経営戦略論参考資料(2) 2007年8月3日 ポジショニング・スクールの基礎をなす SCP モデル 業界構造 (structure) 企業行動 (conduct) パフォーマンス (performance) ・競合企業の数 ・製品の均質性 ・参入と退出のコスト ・プライス・テイカー (市場価格を所与とし た行動) ・製品差別化 ・市場支配力を背景と した行動 ・標準的/標準以下/標 準以上 産業構造 企業行動 パフォーマンス 完全競争 プライス・テイキング 標準的 独占的競争 コスト・リーダーシップ 差別化 標準以上 寡占 少数企業による暗黙の協 調行動 標準以上 独占 独占力を価格設定 標準以上 SCPは、経済学の一分野として発展した産業組織論の考え方を要約したものである。各産業は、そ れぞれに特徴的な構造があり、企業行動やパフォーマンスも一様ではないことを明らかにする。 ポーターの戦略の基本類型 競争優位 他社より低いコスト 戦 略 タ ー ゲ ッ ト の 幅 差別化 タ広 ーい ゲ ッ ト 1.コスト・リーダー シップ 2.差別化 タ狭 ーい ゲ ッ ト 3.コスト集中 4.差別化集中 市場の地位と戦略 市場の地位 戦略 リーダー 全方位戦略 チャレンジャー 差別化戦略 ニッチャー 集中化戦略 フォロワー 模倣化戦略 周辺需要拡大戦略 同質化戦略*) 非価格競争 最適シェア維持戦略 *1)同質化戦略は、チャレンジャーがとる差別化戦略に対抗して、類似製品 やせービスを低価格で投入し、チャレンジャーとの差別化戦略を無効にする戦 略である。豊富な経営資源をもつリーダーならではの戦略である。松下電器は、 自らは画期的な新製品を投入せず、他社製品と類似製品を投入しつつ、強力な 販売網を駆使して、トップシェアを確保することが多かった。 ポーターのバリューチェーンと競争戦略 ポーターは、バリュー チェーンの考え方をベー スに、バリューチェーンを 構成する諸活動につい て、一極集中配置と分散 配置の2つのアプローチ を提唱している。一極集 中配置は、それぞれの 活動を最適地に配置す るアプローチであり、分 散配置はバリューチェー ンを構成するすべての活 動を主要市場に移転す るアプローチである。 このいずれかのアプ ローチを採用すれば、企 業は自国市場で構築し た競争優位をグローバ ル市場でも確立できる。 ポーターの戦略論の限界 ~持続的成長のための3方式~ 経営資源 (ヒト、モノ、カネ) 既存の事業の継続 会社の収益基盤であ る事業 新事業への参入 利益率の高い事業の 発見 新事業の創造 競合の存在しない新 事業の創造・古い秩序 の破壊 ポーターの戦略論が着目するのは、経営資源を新事業への参入のケースである。ファイブフォー ス・モデルが有効なのは、当該事業について一定の構造が成立していることが前提になる。会社 の収益基盤である既存事業において利益率を高めるには、トヨタの看板方式に象徴される不断の 業務効率改善のための努力が決め手になる。また、競合が存在しない新事業を創造するためには いかなる経営資源をいかに調達し、どのように育てていくかが決め手になる。 Profit Impact of Market Share (PIMS) ~市場戦略の利益効果の研究~ 1.絶対的・相対的マーケットシェアは、資本利益率(ROI)と強い相関関係にある。 高いシェアを誇る企業ほど規模の経済や経験効果が働き、市場での影響力が強 く、優れた経営手腕を持つため、収益性が高くなる。 2.市場成長率とROIは正の相関関係がある(高い市場成長率は、高ROIをもた らす)。 3.垂直統合は、製品ライフサイクルの後半期(市場成長率が減速またはマイナ スの局面)で有利になる。また、後方統合より、前方統合の方が利益率は高い。 