Document

ミクロ経済学
(10) 競争の望ましさ
丹野忠晋
跡見学園女子大学マネジメント学部
2012 年6月18日
復習


意志決定や消費スタイルを変更する時間
短期的には行動を変えることは難しい

長期的には他の用途を用いて代替することが可
能

長期供給曲線は全ての生産要素が可変的な時の
供給曲線
課税によって供給曲線は上にシフトする
有効な上限価格は不足をもたらす
有効な下限価格は余剰をもたらす
上限金利と最低賃金の効果は限定的




2012/6/18
ミクロ経済学 10
2
今日学ぶこと
1.
2.
3.
4.
経済全体の取引による利益はなんだろう
消費者余剰
生産者余剰
経済厚生
2012/6/18
ミクロ経済学 10
3
お買い得感を需要曲線で表す

前から気に入っていた洋服がバーゲンで安く売
っていた!お買い得で嬉しい.

人々は財に異なった満足度を得るが支払う価
格は同じ.取引をした後の満足度は?

実際に価格を支払ったときの財からの満足度
の残り.残りを余剰という.

洋服が5000円までだったら買ってもよいと思っ
ていたらバーゲンで3000円で売られていた.こ
の満足度 5000-3000=2000 が消費者余剰
2012/6/18
ミクロ経済学 10
4
アイスショーへの支払意欲

5000円を支払うつもりが支払意欲(支払許容額)だ

ある財の支払意欲とは,それ以下の価格なら一単
位購入する.しかし,それを上回れば購入しない
という金額を表している.価格が支払い意欲と同
額ならば買っても買わなくても良いと思っている

イチローはアイスショーを一回見るか見ないかを
検討している.イチローの一回のアイスショーの
視聴に対する支払意欲は10,000円としよう

アイスショー価格が7,000円ならば見る.12,000円
ならば見ない
2012/6/18
ミクロ経済学 10
5
支払意欲から需要表を作る
もしイチローが価格7000円でアイスショーのチケ
ットを購入したら
10000-7000=3000
 支払意欲から購入価格を差し引いた3000円がイチ
ローが得る消費者余剰だ

イチロー以外にも石川遼,ダルビッシュ,北島康
介がアイスショーを見ようと考えている
 ダルビッシュの支払意欲は8000円,石川遼は5000
円,北島は4000円.
 価格7000円ならばイチロー、ダルビッシュ購入

2012/6/18
ミクロ経済学 10
6
買い手
2012/6/18
支払意欲(円)
イチロー
10000
ダルビッシュ
8000
石川遼
5000
北島康介
4000
ミクロ経済学 10
7
消費者余剰

消費者余剰は取引をした後の満足度を表す

実際に価格を支払ったときの財からの支払い意欲
の残り(余剰)

正確には支払ってもよいと考えている金額から実際
に支払った金額を差し引いた値が消費者余剰
消費者余剰=支払い意欲ー価格
英語で Consumer Surplus と言う
CS と略す
支払い意欲のグラフから消費者余剰を図示しよう




2012/6/18
ミクロ経済学 10
8
支払い意欲のグラフ
支払い意欲(円)
イチローの支払い意欲
ダルビッシュの支払い意欲
10000
石川遼の支払い意欲
北島康介の支払い意欲
8000
5000
4000
3000
枚数
1
2012/6/18
2
3
4
5
ミクロ経済学 10
9
アイスショーのチケットは何枚売れる
価格が低ければ沢山売れる
 価格<支払い意欲 → 購入
 価格>支払い意欲 → 購入しない
 実際に売れる枚数 → 価格=支払い意欲
 価格が7000円だったら何個食べる?

