この論文は、「Arterial Stiffness」WEBサイトに掲載されています。その他の論文はこちら Click "Arterial Stiffness" web site for more articles. 英文原著論文紹介 ①高血圧 Estimation of central aortic systolic pressure using late systolic inflection of radial artery pulse and its application to vasodilator therapy. Takazawa K, Kobayashi H, Kojima I, Aizawa A, Kinoh M, Sugo Y, Shimizu M, Miyawaki Y, Tanaka N, Yamashina A, Avolio A. J Hypertens 2012; 30: 908-16. PMID: 22469836 橈骨動脈の収縮後期変曲点による中心大動脈収縮期血圧の推定 ならびに血管拡張薬治療への応用 高沢謙二(東京医科大学八王子医療センター病院長) 小林 裕/小嶋 巌/合沢 彰/喜納峰子/菅生由美/清水正行/宮脇義徳/田中信大/山科 章/ Alberto Avolio 目的 Δ aSBP との差(6 .9 ±6 .8)に比べて小さい。つまり橈骨動 中心血圧は心血管リスクの直接的な評価法として、ま 脈の SBP2 からの直線回帰で得られた cSBP の増減が大動 た血管拡張薬の過小評価の解決法として注目されている。 脈起始部収縮期血圧(aSBP)の増減と一致していることを 今回、橈骨動脈第 2 収縮期血圧を用いた中心血圧推定の妥 意味している。 当性について、高感度圧センサーによる大動脈起始部血 図 2 A は上腕の第 1 収縮期血圧(rSBP1)と実測大動脈 圧との対比および血管拡張薬投与前後の変化について検 第 1 収縮期血圧(aSBP1)、つまり駆出圧波同士の比較であ 討する。 る。図 2 B は第 2 収縮期血圧同士を比較したものである。 方法・対象 図 2 C は収縮期最大血圧同士の比較である。それぞれに良 好な正相関がみられている。つまり橈骨動脈の SBP2 の値 心臓カテーテル検査を施行した 66 例の患者(平均年齢 から中心血圧の SBP2 の推定が可能であることを示してい 63 .4 ±9 .7 歳、男性 49 名)について HEM-9000 AI(オムロ る。そして一般的には中心血圧の収縮期最大血圧は SBP2 ンヘルスケア製)を用いて橈骨動脈第 2 収縮期血圧から中 であるので、SBP2 の値から大動脈起始部の収縮期血圧が 心収縮期血圧を推定するとともに高感度圧センサーを用 推定できるということになる。 いて大動脈起始部(中心)血圧を測定した。HEM-9000 AI の橈骨動脈波形は自動検出装置付きのトノメトリー法に 考察 よって記録され、オシロメトリー法によるカフ上腕動脈 本論文は脈波解析として駆出波のピークを T1、反射波 血圧測定の収縮期血圧および拡張期血圧によって較正さ のピークを T2 とし、さらに実測波形のピークを Ts と定義 れた。 し た。 そ し て T2 が Ts と な る Type A と T1 が Ts と な る 結果 42 plots を示す。Δ cSBP とΔ aSBP の差(1 .4 ±6 .6)はΔ rSBP と Type C の 間、 つ ま り T1 と T2 の 間 に Ts が あ る も の を Type B と定義して波形解析の図を明示した。 高感度圧センサーにより実測された大動脈起始部(中 本論文では橈骨動脈の SBP2 から推定した cSBP は血管 心)収縮期血圧(aortic systolic blood pressure;aSBP)と 拡張薬による降圧の前後を通じて実測の大動脈起始部収 HEM-9000 AI により推定された中心血圧(central SBP; 縮期血圧 aSBP と良好な一致関係にあることを明らかにし cSBP) は有意な正相関 (r = 0 .93) を認めた。 た。また橈骨動脈の SBP1 と大動脈起始部の SBP1 の関係、 図 1 A は実測中心収縮期血圧の血管拡張薬投与前後の差 ならびに両者の SBP2 の値の相関が良好であることを示し (Δ aSBP)と HEM-9000 AI による推定中心収縮期血圧の血 た。SBP1 において rSBP1 の値が aSBP1 の値より大きいの 管拡張薬投与前後の差(Δ cSBP)の関係である。良好な正 は、大動脈起始部から上肢動脈における圧増幅(pressure 相関がみられているとともに傾きも 0 .94 と Y = X の直線 amplification)を意味している。また rSBP2 と aSBP2 の に近い。一方、図 1 B は Y 軸に上腕収縮期血圧の投薬前後 良好な相関も示したが、rSBP2 の値はカフによる較正で の差(Δ rSBP)をとったものである。こちらでも有意な正相 あり、実圧との差は 10 mmHg ぐらいあることも理解して 関はみられているが傾きが 0 .66 と Y = X の直線からはか おく必要がある。橈骨動脈の第 2 収縮期血圧の変化は中心 なり離れた直線となっている。図 1 C、D に Bland-Altman 血圧の第 2 収縮期血圧の変化と一致していることより、血 この論文は、「Arterial Stiffness」WEBサイトに掲載されています。その他の論文はこちら Click "Arterial Stiffness" web site for more articles. 英文原著論文紹介① 図 1 ● 実測中心収縮期血圧(aSBP)の変化量と推定中心収縮期血圧(cSBP)の変化量(A)および橈骨動脈収縮期血圧 (rSBP) の変化量 (B) の関係、下段 (C、D) はその Bland-Altman 分布 A B (mmHg) 20 10 y=0.66x+0.73 r=0.78 p<0.0001 10 0 0 −10 −10 ∆ rSBP cSBP ∆ (mmHg) 20 y=0.94x+0.38 r=0.84 p<0.0001 −20 −20 −30 −30 −40 −40 −50 −50 −40 −30 −20 −10 0 10 −50 −50 −40 −30 −20 −10 20(mmHg) aSBP ∆ 0 10 20(mmHg) aSBP ∆ C D (mmHg) 30 (mmHg) 30 Mean±SD=1.4±6.6 20 rSBP- aSBP ∆ ∆ cSBP ∆ ∆ aSBP 20 Mean±SD=6.9±6.8 10 0 −10 −20 10 0 −10 −20 −30 −50 0 −30 −50 (mmHg) ∆ ∆ aSBP)/2 ( cSBP+ 0 (mmHg) ∆ ∆ ( rSBP+ aSBP) /2 図 2 ● 実測中心第 1 収縮期血圧(aSBP1)と橈骨動脈第 1 収縮期血圧(rSBP1)の関係(A)と実測中心第 2 収縮期血圧 (aSBP2)と橈骨動脈第 2 収縮期血圧(rSBP2)の関係(B)および実測中心収縮期血圧(aSBP)と橈骨動脈収縮期 血圧 (rSBP) の関係 (C) A (mmHg) 200 150 rSBP2 rSBP1 150 B (mmHg) 200 y=1.21x+2.87 r=0.87 p<0.0001 100 0 C (mmHg) 200 150 cSBP 100 50 50 0 y=0.85x+562 r=0.93 p<0.0001 50 100 150 (mmHg) 200 0 0 50 aSBP1 100 150 (mmHg) 200 aSBP2 :血管拡張薬投与前 :血管拡張薬投与後 y=0.89x+13.54 r=0.93 p<0.0001 100 50 0 0 50 100 150 200 (mmHg) aSBP 管拡張による反射波の軽減により第 2 収縮期血圧を低下さ 過小評価されてしまう)には第 2 収縮期血圧の測定が必須 せる血管拡張薬の評価(通常の収縮期血圧の測定だけでは のものとなるであろう。 43
© Copyright 2024 ExpyDoc