第3回講義 マクロ経済学初級I タイプIIクラス 白井義昌 市場および需要と供給(続き) •競争市場での供給の決定要因 •価格と販売量はどのように決まるか? •希少な資源配分について市場(価格) はどのようなやくわりを果たすか? 供給量の決定要因 • ある財の供給量は、 – – – – その財の価格に依存する。 その財の生産要素(投入物)価格に依存する。 その財の生産技術に依存する。 期待に依存する。 • 行動仮説:生産者は利潤を最大にするよう に供給量を決定する。 • 仮定:生産される財の価格以外の要因は 変化しないとする。 Ceteris Paribus • 仮定:追加的生産物の生産費用は生産量 が増えるにしたがって増加すると仮定する。 限界費用逓増の仮定 限界費用表 生産費 1 2 3 4 5 生産量 限界費用曲線 生産費 X単位の生産を したときには赤い 面積が総生産費 になる。 X 生産量 企業の供給曲線 • 生産物価格がある水準Pで与えられたとき、 どのような供給量を設定するのが利潤最 大化になるか? • 価格と限界費用が一致する水準が利潤最 大化になる。 • すなわち、ある企業の限界費用曲線はそ の企業の供給曲線である。 限界費用曲線と利潤最大化 価格がPで与えられ ているとき X*単位の生産をする のが利潤最大化に なる。利潤は青い 面積示される。 限界費用 価格 P X* 生産量 供給曲線 生産物価格 限界費用逓増の 仮定の下では 供給曲線は右上がりに なる。 供給法則 X 供給量 供給曲線のシフト • 技術進歩:技術進歩により、以前より少な い投入物で生産が可能になれば、限界費 用は減少する。→供給曲線の右シフト • 投入物価格の変化:石油など生産要素(投 入物)価格が上昇(下落)すれば限界費用 は上昇(下落)する。→供給曲線の左(右) シフト 市場の供給曲線 • 企業の供給曲線を市場に参加している企 業の供給量についてたしあわせたもの。 需給均衡 • 均衡:需要量と供給量が一致するような状 態。 • 均衡価格:均衡状態で成立している価格 • 均衡需給量:均衡状態での需要量または 供給量 市場均衡 価格 供給曲線 均衡価格 需要曲線 均衡需給量 需要量および 供給量 超過需要、超過供給 • 均衡価格より高い価格が設定されていれ ば超過供給が発生する→財が余っている ために価格低下圧力がかかる。 • 均衡価格より低い価格が設定されていれ ば超過需要が発生する。→財が足りない ために価格上昇圧力がかかる。 • 超過需要、超過供給がなくなるような価格 調整圧力がかかる。需要と供給の法則 高価格Pの下での超過供給 価格 供給曲線 P 均衡価格 需要曲線 均衡需給量 需要量および 供給量 低価格Pの下での超過需要 価格 供給曲線 均衡価格 P 需要曲線 均衡需給量 需要量および 供給量 供給曲線のシフトと均衡の変化 • 石油価格の上昇によって供給曲線が左シ フトしたとする。 • これによって均衡価格は上昇し、均衡需給 量は減少する。 価格 石油価格上昇後 供給曲線 石油価格上昇前 需要曲線 需要量および 供給量 内生変数と外生変数 • 前スライドでの石油価格はこの需要と供給 モデルの与件(外生変数)である。 • 当該財の均衡価格と均衡需給量は需要と 供給のモデルによって定まるもの(内生変 数)である。 比較静学 • 外生変数が変化したとき、内生変数がい かに変化するかを検討することを比較静 学という。 マクロ経済学 マクロ経済学のデータ 目標 • GDP 国内総生産 • 物価指数 • 実質利子率、名目利子率 を理解する. GDPおよびGNP 国内総生産 • GDP Gross Domestic Product 国内総生 産: 一定期間に一国内で生産されたすべての 最終生産物の市場価値 • 最終生産物 • 中間生産物 • 付加価値 国民総生産 • Gross National Product 一定期間に国民によって生み出されたすべ ての最終生産物の市場価値 1年間に一国内で生み出された 付加価値の流れ 政府部門、海外部門が ないモデル経済 国内 消費 総生産 GDP 財・サービス市場 生産者 家計 労働 土地 所得 資本 投資 生産への 投入 生産要素市場 賃金・地代・利潤 国内で生み出された付加価値 はだれが購入しているか? • GDP→消費+投資 国内で生み出された付加価値 はだれの所得になっているか? • 被雇用者の労働賃金 • 土地保有者の地代 • 資本の保有者の資本レンタル料(株式配 当、貸し付け利子収入) • 企業内留保 1年間に一国内で生み出された 付加価値の流れ 海外部門 国内 政府 消費 輸入 政府購入 輸出 総生産 GDP 財・サービス市場 生産者 家計 労働 土地 所得 資本 投資 生産への 投入 賃金・地代・利潤 生産要素市場 労働・資本 国内で生み出された付加価値 はだれが購入しているか? • GDP →消費+投資+政府購入+海外への輸出 しかし、消費や投資、政府購入の中には海外 で生産された財サービスが計上されている。 