高齢者の循環器疾患の特徴 1.徴候が非定型的で、重篤な疾患でも明瞭な臨床症状を欠くことが多い。急性 心筋梗塞でさえ、典型的共通を呈する者は80歳代では30%程度に過ぎない。 特に糖尿病合併高齢者は無痛性心筋梗塞が多い。 2.予備力の低下によって、心不全症状を呈しやすい。 3.不整脈が多い。上室性不整脈(心房細動、上室性期外収縮)、洞不全症候 群、脚ブロック、房室ブロックなどが加齢により増加し、一部は心不全の原因 にもなる。 4.疾病の背景、原因、進行経過が若年者と異なる。例えば、高齢者の心不全 は弁膜症より虚血性心疾患が多い。進行経過も無償校正のことが多い。 5.侵襲的検査を施行することが難しい。加齢に伴い腎機能の低下が有り、脳 血管障害の合併症もよく認めるため、副作用が多くなる。 虚血性心疾患 1)狭心症 ①発作発現様式による分類 労作性狭心症 安静時狭心症(冠動脈の痙攣による異型狭心症と冠動脈硬化に よるタイプ) ②臨床経過から見た分類 安定狭心症 不安定狭心症(心筋梗塞に移行) 2)急性冠症候群(ACS) 心筋梗塞の約80%は冠動脈造影で有意な狭窄のない患者に発症 する.急性冠症候群とは、プラークが何らかの原因で破けて、冠動 脈内に血の塊(「血栓」)が急にでき、「悪玉コレステロール」が詰 まったプラークが何らかの原因で破けて、血液の流れが非常に悪 くなったり、血管が詰まってしまうために起こる現象を言う. 狭心症と心筋梗塞の違い 異型狭心症(冠攣縮性狭心症) 急性冠症候群 ACSという呼び名は独立した疾患名ではなく、臨床的には不安定狭心 症、急性心筋梗塞、心臓突然死などが含まれる. 「狭心症から心筋梗塞へと進行する」という考え方は誤っており、心筋 梗塞の80%は狭心症と関係なく発症する。 心筋梗塞の痛みの部位 胸部圧迫感が代表的な急性心筋梗塞の症状で、約50%に見られる。症状の持続時 間は長く、胸部圧迫感が30分以上続く時は狭心症ではなく、急性心筋梗塞を疑う必 要がある。また、胸部圧迫感だけでなく、みぞおちが痛い、吐き気など胃の病気と間 違うような症状も少なくない。さらに、高齢者では半数で胸痛がない場合がある。急に 気分が悪くなったり、全身状態が悪くなったら、急性心筋梗塞も疑う必要がある。 虚血性心疾患の発症頻度の加齢に伴う変化 加齢に伴って増加し、相対的に女性の比率が上がる。 心血管系疾患予防の食事ガイドライン 1.多価不飽和脂肪酸(魚)の摂取と心筋梗塞の発症に関しては、摂取量の増加が心 筋梗塞の発症予防に望ましいとの結果が得られている。 2.野菜・果物の摂取に関して摂取が一回分で新血管疾患のリスクが4%下がる。 3.ビタミンB群:ビタミンB12、ビタミンB6、葉酸の摂取量がすべて多い群では虚血性 心疾患の発症相対危険度が0.47。 4.大豆:大豆摂取が週0−2回の女性と比較して、週5回の女性では新血管疾患の発 症相対危険度が0.31。 心房細動の合併症 心房細動は高齢者の約5%におこる と言われている。心房細動は治療が 必要な不整脈の中で最も頻繁にみ られ、加齢とともに増加する。 発作的に時々おこる「発作性心房細 動」と持続している「持続性心房細 動」があり、脳梗塞のなりやすさは同 程度。脳梗塞の1/3は心房細動によ ると言われており、心房細動では、 動脈硬化による脳梗塞に比べて詰 まる血管が太いので、重症脳梗塞 が多くなる。 心房細動の心電図 心房の電気信号であるP波が消失して基線が細かく振動している。 QRS波が不規則に出現し、結果として脈搏が不規則になる。 徐脈性不整脈 1.洞徐脈:洞結節自体に異常はなく一時的または無害であるケースが多いため、特に治 療の必要はない。 2.洞停止もしくは洞房ブロック:高齢者や虚血性心疾患患者に発症。心停止の原因となる のでペースメーカーの適応。 3.房室ブロック:I度・II度房室ブロックは、電気刺激が伝わるのに時間がかかったり、時折 うまく伝わらない状態であるのに対し、III度房室ブロック(完全房室ブロック)は電気刺 激が全く伝わらない状態であり、めまい、失神、息切れ、疲労感を伴う。III度房室ブロッ クは失神や突然死につながる恐れがあり、ペースメーカ植込みによる治療が必要。 高血圧症の定義 分類 収縮期血圧 拡張期血圧 (mmHg) (mmHg) 至適血圧 <120 かつ <80 正常血圧 <130 かつ <85 正常高値血圧 130~139 または 85~89 軽症高血圧 140~159 または 90~99 中等症高血圧 160~179 または 100~109 重症高血圧 ≧180 または ≧110 収縮期高血圧 ≧140 かつ <90 血圧とは、血液の流れの元になっている圧力のことです。 要するに、心臓のポンプ作 用により、血液が全身に送り出される際に、動脈にかかる圧力のことをいう。 心臓の 収縮時の値を「収縮期血圧」あるいは「最高血圧」といい、 心臓の拡張期の値を「拡 張期血圧」あるいは「最低血圧」といいます。血圧値は、水銀柱の高さ(mmHg)で 表されます。*血圧値の表し方:収縮期血圧/拡張期血圧mmHg 高齢者高血圧の
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