第2回講義 - Faculty Server, Faculty of Economics, Keio

第2回講義
文、法 経済学
相互依存と貿易の利益
•お互いに交換することで、皆が利益
を得るしくみを理解する。
•絶対優位、比較優位を理解する。
•貿易の利益が比較優位によってど
のように説明されるかを理解する。
簡単なモデル経済
• FarmerとRancherの二人がいるとする。
• ともに週40時間の労働力を持つとする。
• 生産可能な財は肉と芋の二つだけである
とする。
単位労働投入量
1ポンドの肉を
生産するのに
かかる時間
Farmer
20
Rancher
1
1ポンドの芋を
生産するのに
かかる時間
10
8
労働生産性
40時間で生産
できる肉の量
40時間で生産
できる芋の量
Farmer
2
4
Rancher
40
5
Farmerの生産可能性曲線
肉(ポンド)
2
A
1
2
4
芋(ポンド)
Rancherの生産可能性曲線
肉(ポンド)
40
20
B
2.5
5
芋(ポンド)
絶対優位(absolute advantage)
• ある主体(人、企業、国)の生産性を他の
主体と直接比較して、生産性が高い主体
に絶対優位があるという。
• 例:RancherはFarmerにくらべて肉と芋、両
方の財の生産について絶対優位にある。
機会費用と比較優位
Opportunity Cost and
Comparative Advantage
• ある財の生産についての機会費用はその
財を生産するためにどれだけの他の財の
生産をあきらめたかによって測られる。
• 1単位の肉を生産するのにかかる機会費用。
「芋で測った肉の生産費」
Farmer:2単位の芋
(1単位の肉生産には20時間かかる、他方、1単
位の芋生産には10時間かかる。)
Rancher:1/8単位の芋
(一単位の肉生産には1時間かかる、他方、一単
位の芋生産には8時間かかる。)
相対的にRancherの方が、Farmerよりも肉の生
産費が少ない。
Rancherは肉の生産に比較優位がある。
• 1単位の芋を生産するのにかかる機会費用。
「肉で測った芋の生産費」
Farmer:1/2単位の肉
(1単位の肉生産には20時間かかる、他方、1単
位の芋生産には10時間かかる。)
Rancher:8単位の肉
(一単位の肉生産には1時間かかる、他方、一単
位の芋生産には8時間かかる。)
相対的にFarmerの方が、Rancherよりも芋の
生産費が少ない。
Farmerは芋の生産に比較優位がある。
特化と貿易
Specialization and Trade
• それぞれの主体はその比較優位にある財
の生産に特化(生産を集中化)し、他の主
体とその財を交換すると利益を得ることが
できる。
• 比較優位の原理
交換によって両者とも生産可能
性曲線の外側での消費が可能
になる
肉(ポンド)
3
40
2
1
24
21
A
2
Farmer
3
4
23 5
Rancher
芋(ポンド)
市場および需要と供給
•競争市場とは何か?
•競争市場での需要の決定要因
•競争市場での供給の決定要因
•価格と販売量はどのように決まるか?
•希少な資源配分を市場(価格)はどの
ようなやくわりを果たすか?
競争市場とは?
Competitive Markets
• 多数の売り手と買い手が取引をする場で
あり、売り手買い手ともに取引価格に影響
を及ぼせない取引場
完全競争市場
• 完全競争(perfect competition)
取引主体は価格受容者(price taker)であ
るような市場を完全競争市場という。
市場価格より高い価格をつけた場合どうなる
か?
市場価格より低い価格をつけた場合どうなる
か?
• 完全競争市場では、主体は市場価格のも
とに好きな取引量を決定することしかでき
ない。
独占市場、寡占市場
• 売り手、または買い手が少数である場合、主
体は自らの売値または買値をつけることが
できる。
• 売り手が一人の場合、売り手にとって一番
利益になるような価格をつけることが売り手側
にできる。「独占市場」
• 売り手が少数の場合、競争があまり激しくな
くやはりある程度、価格を制御できる。
「寡占市場」
需要の決定要因
• ある財の需要は
– その価格に依存する。
需要法則:その財の価格が上昇すればその財
の需要量は減少する
– 消費者の所得にも依存する。
需要に対する所得効果
所得が増えれば需要が増える財:正常財
所得が増えれば需要が減少する財:劣等財
需要の決定要因
• ある財の需要は
– その他の財の価格にも依存する。
財Aの価格が上昇したとき、財Bの需要が増
える場合、財AとBは代替財であるという。
その逆である場合補完財であるという。
– 消費者の嗜好にも依存する。
– 消費者の将来の期待にも依存する。
需要曲線
• 与えられた諸価格のもとで当該主体がどれ
だけの量を需要するかを表すグラフが需要
曲線である。「その財の価格と需要量の関
係」
• 行動仮説:主体は自らの利益を最大化する。
• 仮定:その財の価格以外の要素(所得、嗜好、
期待など)は何も変わらないとする。
Ceteris Paribus
限界効用表
貨幣単位で測った
アイスクリームの満足度
円
1
2
仮定:限界効用は逓減する。
Decreasing Marginal Utility
3
4
アイスクリーム
の消費量
限界効用表
貨幣単位で測った
アイスクリームの満足度
円
X単位のアイスクリームを
消費したときの効用は貨幣
単位にして緑の面積で表せる。
X
アイスクリーム
の消費量
利益(効用)最大化
• ある価格を与えられて、この消費者はどれ
だけ消費するのがよいと考えるか?