2012/6/18
ミクロ経済学 10
10
支払い意欲のグラフ
支払い意欲(円)
2枚まで売れるだろう
10000
8000
価格は7000円
5000
4000
3000
3枚目までは売れない
枚数
1
2012/6/18
2
3
4
5
ミクロ経済学 10
11
支払い意欲のグラフ
支払い意欲(円)
支払い意欲イコール価格は
購入量を表す
支払い意欲は需要曲線
と同じ機能を持っている
10000
8000
価格は7000円
5000
4000
3000
購入量
枚数
1
2012/6/18
2
3
4
5
ミクロ経済学 10
12
支払い意欲のグラフ
支払い意欲(円)
イチローの支払い意欲
ダルビッシュの支払い意欲
10000
8000
7000
5000
価格は7000円
4000
3000
需要量
枚数
1
2012/6/18
2
3
4
5
ミクロ経済学 10
13
消費者余剰のグラフ
支払い意欲(円)
イチローの消費者余剰=10000-7000=3000
ダルビッシュの消費者余剰
=8000-7000=1000
価格は7000円
10000
8000
7000
5000
4000
3000
需要量
枚数
1
2012/6/18
2
3
4
5
ミクロ経済学 10
14
需要曲線(価格から数量へ)
価格
P
需要曲線
数量
Q
2012/6/18
ミクロ経済学 10
15
需要曲線=支払い意欲曲線






最後の一個の意欲と費用は同じだが購入する
と考えていく
価格と支払い意欲が一致している個数を購入
価格=支払い意欲→購入量
これは需要曲線と同じ
価格に対して購入しようとする数量
支払い意欲曲線は各数量から1単位増えたと
きに支払っても良い金額
2012/6/18
ミクロ経済学 10
16
支払い意欲と需要曲線
価格(円)
10000
8000
需要曲線
5000
4000
3000
枚数
1
2012/6/18
2
3
4
5
ミクロ経済学 10
17
需要曲線と消費者余剰
価格(円)
需要曲線
10000
消費者余剰
8000
7000
5000
価格は7000円
4000
3000
枚数
1
2012/6/18
2
3
4
5
ミクロ経済学 10
18
消費者余剰


支払ってもよいと考えている金額から実際に支払
った金額を差し引いた値
金額を面積で表す=△ABCの面積
価格
A
価格 P
消費者余剰
B
需要曲線
C
数量
Q
2012/6/18
ミクロ経済学 10
19
総消費者余剰
市場全体の消費者余剰は総消費者余剰と呼ば
れる
 普通の消費者余剰は正確には個別消費者余剰

消費者余剰は個別消費者余剰と総消費者余剰
の両方の意味でしばしば使われる
 どちらなの自分で判断

2012/6/18
ミクロ経済学 10
20
供給側の余剰の表現
生産や財の供給する側の取引による利益をどう
表現するか
 これも同じく余剰概念で考える
 費用と便益の比較

1. 取引する財を手放す事によって収入を得る
2. 財を生産するとき費用がかかる
2012/6/18
ミクロ経済学 10
21
生産者余剰





生産者余剰とは実際にその市場で営業している
企業の利益を表します
利潤と似通った概念.だが少し違う.
生産者余剰 Producer Surplus
PSで略
生産者余剰とは収入から費用を差し引いた額を
表す
2012/6/18
ミクロ経済学 10
22
生産者余剰


財の販売と引き替えに得られる金銭が収入
収入=価格×数量
2012/6/18
ミクロ経済学 10
23
供給曲線と生産者余剰

固定費用が0の企業,可変費用のみ

限界費用とは生産量が1単位増加したときの
費用の増加分
限界費用曲線は(ほぼ)供給曲線である

 あとで学ぶ.今はそのようなものだと見なす

苺大福生産の限界費用を考えよう
2012/6/18
ミクロ経済学 10
24
限界費用の例
2012/6/18
生産量
限界費用
1
2
3
80
90
110
4
140
ミクロ経済学 10
25
限界費用曲線
限界費用
限界費用4
限界費用3
限界費用2
限界費用1
140
110
90
80
個数
1
2012/6/18
2
3
4
ミクロ経済学 10
26
限界費用と可変費用

