経済学とは何か - 日本大学経済学部

第6章 生産の決定
6.1 利潤の最大化
■ 利潤
利潤 = 売上 - 生産の総費用
p = py - c(y)
(生産物の市場価格p=10 の場合)
生産量
y
1
2
3
4
5
6
7
8
9
売上
py
10
20
30
40
50
60
70
80
90
総費用
c(y)
6
9
14
21
30
41
54
69
86
4
11
16
19
20
19
16
11
4
利潤
p
ミクロ経済学(Ⅰ)
1
6.1 利潤の最大化
収入関数
c
費用関数 c(y)
(短期の場合)
py
利潤は総収入(total revenue 略
TR)と総費用TCの差として表され
る。
生産物の市場価格: p
収入関数: py
費用関数: c(y)
利潤関数: 利潤=総収入-総費用
p =py-c(y)
利潤最大化:
dp/dy =p-dc(y)/dy =0
∴ p=dc(y)/dy = MC
生産物の価格=限界費用
e
f
p
0
MC
p
MC
p
F
0 y**
ミクロ経済学(Ⅰ)
y
E
y*
y
2
6.1 利潤の最大化
収入関数
c
費用関数 c(y)
(短期の場合)
py
利潤最大化ための必要条件:
p=dc(y)/dy =MC
生産物の価格=限界費用
もし,y < y* ならば, p > dc(y)/dy
py 
c( y )
 y
y
収入の増加 > 費用の増加
生産を拡大する。
e
f
p
0
MC
p
MC
p
F
0 y**
ミクロ経済学(Ⅰ)
y
E
y*
y
3
6.1 利潤の最大化
収入関数
c
費用関数 c(y)
(短期の場合)
py
利潤最大化ための必要条件:
p=dc(y)/dy =MC
生産物の価格=限界費用
もし, y > y*ならば, p < dc(y)/dy
py 
c( y )
 y
y
収入の増加 < 費用の増加
生産を縮小する。
e
f
p
0
MC
p
MC
p
F
0 y**
ミクロ経済学(Ⅰ)
y
E
y*
y
4
6.1 利潤の最大化
収入関数
C
費用関数 c(y)
(短期の場合)
py
最大利潤
利潤最大化ための必要条件:
p=dc(y)/dy =MC
生産物の価格=限界費用
故に,企業は p=dc(y)/dy の方向に
産出量を調整し,利潤を最大にする
ような産出量を決定するのである。
E点は安定均衡点である。
最大利潤p*=TR*-TC*
e
f
p
0
MC
p
MC
AC
p
F
総収入TR*=p・y*
総費用TC*=AC(y*)・y*
E
C
0 y**
ミクロ経済学(Ⅰ)
y
y*
y
5
6.1 利潤の最大化
収入関数
c
費用関数 c(y)
(短期の場合)
py
利潤最大化ための必要条件:
p=dc(y)/dy =MC
生産物の価格=限界費用
F点では,p=dc(y)/dy である。
しかし,y > y** ときに, p > dc(y)/dy
であるので,生産を拡大すれば,
e
f
p
0
MC
p
MC
収入の増加 > 費用の増加
である。
p
F
0 y**
ミクロ経済学(Ⅰ)
y
E
y*
y
6
6.1 利潤の最大化
収入関数
c
費用関数 c(y)
(短期の場合)
py
利潤最大化ための必要条件:
p=dc(y)/dy =MC
生産物の価格=限界費用
F点では,p=dc(y)/dy である。
逆に,y < y** ときに, p < dc(y)/dy で
あるので,生産を縮小すれば,
e
f
p
0
MC
p
MC
収入の減少 < 費用の減少
である。
p
F
0 y**
ミクロ経済学(Ⅰ)
y
E
y*
y
7
6.1 利潤の最大化
収入関数
c
費用関数 c(y)
(短期の場合)
py
利潤最大化ための必要条件:
p=dc(y)/dy =MC
生産物の価格=限界費用
e
f
p
0
MC
従って,F点不安定均衡点である。
y
p
実際に,F点は利潤最小産出量であり, MC
損失(赤字)最大産出量である。
p
F
0 y**
ミクロ経済学(Ⅰ)
E
y*
y
8
6.1 利潤の最大化
収入関数
c
費用関数 c(y)
(短期の場合)
py
利潤最大化ための必要条件:
p=dc(y)/dy =MC
生産物の価格=限界費用
e
f
p
0
利潤最大化ための十分条件:
d 2C ( y)
0
2
dy
MC
p
MC
p
F
0 y**
ミクロ経済学(Ⅰ)
y
E
y*
y
9
6.1 利潤の最大化
産出物の価格 p=105 時に,
利潤最大化ための必要条件:
p=MC
105 =3y2-32y+94
3y2-32y-11=0
(3y+1)(y-11)=0
y=11
y=-1/3(棄却)
(短期の場合)
固定費用: FC=162
可変費用: VC=y3-16y2+94y
費用関数: TC = 162+ y3-16y2+94y
