偶然性の数学 - School of Science and Technology

関西学院大学オープンセミナー
2010年6月12日

決定論的現象
天体の運動のように未来が現在により決
まっている現象

偶然的現象
偶然的な要素が加わり、未来の予測が不可
能な現象
気象、地震、災害、事故、宝くじ
株価、寿命、… … … … … … … … .
 天体の運動



多くの古代文明で天体の運動の規則性が
知られており、それにより暦が作られた。
1687年:ニュートンは
「プリンキピア」
により力学の法則を提唱した。
微分・積分の発見、微分方程式
多くの自然現象は決定論的であり、物理・
化学の理論として現在の自然科学の基礎に
なっている。



賭け
保険・年金
観測誤差

平均値が重要な裏付け
大数の法則

揺らぎに潜む法則
中心極限定理
1654年:
パスカルとフェルマーの賭けに関する往復書簡
A,Bがそれぞれ100円の元手を基に硬貨投げをし、
表が出ればAが1点、裏が出ればBが1点獲得する
ゲームを繰り返し、最初に10点を取った方が賭け
金の200円を受け取るとする。Aが5点、Bが3点を
取った段階でゲームを中止した場合、賭け金200
円のうちAはいくらもらえるか。
Aが勝つ確率 = 0.73 ⇒ ¥200ⅹ0.73=¥146
5
6
7
8
9
10
11
1
1
1
1
1
1
1

5

15

35

70

126

210
 
 
 
 
 
 
 
2
2
2
2
2
2
 
 
 
 
 
 
 2
パスカルの三角形
a  b1
a  b2
a  b3
a  b4
a  b5
a  b6
a  b7

1

1

1



 1
1
1
1
5
6
7
21
1
2
3
4
15
1
3
6
10
35
1
4
10
20
1
5
15
35
1
6
21
1
7
1







損害保険:
ギリシャ時代に海上保険が始まる。
14世紀にはイタリアを中心にした地中海
交易
1666年のロンドンの大火より火災保険
生命保険・年金:
17世紀にイギリスの牧師が葬式代を生前
にお金を出して工面しあった。若い牧師に
不満
ハレーが生命表を作成し、年齢による死亡
率をだし、保険料を合理的に計算する方法
を発案 ⇒ 生命保険の始まり18世紀
 生命保険において年齢別の死亡率が保険料決
定に有効な背景
人口が大きなグループでは年齢により年間に
死亡する人数はほぼ一定であるという経験則
= 大数の法則
ヤコブ・ベルヌーイ(1654-1705)
1714年出版の「推測の技法」の中でこの大
数の法則を証明
70
60
50
平11
12
13
14
15
全国
16
兵庫県
17
18
19
20

4
 0.78540
円 の内 部 の点 の個 数 8

 0.8
全 体 の点 の個 数
10
円 の内 部 の点 の個 数 15

 0.75
全 体 の点 の個 数
20
円 の内 部 の点 の個 数 23

 0.767
全 体 の点 の個 数
30
 天体観測などで惑星の軌道を計算する場合の
測定には誤差が付きまとうので何が正確な値
かを知る必要がある。
 ボーデの法則
3 2
n1
 4 (n  1,2,)
 1801年に小惑星のセレス(n=4)が発見される
が、太陽に隠されて見失う。正確な軌道を知
る必要が生じた。ガウスの登場
 ド・モアブル(1667-1754)
1733年「偶然の教義」(第3版)
大数の法則での誤差について厳密な考察

ラプラス(1749-1827)
正規分布の発見、ド・モアブルの結果を完全
にする

ガウス(1777-1855)
観測誤差の理論、最小2乗法の提案
正規分布の別の視点からの導出=ガウス分布
z
y
x
1922年: ブラウン運動の構成
ウィーナーはすべての点で微分不可能なブラ
ウン運動を数学的に構成した。

1933年: 公理論的確率論の成立
1902年のルベーグによる新しい積分論を基礎
にコルモゴロフにより近代的な確率論が確立
され、これにより確率論は数学の1部門にな
る。

1942年: 確率微分方程式の理論成立
伊藤清博士により偶然現象におけるニュート
ンの理論が構築された。ブラウン運動に基礎

 2006年
伊藤清博士第1回ガウス賞授賞
 2006年 4人のフィールズ賞受賞者のうち
3人の研究が確率論に関係
 2007年 バラダン教授第6回アーベル賞受賞
1.大数の法則、2.中心極限定理
3.大偏差原理:
平均からの大きなずれ
保険の研究に起源