4.資本集約的な企業では、稼働率が重要になり、シェアの小さな企業ほど影響 を受けやすい。 BCGポートフォリオ分析とGEのビジネススクリーン -- -- ←産業の魅力度 -- -- -- <産業の魅力度> 普通 低 ○ライフサイクル: 成長期、成熟期、衰退期 ○市場要因: 規模、成長率、安定度、細分化度 積極的投資 選択的投資 現状維持 ・最大限投資せよ ・投資の重点化企画 ・強みを維持せよ ・市場の優位性強化 ・高シェアを武器に稼げ ・魅力的分野以外縮小 ・多様化、国際化 -- ・産業回復性再評価 ・利益抑制 -- -- 挑戦的投資 普 の ・強みを活用せよ 通 強 ・主導権確保策明確に み ・強み避け、弱み把握 革新策検討 再建策検討 ・セグメント化をはかれ ・投資を中止せよ <自社の強み> ・弱点知り対策準備 ・撤退、高収益部門へ ○販売力: 知名度、固定客、宣伝力、販売網、統制力 -- -- ○技術力: 特許、生産技術、工法、工程、品質、デザイ ン 進出好機待 減量・合理化 合理的撤退 ○資源: 資金力、人材力、原材料確保力、下請け管理 力 高 ↑ -- 高 自 社 低 ・市場の伸びに乗れ ・魅力ある部門強化 ・投資縮小、守り体制 ・撤退、不要物を除去 ・好機あれば販売強化 ・評価最大タイミング検討 ・強み強化の好機把握 ・好機あれば強み強化 -- ○競争状態: 競争の強弱、参入の難易度、垂直統合の 程度 ○収益性: ROI ○労働生産性: 労働者一人当たり付加価値生産額 ○環境条件: 公害、労働安全性 ○収益力: 限界利益、ROI、キャッシュフロー ○競争力: マーケットシェア アンソフの成長ベクトルと多角化戦略 製品の軸 市 場 の 軸 現製品 新製品 現市場 市場浸透 製品開発 新市場 市場開拓 多角化 ルメルトの多角化理論 関 連 本業中心型 非関連型 垂直型 関連型 専業型 比 率 専門化率 ポーターの戦略論は、ア ンゾフの成長ベクトルに おける市場浸透のみに着 目した戦略論である。 アンゾフの成長戦略と多角化 シナジー効果 生産シナジー 販売シナジー 多角化の動機 主力製品の需要停滞 収益の安定性 投資シナジー 経営管理シナジー リスク分散 遊休不稼動資産の活用 組織スラック*)活用 多角化の類型 製品多角化 水平型 垂直型 経営多角化 多角化の方法 類似タイプの市場 集中型 新しい市場・技術的関連性なし 集成型 R&D 合弁・提携 合併・買収(M&A) 系列化・グループ化 組織スラック:組織に生じた緩み(slack)をいう。一定のパフォーマンスを達 成するに必要な経営資源を抱えている状況を意味する。組織が発展・成長し ていく上では、ある程度の組織スラックは必要と考えられ、組織スラックは 成長過程で吸収される。しかし、持続的成長を他姓で着ない場合には、組織 スラックは非効率の深刻な原因になる。 ソフトバンクの事業展開 JT(日本たばこ)の事業ポートフォリオ 成長と安定の高次のバランスを実現するため、既存事業の競争力を一層強化すると共に、 選択と 集中の観点から事業ポートフォリオの組み替えに挑戦し、企業の活力を高めます。 ●真に JT の強みを発揮するため、資源配分に際しては、重点化、集中化を常に念頭に置く。 ●ポートフォリオ(※)上の必要性の乏しくなった事業、環境変化の中で将来性・発展性の見込めない 事業については、撤退することに躊躇しない。 ●事業単位の有機的統合により、より高い付加価値の創出を目指す。 ●起業を通じた組織活性化の観点から、社内ベンチャー制度への再度の取り組みを検討する。 ※ポートフォリオ…事業の重要性を加味した組み合わせ
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