SURE: Shizuoka University REpository

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http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/
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Author(s)
プラスチックへのプラズマコーティングの研究
安間, 英任
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2002-03-23
http://dx.doi.org/10.14945/00006437
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電子科学研究科蒙灘灘灘灘難1
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静岡大学博士論文
プラスチックへのブラズマコー一ティングの研究
ズ乙1
掌l
織
1 、
畔 tU脚㎝醐剛 噛
2002年2月
大学院電子科学研究科
電子応用工学専攻
安間 英任
概要
本論文は、プラズマ励起化学気相堆積(PECVD)法を用い、有機材料を原
料としたプラスチック上へのSic、及びZnO/SiO2薄膜堆積に関するもの
である。SiC及びSiO2薄膜の原料としてはヘキサメチルジシラン(HMD
S)、ZnO薄膜の原料としてはジエチル亜鉛(DEZ)が用いられた。
本実験では、高周波(RF)カソードプラズマ堆積法による薄膜堆積を行った。
カソード電極周辺にはプラズマ中のイオン粒子と電子がもつ運動速度の差からイオ
ンが過剰なイオンシースと呼ばれる領域が発生する。カソードプラズマ堆積法では、
このイオンシース領域を利用するので、複雑な凹凸形状の基板上へ均一な膜厚、膜
質の薄膜堆積が可能であることがわかった。
また、このカソードプラズマ堆積法を用いた薄膜堆積においては、基板温度を
加熱することなく、アモルファスSic薄膜、Sio2薄膜及びZnO薄膜が得ら
れることが見いだされ、各薄膜の堆積条件等が研究された。
さらに、ポリカーボネート樹脂に堆積させたSic膜及びZnO/SiO2積層
膜は、プラスチックコート材として耐擦傷性能と耐紫外線性能の改善をはかること
ができることがわかった。
堆積したSiC薄膜はRF出力、プロセス温度、プロセス圧力の調整により、
膜中に含まれるSi元素比率を向上させることができ、紫外線カット性能を調整で
きることがわかった。
また、ZnO/SiO2積層膜はSiO2の表面層によってポリカーボネート樹
脂の表面硬度を著しく向上させることが可能であり、且つZnO層は、350nm
以下の紫外線を吸収し、紫外線による光劣化を防止出来ることがわかった。ポリカ
ーボネート樹脂に本2層コートを行ったものはプラスチックの耐光性試験において、
透過率、耐黄色変化、耐擦傷特性において優れた特性が得られ、本薄膜コート技術
は、プラスチック上へ耐紫外線及び、ハードコートの技術として有用なものである
ことが示された。
Ahs重m髄ct
This report deals with the deposition of SiC or ZnO/SiO2 thin films on plastics
made from organic materials by Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition
(PECVD). SiC and SiO2 thin films were made from hexamethyldisilane(HMDS),
and ZnO thin film was made f士om diethylzinc(DEZ).
Ih this study, thin films were deposited by use of the Radio Frequency(RF)
cathode plasma deposition method. Around the cathode electrode, an area that has
uniform thickness is generated due to the therma1 velocity difference between ions
and electrons. This area is called ion sheath, which was fbund to enable us to
deposit thin films of uniform thic㎞ess and characteristics on plastic parts with
complicated shapes.
It was also found that amorphous SiC thin films and ZnO thin films could be
obtained without raising the substrate temperature by Cathode Plasma Deposition
Method. Therefore, various deposition conditions were investigated.
It was found that SiC or ZnO/SiO2−coated polycarbonate plates have better
abrasion−proof and ultraviolet degradation−proof. Especially, ZnO/SiO2 thin film
can contribute to the improvement of the hardness of polycarbonate surface due to
SiO2 surface layer, and also of ultraviolet degradation protection because ZnO film
can absorb ultraviolet of the wavelength shorted than 350nm. ZnO/SiO2, double−
coating on polycarbonate can therefore contribute to the improvement of light
transmittance, discoloration−proof and abrasion−proof. It is confirmed that.these
coatings are useful for the practical use for plastic coating technology.
ii
目次
第1章 序諭 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 1
L1 プラスチックへのコーティング ー一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 2
1,1,1 コーティングの背景 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 2
1.1.2 コーティングの方法と特徴 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 4
1.2 プラズマ励起化学気相堆積方法の背景 一一一一一一ww”一一一一一一一一一一一一一一一一一一 10
1.3 研究の概要、目的 一一一一一一一一・一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 11
1.4論文の構成 一一一一一一一一一一一一一一・一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 13
第2章 プラスチック表面保護のためのプラズマコーティング ー 15
2.1プラズマCVD法の原理 一一一一一一一…一一一一一一一一一一…一一一一一一 17
2.1.1容量結合型(CCP)CVDと誘導結合型(ICP)CVD−一一一一一一一一一一一 17
2.1.2ヘリコン波励起プラズマ源(HWP)CVD−一一一一一一一一一一一一一 19
2.1.3 電子サイクロトロン共鳴プラズマ源(ECR)CVD −一一一一一一 19
2.1.4その他 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一t−一一一一一一一一一一一一一一一 20
2.2平行平板型プラズマCVDの特徴と利点 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 21
2.3 ハードコートのためのCVD薄膜 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 22
2.4 UVカットの為のCVD薄膜 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 24
第3章 実験方法 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 27
3.1カソードプラズマによる薄膜堆積 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 27
3.2 有機i原料の特徴及び供給方法 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一”一一一一一 30
3.3 堆積薄膜の解析手法 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 35
第4章 カソードプラズマCVDによる薄膜堆積 一一一一一一…一一…一一一一一 39
4.1イオンシース発生メカニズム ー一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 40
4.2カソード堆積法 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 44
iii
4.3 堆積膜の膜厚の均一性と密着強度の均一性 一一一一一一一一一一一一一一一一一一 46
4.4 まとめ 一一一一一一一・一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 51
第5章 ヘキサメチルジシランからのSic薄膜の堆積一…一…一一一一…一一 52
5.1PECVI)の薄膜堆積の原理とSic薄膜の堆積過程 一……一一一一一一一一…一一52
5.2 成膜条件とSiC薄膜の特性 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 56
5.3 ポリカーボネート樹脂へのSiC薄膜の堆積 一一一一一一一一一一一一一一 67
5.3.1 堆積膜の表面形態 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 67
5.3.2堆積膜の密着強度 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 69
5.3.3堆積膜の表面擦傷1生と紫外線カット特性 …一一一一一一一一一一一一一一 70
5.3.4ポリカーボネート基板の耐光性能一一一……一一一一…一一一一一一一一一一71
5.4 まとめ 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一・・一一一77
第6章 ZnO/Sio2薄膜の堆積 一一一一一一一一一一一一…一一一一一一一一一一一一一…一一一一78
6.1ジエチル亜鉛からのZnO薄膜の堆積 一一一一一一一一一一一一一一一・一一一一一一一一一一78
6.L1成膜条件とZnO薄膜の堆積特性 一・一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一・一一ww−一一一一一 78
6.1.2ZnO薄膜の特性 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 82
6.1.3 ジエチル亜鉛からのZnO薄膜堆積過程 一一一一一一一一一一一一一一一一 86
6.1.4 ポリカーボネート樹脂へのZnO薄膜の堆積 一一一一一一一一一一一 88
6.2 ヘキサメチルジシランからのSiO2薄膜の堆積 一一一一一一一一一一一一一一一一一 96
6.2.1SiO2薄膜の成膜条件と膜特性一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 96
6.2.2 ポリカーボネート樹脂へのSiO2薄膜の堆積 一一一一一一一一102
6. 3 ZnO/Sio2薄膜の積層堆積 一一一一…一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一104
6.4 まとめ 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一112
第7章 結論 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一113
謝辞 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一115
参考文献 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一116
研究発表リスト ー一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一122
iv
第1章序論
電子工業のこの半世紀間の発展はめざましいものがある。その中で特に真空を利用し
た薄膜材料作製や加工プロセス技術が大きな役割を果たしてきた。それは、従来のウエ
ットな材料プロセスが物理的あるいは化学的ドライプロセスに置き代わり、純度や制御
性の良いプロセスが可能になったからである。さらに、真空中でのプロセスを低温で効
率的にあるいは熱的非平衡状態で進行させることのできるプラズマ化学反応プロセスが、
20∼30年ほど前より注目され発展してきた。
薄膜電子材料プロセスにプラズマ化学反応の利用が提案されたのは1960年代後半
で、窒化シリコン膜作成と、それに続いてエッチィングの研究が始まった。その後、1
970年代半ばにはプラズマCVD装置が集積回路プロセス用に商品化され、他方でア
モルファスシリコンが新しい材料として登場した。また、1970年代後半より、円筒
型プラズマ装置によるドライエッチィングがDRAM作成において利用されるようにな
った。同じ頃から、プラズマCVD法による硬質カーボン膜の研究も進められ、そして
1980年代に入ってダイヤモンドの結晶の合成がプラズマ化学反応プロセスによって
可能となったのである。
この様に、プラズマを応用した技術は、様々な分野において研究され、現在もあらゆ
る産業において必要不可欠な技術にまで成長し、今後の更なる技術革新の鍵を握ってい
るといっても過言ではない。
本論文では、これらのプラズマ技術のうちプラズマCVD法に関する研究についてと
りあげたものである。プラズマCVD法では、低温条件下にてプラスチック上へ機能性
膜を堆積させることが期待できる。そのため本論文では、プラスチックの表面硬度を向
上させる耐摩耗性被膜の作製と、紫外線による光劣化を防止することができる紫外線カ
ット膜等の高機能薄膜の堆積を試みた。更に、プラズマCVD法では、工業的に飛躍的
に拡大使用されている複雑な形状のプラスチック形状の表面でさえも、均一な膜質を持
つ表面被覆膜を創成する可能性を秘めており、自動車産業等に使用されている各種プラ
スチック表面の高機能化に最も有効な技術に発展することが予想される。
1
1.1プラスチックへのコーティング
1.1.1 コーティングの背景
プラスチック材料は、プラスチックの持つ軽量性、加工性、多様な物性などの特性を
備えた構造材料から、エレクトロニクス、情報、通信、医用等における高機能材料や高
付加価値材料へと展開し驚異的な発展を遂げてきた。しかしながら、プラスチック材料
自身には表面硬度、耐候性及び耐薬品性などの点で金属、硝子等の他の材料に比べ低い
物性値を示すハンディキャップを持つため、これらの要求を実現するためには、分子設
計に基づく新材料の合成だけでなく、異種材料との複合化、分子レベルのハイブリッド
化等の新しい技術が必要である。これらの技術を確立するには、①プラスチック自身の
改質と②プラスチックと異種材料間の界面相互作用が、材料の性能や機能に影響を及ぼ
すため、プラスチック表面の改質や表面層の形成などによる表面処理がキーテクノロジ
ーとなる。
プラスチック自身の改質の例としては、耐光性向上のニーズに対して、プラスチック
中にベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、及びヒンダードアミン等の添加剤(紫外線
吸収剤、光安定剤)を配合することにより、プラスチック表面に照射される紫外線エネ
ルギーを熱エネルギーに替えることにより劣化反応を誘発するラジカルの発生を抑制し
耐光性能を向上させる方法がとられている。その他、プラスチックモノマーのもつ官能
基種類を変化させ、結合エネルギーを増大させ安定化を計る手法が採られている。しか
し、この様な改質は、耐久性が充分ではなく、また製造工程が複雑化し、コスト高等の
マイナスな点が多い。更に、同時に表面硬度の向上等、複数機能の付加に対しては非常
に難しく、プラスチック本来の特性を低下させる場合もあり、現段階では、プラスチッ
ク自身の改質だけでは充分な対応が出来ないのが実情である。
一方、表面処理(コーティング)は、プラスチックの表面被覆によって機能を付加
することを目的とするため、本来プラスチック自身が持つ性能を低下させることなく機
能の追加が可能であり、プラスチックの種類にあまりとらわれず機能の付加が容易にで
きる。その為、コーティングの本来の目的は、物体の表面に被覆して、保護、美観、表
示などを与えることであるが、今日コーティングの研究は耐久性、耐候性、耐腐食性と
いった基本機能の向上にとどまらず、以下に示す多種多様の機能を有するコーティング
2
膜の開発が主役を占めるようになってきた。つまり、光学的機能性、電気・電子的機能
性、機械的機能性、物理的機能性、化学生物学的機能性のような特別な機能付与のコー
ティングが主流となってきている。それぞれのニーズは表1.1の様にまとめることが出
来る。1)−9)
Tab且e 1−1 coat童亙塾9藪ee〔is
・ Phosphorescent ab丑ity。 Shielding against ultraviolet xays・ Curing by ultraviolet rays・ Fluorescence・ P】じevention of re且ection 亀
Optica]L function
・ Plevention of electri丘cation
Electrical function
EElectromagnetic shiel(hng
EMagnetic五1皿coating
Mechanical function
EShielding致)r semiconductor
・Elasticity
EThick film coating
ERepeUent
EHard surface fUm coating
・Curing under water
Physical function
E V鴨athe箕p roof al)ihty・Prevention against dewing・Deodorization
・Gas ba皿ier
Chemic{且function
EE皿ission of in食ared rays
EGermicidal ability
EMildew proof ab丑ity
現在、多種の機能を付与するために、コーティング技術が様々な業種で利用され実用
化されており、今後現在の超LSIよりももっとはるかに集積度の高い分子コンピュター
へのコーティングも行われるようになると予想される。尚、実際に利用されているコー
ティング技術に関しては次章にて述べることとする。
3
この様に、産業界に多用されているプラスチックをはじめとする材料の本来の物性を
低下させず、同時に複数の機能を付与することができるコーティング技術が今後益々注
目され、より効果的な、より安全性の高いコーティング技術の開発の要求が一層高まる
と予想される。
1.1.2コーティングの方法と特徴
材料が本来もつ優れた性能は保持したまま、その表面に被膜を形成して種々の特性を
付与することによって多くの工業製品は高品質化、高機能化を実現している。この様な
コーティング技術は多くの手法が工業化されており、その代表的なものは塗装やメッキ
による湿式コーティング方法であるが、今日では、液体を使用しない乾式コーティング
方式の手法も低環境負荷や、高機能化への対応から広く用いられるようになった。本章
では、一般的に使用される湿式塗装、及び代表的な乾式処理工法の特徴についてまとめ
た。図1.1にコーティング方法の一覧を示す。10)11)
Coating
Coating
cx・
Fig・1−1 co段t蓋ng methods
4
湿式コーティングについて
湿式コーティング方法の代表的な事例としては、フローコーテイング、スプレーコ
ーティング、ディツプコーティング方法をあげることができる。この中でもスプレーコ
ーティング法は最も簡単な方法で古くから用いられてきた。その最大のメリットは表面
の凹凸が甚だしい支持体にもコーティング出来ることである。一般的なスプレーコーテ
ィングを図1.2に示す。塗工剤を加圧し、適正温度に加温して塗工チャンバーに圧送し
複数のエアレスノズルによってチャンバー内で継続的または連続的に霧化される。チャ
ンバー内を搬送される被塗物は霧化域を通過する際に塗工される。被塗物に付着しない
塗工剤ミストはチャンバー内壁で補集され、さらに下部に設けられたホッパーに集めら
れ回収再利用される。
この様なスプレーコーティング方法は設備費用が安価なことと、塗工調整が簡単であ
る利点がある反面、被塗物への塗着効率が一般的に低く、また、塗料の粘度調整のため
に使用される有機溶剤が大量に大気申に放出される環境問題点もある。
畿織「”’ i
@ Pressure gauge
F且9。1・2 Spray coating system
乾式コーティングについて
有機溶剤を使用せず真空を利用してコーティング膜を作製する乾式コーティング方法
(気相蒸着法)は物理蒸着法PVD法(Physical Vap or Deposition)と化学蒸着法CVD
5
法(Chemical Vapor Deposition)の2つに大別する事が出来る。 PVD法は高温加熱或
いはスパッタリングなどの物理的方法で物質を蒸発させ基板に膜を形成する方法である。
これに対し、CVD法は気相化学反応により基板上に膜を形成する方法で化学気相成長法
ともいう。PVD法の中では、真空蒸着法、スパッタリング方法、イオンプレーティング
方法が代表的な方法である。12)−13)
①真空蒸着法
真空蒸着は、真空中で薄膜材料物質を加熱蒸発し薄膜を作製する方法であり、代表的な
ものとしてAI薄膜の生成に良く使用されている。装置の概略図を図1.3に示す。通常
10−2∼10−4Pa程度の真空圧力下で成膜する。この時、平均自由行程は数10cm∼数10m
程度なので、蒸発源から気化した薄膜物質は、ほとんど衝突することなく基板へ到達し
薄膜を形成する。蒸発源としては、抵抗加熱、電子ビーム加熱高周波誘導加熱、レー
ザービーム加熱などがある。この中で最も利用されているのが電子ビーム加熱で、ほと
んどの材料を蒸発させることができる。真空蒸着で得られる薄膜は、蒸発物質のエネル
ギーが0.1∼1eVと小さいために基板のダメージが少ない利点がある。しかし反面、膜
がポーラスで密度や屈折率が低く、膜強度が不足する傾向がある。これを改善するため
には、基板を加熱することが有効な手段であるが、基板の耐熱温度に制約されてしまう。
そこで、真空蒸着中に数百eV程度のガスイオンを基板に照射し、その運動エネルギー
で緻密な膜を形成するイオンビームアシスト蒸着が考案され、現在では大変広く利用さ
れている。
Evaporation且ow
Substrate
Heat
Pumping
Fig・1・3 V…acuum evaporatioR system
