1 『世界市民』 by 矢根 真二 ([email protected]) 資料URL http://rio.andrew.ac.jp/~yane/class/water/ <7> 世界の水不足・水危機の原因は? Y <はじめに & 第1章> 本日の課題 ■ 世界中が水不足なのか? 水不足の原因は? 1 世界の水のバランス 2 水危機 (ウォータークライシス)? 3 水不足の原因と構図 例題 水があれば,貧困から脱却できる? 2 教科書Y(09, pp.18-9)の「水があれば成長する」について, <S2>の復習: 「水 ⇒ 成長」 「A ⇒ B」: AならばBである 1. この命題では,水は成長の十分条件,それとも必要条件? 2. 同じ事を,(対偶命題を使って)言い換えると? 3. この命題は,実際に経験的に妥当している? 理由は? 命題「猫は動物だ」: 論理の基礎の復習 ┓= not 1. 元の命題( A ⇒ B )が真であれば,対偶命題( ┓B ⇒ ┓ A )も常に真 2. しかし逆命題( B ⇒ A )や裏命題( ┓A ⇒ ┓ B )は真とは限らない 1 世界の水のバランス 3 利用が容易な世界の水の割合: 0.01% 1. 2. 3. 4. 海水(13.5億km3) = 97.5% 塩水(沖(12)), 淡水=2.5% 淡水の69.5%は,氷河・氷山 (1.7%) 利用可能な淡水(0.8%)の99%は,地下水 ∴ 河川・湖沼の表層淡水 < 0.01% 年間1人平均の水存在量 と 需要量 ⇐ Y(p.3) 68億人平均=8000m3 需要量=4000m3 地球全体では, 存在量 > 需要量 but 偏在 問題は, 地域格差 4 一国の利用可能な水量の格差 1. 2. 豊かなカナダ: 9万m3 不足の中東・シンガポール: 1000m3 家庭での1日当たりの使用量: 2006年 1. 2. 米国:575ℓ, 豪: 495ℓ (散水:80%) 中国:85ℓ 50-70ℓ (1人当たり必要量) 日本:375ℓ トイレ28%・風呂24%・炊事23%・洗濯17% 世界の水の用途 5 農業は, 「水集約的」産業 ⇐ 石井(07) 1. 2. 3. 農業用水= 69% 工業用水= 21% 生活用水= 10% 家庭等で必要な生活用水は,1割 水不足のシンガポールの快適生活? 同様な自然環境でも,政府の方針・対策によって相違 Q1 水バランスの基本的事実 6 1. 地球の水に占める海水(塩水)の比率は? 2. 利用が容易な地球上の水の割合は? 3. その人口1人当たりの水量は? 4. 人口1人当たりの年間水需要量は? 5. 1日の生活に最低必要な水量は? 6. 日本の家庭の1日平均使用水量は? 2 水危機(ウォーター・クライシス) 7 水ストレス: 平均需要の半分未満 = 年間1人当たり 1000-1700m3 以下 7億人(2006年) 2025年には,人口の2/3に上昇と予測 安全な飲料水のない人口比 = 1 / 8 1. 2. 3. 住居で飲めるのは,7 / 8 の半分のみ 日本 ≓ 0% but サハラ以南: 42% 水系伝染病: 5秒に 1 乳幼児が死亡 日本の水系感染症と水道の役割 8 コレラ 1887年横浜に近代水道 Y(09, p.20) 図1 1. 伝染病死亡者: 37万人(1877-97年) 2. 3. 4. 当時の人口(3700万人) の 1 % ∴ 公衆衛生のために公営水道 (通説?) But 1960年頃でも,水道普及率は 50% 高度成長に伴い,全国に急速に普及 水系感染症の急減, but 今日のインフラは老朽化 干上がる地球? by B(08, 1章) 9 1. 失われる淡水 断流: 黄河, インダス川, ナイル川,コロラド川, ‥ 2. 枯渇する地下水 「緑の革命」により,灌漑農地は 3 倍 灌漑農業: 食料生産は 2 倍 but 使用水量は 3 倍 3. 汚染される表層水 中国の河川の 8 割, 都市地下水の 9 割 ∴<S4>ウォータージャスティス by 環境・市民派 バーロウ 3 水不足の原因と構図 10 水危機・水不足の原因 1. 