1.
2.
限界費用と可変費用の2つの重要な関係
ある生産量の可変費用は,1単位前の可変費
用にそこから1単位生産量を増やしたときの限
界費用を加えたもの
ある生産量の可変費用は,その生産量までの
限界費用をすべて加えたもの
2012/6/18
ミクロ経済学 10
27
可変費用と限界費用
生産量
限界費用
可変費用
0
1
2
80
90
0
80
170
3
110
280
4
140
420
可変費用に限
界費用を加え
ると次の可変
費用になる
0+80=80
80+90=170
170+110=280
80+90+110=280
2012/6/18
ミクロ経済学 10
28
限界費用曲線
限界費用
それに限界費用4を加え
ると生産量4の可変費用
=280+140
=420
この色の面積が
生産量3の可変
費用=280
140
限界費用4
110
90
80
個数
2012/6/18
1
2
3
4
ミクロ経済学 10
29
限界費用曲線=供給曲線
限界費用,価格
供給量は4単位
140
110
90
価格が140円
80
個数
1
2012/6/18
2
3
4
5
ミクロ経済学 10
30
限界費用曲線=供給曲線/2


限界費用曲線は供給曲線でもある
利潤最大化条件
限界費用=価格

限界費用=価格 → 企業の望ましい生産量
2012/6/18
ミクロ経済学 10
31
限界費用曲線=供給曲線/3
限界費用,価格
供給曲線
価格
140
110
90
80
個数
2012/6/18
1
2
3
4
ミクロ経済学 10
数量
32
供給曲線
限界費用,価格
供給量は4単位
140
110
90
価格が140円
80
個数
2012/6/18
1
2
3
4
ミクロ経済学 10
33
供給曲線と収入
限界費用,価格
この面積が収入
供給量は4単位
価格が140円
140
110
90
収入=価格×数量
80
個数
2012/6/18
1
2
3
4
ミクロ経済学 10
34
供給曲線と収入/2
価格
供給曲線
140
四角の面積=収入
110
90
80
数量
2012/6/18
1
2
3
4
ミクロ経済学 10
35
供給曲線と可変費用
価格
供給曲線
140
台形の面積=可変費用
110
90
80
数量
1
2012/6/18
2
3
4
ミクロ経済学 10
36
生産者余剰=収入ー可変費用
収入
=
2012/6/18
-
可変費用
生産者余剰
ミクロ経済学 10
37
供給曲線と生産者余剰
価格
生産者余剰
供給曲線
140
110
90
80
数量
2012/6/18
1
2
3
4
ミクロ経済学 10
38
総生産者余剰
市場全体の生産者余剰は総生産者余剰と呼ば
れる
 普通の生産者余剰は正確には個別生産者余剰

生産者余剰は個別生産者余剰と総生産者余剰
の両方の意味でしばしば使われる
 どちらなの自分で判断

2012/6/18
ミクロ経済学 10
39
消費者と生産者余剰
価格
供給曲線
消費者余剰
140
生産者余剰
110
90
需要曲線
80
数量
1
2012/6/18
2
3
4
ミクロ経済学 10
40
経済厚生


経済厚生あるいは総余剰とは取引をしている全
ての主体の望ましさ
経済厚生は消費者余剰と生産者余剰の和

政府がある場合はそれに政府税収をさらに加
える

需要曲線と供給曲線の交わる点である完全競
争市場の均衡では経済厚生が最大化される
2012/6/18
ミクロ経済学 10
41
余剰と経済厚生のまとめ





消費者余剰は取引による消費者の利益
生産者余剰は取引による生産者の利益
消費者余剰は需要曲線と水平な価格線の間
生産者余剰は供給曲線と水平な価格線の間
経済厚生は消費者余剰と生産者余剰の和
2012/6/18
ミクロ経済学 10
42