6
②スパッタリング方法
スパッタリングは、薄膜材料の母材ターゲットに高速のイオンを衝突させて気化させ、
薄膜を形成させる技術である。通常は、真空容器中を希薄なアルゴンガスで満たして、
容器壁を陽極、ターゲット材を陰極として高電圧をかけ、グロープラズマを形成させて
行う。図1.4に直流スパッタリングの原理図を示す。スパッタリング法により得られた
コーティング膜は、低温で高融点材料も薄膜を作製でき、物質の種類による成膜速度の
違いがあまりなく、多層膜を作成しやすい。また、スパッタリングによるコーティング
膜の付着力が強く、酸化物、合金、複合材料のコーティング膜は化学量論的組成を保持
することができる特徴をもっている。反面、成膜速度が遅いことに加え、ターゲットで
生成する2次電子や負イオンが基板側に逆流して薄膜に損傷を与えやすい。現在ではこ
れらの問題の解決法としてマグネトロンスパッタリング法が利用されている。これはタ
ーゲット裏面に磁石を並べて、ターゲット表面に平行な磁束をつくり、ターゲットより
放出した2次電子を捕捉するというものである。ターゲット面の電流密度を大きくでき、
放電も安定に持続させることが可能になった。高い堆積速度が得られ、且つ堆積膜への
高速電子の入射が避けられるので、基板の加熱が避けられる特徴を持っている。
③イオンプレーテイング
イオンプレーティングは、真空雰囲気でプラズマを利用した成膜技術である。蒸発粒
子はArイオンや電子に衝突しイオンやラジカルになり、運動エネルギーを増大させて、
良好な被膜を形成させる方法であり、イオンプレーティング方法の原理図を図1.5に示
す。現在、村山14)らによる蒸着源の直上に高周波コイルを置き、高周波電場を印加す
ることによって放電させ、蒸発粒子をイオン化する高周波励起法(RF法)など多くのイオ
ンプレーティング装置が開発され実用化されている。イオンプレーティング法の特徴は、
被膜形成の直前に、Arボンバードによって基板表面を洗浄にすることができ、洗浄表面
基板上に被膜の形成が可能である。また、蒸発粒子のイオン化によって運動エネルギー
を高め、膜の密着性や特性を高めることができる。欠点としては、スパッタリング法に
比較して、多元系の合金被膜や化合物被膜などの複雑組成の形成は難しいことである。
この方法の主たる用途は硬質セラミック被膜の形成である。これらは切削工具、摩耗工
具、各種金型、機械部品などの寿命延長、加工精度の向上を狙いとして多くの産業分野
7
で活用されている。
Gas
墜細
Substrate 噂醸畷國
Target
㊥
θ○
㊥ θ
㊥e
?@㊥
↑↑↑
㊥
@ e
EB
工
Substra.te
愚
愚
eElectron㊦lon O Particle
1》u皿P血g Pumping
F黄9・1−4Typicε匙置s蓬》uttert亘g sys琶em F渡9.1−5 Typ責caし盈蓋o】隙P亙{罷蓋ng sys重em
一方CVD方法は、気相中や基板表面の化学反応により目的の材料の薄膜を形成する
方法であり、反応室内の化合物気体をガス流入によって制御するために高純度で多様な
薄膜を合成できる特徴をも?。CVD法は熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法
に大別することができる。
④ 熱CVD
熱CVD法は薄膜となる材料を気化しやすい化合物に変えて、適当なキャリアガスを
用いて反応管へ導き、高温の基材表面で化学反応を行って目的とする薄膜を基材上へ析
出する方法である。皿一V族化合物半導体の薄膜成長に用いられる熱CVD法は、皿族
元素の原料に塩化物を用いることから塩化物輸送法とも呼ばれ、V属の原料の供給状態
から大きく2種類に分けられる。1つはPCI3、 AsC13といった塩化物を用いるクロライ
ド法とPH3、 AsH3の様な水素化物を用いるハイドライド法である。熱CVD法は、
・多種類の材料の薄膜が作成でき、基材に対する付着性が優れ、高純度、高品質な薄
摸を得ることが可能であり、被膜の結晶構造、配向制御することができる。
・基材の多様性、線箔、粉末、など複雑な基材上へのコーティングが可能である。
8
以上のような長所を持つが、反面以下の短所ももっている。
・膜析出に高温を必要とするため、基材や反応装置に対して、その耐熱性や高温での
原料ガス等の腐食の問題から制約がある。
・高温処理に伴う基材の寸法変化や、基材一膜界面に残留する熱応力も無視出来ない。
熱CVDは現在、半導体・電子・電気工業、機械精密工業など広範囲の産業分野で使用
されている。
⑤プラズマCVD法
プラズマCVDは、反応ガスをプラズマ状態にし、活性な励起分子、ラジカル、イオン
を生成させ、活性環境下で化学反応を行わせ、低温で基板上に薄膜を形成させるCVD
の方法である。現在プラズマCVDプロセスは半導体・電子工業で重要なプロセスにな
っており、大規模集積回路で用いられる酸化シリコン、窒化シリコンなどの絶縁、保護
薄膜、太陽電池や液晶ディスプレイの駆動用薄膜トランジスタで用いられているアモル
ファスシリコン薄膜がプラズマCVD法で作られている。プラズマCVD法は、反応を
制御する因子が非常に多く、また荷電粒子により基板ヘダメージを与えることがある欠
点をもつ。しかしながら、多種類の被膜を低温で成膜することができる。このため結晶
化を防止し、アモルファス膜を形成できる。また、基板との反応を防げ、プラスチック
などの非耐熱性基板の使用ができる大きなメリットがある。15)−20)
⑥ 光CVD法
CVD法において、原料ガスの反応をおこさせるために必要なエネルギーを光エネルギ
ーの形で与えるのが光CVD法である。光化学そのものは長い歴史を持っているが、材
料加工・創製のような大規模なプロセスへの応用が研究されるようになってきたのは最
近である。光CVD法ではSiH4とN20からSiO2薄膜を、 Si2H6とNH3から窒化珪素
薄膜が形成され実用化されている。光CVD法はプラズマCVD法などと比べてガスの
励起状態を極めて狭いエネルギー範囲に留めることができ且つ、反応室内壁よりのフレ
ークの発生や不純物の混入等は無く、清浄なプロセス条件を実現できるメリットがある。
しかし、光CVD法の一番の問題点は紫外線光源であり、現状の光源の強度が弱く、エ
ネルギー変換効率も悪い。今後高い発光効率と強度をそなえ、かつ大面積化に対応出来
9
る新しい紫外線光源の開発ができれば光CVDの利用される範囲はさらに広がる可能性
がある。
1.2プラズマ励起化学気相堆積方法(Plasma Enhance Chemical
Vapor Deposition)の背景
プラズマ励起化学気相堆積方法(Plasma Enhance Chemical Vapor Deposition:
PECVD)は基板上に原料ガスを供給し、化学反応で生じた生成物質を基板上に堆積さ
せて薄膜を形成するものである。
近年の集積回路の微細化、高性能化にともない、LSI製造における重要なプロセスで
ある薄膜形成技術においても技術革新は急速である。その1つにプラズマ放電を利用し
た膜形成技術があり、PE CVD技術として且つ高信頼性パッシベーション技術として開
発されている。PECVD技術の歴史は古く、1960年代にはすでに半導体デバイスへの適
用可能性が提案されていた。しかし、今日までのデバイスのパッシベーションは熱CV
D方法による窒化膜、酸化膜が主流であり多くの実績をあげている。従来シリコン窒化
膜(Si3N4)はSjH4+NH3或いはS正12C12+NH3などのガス系を用いて高温(700∼900℃)
下で熱分解反応により形成されていた。Si3N4は耐酸化性、アルカリイオンに対する強
固なブロック性、緻密性などが良く、アイソレーション技術に適用されている。しかし、
高温生成のため限られたプロセスにしか使用することができない。一方、PECVDは、
エネルギーの高いプラズマ状態下で反応ガスの化学結合を低温で分解し、活性度の高い
化学状態の粒子を作り出し、活性化された粒子間の反応よりCVD膜を生成する。こう
したプラズマ状態下で生成されるプラズマSiN膜はSi3N4が果たせなかった低温生成を
可能とし、デバイスのパッシベーション膜として優れた性質を示し、その応用範囲も拡
大されるようなった。同様に、プラズマシリコン酸化膜SiO2もパッシベーション膜と
して開発がすすめられている。生成温度は通常用いられる熱CVD法により作成される
SiO2膜の場合よりも低温化が可能であり且つ良好な性質を持っている。
しかしながらPECVD法は非平衡状態で膜成長を行う方法であるため次のような問題
点をもっている。
10
eプロセスの中で、電子、イオン、中性ラジカルなどの様々な粒子が膜の堆積に影響を
与えるため堆積過程を正確に把握するのは困難である。
・原料気体が直接プラズマ化するため、成膜される薄膜や基板に対して大きなダメージ
を受ける
これらの問題を解決するために様々な改良、工夫が実施されている。
佐藤や佐野らはECR(Electron Cyclotron Resonance)マイクロ波一PECVDを用いて
プラズマ中に金属メッシュを挿入し、バイアス電位を変化させることによりプラズマ中
の電子温度を制御し、荷電粒子やイオンの基板への影響を低下させ、高品質なSiO2、
SiC膜を作成した。21)−26)
また、同様の発想でLG.Meiner 27)らは、イオン衝撃をさけることを目的としてリモ
ート領域でa−Si:HやSiO2膜の堆積を試みた。この様なリモートPECVD(RPECVD)方
法は、プラズマ発生領域と膜堆積領域を分離し、距離が離れているため寿命の短い電子
やイオンは堆積過程に関与せずまた、基板への荷電粒子の衝撃による膜質の低下を防ぐ
ことが可能である。さらに、堆積過程を単純化させることも可能であるためプロセスの
解析にも適している。
S.Wickramanayakaらは、有機原料中の分子結合を有効に活用するという発想で
RPECVD方法により、SiO2やSiCなどの薄膜を作成している。更に、青木らはRPECVD
方法を有機金属化学気相堆積方法(Metal Organic CVD, MOCVD)に応用し・ZnSe・
CdSe膜のエピタキシャル成長を報告している。28)”38)
本論文は、このプラズマCVD法に関する研究について論じたものである。このプラ
ズマCVDの中でも、高周波容量結合型においてカソードプラズマ堆積法を用いた。詳
しくは後の第2章で述べるが、この方法は薄膜の低温生成が可能であり、凹凸曲面に均
一に膜堆積が可能という利点がある。
1.3研究の概要、目的
現在、自動車部品材料においても、軽量化のニーズ、製品形状の自由度の増大及び環
境保護観点からリサイクルし易い熱可塑性プラスチック材料が積極的に採用されている。
11
特に、図1.6のような分子構造をもつポリカーボネート樹脂(PC)は表1.2の物性表に
示すように、透明性が高く(全光透過率89%)、耐熱性(熱変形温度135℃)耐衝撃
性(アイゾット衝撃値80kgf・cm/cm)が非常に優れた特徴的なプラスチック材料で
ある。
Tab墨e 1・2 Property of e⑳c坤o且ymer
Item Unit Test method PC PMMA
1.2
1」7∼1.2
ASTM D792
一
Tota目ight transmisslon
93
89
%
ASTM D100
Refractive index
t59
t49
ASTM D542
一
Speci屑c gravity
PS PP
1.04∼1.05 0.90∼0.91
90
1.59
一
1.49
Distortlon temperature
浮獅р?秩@load
i18.5kgF/cm2)
Mold Shrinkage
Bending strength
Tens難e strength
Izod impact strength
゜C
AS丁MD648
135
74∼99
90∼104
ASTM D955
ASTM D790
ASTM D638
kgf・cm/cm ASTM D256
49∼60
0.5∼0.7
0.3∼0.7
0.3∼0。7
1.6∼1.9
%
kgf/cm2
kgf/cm2
930
1100
800
400
630 490∼770 500∼580 320∼420
80 1,6∼3.3
2.2∼2.4
2.2∼5.4
軽量化のニーズが大きい自動車用灯具のレンズ材料として、これまで主流であったガラ
ス材料から比重の小さいポリカーボネート樹脂への変更は極めて有効であるため、19
81年より世界で初めて自動車用灯具レンズ材料として使用を開始した。今日の自動車
用灯具形状の複雑化、大型化への加工対応のし易さから、現在では自動車用ヘッドラン
プレンズ生産の約9割がガラスレンズからポリカーボネート樹脂レンズへと急速に置き
換わっている。しかしながら、PC樹脂は表面硬度(鉛筆硬度3B)が低く、また、分
子構造中にエステル結合をもつため、太陽光から発せられる紫外線水及び熱によりブ
リース転移が起こるため黄変色の激しい物性的ハンディキャップを持つ。そのため、今
日では、表面性能の向上をはかるため表面に、ラジカル架橋アクリル系、メラミン系、
ウレタン系、オルガノシラン系などの反応膜を湿式塗装による処理を行うことによって
表面硬度の向上(ハードコート膜)や紫外線防止処理による耐光性能の向上を計ってい
る。39)
CH3
CH3 0 n
Flg.1−6 Chem蓋cal structure of po盈ycarbonate resin
12
しかし、現在採用されているプラスチック部品形状は、多種多様な複雑な三次元形状を
もつものであり、この様な湿式塗装による表面被覆処理では、充分性能を維持するため
の膜厚を全ての部位に均一に確保する事が困難である。また、この様な湿式の塗工効率
は一般的に3∼4割と低く、有機溶剤の多くを大気に放出することとなる。
現在、社会的にも地球環境保護が望まれており、環境に優しく、高品質な薄膜を容易
に形成でき、しかも三次元形状においても均一な膜が確保できる新しい表面処理方法が
期待されている。
本研究では、イオン衝突を利用することによって機能性薄膜を得ることができるカソ
ードプラズマ堆積法を用い、安全性が高く、均一性の高い薄膜堆積が期待できる有機シ
リコン及び有機亜鉛材料から紫外線をカットし、高い硬度をもった良質なSiC、 SiO2、
及びZnO薄膜を得ることが目的である。そのため、カソードプラズマ堆積法において
は、様々なパラメーターにより堆積過程が変化することが考えられる。そこで薄膜堆積
に際し、基板温度、RFパワー、堆積時のチャンバー内圧力、以上の3つのパラメータ
ーに注目し、これらを変化させたときのシリコンウェハ、石英基板上へ堆積した薄膜の
膜質変化を調べ、良質な薄膜が得られる条件を求めた。更に、これらの薄膜を積層させ
ることにより信頼性の高い薄膜が得られる条件について検討を行った。また、ポリカー
ボネート樹脂上へ薄膜を堆積し、表面硬度、及び紫外線カット特性の把握を行い、促進
耐光性試験機を利用して薄膜を堆積したポリカーボネート樹脂の耐光性能について検討
を行った。
1.4論文の構成
本論では、前記のように位置づけられた本研究の実験方法、及び結果と考察を述べる。
本論文の構成は、以下の通りである。
第1章は序論であり、プラスチックの有用性及び問題点を述べ自動車ランプレンズ材
としてのポリカーボート樹脂の採用背景について述べた。また、表面処理によるプラス
チックの弱点改良の背景を述べ、表面処理の様々な方法と特徴について述べた。また、
表面処理方法の中で、本研究の特徴であるプラズマ励起化学気相堆積方法の位置づけと
本研究の目的を述べた。
13
第2章では、プラズマCVDによる薄膜コーティングの原理、及び各種プラズマCV
D方法の特徴について述べた、更に、本研究に使用した、カソードプラズマ堆積方法の
原理、特徴及び利点について述べた。また、本研究の目的であるプラスチックの改良を
行う上で、耐光性における劣化メカニズムについて論じ、紫外線劣化を効率良く防止す
るために、分光耐光試験によりポリカーボネート樹脂の最劣化波長の確認を実施した。
更にポリカーボネート樹脂上へのハードコート薄膜及び、紫外線遮断膜の薄膜種類等に
触れ、SiC、 SiO2、 ZnO薄膜の優位性について述べた。
第3章では、実験に使用したカソードプラズマ装置、試験基板の取り付け位置・さら
に本装置を用いた薄膜堆積の方法について述べる。また、有機薄膜の原料であるHMDS,
DEZの特徴と供給方法についても触れた。さらに、堆積した薄膜の化学分析、顕微鏡観
察、機械的特性等の評価方法、さらに、プラズマによる薄膜堆積の反応過程を考察する
ためのプラズマの発光分光スペクトル測定についてここで述べる。
第4章では、HMD S(Hexamethyldisilane,Si2(CH3)6)を有機原料として、水素プラ
ズマによりSiC膜を堆積させ、カソードプラズマCVD方法の特徴であるシースを利用
することにより、曲面のある基板、凹凸のある基板表面においても、SiC薄膜が均一な
性能、膜厚、及びプラスチックと均一な密着力が得ることができるかの実験を行った。
第5章では、HMD Sから水素プラズマを用いてシリコンウェハ及び石英ガラス上の
SiC膜を堆積する実験を行った。そして薄膜の特性と成膜条件との関連を明らかにし、
膜の元素組成とSiC薄膜のバンドギャップについての関係を明らかにした。また、プラ
スチック上へ堆積した時の薄膜の表面硬度と紫外線カット性能について促進耐光試験に
よって検討を行った。
第6章では、有機i亜鉛原料としてDEZ(Diethylzinc、 Zn(C2Hs)2)、有機シリコン原
料として且MDSをそれぞれ酸素プラズマを用いてZnO、 Sio2薄膜を各種基板への堆積
を行い、薄膜の特性と成膜条件との関係を明らかにした。また、プラズマ発光スペクト
ルから気相中での前駆体の生成についての推察を行った。更に、ポリカーボネート樹脂
表面に高品質なZnO/SiO22コート薄膜を低温で堆積させ、耐紫外線特性及び耐擦傷性
など、高機能化を図った成果について述べる。
最後に、第7章では結論を述べ、上記で示した研究で得られた知見をまとめた。
14
第2章 プラスチツク表面保護のためのプラズマ
コーティング
プラズマの応用は核融合研究、気体レーザーの励起などに続いて近年材料プロセスの
分野へと大きく広がりつつある。特に集積回路の加工や機能性i薄膜の成長などによって
代表される電子デバイスの作製には欠かせない重要な道具となっている。これら電子デ
バイスを含めた材料プロセスの分野では進歩が目ざましい。
特に、プラスチックは現在様々な分野で金属やガラスに代替して使用されている。これ
らのプラスチックは傷が付きやすく、紫外線による光劣化を受けやすいという欠点をも
つ。特に光学用プラスチックの分野を中心としてこの欠点の改良が望まれている。一般
的にプラズマ重合膜は、ピンホールフリーであることや、耐熱性、耐薬品性、機械的強
度に優れるなどの性質を有するために、プラスチックをはじめとする材料への保護被膜
への応用が研究されている。表面硬化膜としては一般にプラズマ重合法による表面硬化
膜作製の場合にはシラン系モノマーについて多くの研究報告がなされている。40)−43)
Wydeven43)は安全ガラス、ヘルメットなどの光学用プラスチックの耐擦傷性向上の
ためにプラズマ重合膜を検討している。これは、ビニルメトキシシランのプラズマ重合
膜をポリカーボネート樹脂上に堆積させると表面硬度が著しく向上するという報告であ
る。また、Bieg44)らはWydevenらと同様、太陽光集光反射鏡の保護膜に関して傷発
生防止膜としての性能について検討を行っており、プラズマを使用した薄膜の有効性が
急速に高まっている。また、製品形状の変化からプラズマ表面処理プロセスのより高速
化、超微細化及び大面積化が必要となってきている。そのためのプラズマとしては、お
およその目安として、Ne=1011∼1012 cm−3の高密度、10”4∼10’2 Torrの低ガス圧、さ
らに直径20cm以上の大口径という条件が要求されている。この様なプラズマを実現す
るには従来の方法では困難であるので、新しい原理に基づいた種々の方法が工夫され、
成果を収めている。
15
グロー放電プラズマの発生において、DC電源を用いる場合と、高周波(RF)電源を用
いる場合があるが、プロセスプラズマの発生方法として、DC放電は有電極であり、電
極からの不純物や電極の寿命による影響を受けるためあまり利用されない。高周波電源
の周波数としては、工業用周波数として認められている13.56MHz(RF)や2.45GHz(マ
イクロ波)が一般的である。45)図2.1にプラズマ発生方法についての概略を示す。
Non magnet
Capacitively or Inductively
coupled plasma
Radio Frequency
With magnet
Helicon wave excited plasma
Plasma generator
Non magnet
Surface −wave excited Plasma
DC
With magnet
Low Frequency
ECR plasma
Pulse
Fig.2・1 Overv亙ew of p1asma generator
近年は、従来の技術を改良した高密度プラズマの発生方法が盛んに研究開発されている。
RFプラズマ装置には、金属容器内に2枚の平行平板電極を備えた容量結合型と、石英
反応管の周りにコイルを巻いた誘導結合型があるが実用的には容量結合型が多く使用さ
れている。また、現在では電極に磁石を組み込んだマグネトロン方式が、化学プロセス
用高密度プラズマ源として実用化されている。誘導結合方式では、TCP(Transfer
Coupled Plasma)と呼ばれる一平面に渦巻き状に巻いたコイルを利用した高密度プラ
16
ズマ源の開発が進められている。また、ヘリコン波プラズマは巧妙な形状のアンテナを
用いて磁場中にヘリコン波を伝搬させ、ランダウ減衰によって電子を加速しプラズマを
高密度化する方法である。
マイクロ波プラズマでは、大きく、閉じこめ型と開放型に分けられる。閉じこめ型は
石英管を導波管の中に差し込むようにして、その中にプラズマを発生させる方法である。
広い面積のプラズマを作り出すことはできないが、局所的に高密度のプラズマを発生で
き、ダイヤモンド薄膜の作製などに利用されている。一方、開放型では拡散したプラズ
マを用いてある程度広い面積に薄膜形成やエッチングを行うことが出来る。しかし、こ
の場合プラズマ密度を増大するため、ECR(Electron Cyclotron Resonance)条件の875
ガウスやそれ以上の大きさの磁場が利用される。
2.1プラズマCVD法の原理
2.1.1容量結合型プラズマ源(CCP)CVDと誘導結合型プラズマ源(I CP)CVD
高周波放電は、.安定したプラ
ズマが大面積で得られること
から、プラズマを利用した成
膜技術においては最もよく使
∼
∼
われる放電形式である。 自
高周波放電のプラズマの発生
方法としては図2.2に示す様
に
a)容量結合型(Cap acitively
coupled plasma)方式と ∼
b)誘導結合(lnductively qoupled CCp generator ICp generator
pla・ma)が挙げられる・2°) Fig. 2・2 CCP and ICP paasma generat・r
これらの装置は構成が比較的簡単
であり、更に高密度プラズマを得ることが可能であるため産業界にて多く実用化されて
いる。使用励起周波数は13.56MHzであり、10−4∼10−2 T〈)rrの圧力条件下でのイオン
17
密度は1010cm}3、電子温度は5∼10 eVである。
これらCCP、 ICP方法にはそれぞれ外部電極方式、内部電極方式の2つの方式がある。
CCP方式はリング電極上の電荷がっくる静電場を介して放電し、またICP方式はコイ
ルに流れる電流による電磁界によって放電管内にプラズマが生じる。これらのうちCCP
型の内部電極方式は使用周波数の範囲が広く、比較的大きな処理面積を確保できること
から生産規模の容量結合型の高周波プラズマ反応装置が使われている。
特に、内部電極方式は電極へのスパッタリングターゲットや基板の取り付けが容易なこ
とから、従来から平行平板反応装置が多く用いられてきている。また、改良型のICPは
半導体産業に多く使用されている。使用されているヘリカルアンテナの3つの基本的タ
イプを図2.3に示す。
R黒
∼R
(A) (B) (C)
F量9.2・3A伽躍ced 9CP P且asma geme臓重oers
(A)はドーム状石英管にアンテナを巻いた物であり、利用するプラズマは下流部で形成さ
