鹿児島大学/愛媛大学 宇宙電波天文学特論 第11回 天の川銀河の測距とガス分布 半田利弘 鹿児島大学 大学院理工学研究科 物理・宇宙専攻 Mellinger 第1部 天体距離測定と年周視差 Mellinger 天体までの距離を測る ▶ 5つの原理 三角視差 反射時間 大きさ 明るさ 系統的運動 ▶ 距離梯子:2つを相互に利用 ■ ■ 天体の性質の解明 天体距離の推定 Mellinger 年周視差 Mellinger 4 電波干渉計 ▶ 2つの電波信号を干渉させ方向を測定する Mellinger 乗算型電波干渉計(1) ▶ 同じ電波信号を2ヵ所で受ける ■ ■ アンテナ1 Y1= A(q) exp(iwt) アンテナ2 Y2= A(q) exp[i{wt-(2pd sinq/l)}] ここで、光路差D=d sinq/lを用いた ▶ 相互相関を求める ■ ■ <Y1 Y2* >=|A(q)|2 exp(2pid sinq/l) ≒|A(q)|2 exp(2pid q/l)=|A(q)|2 exp(2piuq) d/l 基線長dで変えられる→干渉計のu,v成分 uの関数である。 V(u):visibility u= Mellinger 乗算型電波干渉計(2) ▶ visibilityから画像へ ■ V(u)=|A(q)|2 exp(2piuq)=T(q) exp(2piuq) 輝度は電磁波振幅の2乗に比例するので置き換えた エネルギー流束はS=E×H Maxwell方程式よりHとEとは直交し、大きさは比例 ► 自由空間での電磁波の場合 ■ ■ ■ いろいろな方向から来る電波の重ね合わせ V(u)=∫T(q) exp(2piuq) dq visibilityはbrightnessの逆Fourier変換である Mellinger 乗算型電波干渉計(3) ▶ VisibilityをFourier変換=brightness分布 ■ ■ ∫ V(u) e-2piuq du= ∫∫T(q ') e2piu(q ' -q) dq 'du = ∫T(q ') d(q '-q ) du=T(q) ▶ dirty beam ■ ■ ■ 実際は離散的なuでの測定しかない いろいろな問題が起こる コンピュータ画像処理で“うまくやる” CLEAN, MEM Mellinger visibilityの測定(1) ▶ 複素数表示では納得がいかない人のために ■ ■ アンテナ1 Y1= A(q) cos(wt) アンテナ2 Y2= A(q) cos(wt-2pu sinq) ▶ 積を作ると Y1 Y2=A2 cos(wt){cos(wt)cos(2puq)+sin(wt)sin(2puq)} = A2cos2(wt)cos(2puq )+cos(wt)sin(wt)sin(2puq) =A2 [{cos(2wt)+1} cos(2puq )+ sin(2wt)sin(2puq)]/2 ▶ 時間平均を取る 1/T(∫ Y1 Y2 dt)でT→∞ このとき、 1/T{∫ sin(2wt) dt}→0, 1/T{∫ cos(2wt) dt}→0 Mellinger visibilityの測定(2) ▶ 長時間平均すると ■ ■ <Y1Y2>=A2 [cos(2puq )]/2 実部は実測可能である! ▶ 虚数部は? ▶ Y2をp/2だけ遅らせる(光路長をl/4増やす) Y2= A(q) cos{wt-2pu sinq -p/2}となる * ■ ここから計算すると<Y1Y2 >の虚数部が得られる ■ Mellinger ▶ レポート課題:各自計算で確かめてみよ VERA ▶ 年周視差測定用VLBI専用望遠鏡システム ▶ 大気の影響を補正 ■ 位置較正天体(Quasar)も同時観測 Max 2300 km Mellinger 11 第2部 運動学的距離 Mellinger 運動学的距離 ▶ 仮定:銀河面内を等速円運動 ■ ■ ■ ■ 位置と視線速度の関係 vr=Q (R)sinq -Q0 cos l R0 sin l = R cos q 解くと R=R0 sin l [1-(vr+ Q0 cos l)2/Q (R) 2]-1/2 flat rotationなら、Q (R)= Q0なので vrからRが一意に求められる Mellinger 運動学的距離の有効性 ▶ 用いているモデル妥当性 ■ ■ ■ ■ 銀河定数 R0, Q0 ランダムな特異運動の大きさ 太陽の特異運動=LSRの確定精度 円運動からの系統的なずれ 既存のモデルをできるだけ壊さない配慮 すべてを壊すと何も言えなくなってしまう Mellinger 円運動モデルでの観測量 ▶ 視線速度 ▶ 銀経方向速度 Mellinger R0sinl=Rcosq Rsinq =R0cosl-D vr=Q cosq -Q0 sinl vl=Q sinq -Q0 cosl VERAによる銀河定数の決定 ▶ 角速度 W0=Q0/R0 [km s-1 kpc-1]を求める ■ ■ 統計的な解析(Reid+2009, Honma+2012) 特殊な位置にある天体の観測 太陽円上天体 (Onsala2-N:Ando+2011) 接点位置天体 (Onsala1:Nagayama+2010) Mellinger 太陽円上天体 ▶ 天球上の固有運動がW0に等しくなる。 ■ m=(2Q0 cos l)/(2R0 cos l)= W0 ▶ 位置が、多少ずれていても影響は小さい 円運動時の速度の式 Mellinger ■ 太陽円上ではvr=0 したがって、Q0=-a0 ml 接点位置天体 ▶ 天球上の固有運動がW0に等しくなる。 ■ m=(Q0 cos l)/(R0 cos l)= W0 ▶ 位置が、多少ずれていても影響は小さい 円運動時の速度の式 Mellinger ■ 接点位置上では第2項=0 したがって、Q0=-a0 ml 観測結果 ▶ 接点位置天体の場合 ■ W0はR0がだいたい決まれば十分な精度で Mellinger W0導出の比較 ▶ 種々のデータによる値との比較 ■ 近年の結果は、ほとんどがW0 =28-30 km s-1 kpc-1 ON1:VERA (Nagayama+2010) ON2N:VERA(Ando+2011) 4天体:EVN(Rygel+2011) Sgr A*:VLBA(Reid&Brunthaler+2004) 太陽円+接点位置 Cephido:ヒッパルコス(Miyamoto&Zhu 1998 ) 8天体の平均 Mellinger OB型星:ヒッパルコス(Miyamoto&Zhu 1998 ) 8.5kpc, 220km/s ■ IAU推奨値(Kerr&LyndenBell 1986)はダメ!? R0=8.5kpc, Q0 =220 km s-1 → W0=25.88 km s-1 kpc-1 運動学的距離の妥当性 ▶ 暫定的な結論 ■ W0 =30 km s-1 kpc-1を使えばそれほど狂わない 特異運動HWHM 面内=20km s-1, 厚さ方向=10km s-1 ■ R0の絶対値で図はスケーリングされる ■ 運動学的距離は視線速度と線形ではない! 誤差伝搬が歪むので注意! 一律の相対誤差では表現できない。 視線速度の誤差で評価する必要がある Mellinger R0測定の現状 ▶ R0=8.3-8.4kpc辺りか? Sgr A*の年周視差:まだ精度不足 Cephidの周期光度関係 7.9±0.3kpc ► Matsunaga+2009 Miraの周期光度関係 8.24±0.08±0.42kpc ► Matsunaga+2009 Sgr A*周囲の恒星の公転 8.28±0.33kpc ► Gillessen+2009 Red clump星の明るさ 7.52kpc(もう少し遠い?) ► Nishiyama+2006 ▶ IAU推奨値(8.5kpc)はそれほど悪くない? Mellinger 銀河内の星間ガス ▶ 楕円銀河 ■ 星間ガスが乏しい まったく存在しないわけではない ▶ 渦巻銀河 ■ 円盤部に分布 渦状腕に集中している ■ バルジ、球状星団 楕円銀河なみに少ない Mellinger 第3部 天の川銀河内のガス分布 Mellinger 円盤部での動径分布 ▶ 天の川銀河内での動径分布 ■ 分子ガスと中性原子ガスで異なる Mellinger ペルセウス腕 星間ガスの分布図 ▶ 運動学的距離 オリオン腕 外縁部腕 いて-りゅうこつ腕 じょうぎ腕 Mellinger たて-みなみじゅうじ腕 中西と祖父江による 第4部 棒渦巻銀河のガスの分布と運動 Mellinger 棒渦巻銀河 ▶ 棒状バルジポテンシャルの影響 ■ 円盤部の天体運動が非円運動となる ▶ 星の運動とガスの運動 ■ ■ ■ 星の運動=非衝突系 ガスの運動=流体近似 ポテンシャルに対する応答が異なる可能性大 Mellinger 棒渦巻銀河の観測 ▶ 非軸対称な分布と速度場 ■ ■ 分布:ポテンシャルからoffsetした直線状分布 速度場:非円運動 ▶ M83 ■ 分子ガス Mellinger 棒渦巻銀河の観測例:M83 ▶ 分布:非軸対称、offset ridge ■ ■ CO Ha Mellinger Handa et al. 1990 Comte 1981 棒渦巻銀河の観測例:M83 ▶ 速度場:非円運動 ■ ■ CO Ha Mellinger Handa et al. 1990 Comte 1981 非円運動の観測的特徴 ▶ 円盤上の運動の等速度線図 ■ 軸対称回転=円運動の場合 長軸に対して対称な等速度線 ■ 非軸対称回転 長軸に対して傾いた等速度線 Mellinger 初期のシミュレーション ▶ 流体近似:速度場 Mellinger Sørensen et al. 1976 Roberts et al. 1979 初期のシミュレーション ▶ 流体近似:バーでの強い衝撃波 Mellinger Roberts et al. 1979 Roberts et al. 1979 バーによる角運動量輸送 ▶ offset ridgeは角運動量を輸送する ■ ■ ■ 非軸対称ポテンシャルによる重力 ガスの角運動量→星の角運動量 ガスの中心への落下 Mellinger 流体計算結果の物理学的解釈 ▶ 非連続体でも同じ結果になりうる? ■ ■ 分子雲の弾道運動近似 恒星運動=軌道交錯で分子雲の衝突! Mellinger 棒状バルジに沿ったガスの落下 ▶ 棒状ポテンシャルに沿ったガスの落下 非定常=断続的落下? Mellinger 視線速度 ■ 位置
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