平均費用: AC = c(y)/y = 162/y+ y2-16y+94
限界費用: MC = dc(y)/dy = 3y2-32y+94
平均可変費用: AVC =VC/y =y2-16y+94
生産量
y
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
ミクロ経済学(Ⅰ)
平均費用
AC
86.50
71.40
61.00
54.14
50.25
49.00
50.20
53.73
59.50
67.46
77.57
89.80
限界費用
MC
14
9
10
17
30
49
74
105
142
185
234
289
平均可変費用
AVC
46
39
34
31
30
31
34
39
46
55
66
79
AC,MC
140
120
p=105
100
80
60
40
20
y
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12 13 14
10
第6章 生産の決定
6.1 利潤の最大化 (短期の場合)
損益分岐点
■ 操業停止点と損益分岐点
p
価格が上昇するとき:p→p'
均衡点: E→E'
利潤が増加し,生産は拡大する。
p'
価格が下落するとき:p→p"
均衡点: E→B
利潤≧0,生産は縮小する。
p
p"
p*
価格がさらに下落すると: p *< p < p"
利潤 < 0 ,可変費用の回収まだできる
ので,生産は縮小して続ける。
価格が p* まで下落すると
均衡点: S
利潤 < 0 ,可変費用の回収もできなく
なるので,生産は停止する。
ミクロ経済学(Ⅰ)
MC
E'
AC
AVC
E
B
S
0
y
操業停止点
損益分枝点: p=MC=AC
操業停止点: p=MC=AVC
11
第6章 生産の決定
6.2 供給曲線(短期の場合)
供給曲線
■ 企業の供給曲線
p
供給曲線 supply curve
価格 <
p*
⇒
価格 ≧
p*
⇒
MC
産出量=0
p'
産出量 > 0
p
p"
p*
限界費用曲線の平均可変費
用曲線より上方の部分が供給
曲線になる。
0
E'
AC
AVC
E
B
S
y
供給関数: y= y(p)
ミクロ経済学(Ⅰ)
12
第6章 生産の決定
6.3 市場の供給曲線
■ 短期の市場の供給曲線
A企業の供給曲線
p
p
SB
SA
0
ミクロ経済学(Ⅰ)
y
市場の供給曲線
B企業の供給曲線
0
y
p
0
y
13
第6章 生産の決定
6.3 市場の供給曲線
p
■ 供給曲線のシフト
MC*
MC
AVC*
限界費用曲線の平均可変費用曲
線より上方の部分が供給曲線になる。
例えば,可変的生産要素の価格
w1が(w1+Δw)まで上昇した。
企業の限界費用曲線と平均可変
費用曲線が上方へシフトするので,
短期の供給曲線も上方へシフトする。
AVC
S'
S
0
w1上昇前
可変費用:VC=w1g(y)
総 費 用:c(y)=w1g(y)+FC
限界費用:MC=w1dg(y)/dy
平均可変費用:AVC=w1g(y)/y
ミクロ経済学(Ⅰ)
供給曲線
y
w1上昇後
可変費用: VC*=(w1+Δw)g(y)
総 費 用:c(y)*=(w1+Δw)g(y) +FC
限界費用:MC*=(w1+Δw)dg(y)/dy
平均可変費用:AVC*=(w1+Δw)g(y)/y
14
第6章 生産の決定
6.3 市場の供給曲線
■ 供給曲線のシフト
p
限界費用曲線の平均可変費用曲
線より上方の部分が供給曲線になる。
例えば,可変的生産要素の価格
w1が(w1+Δw)まで上昇した。
企業の限界費用曲線と平均可変
費用曲線が上方へシフトするので,
短期の供給曲線も上方へシフトする。
0
y
技術進歩により,同じ生産量を産出するための可変要素の投入量が
減少した場合に,企業の限界費用曲線と平均可変費用曲線が下方へシ
フトするので,短期の供給曲線も下方へシフトする。
ミクロ経済学(Ⅰ)
15
第6章 生産の決定
6.3 市場の供給曲線
■ 生産者余剰
生産者余剰=収入-可変費用
=(収入-可変費用-固定費用)+固定費用
=利潤+固定費用
=粗利潤
p
供給曲線
生産者余剰
p1
可変費用
ミクロ経済学(Ⅰ)
0
y1
y
16
第6章 生産の決定
6.3 市場の供給曲線
■ 生産者余剰
A社の
生産者余剰
p
市場全体の
生産者余剰
A社+B社の
供給曲線
B社の
生産者余剰
p
p
A社+B社の
生産者余剰
市場の
供給曲線
p1
0
ミクロ経済学(Ⅰ)
y
0
y
0
y
17
第6章 生産の決定
6.3 市場の供給曲線
■ 供給の価格弾力性 price elasticity of supply
生産物価格の変化に応じて供給の反応を表す指標である。
供給の価格弾力性es = 供給量の変化率 / 価格の変化率