れる。(B)は石英窓等の絶縁物の上に配置された平面形のスパイラルアンテナで、絶縁板
を介して真空容器内に、大面積のシート状プラズマを生成する。(C)は直接コイルを真空
容器内に挿入されるので絶縁物のスパッタによる不純物の混入を軽減する事ができる。
これらは多くのIC製造プロセスで実用されている。46)47)
18
2.1.2ヘリコン波励起プラズマ源(HWP)CVD
ヘリコン波という名称は1960年にAigramが an
“低温 金属内を伝搬する波”をヘリコン波と
名付けたこと始まる。ヘリコン波をプラズマの
magnet
生成に利用する試みは以前よりあったが、1980 ←
年代に入ってプラズマプロセスやアルゴンイオン
/
レーザーの高密度プラズマ生成で注目された。
Mo型を示す。48)直径5∼15cmの石英管にアン
テナを巻き、数KWの高周波を流すと、100ガウ
ス程度の弱い磁場中で高密度プラズマが得られる。
これを磁力線に沿って下流の大型チェンバーに導し、Fig・ 2“4 HWP plasma gene「at°「
てプロセスなどに用いる。現在までに得られているヘリコン波プラズマとしては、励
起周波数10∼28MHz、圧力10一2∼10“‘ Torr e9囲でイオン密度1012∼1013 cm“3、電子
温度は5∼10eVが一般的であり、高密度を特徴とするプラズマが得られる。また、1995
年ごろ、KSuzuki 49)らに報告されたモードM1型の装置は、高密度プラズマを得る
には有効であったが、大面積には向かず、物理化学実験用に用いられている。
mlcrowave
2.1.3電子サイクロトロン共鳴 uide
プラズマ源(ECR)CVD electr
ECR(Electron cyclotron resonant)フフズマ
生成装置の概略図を図2.5に示す。50)導波管
と結合した真空チャンバーに875ガウスの磁
界をかけ、導波管を通して2.45GHzのマイ
クロ波を入射し、プラズマを生成させる。
電子のサイクロトロン運動とマイクロ波の
共鳴効果により高密度なプラズマが生成さ Fig。2・5 ECR type p量asma genera重or
19
れる。現在までに実現されているECRプラズマとしては直径10∼40cm、圧力10”2∼
10”4Torrの広い圧力領域にわたって高いイオン密度1012 cm−3∼1013 cm−3を実現す
る事が出来る。電子温度は10∼15eVであり、電子温度が比較的高く発散磁界に沿って
荷電粒子が流出するのを利用するとエッチングや薄膜堆積に特徴的な効果が期待出来る。
2ユ.4その他
マイクロ波による表面波励起プラズマ(Surface・Wave excited plasma)発生装置は磁
界を必要としないプラズマ源である。A.W.’lltryvelpiece 5 i)らはプラズマ中に発生する波
動の一つは表面波であることを報告しているがこの表面波の電磁界を利用すれば中性粒
子を電離し、円柱状プラズマを発生することが可能である。
この様なマイクロ波によるプラズマ発生装置として、J.Engemann 52)らはSLAN
(Slot antenna)プラズマ発生装置を開発した。このプラズマ発生装置はマイクロ波導
波管に、壁電流を横切るようにスロットロを開け、マイクロ波電流が導波管外壁面に流
出するようにし、スロットアンテナとしてマイクロ波の放射をさせようとするものであ
る。この方法では、表面波励起の効果が現れて、高い密度での広い面積のプラズマを作
り出すことができる。また、M.Moisan 5 3)らは導波管に狭いギャップを作り、高密度プ
ラズマを発生させ、得られる高い電子密度及び導電率のプラズマに電磁波と結合させ、
広範囲の表面波プラズマ状態を実現している。これらのプラズマ発生装置を用いて
Ying−Yu Xu 54)らは水素、アルゴン、酸素、窒素プラズマと有機シリコンプラズマから
得られるシリコン薄膜の堆積反応メカニズムについて報告している。
20
2.2平行平板型プラズマCVDの特徴と利点
本研究で主として用いるプラズマ
CVD装置のプラズマについての特徴
o
<
⇔
シース電界やバルクプラズマ a6
< <
で
o
●
膠
腫
内の電界で加速された電子は、反i
8
A2
■
畠
8
■
8
:
:
脚
露
冒厘■邑薗璽●』幽雌墜■蘭
応性ガスを解離し、ラジカル(不
聴●●●寵●麗9塵●麓6膣●謹■●■匿口」・閲9■・・
@≡ 嗣
対電子を持つ化学種)を生成する。o
プロセスプラズマで良く利用さ
れる平行平板形RF放電装置(基
本的には本実験装置と同様)の電
位分布を図2.6に示す。この放電
巳魯8舳暫●鍾幽望薗題自邑幽畠曝翼噴
屡卿■,●隠傭騨曝5喀,口●巳置●B9●塵働●薗
Referen。e A、 wah
装置では・一方は接地され・もう electrOde
一方は電力が供給されている。特 =:
にRF電極(カソntド)付近でラ Fig. 2・6 Distributfion of potentiaR iR
ジカルが多く発生する。これは、 FHat.bed reactors
RF電極の自己バイアスV。、によ
るものである。
他方の接地電極の電位を0とすると、プラズマ電位Vpと接地電極電位との差はVpで
あるのに比べ、RF電極電位との差はVp+V、、である。また、 Vp、 V,,+Vpと電極面積
A1(接地電位にある反応容器の壁の寄与も含む)、電力供給電極面積A2との電荷のバ
ランスは以下の様な関係が見られる。20)55)
(VDc十Vp)/Vp=(A1/A2)n (n=4) (2.1)
この様に自己バイアス電圧は両電極面積に比例する。一般的なプラズマ装置ではRF
電極面積(電力供給電極面積)A2は電極面積A1より小さく、 RF電極には負の自己バ
イアス電圧が生じる。
また、図2.6に示した様に、放電装置中における電位の分布のため、電力を供給され
ている電極と接地されている電極はそれぞれカソード、アノードと示され、薄膜の堆
21
積が電力を供給する電極上にて行われる場合には、この反応はカソードCVD法とし
て表される。プラズマ中には正イオンの粒子と電子が存在するが、正イオンの粒子は
負の電位を持つカソード電極に向かい、電極表面に正イオンの大きな衝撃を与えるこ
とができる。また、電極近傍に発生するイオンシース内で電極側からプラズマ側に向
かって加速された電子の速度はカソード電極側の方が大きく、高速電子により分子の
解離がより速く進行する。以上よりカソードCVD法においては、加速されたイオン
種の衝突のため吸着や放出、表面のエッチングといったアノードCVD法とは異なっ
た成長反応が期待される。56)
鼠3ハードコートのためのCVDi薄膜
硬質物質のコーティング技術の基礎的な研究としては、Powell、 Brocker Jr 5 71らに
よるVapor Plating によって様々な硬質物質のCVDによるコー・・一・一ティング方法が検討さ
れていたが、炭化チタン(TiC)や窒化チタン(TiN)などの硬質物質のコーティング技術は
1950年代の始めにメタルゲゼルシャフト社がCVDにより開発し、広く用いられるよう
になった。一方1960年代後半には、Mattox、 Bunsha 58)らがPVD方法によって硬質
物質のコーティングを検討し、切削工具、耐摩耗性工具、機械部品の耐摩耗性保護膜と
して広く使用されるようになった。代表的な硬質薄膜のビッカース硬度を図2.7に示す。
0 1000 2000 3000 4000 5000
Tic
TiN
Sic
sio2
(k9/mm2)
罰9.2−7・VEekers・har血ess ofvario囎曲films
22
代表的な表面硬度向上において実用化されているCVD法によるTicと賢N薄膜の化学
反応例を示してみると次の様に示すことが出来る。
H2
TiC TiCl4(9)十CH4(9) TiC(s)十4]i{C1(9)
950°C∼1050°(:)
rl・iN r、iCl4(9)+、/2N2(9) H2 rrilN(s)+4HCI(9)
900°C∼1000°C
艦C、凪N薄膜の常温におけるビッカース硬度はそれぞれ3200、2100と非常に硬い物
質であり、表面硬化には重要な被膜である。これらの薄膜は上記の反応のような高温で
成膜するため、被膜の密着性も高い。しかし、高温で処理するため母材の焼きが戻った
り母材表面付近に脱炭層などの変質層が起きやすい欠点も持つ。「]}iNは[[licよりも高温
における耐酸化性に優れており、工具関係に使用されている。最近、石井らは、グロー
放電を用いたプラズマCVDによるTiN被膜の生成における活性プラズマ種を、発光分
光法及び質量分析法により明らかにした。59)
その他、SiC薄膜は硬度が高く、高温における耐酸化性に優れている。このため、半導
体関連、及び表面硬化、耐食性を目的として成膜が行われている。熱CVDでllOO∼
1400℃の温度で得られたSiC被膜のビッカース硬度は4000∼5000である。これに対し
てプラズマCVDでは、ビッカース硬度は熱CVDのものとほぼ同じとの報告もあるが、
アモルファス被膜となる。SiC薄膜の作製に用いられる原料中に含まれる水素の影響の
為であり、これがプラズマにより重合した形で析出するためである。また、酸化物にも
表面硬度の高い薄膜も多く、多種にわたる薄膜がCVDで得られている。特にSiO2薄膜
はSi上の絶縁物として、また、現在では高分子材料の表面硬化被膜として研究されてい
る。プラズマCVDは比較的低温でSiO2薄膜を得ることが出来る方法として知られてい
る。更にs正14と02を用いた光cvDでは、より低温でsio2被膜が得られている。6°)
これら硬質薄膜の中で、ポリカーボネート樹脂のような透明性が高い材料の上へのハー
ドコート薄膜候補としては、可視光透過率の高いSiC、 SiO2薄膜が期待される。
23
2.4UVカットの為のCVD薄膜
紫外線が多くの有機物を劣化させることは良く知られている。太陽光線は、連続した
広範囲のスペクトルを有する電磁波であり、400nm∼800nmの可視光をはさんで短波
長側に紫外線、長波長側に赤外線がある。紫外線は波長の長さで一般的に短波長紫外線
(UVC∼290nm)中波長紫外線(UVB290∼320nm)長波長紫外線(UVA320∼400nm)と
分類されている。UVCが最もエネルギーが高く有機物にダメージを与えるが、この紫
外線は大気中のオゾン層に吸収され地表にはほとんど到達しない。大気中で有機物に影
響を与えるものはUVAとUVBであり人体の皮膚に数々の障害を与え、食品を変質させ
樹脂を劣化させ、着色材料に多大な影響を及ぼす。このため紫外線対策は、化粧品、ト
イレタリー、樹脂、塗料、繊維など広範囲な分野で取り上げられているが未だ充分に解
決されているとは言えない。
紫外線がプラスチックなどの有機材料に吸収されるとその構成分であるポリマーなど
が励起されて有機光反応が起こり、着色や自動酸化の開始による劣化が起こる。その結
果、変色、クラックの発生、抗張力、伸びの低下などの性能面で大きな問題をもたらす。
特に、ポリカーボネート樹脂はエステル結合を分子中にもつため図2.8に示す様なブリ
ース転移を起こし黄色変化が著しく大きな樹脂材料である。61)
CH3 0
《》÷《◎ト。↓・《》
:1:\hy
@ま孟卑6《》
O
CH3/hv
@ま過劉《》
O OH
F量g.2嗣8Fr童es】rearrangemen重of po置ycarbonate「es量簸
24
図2.9に照射される紫外線の波長に対するポリカーボネート樹脂の黄色変化を示す。
この試験は巾2mmのスリットを使用し、10nmごとに150W/m2の一定強度紫外線を
200且照射した後のポリカーボネート樹脂表面の黄色変化を表したものである・
18
16
14
哩2
10
s::
8
6
4
2
0
250 300 350 400 450 500
wavelength(nm)
F童9。2・9Ye服OW量ndlex繍s曲e蝕鵬繭0髄Of u麗聡V童oNet waveRength
この様に、ポリカーボネート樹脂の最大劣化波長は300nm前後であることが確認出
来たが、完全に光劣化による黄変化を防ぐには380nm以下の紫外線をカットする必要
がある。紫外線カット膜として効果がある分子としては咀02、ZnO、 Fe203、 V205、
SnO2、 PbO、 Sb203などの薄膜を挙げることができる。62)−65)これらの中で着色の少
ない物、有害成分でない物としてはTio2、 ZnO、 SnO2薄膜を挙げることが出来る・こ
れらの薄膜の紫外域での分光スペクトルを図2.10に示す。SnO2,TiO2及びZnOはスパ
ッタリングにより作製した厚さ約1μmのものである。紫外線カット性能を確認してみ
るとZnO薄膜は380nm以下の紫外線をほぼ完壁にカットすることが可能であり、ポリ
カーボネート樹脂の紫外線カット膜としてはZnO薄膜が最善の膜であると判断出来る。
25
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SnO2 ノ
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1! ZnO
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欄e㎎翫(晦)
賊霧。忽一蟹珍Tr鍵購血匿舳総⑰童v踊⑪鵬曲伽s
また、Si化合物であるSiC薄膜は通常バンドギャプが小さく、可視光まで吸収する黄色
薄膜であるが、CVD条件を調節することによりSiC薄膜のバンドギャップの調整が可
能であることを野中が報告している。66)プラズマCVDによって得られるSiC薄膜は
アモルファスであり、基板としてポリカーボネート樹脂のような有機材料の場合、膜中
に含まれる有機成分の量を調整すれば基板との密着性の向上にもつながることが期待で
きるため、ポリカーボネート樹脂への紫外線カット膜としてSiC膜は充分期待できる。
67)
26
第3章 実験方法
カソードプラズマ堆積法は、基板をカソード側に配置するため、セルフバイアスによ
って、基板部分は負に帯電し、それにより基板表面は、プラスイオンの衝撃を受ける。
しかし、イオン衝撃を受けやすいが、反面、適度な衝撃であれば分子の結合再配列の助
けとなり、機能性薄膜の作成が得やすい利点がある。さらに、基板表面に均一に発生す
るシースを利用すれば、複雑な三次元形状物でも均一な薄膜形成が期待できる。
本研究は、この基本的原理のもとで、堆積過程の解析に容易なように実験装置を設計
した。そして、カソードプラズマCVD法で有機シリコン、有機亜鉛原料から薄膜を堆
積し、薄膜の堆積過程の解明とポリカーボネート樹脂に対する表面被覆処理について実
験的研究を展開した。この章ではその実験方法について述べる。
3.1カソ…−entドプラズマによる薄膜堆積
試験片には石英ガラス基板と単結晶シリコン基板(Si(100))を使用した。ポリカーボネ
ート基板には、自動車用燈具レンズ用として多用されている無色透明なPC材(GEプ
ラスチック㈱製 レキサン、LS2111,50×50×3mm)の射出成形平板を曲面の堆積
性能の検討においては、(三菱エンプラ㈱製 ユLピロンシート0.5mm)を使用した。
本研究に使用したカソードプラズマCVD装置(大同特殊鋼(株)製プラズマクリーン)
の概略図を図3.1に示す。使用したカソード電極は反応室上部に設置し、面積は180∼
1225cm 2の電極をそれぞれ用意した。この電極の上面にシールド電極を取り付け、上部
への放電を抑えることにした。このカソード電極上に基板(PC樹脂、シリコンウエハ
及び石英ガラス)を取り付けた。また、基板ホルダーの下面にはヒーターと熱電対を取
り付け、基板温度を室温から200℃まで上昇可能とした。ガス種による堆積メカニズ
ムを検討するために、アルゴン、水素、酸素、窒素及び原料などのガスはそれぞれ独立
したラインでのマスフローコントローラーによってそれぞれの流量を制御し、単一ガス、
或いは複数のガスの混合ガスプラズマを形成することを可能としている。
27
高純度な酸素、水素、アルゴン及び窒素ガスをマスフローコントローラーで流量制御し
てプラズマ発生室内にガスを導入し、各種ガスプラズマを発生させる。原料となる
HMDS(ヘキサメチルジシラン)、 DEZ(ジエチル亜鉛)は基板の下方8∼15cmに設
けられた原料導入管より導入される。原料の蒸気圧を高めるために、40℃に原料を温
めてヘリウムキャリアガスを流量制御してヘリウムガスよりバブリングされた原料とヘ
リウムの混合ガス量を圧力制御して、プラズマ発生室内に導入した。導入したガス流量
は・各ガスの分圧を計算することにより定量的に見積もられる。高周波電力(13.56MHz)
をカソード電極に印加する時、電極間にグロー放電が生じ、電極表面に取り付けられた
各種基板表面に目的とする各種薄膜が堆積される。
プラズマCVD方法には、チャンバー内の残留ガスは好ましくなく、これが堆積膜に
取り込まれ、膜形成に著しい影響を及ぼしかねない。そこで、薄膜堆積前にはロータリ
ーポンプとメカニカルブースターポンプを使用し10’3 Torr までの真空排気を行った。
また、薄膜堆積中にはロータリーポンプとメカニカルブースターポンプによって真空排
気が行われ、チャンバーとロータリーポンプとメカニカルブースターポンプの間に取り
付けられたバルブを開閉する事により、チャンバー内のプロセス圧力が調整される。こ
の時の圧力は精密バラトロン型圧力計によって計測される。また、膜堆積後は、原料が
冷却され、配管内に再結晶化する恐れがあるため、配管各部に電熱線ヒーターを取り付
け・加熱して冷却を防ぐと共に・パージガスとしてヘリウムガスを流し、充分排気を行
った。
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29
3.2有機原料の特徴及び供給方法
プラズマCVD方法により良質なSic膜を堆積できる原料ガスは、以前からモノシラ
ンと炭化水素ガスのメタン(CH4)、やエチレン(C2H4)ガス等の混合ガスが良く用
いられてきた。しかしながら、通常多く用いられるこの様な混合ガスを用いてSic膜を
得る方法では、バンドギャップの大きな膜を得ることは非常に困難である。また、良質
なSio2膜を堆積できる原料ガスとしても、モノシラン(S正{4)と酸素ガスの混合ガス
がよく用いられてきた。しかし、この様なモノシラン化合物は空気中の酸素と結合し、
爆発的に反応する危険性を有している。これらの理由よりSiC膜、 SiO2膜の堆積におい
ても有機シリコンモノマーを原料に用いた研究が行われる様になった。68)
有機iシリコンモノマーを用いた薄膜堆積での研究報告としては、A.M.Wrobe1らと
S.Wickramanayakaらが、リモートプラズマを用いて、各種有機シリコンモノマーを原
料として、水素プラズマラジカルと反応させ、各種シリコン薄膜の堆積の形成過程を報
告している。69)−72)更に、徐磨喩らがマイクロ波励起のnc −SIAN及びSurfaguideプ
ラズマ源を用いて、HMDS(hexamethyldisiane)を原料として水素、アルゴン等のプ
ラズマラジカルとの反応メカニズム等の研究を報告している。73)
彼らの研究結果を表3.1に示す。有機シリコン原料としてTMS(叩etramethylsiane)
の様な分子構造中にSi・C結合とC−H結合をもつ有機シリコンモノマーではSiC薄膜の
堆積は確認出来ず、且MDS(hexamethyldisiane)の様に分子中にSi・Si結合を持つシ
リコンモノマーの場合にはSic薄膜の堆積が確認されている。これは表3.2に示すよう
な分子結合解離エネルギーの大きさに起因するためと考えられる。TMS分子中のSi−c
結合、C−H結合解離エネルギーは比較的大きく、解離しづらく、反面HMDS分子中の
Si−Si結合解離エネルギーは小さいため、これらの結合の切断が比較的容易でありこのた
め、薄膜堆積が進むと考えられる。
瓠ab且e 3・1 Ab蓋蹴yω雷orm段劔m wit艶d董艶re鵬so聰rce mo腋omer
Monomer
CE4
Molecular bond
C一且
No deposition
Si(CR3)4
Si・C
No de osition
Si(Si(CH3)3)4
Si−Si
De osition
(Si(CE3)3)2
Si−Si
Deposition
30
Fim fbrm,ation
丁畿b璽e3・2 Mo畏ec腿翌麗めo翻d瞳ssoc量癩o駿錨礫gy
Molecular
Energy
ikcal/m◎1)
ao】αd
Si−Si
104
76
C−H
80.7
Si−H
71.3
Zn−C
22.0
Si−C
彼らの研究より、Si−Si結合を有するシングルモノマーのHMDSを原料に用いたリモ
ートプラズマCVDから良質なSiC膜が得られることが報告されている。従って本研究
においてもSic薄膜の原料モノマーとしてHMDSを使用した。
また、有機シリコンモノマーを用いたSiO2薄膜の形成についての研究については、多
くの研究報告が出されている。M.lnabaやS.C.Deshmukhらは有機シリコン原料とし
てTEOS(tetraethoxysilane)を使用し、 J.H.Leeや沖村らはアルキルシリコン原料と
して、HMDSO(hexamethyldisiloxane)を用いSiO2薄膜の形成について研究報告を
行っている。74)−79)
本研究においては、HMDSOと酸素プラズマによるSio2薄膜とほぼ同じ反応メカニ
ズムと推測されるHMDSをSiC薄膜の原料モノマーと同時にSiO2薄膜の原料モノマー
として使用した。
次に、有機亜鉛モノマーを用いた薄膜堆積での研究報告として、M.Shimizuや
YJ.]Kim 80)}82)らによってDEZ(diethylzinc)と酸素或いはN20プラズマガスとの
反応により、結晶性の高いZnO薄膜の形成について報告している。本研究においても、
有機i亜鉛原料として表3.2に示した様にZn・C分子結合解離エネルギーが小さく、結合
が簡単に切断する事が可能であり、更に原料自体が液体であり、比較的蒸気圧も高くハ
ンドリングが良好であるDEZ(diethylzinc)を使用した。
HMDS(hexamethyldisilane)及びDEZ(diethylzinc)の構造式は図3.2に示す。
31
H3C
H3C Si−Sl CH3
のHMDS(bexamaethy畏dls餌躍e)
CH3−CH2−Zn−CH2−CH3
量))DEZ(diethy且zinc)
F且9ふ2Mo亙ec聰盈ar・s伽c加re of oxganos豊昼ico聰躁面rganozinc
これらの有機原料(有機シリコン、有機亜鉛)は室温では液体であるため、ハンドリン
グ性が良好であり、適度な蒸気圧を持っている。図3.3に各有機原料の各温度における
蒸気圧曲線を示す。図3.3から室温では、各有機材料とも数田orr未満であるため、薄膜
形成においては低い蒸気圧では流量の制御が難しい。そのために図の様に原料自身が入
っているステンレスシリンダーを40℃まで恒温にし原料の蒸気圧を高めた。そして、
図3.4に示した様な制御システムでヘリウムガスをキャリアーガスとして用いて流量制
御してチャンバー内に供給することにした。さらに、輸送ラインにもヒーターを取り付
け温度低下に伴う原料ガスの再結晶化を防ぎ、流量の誤差を生じないようにした。
また、原料の流量の制御は原料の分圧とキャリアーガスの圧力と流量の関係から算出す
る。
32
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◎
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⑳HMDS
◇Zn((》H5)a
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280 29⑪ 300 31⑪ 320 330 340
Temperature(K)
Fig.3・3 Vapor p肥ss腿亙?of HM】DS and DEZ
33
Pを圧力、Fを流量として
Pc&rrier Fcarrier
__ (3−1)
PSOUfce F SO覗rce
Pcarrier :: PaU−P SOU罫ce (3−2)
Fc乏kffffier×PSσ腿rce
Fs◎鵬ce :・: (3−3)
Pa,璽豆 一PSσ騒rce
PaHはトータル圧力、 P source は原料の蒸気圧、 F carrierはH eガスの流量を示す。
よって、各温度での原料の蒸気圧とキャリアーガス(He)流量と制御圧力を測定すれば、
原料の供給量を計算することができる。
P.G.
