Justice What’s the Right Thing to DO? by M. J.

1
『世界市民』 by 矢根 真二 ([email protected])
資料URL http://rio.andrew.ac.jp/~yane/class/water/
<13>
上下水道とチーム水
⇒ Y <第9-10章>
本日の課題
■ 政府・主流Yが目指す水ビジネス像と主要な論点
1 日本の水道の現状と課題
2 「チーム水・日本」の目的と動向
3 根本的な課題と主要な論点
例題 なぜコア部分のPFIが重要?
2
<12>例題  主流派・政府系Yの海外・国内での非整合
1. 「ウィン・ウィン(Win-Win)の関係」とは?
2. 日本の水道の <11>PFI が「本来のもの」ではないという
理由は?  Y(09, p.141)
3. そうしたPFIは,どうして長続きしないのか?
4. なぜ浄水場等のコア部分のPFIが重要と考えるのか?
1 日本の水道の現状と課題
3
日本は,「世界一の安全な水・衛生的な環境」
 p.148: 2009年世界経済フォーラム
日本の上水道  Y(09, p.135, 140)
1.普及率97%,漏水率7%
2.民間委託率26%
日本の下水道  Y(09, p.135, 140)
1.普及率72%,下水汚泥の資源化率70%
2.民間委託率85%

But 日本の上水道にも問題 1
4
水道事業の問題点: 5+2 = 7  Y(09, pp.135-8)
1.
縦割り行政 (p.135)
 13省庁(上下水・農工用水で異なる管轄)
2. 更新投資の遅れ  「朽ちるインフラ」
 40年以上前の浄水場(3割)・管路(2割)
3. 大半が小規模事業者  過多な事業者数
 給水人口5万人以下が7割
4. 大量退職者による技術継承への不安
 総合的な管理技術者の45%は50歳以上
But 日本の上水道にも問題 2
5
5.
地震・災害への対応の遅れ
 耐震化率は浄水場(16%)・主要管路(15%)
6. 原水の水質悪化
 地球温暖化? (品質への要求水準も上昇)
7. 需要減少による経営の悪化 (p.139)
 民間委託の基準・ガイドラインの未整備
 さらに,将来にわたる「高いサービス」も必要(p.139)
 例: 料金値上げ,広域化・事業統合,公民連携等
  疑問: 公営が世界一安全を作ったのに,なぜ民間?
Q1 日本の上水道の現状と問題
6
1. 上下水道の誇るべき成果の例は? 達成できた理由は??
2. 他方,上水道の7つの問題点とは? 未解決な理由は??
3. ★上の成果と問題点の理由とその関係は??
1. 高度成長量的投資,成長後も更新・質的投資は必要だが…
2. 問題点: 財政危機 + 7  2,4-6 の問題に対応できない
3. ∴「規制当局1 + 規制政策3」 の構造改革が根本
But 「≒電力」と同様, 「構造・規制改革」が先送り
私見: 3 「第3者委員会による一元規制 + 道州事業エリア」
Yによる「水問題の核心」と単純な疑問
7
高サービスを確保する政策の核心  pp.139-40
1. 官民の「ウィン・ウィン関係」を築き,
2. 民間の業務委託を増やし,
3. 安全を守りつつ,
4. 水関連企業の育成と地域の活性化
But 前提となる事実判断の根拠は???
1. Why 高サービスには民間委託だけが特に重要?
2. 公営より民間の方が安全? どう担保?  <2>環境・市民派
Q2 政府・主流派のビジネスモデルへの疑問
教科書Y(pp.139-40)の政策 ≒ 水バロンの模倣
1. そもそも日本では,国内の「世界一安全な水」の評判に民
間委託が果たした役割は?  公営企業の評価は?
2. 民間委託と安全性の関係は? 環境・市民派の批判は?
3. さらに民間委託と,料金・広域化・流域管理といった高
サービスを促進する根拠は???
むしろ<12>PFIの必要性は,中央・地方政府の財政危機
世界の水道民営化の歴史から見たPFI
9
1. 水道民営化は90年代後半からの話

イギリス,国連・世銀  資金不足が主因
2. 途上国等での失敗も発生  CEO&TNI(2007)

