対人援助学演習 2006/05/08 障害・行動分析クラスター 対人援助実践における連携と融合を「行動」という枠組 みを用いて「対人援助学」を創造する。 望月昭 ●HP:marumo50 http://www.ritsumei.ac.jp/kic/~mochi/ ●ブログ「対人援助学のすすめ」 http://d.hatena.ne.jp/marumo55/ ●メイル: [email protected] 1 応用人間科学研究科 Graduate School of Science for Human Services 基本コンセプト: 「連携と融合」 これはお題目ではない。対人援助という作業は、 従来の学範や職制分類を超えた新しい枠組みでやら なければ当事者への十全な支援は不可能である。 2 いったん、既存の学範や職制を離れて 実践現場で必要な「対人援助」の機能を 分析してみよう。 ●学範:心理学、臨床心理学、教育学、社 会福祉学 ●職制:臨床心理士、精神保健福祉士、 ケースワーカー、PT、OT、教員、看護師 ★「対人援助学」のもとでの ヒューマンサービス 3 ヒューマンサービスの3つの機能(「障害・行動分析」 のHPから) 広義の「障害」を持つ個人を対象に、各個人がより十全な生 活を送れるようにすることを目標とします。 ●諸活動を可能にするための教育・訓練プログラムの 作成とその実践(教授的アプローチ)、 ●「障害 impairment」があっても先送りすることなく 社会参加を可能にする人的・物理的援助システムの 設計・設定(援助的アプローチ)、 ●それを環境に定着させるために周囲に要請する作業(援 護的アプローチ)、 3つのアプローチの「連携」が可能な実践と研究を行う。 そして新たな「対人援助学」とよべる融合領域を創る 4 対人援助作業(ヒューマンサービス)の3つの 連環的内容(機能) 個人の行動(反応)形成 3 治療・教授 2 Instruction 1 援助 援護 assist advocate 行動成立のための 新たな環境設定 援助設定の定着のため の要請 5 援助、援護、教授 という3つの機能に分ける意義 1)自分が今、対人援助の中で、どの機能を果た そうとしているのか? 2)自分の「立場」(職制や学範)にこだわりすぎ て、当事者に不要な努力を求めたり、当事者不 在であったり、仲間うちでエンドレスな議論をし たり、不要な「理論」を作っていないか? 3)自分の仕事は、「連環的発展」の中で、 進歩しているのか? 後退させてないか? 6 (%) 教授 援助 援護 重複実践 100 75 50 25 0 1970年代 1980年代 1990年代 10年を単位とした実践研究機能の推移 対人援助実践(実証的)研究の「機能」を中心とした メタ・アナリシス (望月昭、2005:「学術フロンティア研究事業報告書」) 7 障害・行動分析クラスターの学習の到達目標 そこで必要な能力やスキルはどのようなものか? 1)絶えず、自分の仕事(理念、方法論)や環境が、当事者 に対してどのような影響を与えているかについて、分析的 に評価し、社会的に表現できること 2)選択された方法や技法は、これまで行われてきたもの に対して、「正常な進化」であると社会的に主張できること 3)「正常な進化」の根拠について、拠って立つ方法論に 対して、自分がなぜそれを選んだのか、社会的に表明で きること 4)社会的表明力:確かな技法・方法とプレゼン能力 8 「行動分析学」という方法論を、このクラスター で「対人援助学」の基本枠組みとして選択する 理由:「行動」を対人援助の基本的対象とする 理由 1)行動という機能的単位を使用することが、 ①個人と環境の相互作用に関する、現在 のところ最も合理的な表現方法である から。 ②当事者への責任を果たせると同時に 「連携」の共通言語足りえる ③われわれ自身の実践・研究について、 対象者の行動と同様の(機能的)枠組 みで記述・評価できる 9 1)-①行動という機能的単位 ★「行動随伴性」という枠組みで行動を捉える 行動 先行状況 先行状況 行動 行動 属性のみの発想 古いS-R心理 結果状況 3点セットで「行動」をとらえる。 個人の属性ではなく、取り巻く「個別の環境」との 10 相互作用として捉える。 1-②連携の共通言語として、 1-③自らの対人援助行動の分析枠として 先行状況 援助行動を 促進する機会 行動 援助行動 結果状況 援助行動を支える 結果状況 本人 援助者 援助者を支える行動や仕組 11 み 1-2)当事者の「属性」に帰さずに、環境条件の表現で 課題解決を行うこと=徹底的楽観主義 ①障害のある当事者や家族に責任を押し付けな いから ②対人援助行動(=何か解決方法があるはず) を勇気づけるから ●「教育したけどダメだった」なぜ? ×そこまで本人の能力(発達)がないから ○何か援助設定や教授方法に不足がある。 12 3)「行動の成立」そして 「本人のやりたい行動の選択肢の拡大」を支援す る、という一般的目標設定が好きだから。 「人を援助する際の倫理 (The ethics of helping people) Skinner, 1978 Given Get “物を与える事ではなく、物を得るということに「生活の 13 質」の目標をおくこと” 「行動を成立させる」 ●その個人に「今」できる行動が正の強化を 受けるように、反応の機会、強化の機会を 設定する(「援助設定」優先) ●必ずしも、本人の努力で行動を成立させるとい う意味ではない 「援助」と「援護」によって、先送りすることなく、今、 行動を成立させる。 (ノーマリゼーションの発想と同じではないか!) 14 障害の軽重に関わりなく、先送りすることなく「今」、 正の強化で維持される行動を保証 「援助」を前提とした行動による社会参加 本人属性 社会参加 ability 社会参加 Support (援助) Strength (援助つき能力)=これが行動 15 大田和弘(2005):太田知的障害をもつ養護学校生徒の就労支援 ―「援助」「援護」「教授」の連環に基づく職場実習支援を目指した 学生ジョブコーチシステムの試行とジョブコーチのフェイディングに 関する実践研究― 金山好美(2005):通常学級にいるADHD児への受容的環境を用い た特別支援についての考察 村上勝俊(2005):痴呆性高齢者のQOL:選択機会設定による痴呆 性高齢者の活動性の増加の検討 上田陽子(2006):長期「ひきこもり」への行動分析学的理念に基づく 援助:ファーストステップ・ジョブグループ3年間の実践から 寺崎幸子(2006):ビッグイシューの販売支援をつうじた援助つき就労 支援の意味― 顧客と販売員仲間による販売情報のフィードバックが 及ぼす効果について ― 16 1期生諸君の研究 治療・教授 ・精神障害者のコミュニケーション改善を目指して -精神科デイケア社会生活体験プログラムグループ の試み- ・精神疾患を持つ人たちへのInteractive MusicMakingのアプローチ ・育児不安を抱える母親への集団精神療法 ・慢性疾患患者における服薬コンプライアンスの向上 -機能的アセスメントに基づく援助- 17 〈治療・教授者への援助〉 ・ICU入室患者における状況的危機回避への介入-ケ アリング行動のためのパフォーマンス・マネージメントの 探求 ・障害のある個人に対する自己決定の支援 -教育サービスプロバイダーに対する「自己決定支援 パッケージ」の検討- 〈援助設定(ハード)〉 ・聴覚障害と知的障害がある生徒における携帯メールの 使用 ・コンピュータ・リテラシー教育における効果的なトレーニ ング・パッケージ開発の試み 18
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