t。chamber Heliumgas
MFC
Pall
Fsource
Psource
Fcanier
1
㎜ 囲
回
團
HMDS or DEZ
DEZ
圏
F量9.3−4・Source・materia亙s叩P且y system
34
3.3堆積薄膜の解析方法
堆積した薄膜の結合状態を、フーリエ変換赤外分光光度計FTIR(パーキングエルマ
ー製,PARAGON・1000)と光電子分光装置XPS(XTay Photoelectron Spectroscopy、
PHI製1600S)を用いて測定した。
薄膜を形成している各種官能基は特徴的な伸縮振動、変角振動エネルギーをもつ。そこ
に2.5∼25μmの波長範囲(400∼4000cm−1)の赤外光を照射させると振動エネルギ
ーと同じエネルギーの光の波長は選択的に吸収される。このため、この赤外線吸収を観
察することによって薄膜の結合状態を推測することができる。また、XPS分析測定は、
薄膜にX線を照射させ放出される特異的な光電子の運動エネルギーを測定し、薄膜を構
成する原子や分子の最表面や膜の深さ方向の化学結合状態を得ることが出来る分析手法
である。
化学元素組成は、走査型オージェ電子分光装置AES(Auger electron spectrometer、
PHI製670xi)を用いて測定した。これは、薄膜に電子や光子を照射したときオージェ
効果によって極表面から放出されるオージェ電子のスペクトルを測定することにより薄
膜表面に存在する元素を分析する手法である。また、Si(100)基板に堆積した膜の膜厚は、
表面荒さ計(日本真空技術製、DEKTAK3030)を用いて段差測定により測定し膜堆積
速度を算出した。
PC樹脂の光劣化波長の測定は分光劣化試験機(スガ試験機製、 SPW・6)を用いて行
った。この装置はPC樹脂に回折格子により分光された光(10nm間隔の紫外線)を一
定強度で照射することにより、各波長での光劣化の状態を把握する事が可能でありPC
樹脂の光劣化波長の特定が可能である。
更に、薄膜の紫外線吸収特i生をみるために、自記分光光度計(島津製作所製、UV−365)
を用いて測定を行った。また、堆積した膜の表面状態の観察は、走査型電子顕微鏡SEM
(Scaning Electron Microscope日立製作所製、 S3000H)と原子間力顕微鏡
AFM(Atomic Force Microscope SEIKO lnstruments lnc製Nanopics NPX−100)を使
用して行った。
PC樹脂上の堆積した薄膜の表面擦傷1生能を測定するために、ラビングテスター(大
平理化工業製)を用い、一定加重を加え薄膜表面に#OOOOのスチールウールを擦りあわ
35
せる。得られた表面外観をヘイズメーター(スガ試験機製、SMカラーコンピュター)
にて傷つき度合いをHaze値(曇価)で評価した。尚、且aze値とは以下の値で示される。
Haze(曇価)%:拡散光線透過率/(全光線透過率)
(全光線透過率)=拡散光線透過率+平行光線透過率
PC樹脂基板と堆積膜の付着強度の測定には、表面一界面物性解析装置(ダイプラウ
ィンテス製、SAICAS BN−1)を用いた。このSAICASによる付着強度の原理図を
図3.5に示す。堆積膜に切刃を一定荷重で切り込みを入れていくことによりPC樹脂と
の界面で弾性率が異なるため、荷重に変化が生ずる。この変位点を薄膜とPC樹脂基板
との界面と判断し、切刃をPC基板に対して水平に移動させ、剥離が発生する段階での
水平方向の荷重量を薄膜の付着強度とする。
また、薄膜を堆積したPC樹脂の耐候性能の確認はキセノンウェザーメーター(島津
製作所製、XW1200A)を用いた。この試験におけるPC樹脂表面の光学測定、 YI(黄
色度)、Haze(曇価)、全光線透過率は分光測色計を用いて測定した。尚、 YI(黄色度)
は以下の式より計算される。
Y正(黄色度)瀟100(1。28X−1.06Z)/Y (3・4)
X、Y、 ZとはCIE(国際i照明委員会)が定めたRGB(赤、緑、青)の色彩に対する、
人間の視覚と結びつけて数値化した刺激値のことである。
膜堆積中のプラズマ特性を診断するため、プラズマ中の発光分光スペクトル測定をマ
ルチチャンネルスペクトロメーター(浜松ホトニクス製、プラズマプロセスモニター
C6670−04)を使用して行い、導入された原料ガスが分解され生成した励起種のイオン、
原子、分子の発光種を調査した。測定はプラズマ室外に石英レンズの集光系を設け、石
英窓を通して、基板設置近傍のプラズマ中心部の発光スペクトルを測定した。83)装置
の構成を図3.6に示す。
36
Chang加g Point
F蓋g。3・5S磁em厩且¢d茸agram of SAKCAS
37
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38
第4章 カソードプラズマCVDによる薄膜堆積
最近、放電プラズマを利用するプラズマプロセスが盛んに行われるようになってきた。
特に、半導体産業ではこれらを用いたプロセスが不可欠となってきている。現在、超LSI
でミクロン巾を切る様な加工に対してこのプラズマプロセスが使用されている。半導体
プロセスの代表であるエッチングの特徴は、微細表面形状が非常にシャープに形成出来
ることである。基本的にはプラズマはランダムに運動しているにもかかわらず、この様
に表面エッチングに有効であるのはプラズマ中に発生するシースというメカニズムを利
用する事が出来るためである。図4.1に示すようにプラズマ電位と表面電位の間におけ
る電極近傍の電位の急激な変化領域はイオンシースとして知られている。
Cath◎de Piasmaelectrode P lastic materiaI
∂
釦 Sic film
F蓋9.44 Sc血eme v藍ew o釜c説㎞ode p置asma CVD
一般的にプラズマ構成粒子は正イオンと電子である。電子の速度はイオンの速度に比較
すると圧倒的に大きく、電極壁に到達できる個数はイオンに比べ遙かに多い。その為、
電極近傍では電子が過剰になり、負の電位を持つことになるため逆に、電子を追い返し
正イオンが引きつけられイオンが過剰な空間が電極近傍に均一に発生する。これがイオ
ンシース領域と呼ばれている。
このイオンシース領域中ではイオンは電極(壁)に向かって直線的に加速され表面に衝
突する。このためにプラズマエッチングでは基板表面を非常にシャープにえぐることが
39
可能となる。2章でも述べたが、平行平板型RF放電装置では、特にRF電極(カソー
ド電極)付近ではRF電極の自己バイアス電位の為にシース内では、電極側からプラズ
マ側に向かって加速された電子の速度はカソード電極側の方が大きく、高速電子による
分子の解離が進行する。この様にカソード電極近傍に発生するイオンシース領域は非常
に活性に富む領域と考えることができる。更に、カソード電極近傍には必ず均一にイオ
ンシースが発生することを利用できれば、基板表面は正イオンの衝撃を受けやすいが反
面、適度な衝撃であれば衝突によるエネルギーが形成薄膜の原子結合再配列の助けとな
り、均一な膜質及び膜厚をもつ薄膜堆積の可能性が期待できる。
現在・プラスチック材料が産業界で拡大使用されているが、これはプラスチック材料
の形状加工の自由度が非常に大きいことに由来している。つまり、ガラスや金属材料で
は成り立たない形状のものでもプラスチック材料では対応する事が可能である。そのた
め・近年生産されるプラスチック部品の形状は大型化し、且つ多種多様複雑な3次元形
状へと大きく変化している。しかし、この様な複雑な形状のプラスチック材料製品に対
しても当然耐傷付性や耐候性等プラスチックの弱点補強のために表面処理が施されて
いる。充分な性能を確保するには塗装膜は一定膜厚、膜質の確保が必要とされる。しか
し、現状主流である湿式塗装による表面被覆処理法ではこの様な複雑な形状物の全ての
部位に均一に表面処理を施し、且つ一様な性能をもつ薄膜を被覆することは非常に困難
であり、複雑な形状へも対応できる新しい表面処理法が期待されている。
本章では表面被覆方法としてカソードプラズマCVD法を検討した。カソード電極上
に凹凸部や曲面部を有する複雑な形状基板を作製し、電極全体に均一に発生するイオン
シースを利用することにより・HMDSと水素プラズマからSic堆積膜を形成させ、凹
凸部や曲面部を持つ三次元形状部への膜の均一性が得られることを期待して検討を行っ
た。
4.1イオンシース発生メカニズム
一般にプラズマの構成粒子は、正イオンと電子である。プラズマ中での正イオンと電
子の平均速度をそれぞれViとV。とすると、電子の速度は正イオンの速度より圧倒的に
大きい。つまりVi《V,の関係が成り立つ。一方プラズマ中では正イオンと電子の密度
40
Ni, N,はNi=N,である。プラズマと接触するプラズマと同電位の固体がある場合、その
固体に向かって正イオン及び電子の流れが生じる。それぞれの発生する電流を、正イオ
ン電流Ji、電子電流J、とすると、それぞれJi ・eNiVi/4、 J,=eN。V,/4となる。但し、
eは素電荷で、正イオンの電荷を+eと仮定するとJi《−J,となる。そこで、 JiとJ,
併せて負の電流が流れ込み、固体は負に帯電する。すると今度はプラズマに対して負の
電位をもつことになり、電子は一部追い返されて、電子電流J、の絶対値はeN,V,よりも
小さくなる。固体の電位をVf、プラズマの電位をVpとすると電子電流J。にボルツマン
因子が含まれ、
一一
ソ一〔e(V,・VDKBTe〕 傾)
となる。T、は電子温度である。今VKVpであるのでJ,はVf=Vpの場合より小さくなる。
従ってJi ・−J,が成立する。定常状態で固体に流れ込む電流がゼロとなるためにはこの
等式が満たされなければならない。これは、プラズマとの電位差Vf−Vpが発生するまで
固体が負帯電することになる。従って、
v・−Vf一
Qh〔÷〕 (4−2)
一讐㎞〔MiTeMeTi〕 (4・3)
となる。ここでMi、 M,はそれぞれ正イオン、電子の質量である。また、ここでは接地
した電極であればVf=0である。この様に、負帯電した電極のまわりでは電子は追い返
され、プラズマ中より電子密度は極めて低く、正イオン密度との問に不均衡が生じる。
その為、電極周辺ではプラズマの状態が維持されない。この正イオンによる電荷層の部
分をイオンシース(lon sheath)と呼ぶ。この様なシース内では正イオンと中性粒子
との衝突が無視できる場合は、シースの厚さは、Vp−Vfの大きさに依存する。詳しいシ
ースの理論はBohmによって導かれ、 Bohmのシース条件と呼ばれている。 Bohmのシ
41
一ス条件ではイオンシース領域とプラズマ領域との問に準中性プラズマ領域が存在する。
図4.2にイオンシースの構造と電位分布を示す。
……’邑::::二:::二:::::::::: Vp
l { 雛辮v。
; 1 ・.・
屋 Q四as藍一亙肥utra9 reg童0竈 薩
Masma regi磁 亙on sheath region
F量9.4凹2Tぬe structure of垂o】臣she滋血
Bohmは電極に流れ込むイオン電流密度が実際より小さくなりすぎるためこの領域を考
えた。準中性プラズマ領域には弱い電界は存在するが、正イオンはこの領域で加速され
初速度(KBT,/Mi>12でシース領域に入る。よってシース端における電位をVoとする
と
Vre−V。: KBTe/2e (4−4)
となる。これから、シース端からシースに向かって流れ込むイオン電流が求められ、そ
れを空間電荷制限電流の式(Chid−LangmUirの3/2乗則)と等しいと置くことによっ
てシース厚dsが計算される。よって平板状の電極に対して
dSiiEiiη3/4 λD (4−5)
e(Vp−VD
η= (4−6)
KBTe
と表される。ここでλDはDebye長である。
また、Debye長は以下の式より計算する事ができる。
42
εoKBT,
λD(cm)7(N,e2) (4“7)
εは真空の誘電率である・T・が大きくなるほど、N,が小さくなるほどDebye長は大
きくなる。更に、数値を代入して整理すると以下の式となる
λD(cm)−6.9(Te(K))・/2 (4.8)
Ne(cm−3)
グロー放電における電子温度、電子密度の一般的数値を表4.1に示す
TabEe・‘4・1野P置c盆亙幽s磁S蝋es
E星ectron tempera紬re
Elec重ro簸densi重y
@ (K)
@ (cm−3)
DC
RF
==104∼
1 0 9∼ 1 0 1 2
108∼1010
=104∼
1011
=:104∼
M茸crow雛ve
また、イオンシースの厚さとDebye長との比を示したものが表4.2であるが、簡易的に
イオンシースの厚みはおおよそDebye長の数倍であることが報告されている。84)
丁励且e4・2亙on shea伽㎞lc㎞ess vs。 Debye le醜帥
Gases
He
Ne
Ar
Kr
Xe
02
N2
ds/λD
2.79
3.20
3.37
3.55
3.66
3.32
3.29
43
H2
2.61
この様に、電極や基板の近傍には必ずシースが形成され、イオンシース中では、イオン
や電子の加速・減速が起こる領域であり、プラズマ材料プロセスにおいて極めて重要な
役割をなしている。
4.2カソード堆積法
高周波電力を電極に印加するとグロー放電が生じ、カソード電極周辺においては、電
子の速度はイオンの速度に比較して非常に早いために電子のみが印加電極にすみやかに
流入し、電極が負にバイアスされることとなり電極表面ではイオンシースが形成される。
これまでに述べたように、このイオンシース領域は薄膜形成において非常に強い関わり
合いを持つと考えられる。そこで薄膜形成に影響を与える電極表面に発生するイオンシ
ースの厚みについて検討を行った。本実験に用いた薄膜堆積条件を表4.3に示す
Tab且e 4−3 Standard depos蔓t量on conditfion
He(Garrler gas for HMDS) 5sccm
H2 10 sccm
Pressure O.1Torr
RF power 200 W
Sulbstrate Temperature Room temperature
表4.1に挙げた様に、RF放電の一般的な電子温度、電子密度の値からDebye長を計算
することができ、先に述べたように、イオンシースはデバイ長の数倍であると考えた場
合、今回の堆積条件によるとカソード電極近傍に発生するイオンシースの厚みは500∼
600ミクロンと計算する事ができる。この厚みのイオンシースはカソード電極近傍全体
に均一に形成されていると考えられる。また、RFパワーの変化はチャンバー内のプラ
ズマ密度を変化させるため、基板側(カソード側)のポテンシャルを大きく変化させ、
プラスイオンによる衝撃効果に差が見られると予想される。そこで、本研究におけるカ
ソード電極に発生するセルフバイアス電位について測定を行った。図4.3にRF出力に
対するカソード電極に発生するセルフバイアス電位を示す。
44
5
51;o
聴 一5
°o
⇔−10
9
&−15
[13−20
ヨ
ke−25
寄
の一30
−35
1
0 100 200 300 400 500
Radio frequency power(W)
F董9・4・3Se亙f b蓋as potentfiaH oPt ca伽de e亙ectmde
RF出力を大きくすることよりカソードポテンシャルも増大することが確認できた。85)
また、RF出力が200Wで発生するセルフバイアス電位は約一5Vと小さく、300W以上
のRF出力の場合でも一10V程度の負の電位である。この値は文献による値よりも極め
て小さい値である。66)これは、カソード電極の面積が1225cm2と大きくインピーダン
スの差により電極電位は小さいものと考える。このバイアス電圧によってカソード電極
周辺で発生するイオンシース中にてイオンがカソード電極に向かって均一にシャワーし
膜の堆積が良好に進んでいくと考えられる。しかし、高周波出力によるイオン強度の影
響も膜の堆積に強く関与している。本実験においても高周波出力が300W以上の場合に
は形成された膜にクラックが生じた。これは、基板表面に吸着した前駆体やSiC膜が高
e周波出力によって発生する過剰なイオン等の高エネルギー種の衝突によって膜表面にダ
メージを与えたためと考えられ、良好な膜堆積においては、適度なイオン強度(高周波
出力)の調整が必要であることを示している。
また、電極に取り付けたSi基板上に堆積した膜のFTIRスペクトルから薄膜の化学組成
を検討した。測定した薄膜の膜厚は0.2∼0.3ミクロンであり、堆積した膜のFTIRスペ
クトルを図4.4に示す。図に示すように膜中にSi℃結合(800cm’1)の吸収のピーク、
1260cm−1にSiCH3、2860∼3000cm}1にCHnの吸収や2105cm−iにSiHnの吸収が確
認できた。また、1050cm’1の強い吸収はSi・CH2・Si、とSi−0の吸収の混合と考えられ、
45
Siつの吸収は、プラスチック表面やチャンバー内に吸着した酸素分子が脱離せず反応し、
膜中に取り込まれたと考えられる。
1 .5
8
9
Dお 1
器
く
9
慧e・s
6
0
4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500
Wave number(cm1)
Fig・嬬4 FnR s診eαmm of Sic癌且m de勲os董ted
4.3堆積膜の膜厚の均一一性と密着強度の均一性
産業界で使用されるプラスチック部品では、平面形状のものは少なく、むしろ凹凸面な
どの三次元的形状のものが多い。図4.5に検討用のこれら複雑な三次元形状をもつステ
ンレスで作製したカソード電極図を示す。電極の高低差、垂直部、アンダーカット部及
び曲面形状部における堆積膜の均一性を検討するため電極の形状を10mmの高さを持
つ台形、四角形、アンダーカット部を持つ菱形形状、更に凹凸のある曲面(R30mm)
とし、それぞれの形状部に0.5mm板厚のポリカーボネート小片をそれぞれの形状の電
極にはわせて接着し、堆積するSiC重合膜の均一性を各部位の膜厚測定及び密着強度測
定を行うことにより判断した。又、基材の前処理として血プラズマによるクリーニン
グを行った。 図4.6に各測定部分の膜厚と密着強度測定結果を示す。a)の凹凸形状を
もつ電極の場合1から㎎までの測定部分の膜厚はほぼ均一にSiC膜が堆積されており、
各測定位置での膜厚の差は約10%以内であった。この試料高低差10mmの凹凸部分に
おいて堆積されているIII、 V、㎜は平面であり、皿、 IV、 Wは垂直面であるが、膜厚の
差はほとんど見られない。測定部1と1Xに関してのみ、若干膜厚が大きく得られたが、
46
⑪ ⑦ ⑫
150
1
1
1
1
1
1
1
50
1
1
1
1
5
9
のRec肢m9腿亙ar shape e亙ectrode
③
② ④
畠
⑯⑰⑱⑲
⑥⑦R30
簿
⑩
60
わ)Concavo・convex sh題pe dectrode
F且9.4・5Schem甑views of cathode e亙ec伽de shape
47
0.8
t4
(0・7
t2
§α6
蓄α5
暑α4
α唱
量α3
α哩
議1:1
1:鐸
0
0
Exp er im ental position
墨一Film thickpess(μm)趨トPeel strength(kN/m)
t9
1.4
曾1・7
1・2
31.5
¥
器
81.3
着
α曝
遷t1
α6
鎖o.9
、
::鐸
螢
0.7
0.5
0
①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩⑪⑫⑬⑭⑮⑯⑰⑱⑲
Experim ental position
趨一Film thickness(μm)+Peel strength(kN/m)
F亘9・4・6S置C f蓋亙m chara£teristics at・varfi・聰s p・sit宜・ns
(thickness, adhesive stre皿gth>
48
Experimental positions
⑪
8
§
$
函
く
⑦
ゆ
.≧
霊
⑪
4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500
Wave Number(cm−1)
Experimental positions
③
8
竃
8
A<
⑩
ゆ
.き
電
⑬
4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500
Wave Number(cm−1)
罰9。4・7FTIR叩edr服m of S量C ffi夏ms at varfious pos鰻o聖
49
これは気化したHMDSモノマーのチャンバー中の不均一さに由来している
と考えられる。つまり、原料であるHMDSモノマーガスはチャンバー上面
に取り付けられた基板中央部下方から15cmの導入管から基板中央部に向か
って導入され、基板中央部からチャンバー全体(壁に向かって)に拡散され
る。そのためチャンバー壁に隣接している測定部1と眠周辺では拡散された
HMDSモノマー密度が他測定部よりも高いため厚膜になったと推測される。
また、基材とSiC膜の密着強度についてみてみるとIX以外はほぼ一定の密着
強度を示した。測定部Rでは先に述べた様にHMDSモノマー密度が高いた
め、Si 一一 cネットワクークが弱い薄膜が堆積されるため他測定部位に比べ低
い基板密着強度を示したと考えられる。
次に、b)の凹凸のある曲面をもつカソード電極の場合、膜厚は測定部①
∼⑤と⑥∼⑨までは凸面における直角方向の膜厚であり、⑪∼⑮、⑯∼⑲は
凹面における直角方向の膜厚である。これらの膜厚の差はa)電極同様10%
以内であり、ともにほぼ均一に膜が堆積されていることが確認でき、電極表
面における且MDSモノマーがほぼ均一に供給されていると考えることがで
きる。また、ポリカーボネート基板への密着力についても±10%以内の密着
強度を示した。これは電極の周りにはほぼ均一厚さのイオンシースが存在し、
イオンシース内で加速され、基板に衝突するイオンや荷電粒子は均一のエネ
ルギーをもっていると考えられ、堆積されたSiC薄膜は、ほぼ均一な密着強
度を示したと推測される。また、各測定部位に堆積されたSiC薄膜の組成の
均一性を確認するために得られた薄膜のIR分析を実施した。代表的な測定
部に堆積したSiC膜のIRスペクトルを図4.7に示す。2900cm” iのCHnの
ピーク強度、800cm ww iのSi−Cのピーク強度から各測定部で得られたSiC膜
はほぼ均一な原子組成をもつ薄膜と推測することができる。
更に、同様に得られたSiC薄膜の代表的なSEM観察写真を図4.8に示す。
測定部V及び⑩は原料導入部の真上にともに位置し、HMDSモノマーがチャ
ンバーに導入され、最初に薄膜が堆積する部位であり、電極と原料導入口ま
での距離の違いに伴う膜質が比較できる。このSEM観察写真を含めた全て
の測定部位にて得られた薄膜SEM写真は、表面の損傷もなく、膜中にクラ
50
ック等の無い良質な形状の膜が堆積されていた。
Exp,,im,ntal p。、iti。n⑰ Exp・・im・nt・l p・・iti・n⑩
Fig.4−8 SEM micrographs of SiC film on PC polymer
4.4まとめ
高周波プラズマCVD法において、電極に印加するとカソード電極周辺に
発生するイオンシースは電極近傍にほぼ均一に発生する。このイオンシース
領域は薄膜形成において非常に強い関わり合いを持つ。
カソード堆積方法による薄膜形成においてこのイオンシースを利用すると
複雑な三次元形状を持つプラスチック部品に対しても均一な膜厚、密着強度
を得る事が出来る。また、適度な出力の調整を図ることにより、ポリカーボ
ネートシート上に堆積した薄膜にクラックが入ることの無く良好な膜を得る
ことが出来る有効な手段でもある。
51
第5章ヘキサメチルジシランからのSic薄膜の堆積
a−SiC膜は化学的に非常に安定であり、ワイドギャップをもつことからa−Si太陽電池
の窓層となるP層に利用されている。また、a−Sic膜は非常に硬い材料でもあることか
ら、保護膜や、特に各種材料の硬質皮膜や耐摩耗性などの被膜としての機械的性質を利
用している用途も多く見られる。現在では、ハードディスク表面の保護膜としてa−Sic
薄膜が検討されている。更にこのSiC薄膜の紫外線カット特性を利用して、佐野らは
ECRプラズマCVD法により低温中でSiC薄膜をプラスチック表面に堆積させ保護膜と
して有効であることを報告している。そこで本章ではカソードRFプラズマCVD法に
より、HMDS (Hexamethyldis丑an.e)と水素ガスを原料として、 SiC薄膜をポリカー
ボネート樹脂表面に堆積させ、SiC薄膜の堆積条件と耐候性、耐擦傷性としてのハード
コート膜としての有用性について検討を行った。
5.fi診ECVDの薄膜堆積の原理とSic薄膜の堆積過程
PECVD法では、図5.1に示すように、反応室中で原料Sとラジカル励起ガスGが反
応し、ラジカルやイオンをプラズマ中で発生し、同時に気相中で前駆体(プリカーサー)
を生じる。この前駆体は拡散により基板表面へ吸着し、表面での化学反応やラジカルと
の化学反応を通して薄膜が形成される。この過程においてはラジカル励起ガス量Gと
原料の量S、さらに基板温度T、プロセス圧力Pが薄膜の堆積に主要な影響を与える。
G→Reacti・n
Pressure Temperature
P T
F亘9・5・1 The concept of fi亙m depos面o髄PECVB method
52
ai
crl
‘iS
o
Supply rate of Source Material Rate of Radical Volume
(a) (b)
Fig.5・2 DepePtdence of depositfioit rate opm souxrce materia且aPtd・radicaR・voResme
原料が少なく、ラジカル量が充分なとき、薄膜の堆積は原料の供給量に依存する。図
5.2(a)に薄膜の堆積速度①R)と原料の供給量依存関係の一例を示す。領域Aでは堆積
