11・ローカルな文化を再考する 2011.12.14. 成蹊・文化人類学Ⅱ 東京から長崎に行ってけっこう驚いたもの 11・ローカルな文化を再考する 2011/12/14 - [3] 食文化の統一化と多様性 テレビなどのメディアによって全国の食文化は徐々に統 一化されてきてはいるが、地域ごとの多様な食文化が完 全に失われたわけではない お正月(年末年始)など、特別な行事のときの食には、 まだまだ地域性は強くみられる このほか「観光」という切り口でみると、より意図的に地域独特 の食文化は強調されるし、新しいものも作られている cf. B-1グ ランプリ 地域差が顕著な例としては「お雑煮」を第一に挙げるこ とができる(次スライド&配付資料) お雑煮の多様性 11・ローカルな文化を再考する 2011/12/14 - [5] なぜこんなに多様なのだろうか? どこか中央(京都など)が発信源となって全国に伝わっ ていった文化が、徐々に崩れていってしまった? こういった「伝言ゲームの崩壊」イメージは、間違いではないが それだけが原因ではない 「一年の節目に、餅を使ったごちそうの汁を作り、みん なで食べる」という骨組みと、それぞれの地域ごとにあ った「ごちそう」の材料とが組み合わさったのではない か? もともと地域ごとに、自然環境や人文環境にしたがって、さまざ まな食材が利用されていた……「多様な文化」 そこに「お雑煮」という骨組みが伝わってきて、現地の食材と連 鎖反応を起こした 11・ローカルな文化を再考する 2011/12/14 - [6] 地域ごとの食文化・家庭ごとの食文化 お雑煮を例にとると、それは地域ごと・家庭ごとにおそ らく継承されてきたのだろうと推測される 部分的には、明治よりもさらに遡るルーツもあるだろうし、比較 的最近に追加された要素もあるだろう そして、1950-60年代以降、さまざまな地方から都市へ 流れ込んできた若者(=みなさんの祖父母、両親)は、 異なる地域同士で結婚することがあたりまえになった 関東出身のお父さんと関西出身のお母さんとの間で繰り広げられ る(繰り広げられた)雑煮文化争い……雑煮の多様化→画一化 一方で、購買消費型文化の浸透は、流通する商品に縛られて画一 化する一方で、「これまでとはちょっと違ったお雑煮を作ってみ ること」のハードルを下げた……雑煮の画一化→多様化 11・ローカルな文化を再考する 2011/12/14 - [7] 文化の画一化と多様性 多様・雑多 均質化・画一化 多様化 & さら なる画一化 11・ローカルな文化を再考する 2011/12/14 - [8] 近代における文化の均質化・画一化 1. 積極的に法律で統一したりすることによって進行 ‒ ‒ 2. 教育やテレビ・ラジオといったマス・メディアの浸透 によって明示されずに進む ‒ ‒ 3. 言語や暦・時間などは国家的に明示的に統一 不道徳的・封建的な要素を持つ風習(ある種のお祭りなど)は 明示的に禁止 ナショナリズムと結びつく「さくら」 「清潔」に関する概念の浸透など 流通・交通の発達によって知らず知らずのうちにいつ のまにかそうなってしまう ‒ ‒ 着物(和装)から洋服(洋装)への移行 日本全国のお雑煮の画一化など 11・ローカルな文化を再考する 文化を支える単位(1) 2011/12/14 - [9] 血縁 kinship network 11・ローカルな文化を再考する 文化を支える単位(2) 地縁 local network 2011/12/14 - [10] 11・ローカルな文化を再考する 文化を支える単位(3) 2011/12/14 - [11] 社縁 association network 11・ローカルな文化を再考する 個人が所属する集団 ひとはさまざまな集団に 所属している=さまざま な文化と関わっている こうした集団が形成する 「場」を通して文化は共 有される 「メディア」とはもとも と「媒介=つなぐもの」 という意味だとすると、 こうした集団は文化を共 有するためのメディアで あるとも言える 2011/12/14 - [12] 11・ローカルな文化を再考する 2011/12/14 - [13] 集団・メディア・文化:この項はとても大事 もともとは「家族・親族」や「同じ地域のひとびと」が 文化を共有するうえでの「メディア」であったといえる たとえば原始人や縄文人を思い浮かべてればわかるだろう 「同じメディア(集団)にかかわるからこそ同じ文化を 持つ」ということを裏返してみると、「違うメディアに かかわっていれば文化は違って当然」ということになる だからこそ、かつては地域ごと・家庭(家族)ごとにさ まざまな文化があったのだ 今のわたしたちの文化が、たとえば国単位で共有されて いるのは、国単位の「メディア」が成立したからにほか ならない=ある「国・民族」の文化を成立させるには、 それをつなぐ「メディア」がぜひとも必要になる 11・ローカルな文化を再考する 2011/12/14 - [14] 1950-60年代の変化 日本史では1868年・1945年が日本の政治制度の大変革 期として挙げられるが、ふつうのひとびとの生活に注目 すると、1890-1900年代と、1950-60年代が大きな変 化の時代にあたるといえる 1890-1900年代は、国民国家を支える諸制度=メディア (学校教育、新聞/郵便、鉄道交通、地方制度、軍事制度 など)がほぼ国の隅々まで行き渡った時期 1950-60年代は、生活の自給自足的な部分の比率と購買 消費的な部分の比率が逆転し、大量生産・大量消費型社 会へと転換した時期
© Copyright 2024 ExpyDoc