したがって、海外からの輸入品をそれらから さしひけば、 GDP= C + I + G + EX - IMP 消費 投資 政府購入 輸出 輸入 =C+I + G + NX 純輸出 (貿易収支) GDPとGNP • GDPに海外からの要素所得の受け取りをくわ え、海外への要素所得の支払いをさしひけば GNPになる。 • GNP=GDP+NFP (Net Factor Payment from abroad) =C+I+G+NX+NFP =C+I+G+CA (Current Account 経常収支) 貯蓄と純資産 純資産(wealth) • 家計の純資産 = 家計の資産(asset)か ら 負債(liability)を差し引いたもの • 国民純資産‘National wealth) = 国内 の家計、企業、政府の全てが持つ純資 産をたしあわせたもの • 貯蓄‘savings) が純資産を増加させる • 純資産はストックの概念で貯蓄はフ ローの概念 総貯蓄の計測 • 貯蓄‘Saving) = 経常所得(current income) – 経常支出(current spending) • 貯蓄率(Saving rate) =貯蓄 / 経常支出 民間貯蓄(Private Saving) • 民間貯蓄 = 民間可処分所得 (private disposable income) – 消 費支出 Spvt = (Y + NFP - T + TR + INT) –C 政府貯蓄 (Government Saving) • 政府貯蓄 = 政府の純所 得(net government income) – 政府の支出 • Sgovt = (T - TR - INT) - G • 政府貯蓄 = 政府の財政黒字(government budget surplus) = 政府収入 – 政府支払 い • 政府収入 = 税収tax revenue (T) • 政府支払い = 政府の最終生産物購入(G) + 移転支払い(transfers: TR) + 政府債務 の利払い (interest payment on government debt: INT ) • 財政赤字 Government budget deficit = -Sgovt 国民貯蓄(National saving) • 国民貯蓄 = 民間貯蓄 + 政府貯蓄 • S = Spvt + Sgovt = [Y + NFP - T + TR + INT - C] + [T - TR - INT - G] = Y + NFP - C - G = GNP - C - G 国民貯蓄は何に利用されるか? • S = I + (NX + NFP) = I + CA 総貯蓄=総投資 S = Y + NFP - C – G および Y = C + I + G + NX の関係から上式が導出 される CA = NX + NFP =経常収支 (current account balance) • Spvt = I + (-Sgovt) + CA { S = Spvt + Sgovt の関係から} 貯蓄の恒等式より、民間貯蓄は以下の三 つの項目にあてられていることがわかる: (a) 投資 (I) (b) 財政赤字 (-Sgovt) (c) 経常収支 (CA) Figure 2.01 The uses-of-saving identity in the United States, 1959-1998 総貯蓄と国民純資産の関係 ストックStocks とフロー flows • フローの経済変数: 一定期間内に計られた経済変 数 (GDP, 所得, 貯蓄, 投資,財政赤字など) • ストックの経済変数: 一時点で計られた経済変数 (貨幣の数量(残高), 資本ストック,政府債務など) • フローの経済変数はそれに対応するストックの経 済変数の一定期間内の変化量をあらわす • 国民純資産はストック、総貯蓄はフローの経済変 数 国民純資産(National Wealth) 国民が持つ純資産は国内にあるものと海 外にあるものにわけられる • 国内純資産:国民が国内に所有する資産 から負債を差し引いたもの • 対外純資産 = 対外資産 (国民が所有す る外国株、外国債、資本財など) から 対 外負債(外国人が所有する邦資産:国内 株、国債、資本財) 国民純資産の変化は どのような原因で起こるか? (1) 既存の資産価値と債務価値の変化 (資産価格の変化や資本財の減耗など) (2) 国民貯蓄 (S = I + CA) のぶんだけ 国民純資産は当該期間内に増加する
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