速度は原料供給量の増加とともに増大する。更に原料の供給量を増やしていくと、領域
Bの挙動を示すようになる。ラジカル量が一定であるため、供給された原料と比べると、
気相中原料との分解反応や表面における前駆体との反応に必要なラジカル量が充分では
なくなる。そのため、堆積速度は原料供給量に比例せず、飽和する傾向を示す。図5.2(b)
にラジカル量を変化したときの薄膜堆積速度の依存性を示す。高周波プラズマCVDの
場合にはラジカル量は高周波出力に依存する。つまり、高周波出力の増加に伴い、供給
された反応ガスGの励起ラジカル量は増加する。C領域ではラジカルは原料分解に殆ど
消費されるため、堆積速度はラジカル量に比例して増加する。この場合には薄膜形成は
前駆体が基板表面に到達し薄膜形成が行われる。しかし、さらにラジカル量が増加した
場合D領域では、供給される原料が全て分解され薄膜形成に使われてしまうためラジカ
ル量が増加しても堆積速度は飽和する傾向を示す。
本研究において、堆積条件の詳細については後述するが、薄膜作製に用いられる有機
原料の分解には、水素及び酸素ガスを用いた。水素、酸素ガスの導入量は450μmo1/min
であり、これらのガスが反応容器中でRF印加することにより、ガスの数%がラジカル
に解離されると考えられる。86)更に調整された反応プロセス圧力条件下では反応容器
中には1014/cm3程度の水素及び酸素ラジカルが存在すると計算される。これらのラジカ
ル密度は表4.2で示したRF印加中の電子密度108∼1010/cm3より圧倒的に多く、原料と
の衝突確率から見ても原料の解離には大部分が水素及び酸素ラジカルによって行われて
いると考えることができる。
53
S.Wickramanayaka, A.Wrobel 70}らは原料とするHMDSと水素プラズマを用いたプラ
ズマCVD法によるSic薄膜堆積メカニズムを以下の様に提唱している。
】Me3Si−S麗e3十H・ 一一 Me3S量盈十d・S量Me3 (5一笠)
(HMDS)Hydrogen radica1. Trimethylsilane Thmethylsilane radical
Me3S温十H★ __一→ Me 3S量・十 H2 (5−2)
Tr血1ethylsilane radica1
2(MesS量う 一→ 喩2S量=CH2+Me3S量H (5−3)
Tri血ethylsilane radical Dimethylsiylmethylene Trimethylsiane
Me2Si−CH2
2(獺e2S量=CH2) 一一→ ii (5−4)
H2C−SiMe2
Dimethylsilylmethylene Precursor
H盆C−SiMe2
1 1
3(M・2S藍=CH2) 一→ Me2S量Cth (S5)
1 1
H2C−−SiMe2
Dimethylsiylmethylene Precursor
HMDS原料は水素励起プラズマにより原料中のSi−Si結合が切断され(Me3Si・)トリ
メチルシランラジカル中間体が生成される。この中間体は2量化反応により再びHMDS
原料に戻る反応と(5−3)に示される様な2重結合を有する前駆体が生成される2反応を有
する。更に、この不飽和な前駆体が(5−4)、(5−5)に示される様な重合反応を起こし、si−C
結合を骨格に持つ前駆体が生成していくと考えられる。基板表面では図5・3に示される
SiC薄膜の堆積反応が進行していると予想される。まず気相中で生成された2重結合を
もつ前駆体が基板表面に吸着する。この前駆体がプラズマ中の荷電粒子や水素ラジカル
の衝撃を受け、前駆体中の水素やアルキル基の脱離が起こる。この様な前駆体は更に基
板表面において重合反応が促進され、SiC薄膜が成膜していくものと考えられる。
54
車 ()Ut−diffusion
1
Precursors H* 且
At/’\〆 匝(凋 。、
Me H H2−C−Sl−Me2 ・C−−S・
il ! \ ** / \
Me−SトC−H Me2・−Si C−H2 。SトC* *S・・C・
ll \ / Il \ /
H−C−Si・・ Me H−C−Si−Me 。(〉−Si。 ・C−・S・
圏や nc SubStrate
〆
* *
ホ *(〉−Si* *CSI*
** @ / \ * ・ l l
・SトC* *Sl**C・ 。SトC _Si._c i
1! \/ 1! ll
*CトSl* *G−Sl* 。 C■■一・Si−C−Sl、
F量g.5・3Mecb認sm of S童C depos且tio聰o聡PC s曲strate
55
S.2成膜条件とSic薄膜の特性
SiC薄膜を堆積させるためには水素励起種をプラズマ反応に用いるが、高純度の水素
ガスをマスフローコントローラーで流量制御して、プラズマ発生室内に導入し水素をプ
ラズマ化することにより励起種を得る。また、流量を制御したHeガスをキャリアーガ
スとして使用し、㎜Sをバブリングして得られた気体状のHMDSとHeの混合ガスを
反応容器に導入した。高周波電力をカソード電極に印加すると電極間にグロー放電が生
じ、電極表面に取り付けた各種基板表面に目的とするSiC膜が堆積される。基板として、
膜特性を詳しく調べるために、Si(100)、石英ガラス、更にpc(ポリカーボネート樹脂)
が用いられた。Sic薄膜堆積のプラズマCVD条件の範囲を表5.1に示す。
Tab亙e 5・五P亙段sm我CVD co舩董t置o鵬
HMDS O.5∼2。5 sccm
(Bubbling Temp 40°C)
H2 10 sccm
Pressure O.05∼1.OTorr
RF power 100∼400 W
Substrate Tempera加re RoomTemp∼120°C
室温にてsi(100)ウエハ基板上に堆積したsic薄膜のFrlRスペクトルとxPsにより
Sic薄膜の化学組成を検討した。組成分析用のSic薄膜の膜厚は1μmである。堆積し
たsic膜のFTIRスペクトルを図5.4に示す。,800cm−1にsicの吸収が顕著に認められる。
その他に1260cm−1にSi−CH3、2860∼3000cm”1にCHnなどの炭化水素の吸収が確認され
た。更に、2000∼2200cm}1はSiHn(stretching)の吸収であり、1050cm−1の強い吸収は
si−cHn−siとsioの2つの吸収ピークが重なって現れていると考えられる。 si・・oの吸収
ピークは基板表面に吸着された酸素分子や或いはチャンバー表面中の酸素ラジカルの反
応に由来していると考えられる。尚、今回得られたSiC膜のIR吸収スペクトルは佐野ら
の報告結果と同一であった。21)
56
8
葱
£
8
遷
9il
慧
歪
4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500
Wave Number(cm−1)
F重9.54 盛TIR s蟄ectr腿m of S亘C f茸夏ma depos量ted
また、図5.5にSiC膜のXPSスペクトルを示す。結合エネルギーが283eVの位置にC−Si
結合のスペクトルが認められるが、単一のピーク分布幅よりも広く、その他C−0、C−C、
c−Hとの結合の合成されたものとして考えられる。また、Si2pスペクトルについてみて
みると101eVにSi−C結合が見られるが、 IR分析にて見られた様に、 Si−0結合も確認で
きており得られた堆積膜はFTR、 xpsの結果より不純物のアルキル基やSiOの化学状
態を含むSiC構造を有した膜であることが判明した。
30 14
12
>25 惹
岩
◎り 10
8
三2° 三8
器
.塁15 9 6
讐
墨
にと
@10 醒4
2
5
0
300 295 290 285 280 115 110 105 100 95
Binding Energy(eV) Binding Energy(eV)
F且95−5XPS spectr段of S董C雌ms
57
基板温度を変化させ、基板表面での反応の違いを確認するために、PC樹脂の熱変形温
度にちかい120℃まで基板温度を変化させ、Sic薄膜の堆積を行った。図5.6に示すよう
に基板温度の上昇とともに堆積速度は減少した。
7.8
§
ξ7.6
≦
.ie 7.4
歪
ε7.2
”6
9
8 7
コ
6。8
2.5 2.7 2.9 3.1 3.3
1/T×10繭3K
F量9.5・6DepOSit貫0取r段te O建S量C飯夏inS as a fuRct童OR O歪S曲Strate・te即e臨腿me
一般に化学反応速度の温度に対する依存性は以下に示すアレニウス(Arrhenius)の式
に従う
K :Aeexp(−Ea/RTs) (5.1)
ここでK:速度定数、A:頻度因子、 Ea:見かけ上の活性化エネギー、 R:気体常数、 Ts:
基板温度である。熱CVDプロセスにおいては、堆積速度と温度の関係は図5.7に示され
以下の3つの温度領域に分けられる。
(基板温度が低温の領域a)
この領域では基板温度依存性が大きく、温度上昇と共に反応が促進され成長速度が大き
くなり、温度による基板での表面反応が律速段階となる。この場合活性化エネルギーは
正となる。
(基板温度が中温の領域b)
基板による熱エネルギーが充分に供給されており、成長速度は基板温度にあまり敏感で
58
はなくなり、原料の供給量に依存する供給律速領域である。この領域は基板温度に影響
を受けないため活性化エネルギーはほぼ0となる。
(基板温度が高温の領域c)
基板からの熱エネルギーが大きくなり分解された前駆体が表面に存在し、成長速度は基
板上での前駆体の吸脱着によって支配される吸着律速領域である。この領域での活性化
工ネルギーは負になる。
_i
$i
歪
琶
王i
8
ゆ
e蕊
1/Ts
F蓋95・7Ar虚輔ass ge艮ot o廻囎os描o髄r罐髄s翫e蝕賊戯o賦
of s曲s撫観e脚ematuve
プラズマCVDの場合には、原料のほとんどがプラズマにより分解され、気相中で前
駆体となるため図5.7の(a)領域が現れない場合が多い。本カソードプラズマCVD法にお
けるSic薄膜の堆積においても、(Ea=−0。07eV)と非常に小さい負の値を示した。この
活性化エネルギーの値は他の報告例とほぼ同じ値を示しており、SiC薄膜堆積において
は、気相中では主として原料モノマーの分解が起こり、基板温度はSiC薄膜堆積速度に
あまり影響を与えず、主となるパラメーターでは無い。しかし、基板温度は堆積された
膜質に影響を与えている。
59
8
欝
を
$
D<
o
.≧
冠
4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500
Wave Number(cm−1)
F且g.5−8FT・IR spectr服m of d叩os藍ted S量C f遡m⑳s我f嘘c重量opt of s“bstrate
temperature
基板温度に対するFrlRスペクトルの変化を図5.8に示す。常温での基板温度で堆積し
た薄膜においても800cm’‘1付近にSi−Cの強い吸収ピークが見られる。しかし、基板温度
を上げることで1250cm”1付近に見られるSi−CH3のピーク、1000cm’i付近に見られる
si.cH2−si、−sioの吸収ピークが共に減少していることにより、高い基板温度では3次元
的なSiCネットワークが形成する過程において一CH3基や水素が基板表面での反応にて脱’
離していることが考えられる。すなわち、基板温度の上昇に伴い水素励起種との競合反
応により前駆体中、或いは基板吸着膜中の酸素やメチル基などがわずかながら脱離し、
より緻密なSiC膜がネットワーク状に成長したためと推測される。また、基板温度に対
するAES分光分析を行い薄膜中のSi及びc等の元素組成を求めた。この結果を図5.9
に示す。常温堆積では薄膜中に炭化水素を多く含みC元素リッチの膜となっている。し
かし、基板温度の上昇と共にSiの比率が増加し、 cの比率が減少する傾向にあることが
確認できる。また、基板温度の上昇に伴い、基板及びチャンバー中に含まれる酸素の量
も減少する事が確認できた。常温堆積ではCの多い膜であるため光学吸収端が短波長に
シフトする傾向にある(図5.10)が基板温度を上昇させることにより炭化水素の脱離が
みられ、Siの多い膜となる傾向になる。このため基板温度の制御をすることにより薄膜
のバンドギャップの調整が可能と考えられる。
60
70 −一一一一一一一一一一一一一
C
5。 i
Aミ3 Si
・ i
i
.930
O i
10
0 −一
〇 50 100 150
Substrate Temperature(°C)
F量95・9A重o面c r麟o o鐙die璽os量重ed【S量C髄亙m as a舳ncttoR of
s曲strate temaperature
100
90
80
≧ミ 70
)
o
o 60
器
# 50
鰯琵
の 40
焉
ホ30
20
10
0
200 300 400 500
Wavelength(nm)
F量9.5・10rUV tram Sm且ttaRCe CharaCter童St亘CS Of S藍C髄亘mS紐S劉舳PtCt藍0聰Of
S曲st慨重e即eratwrρ
61
次に鯉出力における成膜条件の影響について検討を行った。鯉出力を変化させるこ
とはチャンバー中のプラズマ密度を変化させることでもある。前章にて述べたが聾出
力を大きくすると自己誘起のカソードポテンシャルも負の方向に増大する。従ってカソ
ード堆積方法においては、・RF出力を大きくすることによりプラスイオン衝撃効果が顕著
に現れると考えられる。図5.11に鯉出力に対する堆積速度の変化を示す。RF出力を
100∼400wに増加させるにつれてSic膜の堆積速度は著しく上昇する。また、鯉出力
を変化させた時の発光スペクトルを図5.12に示す。RF出力を大きくすると水素イオン
の発光スペクトルをはじめとする各スペクトル強度が増大しており、プラズマラジカル
種の量が著しく増加しているものと考えられる。
2500
G
腰歪2000
\
$1500
虚
ぎ1000
碧
o
$500
Q
O
O 100 200 300 400 500
RF Power(W)
F量9. 5・91 DependeRce of depOSEt童0聰凱e oぜS量C髄置ms O臓R恥ower
ここでRF出力を変化させたときのFT−Mスペクトルを図5.13に示す1250cm−iの吸収
をもつSi−CH3のピークと1000cm}i周辺に見られるSi−CH・2・−Si、−SiOの吸収がRF出力を
増加するのに従い減少している。この現象は堆積中の基板の温度を上昇させた時と同様
な挙動とみられ、RF出力の増加に伴い増加した水素プラズマ活性種との競合反応の活発
化により膜中の酸素やアルキル基が脱離し緻密なSiC膜がネットワーク状に成長したた
めとと推察される。
62
RF 300W
’あ
ニ
RF 100W
$
5
200 300 400 500 600 700 800
Wavelength(nm)
F藍9.5・亙20pt量c&盈em量ss茸o聡spectra of p且asma CV⑪
8
遷
8
の
く
の
。ヒ
寄
4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500
Wave Number(cm−1)
Fig.5・13 FT−IR spectrum of SiC fiXm as a funct量on of RF power
63
図5.14にAES分析によって測定したRF出力に関するSiC薄膜の元素配合比の変化を
示す。SiC膜中のSiの比率はRF出力の上昇につれて増加することが確認できている。
この結果はFHRスペクトルで述べた結果と同じで、緻密なSic薄膜がネットワーク状
に成長するものと同じであることがわかる。しかしながら本実験においても300W以上
の出力の場合にはSiC薄膜中に多くのクラックが発生した。これら膜中のクラヅクはRF
出力増加に伴う多くのラジカル励起種と高いエネルギーイオンの基板への衝突による加
熱と熱膨張係数の違いによるストレスから発生したと推測される。
一6⑪
毒
峯
く
20
0
0 100 200 300 400 50⑪
RF P◎wer(W)
F蓋9・544A蝕謡α説蓋o oぜS蓋C竃亙m冠s紐翫mc伽潴of R貯power
プロセス圧力を変化させると反応過程における平均自由行程が大きく変化する。プロ
セス真空度を上げれば上げるほど平均自由行程は長くなり、プラズマ中に発生したプラ
スイオンは大きなエネルギーで基板表面に衝突する。そのため、基板表面においては、
RF出力を増加させた場合と同様な反応過程が考えられる。図5。15にプロセス圧力変化
に伴うSiC薄膜のFT−IRスペクトルを示す。このrRスペクトルより真空度をあげるにつ
れてRF出力の増加に伴う挙動と同様に膜中のsi−CH3とsi−・cH2−siの吸収ピークが減少
していくのが確認でき、SiCネットワークの形成が促進される様子が見られる。また、
64
プロセス圧力に対するSic薄膜の堆積速度の変化を図5.16に示す。 O.ITorrを境にプロセ
ス圧力の上昇と共に堆積速度が低下する。これは圧力が高いとラジカルの総量は増加し、
反応は促進すると考えられるが、ラジカルの再結合量が増加することにより反応部へ届
くラジカル量が減少するため及びガス中で生成していた前駆体が表面へ拡散して到達す
る量が減少するために堆積速度は低下すると考えられる。
8
器
紀
$
論
く
ゆ
.≧
寄
4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500
Wave Num.bef(cm−1)
F童9ふ15F闘R s験ec魏搬oぼS蓋C鰯ms劉s繍蝕瓢童o髄o奮伽mbeer presswave
また、HMDS原料供給量に対する堆積速度の変化を図5.17に示す。この条件下では、
供給される水素ガス濃度の数%がラジカルに解離したと考えると水素ラジカルは1014/
cm3
度存在すると計算される。この水素ラジカルの密度は表4.1に示した電子密度と比
較すると非常に多く存在する。この水素ラジカルによってHMDS原料が分解され、 SiC
薄膜が形成されていく。図5.17よりHMDSの供給量の増加に伴い、著しい堆積速度の
増加が認められる。このことは、このHMDS供給量の範囲では、 HMDSの供給量に対
し、チャンバー中に供給される水素プラズマの励起種が充分存在していることが伺われ
る。
良質なSiC薄膜の堆積において基板温度、 RF出力、プロセス圧力の3パラメーターの
影響が特に見られ、すなわち基板温度の上昇にともなう表面反応の活発化、RF出力の上
65
2500
A.g 2000
∈
≧
冨1500
届
ぎ1000
碧
9
8500
0
0 0.5 1
Pressure(torr)
]Fig.5・16 Depend【e聡ce of deposit養o瀬r就e of S艮C figms en chamber pressure
2500
?2000
麟姦
\
〈
憶∫1500
据
a
ぎ1000
碧
a
8500
0
00.511.522.5
HMDS FIow Rate(sccm)
Fig.5−17 Dependence of deposition rate of SiC fi且ms on source gas f量ow rate
66
昇に伴う荷電粒子のカソード基板へのイオン衝突エネルギーの増加、更にプロセス圧力
の高真空化に伴う粒子の平均自由行程の増加により基板への衝突エネルギーが増大し、
薄膜中に存在する炭化水素の脱離を促進させることができる。したがって、これらの結
果として堆積された薄膜は、基板表面と密着力のある、より強固なSi−cネットワークを
もつ緻密なSiC薄膜が形成されるものと考えられる。
5.3 ポリカーポネート樹脂へのSic薄膜の堆積
ハードコート膜として期待されるSiC薄膜をpc樹脂(ポリカーボネート)上に堆積さ
せ、PC樹脂上の堆積膜の特性、並びに膜堆積前後のPC樹脂表面の耐光性能向上につい
てキセノンアークランプを用いた紫外線照射による促進耐光性試験により確認した。
5.3.1堆積膜の表面形態
まず、PC樹脂表面に堆積させた膜厚1μmのSic膜の表面、及びその形状の顕微鏡観
察をSEMとAFMより行った・図5.18にオリジナルPC樹脂表面(a)とSiC薄膜を堆積し
たPC樹脂表面(b)のSEM写真を示す。
オリジナルpc樹脂表面は成形中の金型傷等が確認されるが、 SiC薄膜を堆積させたpc
樹脂表面は膜のクラック及び剥離の無い良質な表面状態が認められる。これは、RF出力
が適度であるためプラズマの荷電粒子やイオンによる基板表面の損傷が少なく調整され、
薄膜が堆積されたためと考えられる。更に前述したAESやmr−R分析結果から推測され
るように、堆積されたSiC膜には数%の炭化水素を含む柔軟性の高い膜であるため、 pc
樹脂の熱膨張、収縮に追従出来たためと考えられる。
sic膜を堆積する前後のPc樹脂オリジナル表面のAFM像を図5.19に示す。 Pc樹脂表
面に堆積したSiC薄膜は粒子状に堆積しているのが認められる。この結果は低温基板堆
積の状態で、ポリカーボネート樹脂表面に吸着したSiC膜の前駆体のマイグレーション
反応及び堆積膜の流動性はあまり優れないことが推測される。この結果はこれまでに報
告されているSiC薄膜の堆積表面状態と同様な結果であった。21)
67
(a)Original PC substrate (b)PC substrate coated by SiC
Fig.5−18 SEM micrograph of PC surface
(a)Original PC substrate (b)PC substrate co3ted by SiC
Fig. 5−19 AFM micrograph of PC surface
68
5。3.2堆積膜の密着強度
pc基板へのSiC膜の密着性について検討を行った。基板へのSiC膜の密着性はプラ
ズマ中の荷電粒子やプラスイオンのエネルギーの大小により基板への衝突強度により大
きく左右されると考えられる。そこで本研究ではラジカル励起種とイオンのエネルギー
強度に影響を与えるPS出力に着目しSiC薄膜の密着強度(Peeling strength)の変化を確
認した。図5.20にその密着強度の変化を示す。RIF出力の増加につれてPC基板とSic薄
膜の密着強度も増加する事が見られる。これは前述した様にRF出力の増加に伴い高い
エネルギーを持つ水素ラジカル励起種の基板への衝突によりアルキル基等の脱離が考え
られ、それに伴う強固なSicネットワークが形成されることにより向上したと考える。
0.5
ノへ
ξα4
葦
sO。3
器
お0・2
◎◎
鰯
Φ0.1
臨
0
0 100 200 300 400 500
RFp◎wer(W)
F童9。5−20Pee亙S駿repmgt量亘VS. RF茎)ower
69
5.3.3堆積膜の表面擦傷牲と紫外線カット特性
更にポリカーボネート樹脂表面上へのSiC薄膜堆積前後の表面硬度の比較を表5−2に示
す。試験に使用したSiC薄膜の堆積条件はRF出力300W、プロセス圧力0.1Torr、常温
基板温度であり、膜厚はtOμmの試験片を使用した。表5.2の値は、ラビングテスター
を用い・#OOOO品番のスチールウールを使用し、1439/cm2の一定荷重を加え、これを基
板上で約11サイクル往復させて基板表面に傷をつけその度合いをHaze値(曇価)で表
したものである。87)Haze値とは基材の曇りの度合いを示す指標であり、以下に示す
式より計算される。
Td/T t×100= Haze(%)
Td:拡散透過率, T,:全光線透過率
オリジナルPCの初期表面のHaze値と比べてSic薄膜を堆積させたPC樹脂の初期
Haze値は遜色がなく、かなり小さなHaze値を示した。これはPC樹脂表面での拡散光
の影響が小さいことを示しており、堆積したSiC薄膜がクラックや剥離の無い良好な膜
であることを示唆している。擦傷性試験後、Sic薄膜の表面Haze値はオリジナルPC樹
脂表面の約半分のHaze値を示し、表面保護膜としての可能性に期待できる。
Tab且e 5・2 Abrasion characterist豊cs of PC s駆r£ace
Before treatment After treatment
Original PC 1.8(%) 25.8(%)
SiC coated PC 1.4(%) 12.8(%)
図5.21に常温にて堆積されたSiC薄膜のRF出力に対する紫外線分光透過率曲線の変
化を示す。この測定には石英ガラス上に3μmの膜を堆積した試験片を用いた。尚、こ
の堆積膜の透過率曲線は、石英ガラスの吸収曲線を差し引いたものである。SiC薄膜の
70
紫外線カット波長は300∼400㎜の間に見られ、RF出力を増加することにより紫外線カ
ット波長は長波長へ移動していくのが見られる。これは聾出力の増加に伴い膜中に含
まれるSi元素比率の増加に起因していると考えられ、約5eVのバンドギャップを持つ
SiC薄膜中のSi元素比率の増加に伴うバンドギャップの減少に寄与していると考えるこ
とが出来る。これらの結果から、SiC薄膜はプロセス鯉出力の調整により紫外線カット
波長の最適化をはかることで、ポリカーボネート樹脂(PC)の紫外線劣化の防止膜として
期待できると思われる。
電00
≦ミ80
50
器60
鱈髭
240
鐙
←
20
0
250 300 350 400 450 500
Wavelength(nm)
F直9。5・21 UV Tkransmfittance character量s重且cs of S量C鋤ms as a denc重責oR of
RF pow£r
5.3.4ポリカーポネート基板の耐光性能
SiC薄膜の耐光性能を確認するためにキセノンアークランプを用いSiC薄膜を堆積し
たPC樹脂表面に対して紫外線光を照射し、照射前後のPC樹脂の透過率、曇価、黄色度
変化を測定した。ここでのキセノン耐光性試験条件を表5.3に示す。87)
71
Table 5−3 XeRon weather meter cond蓋tio睡s㎞t】be UV
degr繍da纐o孤紅est fc)r PC samp置e
Xenon arc lamp power 3.5(KW)
Irradiance lOO(W/m2)
Lamp irradiati◎n Continuance
