南海トラフ想定地震の津波シミュレーション結果による

小山研究室
30216017 永田聖大
写真:陸前高田市
http://blog.livedoor.jp/noriaki_20045/archives/51830309.html
南海トラフ地
駿河トラフから九州沖にかけてフィリ
震
ピン海プレートの沈み込みによって大
陸側の
プレートの端が引きずり込まれ、ひず
みが限界に達したとき、起きるプレー
ト境界地震である。
東海地震
東海地震は、南海トラフ地震の震源
域の東端にあたる駿河トラフで起き
るものを呼ぶ。
東海
地震
波源域
波源域
静岡県による想定
内閣府による想
定
2003年
南海トラフ地震被害想 1978年 第1次東海地震被
害想定
定
2012年 南海トラフ地震新被害 1993年 第2次東海地震被
害想定
想定
波源域(震源断層モデル)と津波高
静岡県第1~3次被害想
定
東海地震単独発生モデ
ルであり、波源域の広
がる駿河湾中心で津波
が発生することから、
限定的な津波が来ると
予想されている。
南海トラフ地震による波源
域と津波高(内閣府,2003)
三連動(南海・東南海・
東海)地震が来ることを
予想しており、この範
囲を波源域とする大規
模な津波が来ると予想
されている。
上図:震源断層モデル
東
海
南海
東
南
海
南海トラフ巨大地震対策
(2012)
断層モデル(波源域)
静岡県第4次被害想定
波源域と津波
高
内閣府(2012)の被害想定と静岡県第4次被害想定の津波モデルは
同じである。地形データのメッシュサイズは、浸水域について
は両者ともに10m、それ以外の地域では10m~2430m
と設定している。東日本大震災以前はレベル1の津波だけを想
定していたが、震災後はレベル2の津波も想定。ただし静岡県
に関しては2級河川への遡上および地震による堤防の破壊も考慮。
レベル1の津
波
発生頻度が比較的高く、(駿河・南
海トラフでは約100年~150年に1
回)発生すれば大きな被害をもたら
レベル2の津波
発生頻度は極めて低いが、発生す
れば甚大な被害をもたらす、あら
ゆる可能性を考慮した最大クラス
研究目的
内閣府による南海トラフ地震被害想定が2012
年に公表され、それを受けて静岡県も東海地震第
4次被害想定を作成・公表したが、両者の比較分
析は行われていない。
そこで、両者の予想津波浸水域の違いを、面積や
標高の面から明らかにし、静岡県内の津波浸水域
の特徴や浸水メカニズムを明らかにする。
研究方法
静岡県統合基盤地理情報シス
テム(GIS)を用いて「静岡県
第4次被害想定津波浸水(南海
トラフ)」と「南海トラフ地
震の津波被害想定」の津波浸
水シミュレーション結果を比
較する。
静岡県GISでの面積計測
例
両者の浸水域の面積や標高
を、静岡県GISと国土地理
院「地理院地図」の計測機
能を用いて計測し、具体的
な特徴や違いを明らかにす
る。
地理院地図での標高計測例
浸水域の比較と
代表的標高
場所:馬込川河口
(浜松市南区)
● 3.7
3.7 ● ● m
4.4
m ●
3.1
m
● 4.0
2.6
m●
m
● 3.2m
m
3.0 ●
白羽町
●
m ● 3.0m
4.1
● 2.3m
m
● 2.7
3.5m ● 3.7
●m ●m
3.7
3.4m
● ●
m 4.2
3.7m
m 5.0● ●
3.1m
●
m
●
馬
3.1
m
込
川
内閣府(2012)浸水域
●
●
●
1.9m
1.6m
●
1.7m
●
●
2.2m
2.3m
●
●
●
1.8m ●
●
●
2.3m
2.8m
2.1m 3.0m
白羽町 2.5m
●
●
●
2.1m2.4m
2.1m
●
2.0m●
1.4m
●
●
●
2.1m
●
●
●
2.2 2.1 ● 1.3m 2.1m
m 1.8m
m
● ●
●
●
●
●
2.0m
2.3m
1.9m
2.4m
2.1m2.0m
●
●
1.6m
2.1m
●
2.5m 2.2m
馬
込