• 仮説→消費から得られる効用からそのた
めにかかった費用を差し引いた残り、すな
わち消費者余剰を最大にする。
限界効用表
貨幣単位で測った
アイスクリームの満足度 価格がPであたえられたとき、
円
需要量をX*にすることが
消費者余剰(青い面積)
を最大化することになる。
赤い面積はX*の消費にかかった費用。
P
X*
アイスクリーム
の消費量
限界効用表
貨幣単位で測った
アイスクリームの満足度 需要量をX*よりすくなくすると
円
消費者余剰(緑の面積)は小さくなる。
P
X’
X*
アイスクリーム
の消費量
限界効用表
貨幣単位で測った
アイスクリームの満足度 需要量をX*より多くすると
円
消費者余剰は小さくなる。
消費者余剰は青の面積から紫の面積を
差し引いた面積であらわされる。
P
X*
X’
アイスクリーム
の消費量
需要曲線
• 価格と限界効用が等しくなるような需要量
を決定することが消費者にとって望ましい。
• 限界効用曲線は需要曲線になる。
価格を与えられて、最適な需要量を示す
グラフ
需要曲線のシフト
• Ceteris Paribusの仮定で一定にしていたものが変
化したとき、需要曲線はシフトする。
• 他の財の価格の変化、
代替財の価格が上昇(下落)すれば、この財の
需要曲線は右(左)シフトする。
• 所得の変化、
正常財(劣等財)については所得の上昇は需要
曲線の右(左)シフトをもたらす。
• 嗜好の変化、
この主体がこの財を好むようになれば需要曲線
は右シフトする。
市場需要曲線
• 市場参加者のそれぞれの需要曲線を需要
量についてたしあわせれば、市場需要曲
線になる。
市場需要曲線
価格
Aさんの需要
曲線
Bさんの需要
曲線
価格
価格
需要量
市場需要曲線
需要量
市場参加者はAさんとBさんだけの場合
需要量
供給量の決定要因
• ある財の供給量は、
–
–
–
–
その財の価格に依存する。
その財の生産要素(投入物)価格に依存する。
その財の生産技術に依存する。
期待に依存する。
• 行動仮説:生産者は利潤を最大にするよう
に供給量を決定する。
• 仮定:生産される財の価格以外の要因は
変化しないとする。 Ceteris Paribus
• 仮定:追加的生産物の生産費用は生産量
が増えるにしたがって増加すると仮定する。
限界費用逓増の仮定
限界費用表
生産費
1
2
3 4
5
生産量
限界費用曲線
生産費
X単位の生産を
したときには赤い
面積が総生産費
になる。
X
生産量
企業の供給曲線
• 生産物価格がある水準Pで与えられたとき、
どのような供給量を設定するのが利潤最
大化になるか?
• 価格と限界費用が一致する水準が利潤最
大化になる。
• すなわち、ある企業の限界費用曲線はそ
の企業の供給曲線である。
限界費用曲線と利潤最大化
価格がPで与えられ
ているとき
X*単位の生産をする
のが利潤最大化に
なる。利潤は青い
面積示される。
限界費用
価格
P
X*
生産量
供給曲線
生産物価格
限界費用逓増の
仮定の下では
供給曲線は右上がりに
なる。
供給法則
X
供給量
供給曲線のシフト
• 技術進歩:技術進歩により、以前より少な
い投入物で生産が可能になれば、限界費
用は減少する。→供給曲線の右シフト
• 投入物価格の変化:石油など生産要素(投
入物)価格が上昇(下落)すれば限界費用
は上昇(下落)する。→供給曲線の左(右)
シフト
市場の供給曲線
• 企業の供給曲線を市場に参加している企
業の供給量についてたしあわせたもの。
需給均衡
• 均衡:需要量と供給量が一致するような状
態。
• 均衡価格:均衡状態で成立している価格
• 均衡需給量:均衡状態での需要量または
供給量
市場均衡
価格
供給曲線
均衡価格
需要曲線
均衡需給量
需要量および
供給量
超過需要、超過供給
• 均衡価格より高い価格が設定されていれ
ば超過供給が発生する→財が余っている
ために価格低下圧力がかかる。
• 均衡価格より低い価格が設定されていれ
ば超過需要が発生する。→財が足りない
ために価格上昇圧力がかかる。
• 超過需要、超過供給がなくなるような価格
調整圧力がかかる。需要と供給の法則
高価格Pの下での超過供給
価格
供給曲線
P
均衡価格
需要曲線
均衡需給量
需要量および
供給量
低価格Pの下での超過需要
価格
供給曲線
均衡価格
P
需要曲線
均衡需給量
需要量および
供給量