UV℃ut刊ter<275nm Bor◎silicate
UV−cut filter<320nm S◎da賄me glass
Black−panefi temperature 89±3(°C)
Humidity 50±5(RH%)
キセノンアーク試験1000H後のオリジナルPC樹脂表面(a)とSic薄膜を堆積したPC
樹脂表面(b)のSEM写真を図5.22に示す。オリジナルPC樹脂表面には紫外線劣化によ
る凹凸が全面に見られた。一方SiC薄膜を堆積させたpc樹脂表面はクラックや凹凸、
さらには剥離の無い良好な表面状態の維持が確認でき、SiC薄膜は紫外線照射によるpc
樹脂表面の保護膜として有効であることが確認できた。
また、図5.23にキセノン耐光性試験における紫外線照射時間に対する可視光透過率変化
を示す。試験前PC樹脂の透過率の差はほとんど無く、89%以上の非常に高い透過率を
示している。しかしながら、照射時間が長くなるにつれてオリジナルPC樹脂の透過率
は大きく低下していくのが見受けられる。1000Hの照射試験後ではオリジナルPC樹脂
の透過率は79.2%と大きく低下しているのに比べSiC薄膜を堆積したpc樹脂の透過率
は85.4%と高い透過率を維持する事が確認された。
図5.24にキセノン耐光性試験に対するHaze(曇価)値変化を示す。照射時間の増加と
共にHaze値の上昇が認められる。試験1000H後のHaze値を比較してみるとオリジナル
PC樹脂では8.5%の大きな上昇がみられ、 SiC薄膜を堆積したPC樹脂のHaze値は3.5%
と低い結果が得られた。これは、明らかに、表面での拡散光を抑えることが出来ている
ためであり、紫外線によるPC樹脂の光劣化を著しく防止する事ができたためと判断出
来る。
72
(a) Original PC substrate
(b)SiC−coated PC substrate
Fig.5−22 SEM micrographs of the PC substrate surface
after xenon weather meter test of 1000H
73
92
(90
S℃−c◎ated
PC substrate
) 88
8
器
.#
∈
co
86
84
』
飼
1 82
Originai
PC subsセrate
の
國
> 80
78
0 250 500 750 1000
Exp◎sure Time(h◎urs)
F且9.5・23V亙S繊醜sm量伽蹴ce of S亙C・鵬ted・PC・substrate・as・a舳翻沁rk 9f exposure t藍me
9
8
7
A)承
oN
6
Originai
PC substrate
5
4
コ:
3
2
Sic−c◎ated
1
PC substrate
0
0 250 500 750 1000
Exposure time(hours)
Fig。5・24 Haze of SiC−coated PC substr紐te as a翫mction of exposure time
74
また、図5.25にキセノン耐光性試験時間に対するYI(黄色度)の変化を示す。オリジ
ナルPC樹脂は試験時間の増加と共にYI値は増加していくのが確認できる。一方、 Sic
薄膜を堆積したPC樹脂は試験時間500時間までは、 PC樹脂の光劣化による黄変化を抑
えることが出来ている。反面それ以上の試験時間ではオリジナルPC樹脂以上のHを示
している。長時間の紫外線を照射した場合には、SiC薄膜の紫外線によるpc樹脂の黄変
化防止性能は著しく低下してしまうことが確認された。このことは、紫外線をカットす
る目的からは問題があり以下に検討を行った。
25
20
穿
A
× 15
Φ
℃
轟
Originai
PC substrate
≧ 10
2冠
>
5
Sic−coated
PC substrate
0
0 250 500 750 1000
Exposure t{me(h◎urs)
F孟g。5・25 Ye亙亙ow蓋孤dex o建S童C風coated pC substrate as a fumct蓋o簸of expos腿re t童me
図5.26に石英ガラスに堆積したSiC薄膜のキセノン耐光試験前の紫外線分光スペクト
ルとキセノン耐光試験250H後の紫外線分光スペクトルを示す。試験前の分光スペクト
ルではPC樹脂の最大劣化波長である300∼350nmの透過率は30%以下であり紫外線劣
化防止膜としては充分で期待できる膜であると考える。しかし、キセノン耐光試験後の
膜の分光スペクトルは明らかに変化し、300∼350nmの透過率は80%以上となり、ほと
75
んどの紫外線を透過してしまい、PC樹脂の光劣化防止には効果がないと判断できる。こ
れらの結果は、低温基板条件で成膜したSiC薄膜のSi−cネットワークの不安定さに起因
していると考えられる。
100
90
( 80
塗70
8 60
鍔 50
ε 40
ω
器 30
し
← 20
10
0
150 200 250 300 350 400 450 500
Wavefiengヒh(nm)
】F茸9。5・26C蝕踊920fUV瞭躍sm童敏造級ce o鐙S蓋C鰯㎜s題翫mc就量o離【of UV
exgeosesre e量醗e
成膜直後のSiC膜にはSi−cネットワークが充分存在しているが、紫外線照射により
不安定なSi−cネットワークは徐々に分解し、空気中の酸素と反応し、より安定なバンド
ギャップの大きいSiO結合をもつ薄膜へ変化していき、そのため膜のuvカット性能も
大きく変化していくと考えられる。また、長時間の紫外線照射に伴いオリジナルPC樹
脂以上にYI値が上昇するのはpc樹脂の光劣化に伴う黄変化とSiC薄膜自身の光劣化に
伴う黄変化との複合であるため、YI値は大きな値を示したと推測される。
76
5.4まとめ
カソードプラズマCVD法によりPC(ポリカーボネート)樹脂上に水素励起プラズマ
とHMDSモノマーを原料として堆積したSic薄膜は200㎜!min以上の高い堆積速度で
堆積させることが可能であった。得られたSic薄膜はHMDSモノマーに由来するハイド
ロカーボンを含むアモルファスな薄膜であったが、膜中にクラックや剥離の無い良質な
薄膜であった。RF出力、プロセス温度、プロセス圧力の調整により、膜中に含まれるバ
ンドギャップの小さいSi元素比率を向上させることができ、紫外線カット性能を調整す
る事ができる薄膜であった。SiC薄膜の紫外線カット性能はRF出力の増加に伴い向上さ
せることが可能である。しかし、高いSW出力の場合には、 PC樹脂基板との密着強度の
向上にはつながるが、プラズマプロセス中の荷電イオン粒子によるイオン衝撃のため膜
にクラック等のダメージをうける。そのため良質なSiC薄膜堆積においては最適なRF
出力の調整が必要である。SiC薄膜を堆積したpc樹脂基板の表面擦傷性能はオリジナル
PC樹脂基板の約2倍の性能を保持しており、ハードコート膜として今後期待される。ま
た、紫外線カット膜としては、紫外線によるPC樹脂基板表面の荒れ(酸化)防止には
優れた効果を発揮することができる。しかし、SiC薄膜のSi−cネットワークの不安定
さに起因する膜のバンドギャップ変化がおこるため紫外線劣化によるPC樹脂の黄変化
においては現段階では充分とは言えない。SiC薄膜がより完全な形のSiCネットワーク
形成されたものを作ることが出来れば可能性があるが、さもなければ、紫外線防止のた
めに他の方法を用いなければならない。
77
第6章 Zpm⑪/S蓋⑪薄膜の堆積
ZnO薄膜は、圧電、電気光学特性を生かした音響デバイス、音響光学デバイス、電気
光学デバイスなどの材料として有効であり、光導波路や弾性表面波(SAW)フィルタ、透
明導電膜などへの研究が進められている。89)”105)また、ZnO薄膜は非常に優れた紫
外線カット性能も保持しているため、各種紫外線カットガラス等への応用が図られてい
る。一方、SiO2薄膜は広い分野で活用され、電子デバイス分野においてステップカバー
レージ性に優れ、耐絶縁破壊性能の向上が図れる為、ゲート絶縁膜、層間絶縁膜にSiO2
膜の形成が行われている。また、SiO2膜は、ガスや電気に対するバリアー層としても使
用されている。機械的用途としては非常に硬い表面硬度特性を保有しているため様々な
材料のハードコート膜や耐磨耗性被膜、耐腐食性被膜に利用されている。高井らはプラ
ズマCVD法により透明樹脂基板上へ硬質なSio2薄膜の堆積について報告している。
106) −109)
本章では紫外線のカット膜としてZnO薄膜を、耐磨耗性被膜としてSio2薄膜をカソ
ードRFプラズマCVD法により各種基板に堆積させ、 ZnO薄膜、 SiO2薄膜それぞれの
堆積条件を検討した。更に、Sio2薄膜とZnO薄膜の2層積層膜をポリカーボネート樹脂
表面に堆積させ、耐光性、耐擦傷性としてのハードコート膜としての有効性を検討した。
6。1ジエチル亜鉛からのZnO薄膜の堆積
6.L1成膜条件とZnO薄膜の堆穣特性
原料としてDEZ(diethylzinc)を使用し、酸素励起機種とのプラズマ反応を用いてZnO
薄膜の堆積を行った。110)Sic薄膜堆積と同様に流量制御した高純度酸素ガスをプラズ
マ発生室内に導入し、酸素プラズマを発生させる。キャリアーガスとして使用したHe
ガスとバブリングして得られたDEZ混合ガスを反応容器中に導入した。堆積したZnO
薄膜の特性を詳しく調べるためにSiC薄膜の堆積と同様Si(100)、石英ガラス、 pc基板
表面に堆積を行った。ZnO薄膜のプラズマCVD堆積条件の範囲を表6.1に示す。原料で
78
あるDEZの流量、プロセス圧力、 RF出力、更には、プロセス中の基板温度を変化させ
ZnO薄膜の堆積速度と膜堆積特性について検討を行った。
撫む且e6・lP盈紐s鵬我CV]Dco醸d瀬o擁S
DEZ O.3∼1.O sccm
(BubblingTemp40℃)
02 10sccm
Pressure O.075∼1.0 Torr
RF Power 30∼400 W
Sub$trate Temperature Room Temp.∼120℃
RF出力における成膜条件の影響について検討を行った。図6.1にRF出力における膜
堆積速度の依存性を示す。低いPS出力領域では薄膜堆積速度はRF出力の増加につれて
同様に増加する。気相中では原料である有機金属と膜の前駆体の解離速度は㎜出力の
増加につれて増加すると考えられる。ew出力が100Wに到達すると膜の堆積速度は最大
になり逆にRF出力が100W以上では減少する。図6.2にRF出力に対するカソード電極
に発生するセルフバイアス電位の変化を示す。カソード堆積法において基板表面電位は
RF出力に依存し、 RF出力が100Wの時、プラズマ電位に対してセルフバイアス電位は
一70Vであった。この値は第4章の図4.3に示したセルフバイアス電位に比べ非常に大き
な電位であった。図4.3に示される電位の場合、電力供給電極面積は1225cm2と大きく、
−70Vを示した図6.2の電極面積180cm2の約7倍と大きい。2.1式に示した様にカソード
電極に発生するセルフバイアス電位は電極面積に影響を受けるため、この様な大きな電
位が発生したと考える。この時、プラズマプロセス中の正イオンは膜表面にシャワーの
様に攻撃し、堆積プロセス中では弱い結合をもつZnOに関連した前駆体が高いRF出力
領域では正イオンの攻撃を受けることによって取り去られると推測される。
次に、反応室内の圧力に対する堆積速度の変化を図6.3に示す。プロセス圧力が0.1Torr
を境に圧力が高くなると堆積速度は低下してしまう。圧力が高いとラジカルの総量は増
加し、反応は促進すると考えられるが、ラジカルの再結合量が増加することにより反応
部へ届く励起種が減少するため堆積速度は低下すると考えられる。
また、図6.4に示す様に、原料であるDEZ供給量に対する堆積速度の変化について検
討を行った。図からDEZの供給量の増加に伴い堆積速度の増加が認められる。しかし、
79
DEZの供給量が0.6s㏄mを越えると堆積速度は緩やかな上昇へと変化が認められる。酸
素ラジカル密度は1014/cm3程度存在すると計算されるが、このことは酸素ラジカル量に
対して、この領域では原料であるDEZ供給量が過剰であると推測することができる。
つまり、DEZの分子結合解離エネルギーは小さい。このDEZ原料供給領域では酸素ラ
ジカルは効率良くDEZの分解を行いそのため、0.6sccm以上のDEZ供給量ではDEZを
分解する酸素ラジカルが少なく、このためZnO薄膜の堆積速度にあまり変化が生じない。
900
800 R・・mTemp O210sccm
?
ミ7。。 DEZ°・5sccm°・1T°「「
≦
器600
E,。。
§
t94°°
300
200
0 100 200 300 400
RF Power(W)
F且9・64亙)ep磁d【e取ce o童depos臨o聰r瀧e oぼZHO爺亘ms on Rpt power
O
ター50
と
聲
⊆−100
$
8
紹一150
5±
ゆ
の一200
一250
0 100 200 300 400
RF Power(W) ,
F蓋9・6国2Se亘f b量as potentia旦on cathode e亙ectrode
80
900
(800
.⊆
ξ
く700
)
①
届60e
ec
ぎ500
蕩
§4°°
Ω
300
200
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
Pressure(Torr)
F童9・6−3 Dependence of deposEtfio醸戯e oぼZ蔽0髄亙m o賦chamber press腿re
900
(800
.二
∈
\700
く
)
$600
邸
sc 500
。七1
$
Q300
200
0.2 0。4 0.6 0.8 1 12
‘ DEZ Flow Rate(sccm)
聴.6・4 DepOS董t茸On r説e Vs. SOurCe gas fiOW rate
81
6。1.2 Z臆0薄膜の特性
次に室温にてSi(100)ウェハー基板上に堆積したZnO薄膜の化学組成を確認するため
FT−M、 XPSスペクトルを用いて検討した。膜組成を分析するのに使用した薄膜の膜厚は
0。3μmである。堆積したZnO薄膜のF]r−Rスペクトルを図6.5に示す。
0.1Torr RF 100W
DEZ O.5sccm 02 10sccm
§
婁 120°C
釜
く
4000 3000 2000 1000 0
Wave Numbers(cm一1)
F亙96−5F闘Rs襲ec重澱mofZ遡0癒璽md叩os量ted
膜中にZn−0結合を示す430cm’1の強い吸収ピークが認められる。更に3300cm}1、
と2860∼3000cm}1の弱い吸収はそれぞれ一〇H基とCnHnの有機成分に帰属する吸収であ
る。この一〇H基の吸収は基板表面やチャンバー内に付着した水分子が脱離せず反応し、
或いは有機基から脱離した水素原子の反応物が膜中に取り込まれたためと推測される。
しかし、これらの吸収ピークは図65に示した様に、基板温度の上昇に伴い減少させる
ことが可能である。図6.6に常温で堆積した膜の構成原子の結合状態を示すXPSスペク
トルを示す。Zn2p3軌道におけるスペクトルについては1021eVの結合エネルギーの位
置にZn−0結合が見られZn原子は酸素原子のみと結合していることが明らかである。ま
た、531eVのエネルギーピークを示す酸素原子は複雑なピークで構成されており、この
酸素結合ピークは酸素と3種の元素との混合ピークを表しており、この酸素結合ピーク
は一〇H、CO、とZnO結合の3結合に帰属することが出来る。更に、 Cls軌道における結
82
合状態においても複数の結合状態が確認され、C−C,C−O,C−Hなどが考えられる。以上か
ら、堆積されれたZnO薄膜中にはZn−0結合の他に一〇H,やCO, C−C, CH結合を有する有
機成分も含まれる膜であることが判明した。
図6.7に基板温度に対応するZnO薄膜堆積速度のアレニウス(Arrhenius)プロットを示
す。膜の堆積速度は基板温度の上昇とともに減少することが確認され、基板温度が20∼
120℃の範囲では活性化エネルギーは一〇.11eVと見積もることが出来る。この負の活性化
エネルギーの値は薄膜の形成が基板温度により抑制されることを示唆している。これは
表面からの薄膜前駆体が再離脱する温度依存特性と推測される。
診
診
蔭∂5
’お
器
8
三
苫
9
9
鷺
鷺
6匡
歪
540 535 530 525 520 1030 1025 1020 1015 1010
Binding Einergy(eV) Bindlng Energy(eV)
診
’あ
8
三
雪
量
詑
300 290 280 270
Binding Energy(eV)
F量g.6−6XPS spectr段of ZnO f董lms
83
6.6
《
に 6.4
喀毒
〈 6・2
)
の
据 6
匡
ぎ5.8
霧
§5・6
0
) 5.4
二
5.2
2.2 2.4 2.6 2.8 3 3.2 3.4 3.6
1/T(×10『3K)
醗9・6・7Dep・s蓋t亘・顯rate・f ZnO伽s鼠s曲nct直・n・f sub曲te te即era臨re
つまり、この堆積反応は基板からの熱エルギーが大きくなり基板上での吸脱着によっ
て支配される吸着律速領域の反応ということが出来る。これらの反応は熱エネルギーに
よって基板表面から脱着する弱い結合もつ前駆体の影響であり、従って、高い基板温度
で堆積された薄膜は有機成分をほとんど含まない膜となることが、FrlRの特性と比較す
ることにより理解される。
図6.8に基板温度(RT∼120℃)に対する堆積膜の結晶性の変化を示す。室温から75℃
の温度領域では膜の結晶性は見られずアモルファス膜である。しかし、100℃以上では膜
中にわずかな結晶性が観察され、高温下で堆積された薄膜は緻密なZnO膜がネットワー
ク上に成長したためと推測される。
また・基板温度変化に対するAES分析を行い、薄膜中のZn及び0等の元素組成を求
めた。膜中の組成比の変化を図6.9に示す。Znと0の元素組成比の大きい変化は認めら
れないが、低い基板温度ではZnO薄膜中に約8%程度のC元素が含まれるのが確認さ
れた。膜の組成比は基板温度に影響を受けC元素の含有量は基板温度の上昇につれて減
少し、基板温度75℃以上で堆積した薄膜中にはC元素はほとんど含まれない。
84
:ii
㎡
)
〉
.想
の
①
嗣
国
2°
@3° 4°2θ5° 6° 7°
F量9。6鵬8X四vay盛蓋ffrac紅蓋o髄診agtexms oぼZ簸0簸亙ms
80
70
60
§
◎ 50
驕騨
Pt 40
。9
◎
ゼ
<
20
0
0 50 100 150
Substrate Temperature(°C)
F最9.6・9A詫om貴c ra9量o o賃Z醜0醗ms vs・s“bstrate temageera鋤re
85
6.L3ジエチル亜鉛からのZilRO薄膜堆積過程
図6−lO(A)(B)にRF出力100WにおけるDEZ O.5sccm、酸素10sccmとHe及び酸素1・Osccm
とHe時のプラズマ発光スペクトル比較を示す。 ZnO薄膜堆積における酸素プラズマの
02+イオンによる発光ピークが306∼312nmに見られ、 Znの金属発光ピークも213nm、
307nmに認められる。また、452nmにZnHの発光スペクトルがわずかに確認され、さら
にDEZのアルキル基が分解して生じたCHの発光ピークが432nmに認められる。636㎜
のブロードな発光は原料であるDEZに由来するZnとハイドロカーボンとの混成体のピ
ークと推測される。また、反応による副生成物のCO(483nm)とCO+イオン(267、454nm)
の発光ピークも認められる。
これらの結果より、このプラズマCVDにおけるZnO薄膜の基板表面反応は、まず気相
中でDEZ分子がプラズマ中の励起種、酸素ラジカルによってバラバラに分解され前駆体
が生じるものと考えられる。第2章でも論じたが、原料であるDEZ分子中のC−−Zn結
合がもつ結合解離エネルギーは非常に小さいため、気相中での酸素ラジカル又は電子の
衝突によってDEZはZn金属原子或いはZnとハイドロカーボンを含む前駆体に簡単に
分解されると推測される。
1)EZ十〇xygen rad童ca垂s → Prec鯛rsors十By−products (1)
(gas pllase reactlon)
そして、気相中の前駆体は基板表面に到着し、更に酸素プラズマの励起種により酸化
され、ZnO薄膜が形成されていくと推測される。
Precurs・rs+0・rygen・rad蓋・al・→ ZnO+By−pmd悶cts (2)
(substrate surface reaction)
また、同時にカソード電極上での堆積膜は、荷電粒子等による衝撃も起こり、吸着と脱
離反応、及びエッチィング反応が競争的に生じていると考えられる。この詳細な堆積メ
カニズムの議論については、ここで述べることは出来ない。
86
Zn(213.9nm、
倉
②20伽磁∼400nm
鐙
s
5
200 250 300 350 400
Wavelengthλ(nm)
CO+(454㎜、 魍Z, He,02
4 e艶・‘483nm、
>
ypt
(k))400nm∼600願】㎝
の
の
覗
⊂
M
400 450 500 550 600
Wavelengthλ(nm)
F童g.6・10(A)Optica亙em藍ssfioR s襲ectra of pRasma
(a)200nm∼400nm(b)400㎜∼600nm
87
孟
2
(c)600遡m∼800服m
3
蕊
600 650 700 750 800
Wavelengthλ(nm)
Fig・6口10(]B)Opt蓋ca亙em董ss量on spectr{適of plasma
(c) 600nm∼800fina
6。a.4ポリカーポネート樹脂へのznd薄膜の堆積
ZnO薄膜をPC樹脂上に堆積させ、堆積膜の特性、並びに膜堆積前後のPC樹脂表面
の耐光性能向上についてキセノンアークランプを用いた紫外線照射による促進耐光性試
験により確認した。まず、PC樹脂表面に膜厚05μmのZnO薄膜を堆積させ、その表面、
及び形状の顕微鏡観察をSEMとAFMより行った・図6.11にオリジナルPC樹脂表面(a)
とZnO i薄膜を堆積したPC樹脂表面(b)のSEM写真を示す。常温基板温度ZnO薄膜を堆
積させたPC樹脂表面は膜のクラックの無い良好な表面状態が認められる。基板温度が
低い場合にはSiC薄膜の堆積と同様に堆積膜中にはハイドロカーボンを多く含むため膜
の柔軟性が高く、基板であるPC樹脂の熱膨張、収縮に追従できたためと考える。また、
ZnO薄膜を堆積する前後のPC樹脂表面のAFM像を図6.12に示す。 PC樹脂表面に堆積
88
したZnO薄膜は大きな粒子状に堆積しているのが認められる。低温堆積の条件下では
Sic薄i膜同様PC樹脂表面に吸着したZnO膜の前駆体のマイグレーション反応及び堆積
膜の流動性はあまり優れていないことが推測される。また、RF出力を大きくするとZnO
薄膜の堆積粒子の形状が小さくなりより平坦化する事が図6−13より認められる。これは、
ある程度高いRF出力では、 ZnO薄膜の堆積と同時にプラズマの荷電粒子やイオンの膜
表面への衝突により堆積膜のエッチィングも同時に進行することにより、堆積膜の平坦
化が生じるものと考えられる。
(a)Origina1 PC substrate
懸灘欝鷺灘・繍麟i、鷺、灘灘、ぎ、、、・一・鰹 ・、t
洗 yt ab K A コ c L N も N N 就
Fig.6−11 SEM micrograph of PC surface
89
究 {
tSミ
…
i
(a)Original PC substrate (b)ZnO−coated PC substrate
Fig.6−12 AFM micrograph of PC surface
(A)RFlOOW (B)RF300W
Fig.6−13 AFM micrograph of PC surface vs. RF power
90
次にPC基板へのZnO薄膜の密着性について検討を行った。基板温度に対するPC樹
脂とZnO薄膜との密着力の変化について図6.14に示す。基板温度の上昇と共にPC樹脂
とZnO薄膜の密着強度の低下が見られた。この結果は、堆積終了後の温度低下に伴う
ZnO薄膜と基板の収縮率のずれから生じたと推測される。つまり、基板温度による膜組
成の変化で論じた様に、基板温度が高い条件下で堆積した堆積膜には膜中のC元素の含
有比率が低いため、堆積膜の熱膨張率が無機ZnO薄膜に近い膜(熱膨張率1.6×IO−52C)
と考えられ、PC樹脂の熱膨張率(65×IO 5βC)と比較し、この熱膨張率の差が基板温
度の上昇とともに大きくなることが密着強度の低下原因と考えられる。
0.35
(0.3
∈
\
zx
)0.25
よ
器
お0.2
ω
冠
の
Ω一〇.1 5
0.1
0 50 100 150
Substrate Temperature(°C)
F蓋9.6・贈Pee亙s重ren9曲k vs。 s曲st臓te舵m】perature
次に基板温度上昇に対する堆積したZnO薄膜の紫外線分光透過率曲線の変化を図
6。15に示す。本測定には石英ガラスに03μrnの膜を堆積した試験品を用いた。尚、この
堆積膜の透過率曲線は石英ガラスの吸収を差し引いたものである。紫外線カット性能は、
基板温度の上昇と共に向上することが確認された。この結果はZnO膜の結晶性に影響を
受けると考えられ、結晶性が向上することにより紫外線カット性能は向上すると推測さ
91
《れる。得られた血0薄膜は400㎜以下から紫外線もカットオフが始まり、300㎜以下
の紫外線はほとんどカットされている。第2章で論じた様に、PC樹脂の最大光劣化波長
である300㎜n前後の紫外線においては、ZnO堆積膜はほぼ100%カットすることを確認
することができた。従ってカソードRFプラズマ法により低温堆積したZnO薄膜はPC
樹脂の紫外線劣化防止膜として充分期待することができる。
100
90
α・T・rr・RF・oow 50°C / 欄一
80
A)承 70
860
,! \
器
お 50
’歪
240
I
』 120°C
75°C ノ
自30
20
10
0
25°C !
