構造物に作用する力 波圧公式 防波堤の設計 酒井哲郎:海岸工学入門,森北出版 第1章(pp.1-18) 本日の内容 円柱構造物に作用する波の力(モリソン公式) ケーソン式防波堤の設計 波圧の現象 防波堤設計の流れ 波圧公式(合田公式) 捨て石の安定重量(ハドソン公式) 海岸構造物に作用する力はどのようなものがあるか? 形状抵抗:構造物前後の圧力差による抵抗力 圧力差は構造物前後の波高の差,流れのはく離(はく離渦)などで生じる 波によって生じる流れ 圧力大 圧力小 はく離渦 波により構造物前後の 水深が異なる. 全水圧大 全水圧小 周囲の流体が減速(加速)するさいに円柱に力を与える(もらう). 同じ流体塊 その後,流体塊は減速(du/dt<0,u2<u1) する u1 構造物に衝突した 流体塊 mu1 mu2 F u2 流体塊は運動量を失う.運動量保存 則より流体塊が単位時間に失う運動 量は流体塊に接する円柱に働く力Fに 等しい. 慣性抵抗:静止している構造物が周囲の流れを減速させることに よって流体から受ける反力 表面抵抗:構造物表面上の流れによる表面せん断力に抵抗する力 円柱構造物に作用する流体力 u u D 2 dFT CD uDdz CM dz 2 t 4 形状抵抗 慣性抵抗 z CD:抗力係数, CM:慣性係数 形状抵抗は流速の自乗に比例し,慣性抵抗 は考えている構造物体積と同じ体積の流体 の質量と加速度の積に比例する.比例係数 はそれぞれ抗力係数,慣性係数と呼ばれる. dFT dz u x 形状抵抗の項で流速に絶対値記号が付 いているのは,流速の方向に従い抵抗力 の方向を表現するためである. D 波による流体中の流速と加速度 H cosh h z u um cos x t cos x t T sinh h u H cosh h z um sin x t sin x t t T sinh h 記号の説明は教科書参照(p.4) u dFT u D 2 CD uD CM dz 2 t 4 x=0として代入・整理 dFT CD D 2 CM D 2 um cos t cos t um sin t dz 2 4 dFT CD D 2 2 2 CM D2 2 2 um cos t cos t um sin t dz 2 T T 4 T T dFT CD D 2 2 2 CM D2 2 2 um cos t cos t um sin t dz 2 T T 4 T T 1 2 で除する um D 2 無次元波力 1 2 2 2D 2 1 2 dFT u D C cos t cos t C sin t m D M T T umT T 2 dz 2 2 2 2 CD cos t cos t CM sin t T T KC T KC u mT :ケーシー数(Keulegan-Carpenter number) D 抗力係数:レイノルズ数に依存する.波浪場では代表流速に流速振幅 などを用いる.定常流の場合との違いが大きい.教科書p.6 図1.3参照. 慣性係数:ケーシー数に依存する.理論的には2.0の値となるが,実 験では2.0の回りに大きくばらつく.教科書p.6 図1.4参照. 流れに対し垂直方向に働く力(揚力) 振動が発生する. 流れ はく離渦 dFL u2 dFL CL Ddz 2 CL:揚力係数 垂直面に働く波圧 波と波圧の関係が設計上重要 (波の波高・波長から構造物に作用する波圧を求めることが重要) ケーソン式防波堤 波圧分布 揚圧力分布 混成堤 傾斜堤 揚圧力:傾斜堤は捨て石で構成されるので間隙から静水圧に加えて 波による水圧がケーソン式防波堤に鉛直上向きに働く. 平均水深での静水圧分布 波の峰の位相時 の静水圧分布 上向き pu1 波の谷の位相時 の静水圧分布 平均水深での静水圧分布 からのずれ(波による付加 的な圧力分布) 下向き pu 2 実海域での波は平均水面に対し非対称なので一般に pu1 pu 2 と考えてよい.つまり一周期平均すると上向きの圧力となる. 入射する波と波圧の時間変化 h 波圧 双峰型波圧 鉛直壁 時間 x 教科書p.10 図1.7(b) h 波圧 衝撃波圧 鉛直壁 空気塊 x 教科書p.10 図1.7(d) 時間 波圧公式 鉛直壁面で砕波せず重複波を形成する場合 サンフルー(Sanflou)の簡略式 波の谷の位相時 p1 波の峰の位相時には湾外から湾 H 0 内の方向に波圧が作用する.一方, 波の谷の位相時には湾内から湾 外に波圧が作用する. H 0 湾内 波の峰の位相時 p1 湾外 詳細は教科書pp.10-11参照 p2 衝撃砕波圧の場合 ミニキン(Minikin)の公式 波圧は静水面近傍に集中する. 詳細は教科書p.12参照 pmax H p2 衝撃砕波圧の場合 広井公式 静水面上波高の1.25倍の高さ からケーソン下端まで波圧は一様 分布になると仮定 1.25H 1.25H p 1.5 gH p 1.5 gH 防波堤設計の流れ 設計波の設定 配置の決定 設計条件の決定 断面の決定 外力計算(波圧公式) 直立部滑り出し 細部設計 no 直立部の転倒 no 基礎の支持力 傾斜部安定の検討 no 全体のすべり no 基本断面の決定 合田公式 砕波・非砕波両者で適用可能 η* p4 hC p1 h h’ d p3 pu p2 p3 3 p1 p1 1 2 p1 1 cos 1 2 cos gH max p2 cosh h 2 2 h d H max 2d 1 2h min b 2 , 1 0.6 3hb d H max 2 sinh 2h 2 3 1 pu h 1 1 h coshh h* 0.751 cos Hmax 1 1 cos 1 3 gH max 2 hb:有義波高の5倍だけ沖側の位置の水深 q 波の主方向q 15° q15° 設計波高Hmax 最高波を用いる。その波高は砕波帯の沖側に あってはHmax=1.8H1/3,砕波帯内にあっては防波 堤から沖側5 H1/3の地点における波高を用いる。 最高波の周期はTmax=T 1/3とする。 H1/3はその場における有義波高 T 1/3はその場における有義波周期 ・被覆石の所要重量の算定 直立堤下部の傾斜堤上面に設置される捨て石 あるいは傾斜堤そのものを構築する捨て石の 所要重量を決定する.(石の重量が小さいと波に浚われてゆく) ハドソン公式 W r H 3 K D sr 1 cot q KD:係数 r:被覆石の密度 Sr:被覆石の比重 q:傾斜堤の斜面角度 3 q 宿題 p.17 問題1.2 ただし,単位はSI単位を用いること. 重力単位系では不正解とする.
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