれるため、アップグ
レード、パッチ、およびメンテナンスについて頭を悩ます必要がなくなります。これらのケース
では多くの場合、アプリケーションのコストが高いように思われますが、ハードウェアやその他
のデータセンターのコスト、メンテナンス、アップグレードなど、ライフサイクル全体にわたる
アプリケーションの管理に関連する、すべての要素を考慮することが必要です。
また、多くのクラウドには、データのバックアップとディザスタ・リカバリを含む、ビジネス継
続性の向上に役立つオプションも用意されているため、データやビジネスのニーズに基づいて、
こうしたサービスを利用できるかどうかを調べなければなりません。これにより、自分自身でア
プリケーションを管理する場合と、クラウドプロバイダーを利用する場合のどちらのコスト効果
が高いのかがわかります。
このようなオプションは常に魅力的に感じられますが、コストが増えることにも留意し、どのワー
クロードと関連データでオプションが必要なのかを判断することが重要です。機密情報を扱うア
プリケーションやビジネスクリティカルなアプリケーションは、常に保護して稼働させておく必
要がある一方、必須ではないアプリケーションやワークロードについては、同様の要件を求めら
れません。その一例として、金融機関では、取引用のソフトウェアを 24 時間 365 日稼働させ、
即座にデータを取得できるようにしておかなければなりませんが、お客様の企業の出張 / 経費管
理ソフトウェアは、おそらくこのようなケースに該当しません。
目指すべきクラウド導入のROIの実現
間接的なメリットを把握する
クラウドによるコスト削減効果を見極
めるうえで次に重要となるのが、使用
可能なすべての容量をどの程度使用し
ているか、ということで、その考えは
未使用容量
=
コストの無駄という実に
シンプルなものです。
測定するのは容易ではありませんが、クラウドには間接的なメリットも確かに存在します。大部
分の企業では、クラウドを導入することで、既存の環境より迅速、効率的、かつ非常に柔軟に、
そして低コストでコンピューティング機能を取得し、市場投入期間の短縮、従業員の生産性の強
化、収益拡大の機会、ビジネス継続性の向上といったメリットを実現できます。クラウドが損益
に影響しない場合でも、こうした間接的な要素がクラウドに対する投資に見合う価値をもたらし
ます。
間接的なメリットが決定を左右する主な要因となる最も一般的な状況としては、以下のようなも
のが 挙げられます。
モデルへのビジネスモデ
ルの移行、新たな顧客層のターゲティング、または新製品の発表においては必ず、IT 機能と多
大な先行投資が必要となります。こうしたリスクや不確実性を伴う機会は、先行投資と継続的
な関与が少なくて済むクラウドの魅力を際立たせます。
• 新たな収益の機会̶新規市場の開拓、Software-as-a-Service (SaaS)
• 対象地域の拡大̶新たな地域に参入する場合、データをローカルに配置する新しい IT 機能が必
要となることが多いため、膨大なコストがかかる可能性があります。また、多くの国が独自の
規制要件を設けており、既存の運用では、地域の業界の動向や顧客の要件に対応できない場合
もあります。このようなケースでは、事前の設備投資費が少なくて済むクラウドが、市場への
迅速な参入に大きく貢献します。
• IT 管理のコストとリスク̶データセンターを所有して管理すると、コストがかかり、リスクも
生じます。そのため、サードパーティのクラウドベンダーに費用を支払って管理を任せること
が、最善の選択肢となる場合があります。こうしたアプローチでは、すぐにコスト削減効果が
得られなくても、そのうち、あるいは少なくとも、ビジネスの他の部分に注力することが可能
になります。
• 業界固有のコンプライアンス / 規制要件̶多くの業界では、特定の規制およびコンプライアン
ス要件に準拠することが必須となっており、政府機関への販売に関する規制や HIPAA などに
従わなければなりません。こうした規制や要件に準拠して認定を受けたクラウドサービスプロ
バイダーなら、コンプライアンスに沿った IT 環境を短期間で構築することが可能です。
本書で取り上げた 2 つの要素とグラフに基づいて現状を把握すれば、目指すべきクラウド導入の
ROI を実現し、独自のビジネスケースの構築に向けた、次の段階へと進むことができます。その
ためには、各 IT ワークロードの要件を検討し、最も効果的なクラウドを見極めることが大切です。
詳細情報
hpe.com/services/cloud (英語)
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4AA5-6229JPN、2015年11月、Rev. 3