川
●
2.3m
●
● 2.3m
1.8m
●
●
2.8 1.9
m● m
●
2.5 1.7
m
m
静岡県第4次被害想定浸水域
白羽町付近で浸水域の違いが見られた。浜松市の内閣府の浸水
面積は45.16k㎡、静岡県の浸水面積は48.13k㎡で
その差は3.27k㎡であった。(青色マーカーは堤防の標高
場所:太田川河口(磐田市)
●
4.0
4.0m● ●
●m4.0m
● 5.0m
● 4.0
● 3.0m
m
3.0m
●
2.9m
●
●
3.1m
2.3 ●
m
3.8
m●
●
●
太
田 ● 5.7
川 ● 3.0m
m
3.6
2.8
m● ●
m●
3.5
●
m
6.0
● 3.0m
●
● 2.1m
●
●
2.3
m
3.0m
2.3m
●
●
●
●
2.8m
●
2.0m
●
●
●
●
2.4m 1.5m
●
3.1m2.1m
1.6m
●
2.4m 1.5m
2.6m
太
田
川
●
●
2.3m 2.7m
2.2m
5.0 6.0 m
m
m
内閣府(2012)浸水域
静岡県第4次被害想定浸水
域
太田川の両岸で浸水域の違いが見られた。磐田市の内閣府の浸水
面積は15.56k㎡、静岡県の浸水面積は16.08k㎡でそ
の差は0.52k㎡であった。(青色マーカーは堤防の標高値で
場所:浜名湖西岸(湖西市)
●
2.6m
3.1
●
●
●
m
●
●
3.7 3.7m ●
●
2.4
5.0 2.1
m
m
●
m
m ● 2.8
2.7m
内浦
●
m
12.1
●
●
m
● ● 8.4m3.6m
5.0m
6.1m
浜
名
湖
内閣府(2012)浸水域
●
●
● -2.6m-1.9m
-2.1m
●
● 内浦 -2.2m
-2.7m
浜
名
湖
静岡県第4次被害想定浸水
域
内浦付近で浸水域の違いが見られた。湖西市の内閣府の浸水面
積は7.42k㎡、静岡県の浸水面積は7.47k㎡でその差
は0.05k㎡であった。(青色マーカーは堤防の標高であ
浸水面積に関する考察
浜松市
磐田市
湖西市
静岡県全体
浸水面積(km2)
静岡県第4次被害想定浸水域 内閣府(2012)浸水域
48.43
45.16
16.08
15.56
7.47
7.42
168.47
156.17
面積の差
3.27
0.52
0.05
12.3
静岡県第4次被害想定の浸水域の面積は、内閣
府のものに比べて静岡県全体で12.3k㎡広
く、その中で浜松市が最大であり、3.27k
㎡の差があった。
標高に関する考察
標高の平均(m) 標高の範囲(m)
馬込川堤防
3.5
2.3~5.0
浜松市と磐田市の浸水域の違いは 浜松市 馬込川右岸
2
1.3~2.5
川の堤防が関係していることがわ
白羽町
2.2
1.9~3.0
かった。浜松市は、馬込川堤防よ
太田川堤防
3.9
2.8~6.0
磐田市
りも白羽町の標高が1.3m低い。
太田川両岸
2.3
1.5~3.1
磐田市は、太田川堤防よりも両岸
内浦の周り
4.6
2.1~12.1
の標高が1.6m低い。(馬込川
湖西市
内浦
-2.3 (-2.7)~(-1.9)
内浦の堤防
4.1
3.1~5.0
と太田川は2級河川である。)
静岡県の津波シミュレーションは、内閣府のも
のとは異なり、2級河川周辺の標高値の高精度
化ならびに地震動による堤防の事前破壊により
厳しい条件を課しているので堤防を超えた津波
によって浸水域の差が生じたと考えられる。
湖西市の内浦の標高は、周りの標高よりも6.9m低い。内
浦は埋立地であり、標高が周りより低いので津波が浸水する。
まとめ
静岡県と内閣府の静岡県全体の浸水域の面積差は1
2.3k㎡であり、その中で浜松市の面積差が3.
27k㎡で一番大きかった。
静岡県の津波シミュレーションは、内閣府のものよ
り2級河川周辺の高精度化ならびに地震動による堤
防の事前の破壊の条件が厳しいので、堤防を超えた
津波によって浸水域の差が生じる。
今後は、静岡県中部・東部についても詳細
な計測と考察を行う。