テレフタル酸入り寒天を用いた化学プローブ法によるOH ラジカルの観測

テレフタル酸入り寒天を用いた化学プローブ法による OH ラジカルの観測
Measurement of OH radical by chemical probe method using agar containing terephthalic acid
大分大 工 木下 大樹、神田 真治、赤峰 修一、市來 龍大、* 金澤 誠司
Oita Univ. : D. Kinoshita, S. Kanda, S. Akamine, R. Ichiki and S. Kanazawa
1.はじめに
ら,照射時間の経過とともに蛍光強度が増してい
大気圧プラズマジェットは発生の簡便さや利用
き,その範囲も大きくなったが,その拡散する距
性の良さから広く使用されている。特に,菌を培養
離には限度があった。Fig.2(b)に示している 10 分
した寒天培地にプラズマジェットを照射して滅菌
間のジェット照射では寒天表面からの蛍光の拡散
効果を調べる研究では,プラズマ源としての有用
深度は約 9mm であった。
性が認められている。しかし,プラズマジェットが
さらにジェットが当たっている寒天の表面には
周囲の空気を巻き込みながら発生する際に生成す
くぼみが見られる。寒天は一度凝固すると約 70℃
る活性酸素や活性窒素の界面や培地中での分布特
以上にならなければ溶解しないため,寒天が溶け
性については重要であるが,まだ十分な知見が得
て変形したのではなく,同じ地点にジェット流に
られていない。我々はこれまでにテレフタル酸が
よる圧力が加わり続けたために変形したと考えら
OH ラジカルをトラップして蛍光を発することを
れる。
He gas (2.0 L/min)
利用した化学プローブ法による OH ラジカル検出
手法で液中 OH ラジカルの測定を可能にしてきた
[1]。本研究では大気圧 LF プラズマジェットを寒
Glass tube
天培地に照射して,寒天中に供給される OH ラジ
カルの測定を行ったので報告する。
Electrode
2.実験方法
Fig.1 に大気圧 LF プラズマジェット発生装置
power supply
Plasma jet
と寒天を入れたキュベットの概略図を示す。ガラ
ス管に幅 10mm のリング状電極を 10mm の間隔
で設置しており,周波数 20kHz,電圧 6kV0-P の低
LF/HV
10mm
Agar in
quartz cuvette
30mm
周波・高電圧を印加することで大気圧プラズマジ
Fig.1 Experimental setup.
ェットを生成した。このプラズマジェットを
NaTA(テレフタル酸二ナトリウム)入り寒天の表
面へ照射した。プラズマジェットから寒天表面ま
での照射間距離は 10mm とした。化学プローブ法
による OH ラジカルの蛍光観測は,励起光源とし
て紫外線ランプ(波長 312nm)を用いて行った。
3.結果と考察
Fig.2(a)はプラズマジェット照射の様子であり,
Fig.2(b)は照射 10 分後の寒天からの蛍光の様子で
(b) Fluorescence after 10 min
plasma jet irradiation
irradiation
Fig.2 Plasma jet and agar in quartz cuvette.
(a) plasma jet
ある。Fig.2(b)を見ると,OH ラジカルが寒天中の
参考論文
テレフタル酸にトラップされてプラズマジェット
[1] S. Kanazawa, T. Furuki, T. Nakaji, S. Akamine, R.
照射地点を中心に半楕円状に蛍光が広がっている
Ichiki: Inter. Journal of Plasma Environmental Science
ことがわかる。時間経過による蛍光分布の観測か
& Technology, Vol.6, No.2, pp.166-171 (2012).