 y2  y1 
 p2  p1 
p
y1 y y1 y p1


 あるいは p1 p p1 p y1

y p1
y


p
p y1
y1
p1
y/p
y/p
p2
p1
p
A
y
G
C
0
ミクロ経済学(Ⅰ)
y1
y2
y
y GC

p AG
p1 AG

y1 OG

y p1 GC AG GC




p y1 AG OG OG
18
第6章 生産の決定
6.3 市場の供給曲線
■ 供給の価格弾力性 price elasticity of supply
生産物価格の変化に応じて供給の反応を表す指標である。
供給の価格弾力性es = 供給量の変化率 / 価格の変化率

p
p1
 y2  y1 
 p2  p1 

y1 y y1 y p1


 あるいは p1 p p1 p y1
GC
1
OG
p
0
ミクロ経済学(Ⅰ)
 1
y p1
y


p
p y1

p
y1
p1
GC
1
OG
A
p1
G
C

y1
A
C
G
y
0
A
p1
y1
y
0
G
y1
y
19
第6章 生産の決定
6.3 市場の供給曲線
■ 供給の価格弾力性 price elasticity of supply
生産物価格の変化に応じて供給の反応を表す指標である。
供給の価格弾力性es = 供給量の変化率 / 価格の変化率

 y2  y1 
 p2  p1 
y1 y y1 y p1


 あるいは p1 p p1 p y1
弾力的供給曲線

y p1
y


p
p y1
y1
p1
非弾力的供給曲線
p
p
p1
p1
p2
0
ミクロ経済学(Ⅰ)
p2
y2
y1
y
0
y2 y1
y
20
循環構造
民間部門経済循環の流れ
circular flow
p
p
需要
支出
0
賃
金
w
0
ミクロ経済学(Ⅰ)
消費財市場
供給
収入
0
x
(
価
格市
がメ場
働カ
くニ機
ズ構
ム
)
家 計
所得
供給
生産用役市場
y
企 業
費用
需要
労働供給H
財・サービスの流れ
貨幣の流れ
21
第6章 生産の決定
極めて短期間での市場調整:
生産増大の時間的余裕はないため
,供給量は価格によっては左右されな
い一定量である。
一時的均衡
D'
p
S
D
供 給 曲 線 : S =x*(一定)
この場合に,需要の増大による需要 p*'
曲線の上方へシフトは,価格の高騰
p*
のみもたらす。
均
E'
E
衡 点 : E → E'
均衡取引量: x* (一定)
0
x*
x
均 衡 価 格 : p* → p*'
ミクロ経済学(Ⅰ)
22
第6章 生産の決定
もう少し長い期間の市場調整:
生産増大ために,設備や新工場な
ど固定費用の投資し間に合わないが
,人手増加など可変費用の投入を増
加することができる。
短期均衡
D'
p
S
D
供 給 曲 線 : 右上がり
この場合に,需要の増大による需要
曲線の上方へシフトは,均衡取引量と
均衡価格の上昇をもたらす。
均
衡 点 : E → E'
均衡取引量:
x*
→
x*'
E'
p*'
p*
0
E
x* x*'
x
均 衡 価 格 : p* → p*'
ミクロ経済学(Ⅰ)
23
第6章 生産の決定
長期の市場調整
長期では,企業の固定費用が存在せずに,新規企業の参入も自由な
ので,企業の総数は固定していない。
企業の長期総費用は,固定費用を含まないので,平均費用と平均可
変費用は同じものになる。損益分岐点と操業停止点は同じになる。
6.3 市場の供給曲線 ■ 産業の長期均衡
p
長期でも,価格と限界費用が等し
い水準の生産量で,利潤が最大化
される。 p=LMC
生産物価格=p のときに,
企業の最適産出量=y0
収入
企業の超過利潤
費用
0
=(LMC-LAC)y > 0
ミクロ経済学(Ⅰ)
p
LMC
E
LAC
利 潤
B
0
y0
y
24
第6章 生産の決定
6.3 市場の供給曲線
■ 産業の長期均衡
もし,この産業で正の利潤が得られるなら,新規企業が参入し続け,
市場全体の供給が増え,市場の均衡価格が下落し続ける。企業の利
潤が消滅する水準pL(=平均費用の最小値)まで市場価格は下がって
,新規企業の参入が止まる。このような状態を産業の長期均衡と呼ぶ。