<2>環境・市民派: ボリビア(コチャバンバ市)の水戦争
3. ∴主に政治・財政的な理由で推進
1.
2.
3.
経済学的には,水道は自然独占の問題  エコノミスト系
民間企業の優位性の確証もない
政治的・財政的な改革こそ急務・先決
CEO&TNI (2007)『世界の水道民営化の実態』
水道法制研究会 (2011) 『水道法ハンドブック』5章
日本の公益事業と民営化: 規制改革の重要性
10
80年代: 電電公社の民営化 but
1. 通信事業の改革
民営事業・地方公営はそのまま
1. 政府直営・公社: 1869-1985年
2. 民営化・独占の廃止(NTT + 参入)  接続料金規制
2. 日本の「電力」事業の変遷
1.
2.
3.
多数の民有民営企業: 1883-1939年
国家管理下の9配電: 1939-51年
発送配電一貫の民間地域独占
 発想電分離へ?
橘川武郎「日本の電力 民営の成り立ち」『日経新聞』2011/6/3-
参考: 水道事業への民間活力導入措置
11
1. PFI 法 (1999年)
汚泥処理や発電事業の <12> BTO・BOO契約
2. 第三者委託制度 (2001年 水道法改正)
浄水場の運営・管理業務
3. 指定管理者制度 (2003年地方自治法改正)
水道では第三者委託制度導入が必要
比較的少数かつ短期の契約(負債)
2 チーム水・日本の目的と動向
12
「現状の制約条件1」の下での水問題対策
1.
縦割り行政の現状: 「指揮者のいないオーケストラ」
2.
この縦割り行政を改革できない状況下での改善策
1.
自民党「水の安全保障委員会」報告書 2008年
1.
2.
3.
4.
2.
3.
政治主導による制度の構築
産官学の総合連携の構築
循環型水資源社会の国際貢献枠組
国民全員参加型の国際貢献提言
水の安全保障戦略機構
チーム水・日本
参考: 水の安全保障戦略機構の目的と活動
13
1. 国政史上初の水の横断的な取り組み
2. 安全保障戦略機構(2009年)の目的
1.
2.
分野を横断する水分野の提言
産官学の海外活動・市民活動支援
3. 水の安全保障戦略機構の開催情報
1. 2012年度基本戦略委員会は2・4月
参考: 「チーム水・日本」の目的と行動チーム
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1. 機構執行部と連携する25チーム: 2009年
1. 自主的なチーム形成
2. 機構を通じた監督官庁との調整
「水問題に関する関係省庁連絡会」設置
2. 注目に値するチーム(pp.163-4)
1. 有限責任事業組合「海外水循環システム協議会」
2. 2009年現在38社
3. 現在の行動チーム: 33
Q3 「チーム水・日本」の目的と影響
15
1. 水バロンへの対抗策として,Yがとりわけ民間委託や官民
連携を重視する理由は?  小規模の地方公営企業
2. さらに日本では, なぜ「チーム水・日本」 および「水の安
全保障戦略機構」が必要なのか?  指揮者不在
3. 13年度からの安倍政権は,エネルギーや交通のインフラ
輸出に重点,水道事業との主な相違は?
4. 近年日本の商社などが海外の水道経営に参加し始めた,
理由は?
3 より根本的な課題と主要な論点
16
1. 道州規模への事業エリア拡大
1. 「事業者数の過多・事業規模の過少」の解消
2. 広域の水源管理への誘因と責任
3. ユニバーサル・サービス(料金格差の解消)
2. 第3者委員会設立による責任ある一元規制
1. 料金・施設・水質への公正な規制  電力規制からの教訓
2. 水利権・上下水道・工業用水等の一元規制
3. エリア間の水売買市場の整備
改革の必要性を示唆する事実
17
発展する上水道事業の経済・経営分析: 中山(2003)以降
1.
人口減少・成長鈍化により,水道水需要は減少傾向
2.
事業者数が過大なため,格差・異質性が大きすぎる
事業規模・雇用者数,水源・水質,費用・料金,効率性(次頁)
3.
特に現行の料金には,持続不可能な水準が含まれている
独立採算の規制 but 赤字・老朽化・耐震化未対応の現実
4.
5.
自治体・事業体の財政悪化により,民間委託は進展
But 水道での民間の効率性は未確認  <4>自然独占
Berg & Marques (2011): 公か民かより,誘因規制かどうか
効率性(TE)の地域格差の例
18
DEAによる日本の水道事業の生産フロンティアの計測
1. Max: 1
2. Min: 0:109
3. 平均値: 0.472
4. 中央値: 0.439
 SFA,環境は?
学習から研究へ: 測ってみよう効率性 <15A>
19
DEAしよう 例: 福山平成大学福井教授のソフト
投入X指向型のVRSフロンティアと効率性のイメージ
Y
D
C
G
B
H
F
A
E
I
2
4
X
 活用は?
1 フロンティア上は効率的
・A,B,C,D,Eは TE=1
・内部はすべて TE<1
2 TEの測り方(投入指向)
・点GのTE=2/4=0.5
・B,F,G,HのTE?
本日の要点&次回の準備
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1. 日本は世界一の安全な水・衛生環境
2. But 上水道には,少なくとも「7つの問題」
3. Y: 解決には民間委託の増加が最重要  But Berg & Marques (11)
4. さらに,「チーム水・日本」の役割に期待  民間ニーズへの対応
 ∴ インフラ輸出競争への緊急措置 but 国内戦略は?
  私見: 規制当局と事業エリア自体の改革  海外貢献
 次回: 期間外試験(時間・学生証・黒の鉛筆&ペン)
例解 民間企業は本当にコスト優位?
21
1.互いに利益になる取引

 <5>自発的取引や<9>自由貿易はすべて相互利益
2.コスト削減の手段
( p.141)
3.民間は無理してるから? But 本当?? 理由は???
4.海外進出のため? But 国内供給が基本では??
 2&3
 教科書Y: 重商主義的水道ビジネス観  4
But 国家目標は国民の厚生最大化  エコノミスト系
PFIは,民間企業のコスト優位が前提のはず
1.
2.
参考: 水道事業の効率性分析
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1. 中山 徳良(2003)『日本の水道事業の効率性分析』多賀出版
2. Berg & Marques (2011), “Quantitative Studies of Water and Sanitation
Utilities,” Water Policy.
3. 吉川丈・他(2012)「確率的生産フロンティアと環境変数」『経済経営論集』(桃
山学院大学)第53巻第4号, pp.1-39
4. 矢根真二(2012) 「朽ちる水道インフラ: 老朽管の更新投資必要額」 『総合
研究所紀要』(桃山学院大学)第37 巻第3 号, 151-72.
5. Yane & Berg. (2013), "Sensitivity Analysis of Efficiency Rankings to
Distributional Assumptions." Applied Economics, 45, 2337-48.