\
L.;,“一、’芝ノ〆哩
ノ
@ 100°C
200 300 400 500
Wavefiengヒh(nm)
F蓋g.6・15 UV transmi伽癩ce of Z血O f宣且ms as a function of s曲strate tempera加re
ZnO薄膜の耐光性能を確認するため、キセノンアークランプを用いたキセノン促進耐光
性試験を実施し、ZnO薄膜を堆積したPC樹脂表面の試験前後の透過率、曇価、黄色度
変化について測定を実施した。ここでのキセノン耐光性試験条件は前章表5.3に示した
条件である。キセノン耐光性試験1000H試験前後のPC樹脂表面のSEM写真を図6.16
に示す。
92
(a) Original PC (b)PC with ZnO
(c)Original PC after xenon test (d)PC with ZnO after xenon test
Fig.6−16 SEM micrograph of PC surface before and after xenon test
耐光性試験後、オリジナルPC樹脂表面は、紫外線劣化による表面凹凸が見られる。こ
のPC樹脂表面の品質低下は、意匠性や耐衝撃性の低下の原因となりうる。一方、 ZnO
膜を堆積したPC樹脂表面は、被膜により表面が完全に保護され、劣化反応と表面損傷
が抑制されているのが顕著に認められる。
促進耐光性試験時問に対するPC樹脂基板の可視光透過率の変化を図6.17に示す。 ZnO
膜を堆積させたPC樹脂は、膜堆積をしていないものに比べ、耐光性試験後の透過率低
下は著しく改良され、耐光性試験1000H後の可視光線透過率においても、オリジナル
PC樹脂の初期値88.0%と同等であり光劣化の抑制が明らかに認められる。耐光性試験時
問に対するPC樹脂表面のHaze値(曇価)変化を図6.18に示す。オリジナルPC樹脂で
は試験時間の経過に伴い著しくHaze値が上昇し、表面凹凸等の表面劣化が大きく進ん
93
でいる。ZnO膜の堆積したPC樹脂表面は試験1000H後においてもHaze値の変化が3%
以内と大変低く、PC樹脂表面の表面劣化の抑制が明らかに認められた。更に、耐光性試
験時間に対するPC樹脂表面のYI(黄色度)の変化を図6.19に示す。試験時間の経過に
伴い、オリジナルPC樹脂は樹脂の黄色度が大きく変化しているのに比べZnO膜の堆積
したPC樹脂は耐光性試験1000H後の黄色度は1以内と大変低く、殆ど黄変色が生じな
いことが確認された。これらの結果から、ZnO薄膜堆積はPC樹脂の紫外線防止膜とし
て期待出来ると思われる。
90
翁
)85
8
器
些
ε≡
2
歪80
←
75
゜ Exp。s譜Time(h。ul野゜
F量g.6薗17 VIS transm蓋重加麹ce of Z顧0曝co窺ted PC substrate as
a funceaon of expoSure time
94
9
8
7
6
Original PC
Aミ55
substrate
Φ
慧4
工
3
2
1
ZnO coated PC
substrate
0
゜ Exp。s譜T{me(h。u響゜
F董9。6国18ffaze《)ぼZ簸0剛co説£《亜葺》C s聰量》s臨蹴e麗E恵蝕期c翻o賑off ex盤osure重蓋me
14
12
10
×
Φ
℃
St 8
N
≧
≦6
タ
4
2
0
0 500 1000
Exposure Time(hours)
Fig.6・19 Ye盈亙ow量ndiex of ZnO−caoed PC s曲strate as a血mct蓋onof expos賦re time
95
6.2ヘキサメチルジシランからのS902薄膜の堆積
6.2。9S董02薄膜の成膜条件と膜特性
耐摩耗性被膜の堆積を目的として・第5章で用いたHMDS(hexamethyldisilane)を原
料とし・酸素励起種とのプラズマ反応を用いてSio2薄膜の堆積を行った。流量制御した
酸素ガスをプラズマチャンバー中に導入させ、酸素プラズマを発生させる。Heキャリア
ーガスを用いてHMDSモノマーガスを反応容器中に導入させ、 ZnO薄膜の堆積と同様に
石英ガラス、si(100)基板上にsio2薄膜を堆積させ、堆積膜の膜特性の検討を行った。sio2
薄膜の堆積プラズマCVD条件範囲を表6.2に示す。
Tablle 6・2 PRas騰a CVD co遡d瀬o齢⑪童S董02
HMDS 1.Osccm
(BubbHngTemp40℃)
02 20sccm
Pressure O.1 Torr
RF Power 50∼300 W
Substrate Temperature Room Temp.∼100℃
室温でSi(100)基板上に堆積した膜厚1.0μmのSiO2薄膜の化学組成をFr−IR及びXPSに
より確認した。堆積したZnO薄膜のFHRスペクトルを図6.20に示す。1080cm−1に
Si・・O(Streching),960cm−1はSiOH・800cm−1前後はSi−C及びSi・・0・・Si(Bending)の吸収、450
cm一1にSi−0(Rocking)の吸収が見られる。また、3400cm一1に・・OHの吸収、2890∼2990
cm−1にCHnの吸収も確認され、堆積膜中には多くのハイドロカーボンが含まれている
ことが確認された。図6.21は同様に室温下で堆積したXPSスペクトルである。 Si2p軌道
において103eVの結合エネルギーは、 Si−0結合のスペクトルであり、その他Si−C結合
のピークも確認されている。一方酸素原子の結合状態は01s軌道で確認され、酸素原子
はSi原子の他、 c及びH原子との複数の結合が見られ、FT−Mスペクトルの結果と同様、
低温で堆積したSiO2薄膜はSi−oの化学状態が主体と考えられるが、膜中にはc−o等の
96
含酸素官能基、及びOH等が含まれる組成をもつ膜である。更にAES分析によるSiO2
薄膜の化学組成比を表6.3に示す。
8
葱
金
8
2
4000 3000 2000 1000 0
Wave Numbers(cm−1)
】F貢9。6−2⑰FT−】[R spectra o童depos熊ed SiO2 fi且ms
診
診
’∂5
’∂5
こ
岳
£
e、s
三
Φ
.塁
.≧
鋸
で
a:
届
5
110 105 100 95 540 535 530 525 520
Binding Energy(eV) Binding Energy(eV)
]F孟9.6−21XPS spectra of S量02 fillms
97
Tab量e 6・3 Atom藍α滋董o of deposi重e通劔m
At◎mic ratio(%)
Si C O
19 34 46
si元素とo元素の組成比si/oはo.41であった。 si元素に対してo元素の割合が高
い理由としては、堆積膜がSiOとSiO2薄膜の混合膜あるいはxps分析結果で述べたよ
うに、膜中に含まれるCO基やOH基の含有成分の影響と推測される。また、高い比率
のc元素含有の理由については、プラズマ中においてSiO2膜の堆積反応と同時に、原
料であるHMDSからのメチル基を含んだ前駆体の重合反応も生じており、膜中には一部
にアルキル基を含んだ構造になっているためと考えられる。
次に基板表面での反応の違いを確認するため基板温度を変化させ、SiO2薄膜の堆積を
行った。図6.22に示すように基板温度の上昇とともに堆積速度は減少した。本カソード
プラズマCVD法におけるSiO2薄膜の堆積においては、活性化エネルギーEa=−0.07eV
と非常に小さい負の値を示した。この結果は第5章で考察した水素プラズマ励起種から
堆積したSiC薄膜とほぼ同様な値を示しており、120℃までの基板温度領域ではこのSiO2
薄膜の堆積においては、プラズマ気相中では主として原料であるHMDSモノマーの分解
が起こり、基板温度はSiO2薄膜堆積において殆ど影響を与えず、主となるパラメーター
では無いと考えることができる。また、同時に基板温度変化における堆積膜のFT−Mス
ペクトル変化を図6.23に示す。基板の温度90℃までの上昇では、薄膜のFlr−Rスペクト
ルの大きな変化は見ることが出来ない。しかしながら、2900∼3000cm−1の吸収ピークで
あるCHnの吸収はかなり低減され、また1250cm−1に帰属されるSi..CH3の吸収ピークの
減少も確認することができ、このことから薄膜堆積において、基板温度の上昇に伴い形
成される前駆体や基板に吸着したメチル基等が脱離し、より緻密性の高いSiO2薄膜が形
成されていくと推測される。
98
G≧8・0
峯
HMDS lsccm O220sccm
ぎ715
RF 100W O.1Torr
器
7.0
ぎ
碧
§6・5
Ea=:−0.07SeV
−⊆6.0
2.7 2.9 3.1
1/T (×10−3K)
F童9.6四22Depos亘tio亙亙rate of SiO2髄亙ms as a fuptctio亙亙of
S曲strate temperature
Φ
o
Ao
』
の
.Ω
<
3500 2500 1500 500
Wave Numbers(cm−1)
F董9.6・23FT・IR spectrum of deposited SiO2血lm as a f駆nctio鍛of
substrate temperature
99
また、RF出力における影響にっいて検討を行った。図6.24にnv出力に対する堆積速度
の変化、並びに図6.25にRF出力を変化させた時のFr−IRスペクトルを示す。 RF出力を
50wから250wまで増加させるに従いsio2薄膜の堆積速度は増加する。これはRF出力
の増加に伴い酸素ラジカルをはじめとするプラズマラジカル種の量が著しく増加するこ
とに起因するためと推測され、堆積過程において酸素ラジカル量律速になっているもの
と考えられる。
1400
?1200
働藍
ミ1◎oo
)
S 800
歪
⊆ 600
.9
。七i
8400
$
0 200
0
0 100 200 300
RF Power(W)
F茸9・6・24Be脚伽ce o重“epos瀬o厳r離e oぼS董02・fi亙ms on】RF power
また、図6.25のスペクトルからRF出力の増加につれて1250cm『1の吸収をもつSi・.CH3
のピークと800cm}1のSi−Cの吸収が減少している。更に2900∼3000cm”iのアルキル基
の吸収も減少しており、これらの結果からRF出力の増加に伴い膜中の水素やアルキル
基が脱離し、強固なSi−o結合をもつ薄膜が堆積されていくと考えられる。
100
8
器
金
8
妻
3500 2500 1500 500
Wave Numbers(cm−1)
F童9.6・25F職Rs騨軸騰o盤S董0洲m紐saf幽輔o賦o膿恥ower
また、石英ガラスに堆積したsio2薄膜の紫外線透過率について検討を行った。図6。26
に約1μmの膜厚を持つSio2薄膜の紫外線分光スペクトルを示す。この結果は様々な報
告されているsio2膜の分光スペクトルの結果と異なり、堆積したsio2薄膜は230㎜以
下の波長から紫外線をカットすることが確認された。これは、堆積されたSiO2薄膜は完
全なSi−oのネットワークの結合をもつ薄膜とは言えず、基板温度が低く、且つrw出力
が小さい条件下で堆積した膜は、前述したように膜中には30%以上のC元素が含まれて
おり、siC結合等を含む有機成分の重合物も含み、この影響のため堆積膜に短波長紫外
線を吸収するもの推測する。
101
100
80
§
冨
260
RF:100W
O.1T◎rr
R◎◎rηTemperature
HMDS 1.O sccm
遥
霧40
器
嵩
20
0
重80 280 380 480
Wave length(nm)
賊9緬・2囁UV琶r蹴s麟麓踊ce of S璽02竈璽醗《量epos董重磁
砿2ポリカーポネート樹脂へのS902薄膜の堆積
PC樹脂にSiO2膜を被覆したときの状況を検討した。PC樹脂表面に膜厚1μmのSiO、
薄膜を堆積させ・PC樹脂の表面状況をSEM写真及びAFM像(図6.27)で観察した。
堆積したPC樹脂表面には堆積中の多少の汚れや付着物は確認されたが、膜中には多く
のハイドロカーボンを含む可擁性の高い膜であることから、膜のクラックや剥離等が無
い良質な表面状態が確保されていることが認められた。また、AFM像からは多少の粒子
状突起物は認められるがZnO膜の表面状態と比較すると比較的平滑性の高い表面状態
を示し、SiO2の堆積膜の流動性は比較的高いと推測される。また、 SiO2薄膜を堆積した
PC樹脂表面の表面硬度を前述したラビングテスターを用いて表面硬度の向上を確認し
た。擦傷性後のHaze値(曇価)を表6。4に示す。擦傷性試験後のオリジナルPC樹脂は
Haze値25.8%と非常に大きな値を示したが、 SiO2薄膜を堆積させたPC樹脂表面のHaze
値は、55%と低く表面硬度の向上が顕著にみることが出来る。このためSiO、薄膜は紫外
線カット特性を持たないがPC樹脂表面の耐摩耗性被膜として充分期待することが可能
である。これらの実験結果をふまえて、紫外線カット膜としてのZnO薄膜と耐摩耗性被
膜としてのSiO2薄膜の2層積層膜はpc樹脂にとって保護膜として期待できるものであ
る。
102
a)Original PC surface b)SiO2 coated PC surface
Fig.6−27 SEM and AFM micrograph of SiO2−coated PC substrate surface
Table 6−4 Abrasion characteristics of PC surf劉ce
Befbre treatment After treatment
Original PC 1.8(%) 25.8(%)
SiO2 coated PC 2.0(%) 5.5(%)
103
6.3・ZpmO/S童02薄膜の積層堆積
紫外線カット特性を持つZnO薄膜と擦傷性に優れるSio2薄膜をPC樹脂表面上に積層
堆積する事により、PC樹脂に対するハードコート特性について検討を実施した。それぞ
れの堆積膜の堆積条件を表65に示す。
Tab盈e 6・5 P夏asma CVD cond蓋tions
DEZ O.5 sccm
O2 10sccm
RF Power 100W
Pressure O.1 Torr
Substrate Temperature Room Temp
HMDS 1.Osccm
O2 20 sccm
Pressure O.1 Torr
RFPower 噛00W
Substrate Temperature Room Temp.
堆積膜作製においては以下の条件に基づいて堆積した。まず、積層膜堆積においてPC
樹脂のアルゴンガス(RFloow、1min)によるプラズマクリーニングを実施した。その後、
表65に示された条件によりDEZを原料として酸素プラズマを使用し、0.6μmの厚さの
ZnO薄膜をPC樹脂上に堆積させた。次にプラズマチャンバー内を10−3 Torrになるまで
真空引き、チャンバー中に残存しているDEZモノマーやDEZ前駆体を取り除いた。そ
の後、傷付き防止膜としてのSio2薄膜の堆積を実施した。原料としてHMDSと酸素ガ
スを用い、ZnO薄膜上に1.0μmの厚さをもつSio2薄膜の堆積を行った。この際、各膜
層の密着強度を考える必要があるため3種類の実験を行った。図6.28に示す様に単純に
ZnO膜とSiO2膜とを積層したもの(a)、 ZnO膜とSiO2膜の成分を傾斜させて徐々に変化
させて境目をなくしたもの(b)、さらにpc基板上に窒素プラズマ処理を行いSiO2膜を少
し形成した後傾斜的にZnO層を挿入したもの(c)の実験結果について示す。検討薄膜の概
念図を図6.28に示す。
104
Sio2 fiim
Sio2 film
Sio2 film
1μm
1μm
10.