p
S
D
p
LMC
S'
p
E
B
pL
0
p
Y0
Y*
pL
Y
0
E
LAC
利 潤
B
y*
y0
y
25
第6章 生産の決定
6.3 市場の供給曲線
■ 産業の長期均衡
産業の長期均衡において,市場価格はpLになり,代表的な企業の生
産は最適規模のy*となる。産業全体の総供給量Y*が決まり,産業内の
企業数はY*/y*となる。
また,代表的な企業は p=LMC=LAC の状態になっている。
p
p
D
LMC
S'
LAC
pL
0
B
Y*
pL
Y
0
B
y*
y
26
循環構造
民間部門経済循環の流れ
circular flow
p
p
需要
支出
0
賃
金
w
0
ミクロ経済学(Ⅰ)
消費財市場
供給
収入
0
x
(
価
格市
がメ場
働カ
くニ機
ズ構
ム
)
家 計
所得
供給
生産用役市場
y
企 業
費用
需要
労働供給H
財・サービスの流れ
貨幣の流れ
27
第8章 要素価格と所得分配
8.1 要素価格の決定
■ 要素需要曲線
市場価格: 生産物の価格 p
生産要素1の価格 w1
生産要素2の価格 w2
利潤関数: p=py-(w1x1+w2x2)
生産曲面の制約: y=f(x1, x2)
利潤p=pf(x1, x2)-(w1x1+w2x2)
利潤最大化:
第i 要素の限界生産
p
f
f
0  p
 w1  0  p
 w1
x1
x1
x1
p
f
f
0  p
 w2  0  p
 w2
x2
x2
x2
要素投入の利潤最大化ための条件:
第i 要素の限界生産価値
第i 要素の限界生産価値 = 第i 要素の価格
ミクロ経済学(Ⅰ)
第8章 要素価格と所得分配
8.1 要素価格の決定
■ 要素需要曲線
市場価格: 生産物の価格 p
生産要素1の価格 w1
生産要素2の価格 w2
要素投入の利潤最大化ための条件: p
要素の限界生産物価値=要素の価格 wi
要素の限界生産物が逓減であれば,要素
の限界生産物価値も逓減する。
f
 wi 
xi
pMPi  wi
wi'
pMPi > wi のとき:
pMPi
要素投入量を増やして生産を拡大する。p↑
pMPi < wi のとき:
要素投入量を減らして生産を縮小する。 p↑
ミクロ経済学(Ⅰ)
MPi
0
xi'
xi
29
第8章 要素価格と所得分配
8.1 要素価格の決定
■ 要素需要曲線
市場価格: 生産物の価格 p
生産要素1の価格 w1
生産要素2の価格 w2
要素投入の利潤最大化ための条件: p
要素の限界生産物価値=要素の価格 wi
wiが上昇するとき:
要素投入量は減少する。
wiが下落するとき:
要素投入量は増加する。
生産要素の需要曲線
生産要素の価格に応じて,企業が利
潤を最大化するような行動で決定される
生産要素の需要量である。
ミクロ経済学(Ⅰ)
f
 wi 
xi
pMPi  wi
生産要素の需要曲線
(右下がりの曲線)
wi"
wi'
wi"'
pMPi
0
xi"
xi'
xi"'
xi
30
第8章 要素価格と所得分配
8.1 要素価格の決定
■ 要素需要曲線
市場価格: 生産物の価格 p
生産要素1の価格 w1
生産要素2の価格 w2
要素投入の利潤最大化ための条件: p
要素の限界生産物価値=要素の価格 wi
それぞれの生産要素の価格w1 とw2 ,
および生産物価格pの下で,企業は利潤
を最大化するように生産要素の投入量
x1 とx2 を決定し,同時に,それらの投入
要素量の下での最大可能な産出量yも
決定される。
供給関数:
y = f (p, w1, w2)
f
 wi 
xi
pMPi  wi
生産要素の需要曲線
(右下がりの曲線)
wi'
pMPi
0
xi'
xi
要素需要関数: xi = gi(p, w1, w2)
ミクロ経済学(Ⅰ)
31
循環構造
民間部門経済循環の流れ
circular flow
p
p
需要
支出
0
賃
金
w
0
ミクロ経済学(Ⅰ)
消費財市場
供給
収入
0
x
(
価
格市
がメ場
働カ
くニ機
ズ構
ム
)
家 計
所得
供給
生産用役市場
企 業
賃
金
w
費用
需要
労働供給量
財・サービスの流れ
y
0
貨幣の流れ
労働需要量
32