人口増加 & 都市(集中)化 1. 2. 2. 3. 需要の増加 & 需要の集中化 汚染の増加 安全な水の供給の減少 ∴ 穀物需要増 による地下水の減少 上下水道 の未整備 & 非効率性 安全な水の供給の減少(汚染・漏水率) 上記1-3の関係は? 人口急増と都市化 が主因 11 1. 人口増加 穀物需要の増加 1. 2. 水需要の更なる増加 地下水の減少 水供給の減少 2. 都市(集中)化 but 上下水道未整備 水質汚染・感染症 水供給減少 ∴ 人口増 と 都市化への対応が基本 経済発展(人口増 と 都市化)の 副産物 19世紀末以降の人口爆発 12 世界人口: 19世紀後半以降の急増 1. 1000年: 2 億人 西暦 1 年: 1 億人 2. 3. 4. 5. 6. 1700年: 6 億人 ( +4 億) 1800年: 10 億人 (+4 億) 1900年: 16 億人 (+6 億) 2000年: 60 億人 (+54 億) 現在人口: 70 億人 (+10 億) 都市への集中が,人口増と同時に進行 参考 日本人口1億2800万人の足跡 現代: 少子(13%) & 高齢(23%) 50年後(2060年)人口: 8674万人 に減少予想 1. 15歳未満の人口比は,37年連続低下 2. 米国(20%)や中国(19%)より低い 4度目の人口減少期 (縄文後・鎌倉・江戸末) 1. 2. 3. 縄文中期: 26万人, 弥生: 59万人 奈良:500万,平安: 700万, 鎌倉: 600万 江戸前半: 3100万, 明治前半: 3700万 鬼頭「歴史人口学を知る」日本経済新聞 (2011/5/3) Q2 世界人口増加の基本的事実 14 1. 「人口爆発」とは,いつ以降のこと? 2. 1700年の世界の推計人口は? 3. 2000年の世界の推計人口は? 4. 人類誕生から1700年に至る過程で増加した人口と,21世 紀になってからの人口増加,いずれが多い? それでは人口爆発の原因は? 15 1人当たり所得yの変化 <S8> コイル(08,1章) 1. 2. 3. 1000年: 西欧 < アジア・北アフリカ 西洋の1800年の y = 8世紀前の y 西洋の y の急増は,1820年以降 技術 貿易 & 経済再編 生産性↑ 1. 2. 産業革命・技術革新は,契機にすぎない むしろ,その貿易のための経済再編成・制度改革が鍵: 自由 今日: FTAやTPP 関税引き下げ・規制緩和・所有権 水不足の史的 or 私的構図 16 ∴ 成功(貧困 所得増)が生み出した今日の危機(人口増) ? 1. 2. 3. 4. 1820年以降の西洋の経済成長 その経済成長モデルの模倣による生産性↑ 19世紀後半以降の人口爆発・大都市集中 急速な増加・集中への対応の遅れに 「大きな格差」 遅れて急速に成長する国,つまり新興国や途上国ほど深刻 「挑戦 ⇒ 応戦」における指導者と民度の重要性 教育 人口増という挑戦に, うまく応戦できるか or 衰退するか? トインビー 『歴史の研究』の文明の盛衰観 本日の要点 & 次回の準備 17 1. 水不足・危機は, 「ローカル(局所的)な問題」 1. 2. グローバル(大局的)には, まだ余裕 But ローカル(局所的)の中には, 非常に深刻な地域 2. However 水不足・危機は,今後も拡大 & 深刻化 If 人口増 と 都市(集中)化 が継続 3. ∴ 水問題は, 世界的にはますます重要になる But 人権 or ビジネス or 安全保障? 価値&事実判断力 次回: 地球の水は,本当に枯渇する? Y 3章 例解 十分条件・必要条件と対偶 18 命題「水があれば,成長する」 : 「A ⇒ B」 :<S2>の復習 1.水(A)は,成長(B)の十分条件 = 成長(B)は,水存在(A)の必要条件 2.対偶命題: 成長しないなら,水は存在しない 「A ⇒ B」の対偶命題: 「┓B ⇒ ┓ A」 ┓:否定記号,逆&裏命題は恒真でない 3.私見: ∵ 水は成長の必要条件 「水があれば,成長する」とは限らない 十分条件A 必要条件B
© Copyright 2024 ExpyDoc