卸
“轡む .1μm
1μm
纂
卸1μm
卸
好豊 等
ZnO film ・6μm
0.6μm 縛醗馬 ・1μm
n.6μm
ynO fllm
ZnO fllm
Sio2 f蒔m o.1μm
…鮪……柵4\湿帰㎡δ1邑㌶i滝
1
PC Substrate
oC Sub$trate
PC Subs驚rate
⑧ (b) (C)
賊9。6。28丁蚤肥struc伽夏re of ZPtO / S責02」劔醗s
100
80
§
言
£
Pt 壼
$
器
0 40
、望
蓬
£
<
20
Si Zn l
\
0
0 50 100
Spu繋er Tlme(m亘n》
F量g。6・29Atom童c惣甑o of S藍02/ZpmO/S重02鯉鵬薦鼠館醜磯o遡of劔m伽騨蝕
積層膜傾斜状態を確認するため膜の深さ方向による元素組成をAES分析により確認
した。図6.29にsiウェハー上に堆積した傾斜膜のsio2/zno/sio2膜の深さ方向にお
けるZnとSi及びo元素組成変化を一例として示す。測定条件としては、電子プロープ
径0.1μm以下にし、エッチングにはアルゴンイオン銃を使用し、エッチング速度は100
A/minである。
105
Siウェハー基板最表面にはSiと0のみの元素が確認でき、その後SiとZnの混合する
傾斜領域が見られ、更に、顕著なZnO膜層が確認されている。またZnとSi元素が混合
する傾斜層を経て、最外面にSiO2膜の堆積が確認できている。
次に、Si(100)基板上にそれぞれの積層膜の化学組成を確認するため、 F]r−IRスペクトル
を用いて検討した・堆積した積層膜のF]r−Rスペクトルを図6.30に示す。
8 z,o/9,adi。。t/sio、film
器
金
茎 N・cleani。g
< SiO2/gradient/ZnO/gradient/SiO2
4000 3000 2000 1000 0
Wave Numbers(cm−1)
珊9・・6・3⑰F闘Rs灘xuma・奮Z簸0/S董02鯉磁ep・s蓋eed
膜中にはZn−0結合を示す430cm}1の強い吸収ピーク及び1080cm”1にSi−Oの吸収ピ
ークが見られる。また、800cm『1前後にSi−C及びSi−O−Siの吸収ピークが確認出来、低
温堆積であるため3400cm}1にOHの強い吸収が、また2900cm−1前後にもCHnの吸収も
みられ、この積層膜には多くの炭化水素が含まれていることが確認された。
更に、石英ガラスに堆積したZnO/Sio2薄膜の積層膜の紫外線分光透過率曲線を図
6.31に示す。得られた全ての積層膜のスペクトルは400㎜以下から紫外線のカットオフ
が始まり・350㎜以下の紫外線の透過はほぼ100%カットすることができることが確認
できた。その為、本積層膜はPC樹脂の紫外線劣化防止膜として期待される。
106
100
ZnO/Sio2iiilm
80
蒙
逐
860
遇
墓40
蚕
1・”・■m−・
20
0
180 280 380 480
Wave length(nm)
F量9。6・3亙UV tr訊甑s鵬藍麗細ce o奮Z簸0/S童02翻m de襲os量覚ed
この積層膜をPC樹脂上に堆積し、それぞれの耐擦傷性能及びキセノンアークランプ
を用い耐光性能について検討を行った。図6.32にPC樹脂上に堆積したそれぞれの積層
膜のAFM像を示す。いずれのAFM像においても堆積膜は粒子状に堆積しているのが認
められる。この結果はこれまで報告したZnO薄膜が大きく粒子状に堆積することに依存
していると考えられ、ZnO薄膜の上に厚み1μmのSio2膜を堆i積しても表面状態はあま
り緩和されていない。しかしSiO2薄膜が厚くなるのに従い、表面平滑性は徐々に改善さ
れていくのが見られる。
表6.6にスチールウールを用いた表面擦傷性試験結果を示す。いすれの積層膜も試験後
の表面Haze値が3%以下と非常に小さい値を示したことから、表面擦傷性は非常に良好
であると判断することができ、積層膜の表面硬度は、オリジナルPC樹脂表面が持つ表
面硬度の約10倍以上の表面硬度をもつことが確認された。これらの積層膜は、PC樹脂
上の耐摩耗性被膜としては非常に有効な膜であることが確認された。
107
ZnO/Sio2 film
ZnO/gradient/SiO2 film
SiO2/gradient/ZnO/gradient/SiO2 film
Fig.6−32 AFM micrograph of ZnO/SiO2血lm
108
丁繍b亙e6・6 Abrasion ch蹴窺cteris重量cs of PC sur飴ce
Steel wool
Sample
sype
k。ad 143kgf/cm2
Haze value(%)
`brasion cycle 11
Original PC
25.5%
(a)
ZI10/Sio2 fLlm
2.5%
(b)
ZnO/gradient/SiO2 f議m
2.4%
(c)
SiO2/gradieIlt/ZnO/gradien尤/SiO2丘lm
2.5%
PC樹脂に堆積させた積層膜の耐光性能を確認するために、キセノンアークランプを
用いたキセノン促進耐光性試験を実施し、試験後の透過率、(Haze)曇価、黄色度変化
について測定を実施した。促進耐光性試験時間に対するPC樹脂基板のHaze値変化を図
6.33に示す。積層薄膜の初期のHaze値はオリジナルPC樹脂の初期Haze値に比べて大
きい。特に(a)ZnO/SiO2積層膜の初期Haze値が大きいことが認められる。このことは、
前述したようにAFM像における粒子状に堆積したZnO薄膜の表面形状の影響と、積層
における堆積膜の汚染の影響から初期Haze値が高いと推測される。耐光性試験時間に
対するHaze値変化を見てみるとオリジナルPC樹脂は試験時間の経過に伴いHaze値が
上昇する。更にZnO/SiO2積層膜においても同様な挙動が見られた。これは図6.34に示
す様にZnO薄膜とSio2薄膜の界面において激しい剥離現象が生じたためであり、単純
なZnO/SiO2積層膜では、積層膜の界面での密着強度が明らかに不足であることが判明
した。一方その他の傾斜膜においては、剥離現象が発生せず、耐光性試験時間に対する
Haze値変化も非常に小さく、傾斜領域が堆積膜の密着性の向上につながっていることが
伺われ、PC樹脂表面の劣化の抑制が明らかに認められた。促進耐光性試験時間に対する
PC樹脂の可視光透過率の変化を図6.35にPC樹脂表面のYI(黄色度)の変化を図6.36
に示す。積層膜を堆積させたPC樹脂は、オリジナルPC樹脂に比べ、耐光性試験後の透
過率変化は著しく改善され、剥離を生じた積層膜においても透過率低下は小さく、紫外
線による光劣化の抑制が明らかに認められる。また、積層膜の耐候性試験後の黄変化に
109
9
8
7
6
A
ミ3 5
の
器4
工
3
2
1
0
゜ Ex轟re Time実穣。urs)6°°
Fig.6−33 Haze of the coated PC substrate as a function of exposure time
● ZnO/SiO2 filM ■ Original PC
▲ZnO/gradient/SiO2 film◆SiO2/gradient/ZnO/gradient/SiO2伍m
Fig.6−34 SEM micrograph of PC surface after xenon test
(exposure time:250H)
110
90
㊥ Z取0/S蓋02簸昼搬
§
鰯 0盈艦9蓋pma置PC
8
幽 ZpmO/grcadige醜/S眞02翻m
器85
.#
命s量02/gra曲劇z遡o/
霧
grad瞳e亙雄/S量02籔盈㎜
葱
轟80
75
゜ Ex識re Tlme糀urs)6°°
F蓋9・6−35VIS瞭踊sm轍a聡ce o麗髄e co鑓e裡PC騨bs眈説e
as・a・fuRCg量on of expoS臓re t置me
14
12
㊥ZPtOIS重02舳臣
圏Or量9蓋聰豆PC
10
×
Φ
で
護
△ ZnO/grad董e亙亘t/S量02蓋置置㎜
8.
φ S量02/g聡d量e盛/Z聰0/
≧
⊇
5
>
6
grad量e並/S量02∬亙m
4
2
0
0 200 400 600
Exposure Time(hours)
F量g.6・36 Yei且ow index of the coated PC s脳bstrate
as a h凱ion of expos腿re time
111
ついても、オリジナルPC樹脂の黄色度が大きく変化しているのに比べ、大変小さく、
殆ど黄変色が生じないことが確認された。これらの結果からZnO/Sio2積層膜はPC樹
脂の耐擦性と紫外線防止との両者を満足するものである。また、基板及び各堆積膜との
密着力の向上においては堆積膜の明確な界面を設けない傾斜領域を挿入することは非常
に有効な手段と考えることができる。
6.4まとめ
PC(ポリカーボネート)樹脂の耐光性能と耐擦傷性の向上を目的とするハードコート膜
をカソードプラズマCVD法によりPC樹脂表面に堆積させた。酸素励起プラズマとDEZ
モノマーを原料とし堆積させたZnO薄膜を紫外線カット膜として、更に、酸素励起プラ
ズマとHMDSモノマーを原料としたSio2薄膜を耐摩i耗性被膜として積層薄膜をPC樹脂
上に堆積させた。まず、低温で堆積されたZnO薄膜は膜中に原料に由来する炭化水素を
含むアモルファスな薄膜であったが、優れた紫外線カット性能を示した。ZnO薄膜の堆
積速度は基板温度とRF出力に大きく影響され、基板温度の上昇につれて堆積速度は減
少した。またRF100Wまでは㎜出力の上昇とともに堆積速度は上昇するが、それ以上
の出力の場合にはプラズマプロセス中の荷電イオン粒子によるイオン衝撃のため逆に堆
積速度は減少した。一方低温で堆積したSiO2薄膜も同様に原料に起因する炭化水素が含
有するアモルファスな薄膜であった。堆積速度はZnO薄膜と同様、 RF出力と基板温度
に影響を受け、RF出力の増加につれて堆積速度は上昇し、基板温度の上昇とともに堆積
速度は低下する。このためZnO薄膜、及びSio2薄膜いずれの堆積においても最適な基
板温度及びRF出力の調整が必要である。pc樹脂上に堆積したZnO/SiO2膜の表面擦傷
性能はオリジナルPC樹脂基板の約10倍の性能を持つため耐摩耗性被膜として今後非常
に期待される。また、この積層膜の紫外線カット性能は非常に優れ、紫外線によるPC
樹脂基板表面の光劣化の防止に優れた効果を発揮することができる。また、単純な積層
膜は膜の剥離を生じるため、積層膜の密着強度の向上はZnO膜とSiO2膜の組成を徐々
に変化させ明確な界面を持たない傾斜構造を取ることが有効であることがわかった。
112
第7章 結論
RFプラズマCVD法(高周波プラズマ化学気相堆積)特にカソードプラズマ堆積法を
用い、ポリカーボネート(PC)樹脂上に表面保護膜としての良質なSic、 ZnO及びSio2
薄膜の低温堆積手法、及びその評価に関する研究を行った。カソードプラズマ堆積では
電極に置かれた基板にセルフバイアスがかかり基板は負に帯電する。そのため正イオン
の粒子と電子が豊富なプラズマ中では、カソード電極の表面は正イオン種の衝撃を与え
られる。このイオン種の衝突のために吸着、放出、エッチィングといったアノード電極
とは異なった成長反応が予想され、その為従来では得られなかった高品質な薄膜の低温
堆積を試みた。SiCとSiO2薄膜はHMDSから堆積し、 ZnO薄膜はDEZから堆積を行
った。
本研究では、まず電極に高周波を印加するとカソード電極周辺に均一に発生するイオ
ンシースに着目して、薄膜の均一堆積性について詳しく調査した。カソード電極周辺に
は電子と正イオンとの運動速度の差より電極近傍は電子が過剰となり負に帯電する。こ
のため正イオンが引きつけられイオンが過剰なイオンシース領域が発生する。イオンシ
ースは薄膜形成においては非常に強い関わり合いを持つことが判明し、RF出力100∼
300W、プロセス圧力0.1Torrの条件下では基板周辺には数百ミクロンの厚さをもつイ
オンシースが均一に取り巻くことが計算され、凹凸部や曲面部をもつ複雑な三次元形状
の基板表面においてもほぼ均一な膜厚、膜質のSiC膜の堆積が可能であることが判明し
た。続いて、(PC)樹脂への表面保護膜の堆積を目的としてSiC薄膜とZnO/SiO2積層
膜のRF出力やプロセス圧力および基板温度等の堆積条件における堆積膜特性の影響に
ついて詳しく調査した。
水素励起プラズマとHMDSモノマーを原料として堆積したSiC薄膜は堆積速度が
200nm/min以上の高い堆積速度で堆積することができた。低温にて得られた膜はアモ
ルファスな膜であり、原料に起因する炭化水素を膜中に含む薄膜であったが、(PC)樹脂
上に堆積したSiC膜はクラックや剥離のない良質な薄膜であった。 RF出力や基板温度
を上昇させ、プロセス圧力の真空度を上げることにより薄膜中の炭化水素を離脱させる
ことが出来、膜中に含有するSi元素比率を向上させることが可能であるため、膜の紫外
113
線カット性能を調整することが可能であった。また、RF出力の増加により紫外線カッ
ト性能も向上する・しかし、高いRF出力では薄膜にクラック等が発生するため、良質
なSic薄膜堆積には適度なRF出力の調整が必要である。 Sic薄膜を堆積した(PC)樹脂
表面の表面硬度は約2倍の向上が見られ、紫外線カット膜としても、表面荒れ防止に効
果を示すことが確認できたが、Si℃ネットワークの弱さに起因する膜のバンドギャップ
変化が生じるため紫外線カット膜としては不十分であった。
次に酸素励起プラズマとDEZモノマーを原料としてZnO薄膜を紫外線カット膜とし
て・更に酸素励起プラズマとHMDSモノマー原料としたSio2薄膜を耐摩耗性被膜とし
ての2層膜を(PC)樹脂上に堆積させ表面被覆性能について詳しく検討を行った。低温堆
積におけるZnO薄膜は粒子上に堆積され堆積膜の流動性は優れず、膜中に炭化水素を
含むアモルファスな薄膜であったが基板温度が75℃以上で堆積された膜中には炭化水
素が含有しない良好な膜であった。更に低温堆積で得られたZnO薄膜でも非常に優れ
た紫外線カット性能を示した。また、堆積速度は基板温度とRF出力に影響を受け、堆
積速度は基板温度の上昇と共に減少した。RF出力においてはRF lOOWまではRF出力
の上昇とともに堆積速度は上昇するが、それ以上の出力においては荷電粒子によるイオ
ン衝撃影響のため減少を示した。一方、低温堆積したSiO2薄膜においても膜中に炭化
水素を含有するアモルファスな膜であった。堆積速度においてもZnO膜堆積と同様RF
出力と基板温度の影響を受け、RF出力の増加とともに、堆積速度は上昇し、基板温度
の上昇と共に低下する。このためZnO、 SiO2薄膜のいずれの堆積条件においても基板
温度及びRF出力の調整が必要である。
(PC)樹脂に堆積したZnO/SiO2積層膜はオリジナル(PC)樹脂の10倍以上の表面硬度
を持ち、更に非常に優れた紫外線カット性能を持つため、紫外線による(PC)樹脂表面の
光劣化に伴う黄変化を著しく低減する事が可能である。また、単純な積層膜は膜の密着
強度不足に伴う界面剥離現象が生じ、ZnO膜とSio2膜の明確な界面を持たない傾斜構
造をとる積層膜は密着強度の向上につながることが判明した。
以上の結果よりカソード堆積法を用いた薄膜堆積法は今日、拡大使用されている複雑
な凹凸形状のプラスチック部品への表面被覆工法として非常に有用な工法であり、更に
ZnO/Sio2積層膜の低温堆積は今後プラスチック上へ耐紫外線及び、ハードコートの技
術として有益であることが証された。
114
謝辞
本研究は静岡大学電子科学研究科電子応用工学専攻において行われたものであります。
本研究を通して、静岡大学電子工学研究所 畑中義式教授には終始御指導、御鞭燵を
賜り、ここに深く感謝の意を表します。
本論文作成にあたり、ご多忙中、懇切に内容の検討を頂き、有意義な御助言を賜りま
した静岡大学工学部電気・電子工学科 神藤正士教授、電子工学研究所 天明二郎教授、
工学部共通講座 山田真吉教授に深く感謝致します。
本研究の遂行に際し、静岡大学大学院電子科学研究科、並びに電子工学研究所の諸先
生や多くの方々にいろいろお世話になりましたことを心より感謝致します。特に、電子
工学研究所助手 青木徹博士には、実験内容、分析設備等において御助言を頂き、村松
隆広氏にはPE−CVDの仕様及びSiC薄膜の堆積条件や装置間の違いについて多大なご
協力を頂くとともに、活発な議論を交わすことができました。ここに深く感謝致します。
また、日本学術振興会特別研究員 M.NiraUla博士には英文添削をはじめ論文作成に
おいて御助言を頂き、徐慮喩博士にはsic薄膜の組成解析とRPE・cvD装置とPE−cvD
装置との違いについて大変有意義な御助言を頂きました。心より感謝申し上げます。
また、筆者の修士課程在籍時の指導教官でもありました山田真吉教授には、博士課程
入学準備の段階から修了に至るまで、懇切な御助言を頂きました。心より御礼申し上げ
ます。
本研究の機会を与えていただきました株式会社 小糸製作所 故天野信取締役に深く
感謝致します。また、在学期間中、研究所の皆様をはじめとする社内の多くの方に御理
解、御支援を頂戴致しました。ここに深く感謝の意を表します。特に研究所 片瀬紘一
常務取締役、八木操一部長、吉本侑司参与、中村孝也部長、田中真理子氏、高塚博幸氏、
生産技術開発部 土岐淳二課長、池田利正係長には博士課程進学から修了に至るまで技
術的アドバイスをはじめ、御支援、御援助をいただきました、心より感謝の意を表しま
す。
最後に、社会人と学生生活の両立を長い間陰で支えてくれた妻、そして家族に心より
感謝致します。
115
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100・T・Minami・H・S・t・・H・S・n・h・・a, S・T・k・t・, T.Miy・ta and I.Fukud・;Thin・S・1id Films,
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101.Y.Ohya, H.Saiki and Y.Takahashi;JMateLSci.,29(1994)4099.
102.KPostava, H.Sueki, MAoyama, T.Yamaguchi, Ch.Ino and YInagaki;工Appl.
Phys.,87(2000)7820.
103.A.J.Varkey;Int.J.Mater and Product Techno1.,1⑪(1995)94.
104.A.WOtt, RP,H.Chang;Materials Chemistry and Physics,58(1999)132.
105.DM.Bagnal1, YRChen, Z.Zhu and T.Yao;Appl.phys.Lett.,73(1998)1038.
106.S.C.Deshmukh and E.S.Aydil;App1.Phys.Lett.,65(1994)19.
107.YSong, T.Sakurai, KKishimoto, KMaruta, S Matsumoto and K.Kikuchi;Vacuum,5亙
(1998)525.
108.0.Takai and H.Hori;Proc.Jpn.Symp.Plasma Chem.,2(1989)191.
109.0.Takai and T.Kawahara;Proc.Jpn.Symp.Plasma Chem.,3(1990)45.
110.1巳Sekiguchi, KHaga and K.lnaba;」.Crystal Growth,214(2000)68.
121
研究発表リスト
論文発表:
1.Hidetaka Anma,」」Tbki, T. Ikeda and Y且atanaka:Uniform dep osition of SiC
thin flms on plastics surfaces, Vacuum,59(2000)665・671.
2.安間英任,土岐淳二,池田利正,畑中義式:凹凸プラスチック表面上への均一
sic膜の形成,自動車技術会論文集第31巻,第1号(2000)41−44.
3.Hidetaka Anma, Y Yoshimoto, M. Warashina and Y且atanaka:Low
temperature deposition of SiC thin丘1ms on polymer surface by plasma CVD,
Applied Surface Science,175−176(2001)484・489.
4.安間英任,吉本侑司,藁科真理子,畑中義式:プラズマCVDによる紫外線カット
膜のプラスチック上への低温形成 自動車技術会論文集,第32巻,第4号(2001)
157−161.
5.安間英任,吉本侑司,田中真理子,畑中義式:プラズマCVDによるZnO膜のプ
ラスチック上への低温形成,静岡大学大学院電子科学研究科研究報告,第22号
(2001)25−31.
6.Hidetaka Anma, Y’Ybshimoto, M. Tanaka, H. Takatsuka and Y Hatanaka:
Preparation of ZnO thin films deposited by plasma chemical vapor deposition for
application to ultraviolet℃ut coating, Jp n.」. Appl. Phys.,40(2001)6099−6103.
122
7.Hidetaka Anma, Y Ybshimoto, M. Tanaka, H. TakatsUka and Y. Hatanaka:Low
temperature deposition of ZnO/SiO2 thin f且ms on polymer surfaces by plasma
enhanced CVD, Proc. of Materials Research Society Symposium(2001.4),(士n
press) .
8.Hidetaka Anma, Y Ybsimoto, M. Tanaka,ヨ. Takats媛ka and Y Hatanaka:
Deposition of hard coating丘1m on polymer surface by plasma CVD, Proc. of the
15th lnternationa1 Symposium on Plasma Chemistry,(2001.7)2311−2316.
9.Hidetaka Anma, Y Yoshimoto, M. Tanaka, H.Takatsuka and Y Hatanaka:
Deposition of Hard Coating Film on Polymer Surface by Plasma CVD, Proc. of
2002SAE World Congress(accepted).
国際学会発表:
1.Hidetaka Anma,」. Toki, T. Ikeda and Y Hatanaka:Uniform deposition of SiC
thin films on plastics surfaces, The 5th International Symposium on Sputtering
and Plasma Processes, June 16−18,1999, Kanazawa, Japan.
2.Hidetaka Anma, Y. Yoshimoto, M.Warashina and Y Hatanaka:Low temperature
deposition of SiC thin丘1ms on polymer surface by plasma CVD,10th
International Conference.on Solid Fims and Surfaces, July 9−13,2000, Princeton
University, USA.
3.壬{idetaka Anma, Y Ybshimoto, M. Tanaka, H. Takatsuka and Y且atanaka:Low
temperature deposition of ZnOISiO2 thin films on polymer surfaces by plasma
enhanced CVD,2001 Materials Research Society, April 16−20,2001, San
Francisco, USA.
123
4.Hユdetaka Anma, Y「Ybshimoto, M. Tanaka,且. Takatsuka and Y 1ヨatanaka:
Deposition of hard coatin.g film on polymer surface by plasma CVD,2001 the
15th International Symposium on]Plasma Chemistry, July 9−13,2001,0rleans,
France.
5.1{idetaka Anma, Y Yoshimoto, M. Tanaka,且. Takatsuka and Y Hatanaka:
Deposition of Hard Coating Film on Polymer Surface by Plasma CVD,2002 SAE
World Congress, March 3・8,2002,Detroit, USA(accepted fbr the presentation).
特許申請:
1.安間英任,畑中義式:自動車用プラスチック部品の保護膜形成方法,特願平
11−162469,1999年6月.
2.安間英任,畑中義式:自動車用プラスチック部品の保護膜形成方法,特願
2001−052914,2001年2月.
国内学会発tc :
1.安間英任,土岐淳二,池田利正,畑中義式:プラスチック上へのSiC薄膜の均一
形成,第46回応用物理学会学術講…演会1a−ZT−9 1993年3月
2.Hidetaka. Anma, Y Yoshimoto, M. Warashina and Y Hatanaka:Low
temperature deposition of SiC thin丘lms on polymer surface by plasma CVD,
Proceedings of the 17th Symposium on Plasma Processing,2000年1月,長崎.
3.安間英任,吉本侑司,藁科真理子,畑中義式:プラズマCVDによる紫外線カット
膜のプラスチック上への低温形成,自動車技術会2000年秋季学術講演会,2000年10
月,小倉.
124