保険研究特論(保険数理) アクチュアリー数学(第3回) 利息の計算 早稲田大学大学院商学研究科 2015年4月24日 大塚忠義 1 講義資料 http://tyotsuka.cocolog-nifty.com/blog/ から各自事前にダウンロードしてください 2 多重脱退率(1) ・生命表は誕生と死亡の2つの要素のみによ る人口の推移を示しているが、実社会ではあ りえない ・国民表は死亡の状況を示す目的 ・保険や年金の加入者の集団では誕生、死 亡以外の増減要素も重要 ・多重脱退率:それぞれの減少要因の発生率 ・多重脱退表:集団からの複数の離脱要因を 勘案した表(生命表の一般化) 3 多重脱退率(2) 用語の確認 ・被保険者集団:保険・年金の対象となる所 定の属性を持った人の集団 eg.加入者集団 ・閉集団:新規加入がなく、離脱により減少し ていく集団 ・開集団:離脱がある一方で、新規加入もあ り、構成員が変化していく集団、新規加入は 誕生に限らない 4 多重脱退率(3) ・閉集団の例:生命保険加入者集団:一定 時期に加入した集団を集合として離脱の状 況を観察する:加入年数別(保険年度別)の 発生率が重要 ・開集団の例:年金集団、特に、厚生年金、 企業年金等の被用者集団:入社数、退社数 は死亡数より多い:集団の規模の変化も重 要な要素 5 多重脱退率(4) 異なるモデルを用いる事例 死亡、解約(退職):以下この例を言及する ・多重脱退率を用いる典型例 ・離脱事由が独立と仮定(実はそうとはいえ ない:保険を解約するのは健康な人、重病 により会社を退職etc.という傾向有) ・離脱事由により給付が異なる ・離脱者からの復帰を想定しない 6 多重脱退率(5) 死亡、高度障害(傷害1級水準) ・高度障害を死亡と同様に扱う:経済的な死 ・保険金を支払い契約が消滅 ・高度障害発生率を死亡率に上乗せ 死亡、重大疾病(介護等) ・健常、介護xx級、死亡の各ステージへの 遷移確率を設定し、確率過程としてモデル 化 ・復帰(回復)を仮定 ・介護保険のプライシングで詳述 7 脱退原因A,Bの脱退率 lx 1 lx d xA d xB A x d q :A脱退率 lx A x B x d q :B脱退率 lx A:死亡、B:解約とすると、死亡数は解約後 に死亡した人を含めていない 本来の脱退率(死亡率、解約率)を絶対脱 退率としてそれらとの関係を考慮 B x 8 絶対脱退率 A x A x q q q 1 B* 1 B 1 qx 1 qx 2 2 証明省略 近似は没理論だが実務で広く使用 下式の方が脱退残続表を作成のために使 用されている * A x 1 B* q q (lx qx ) 2 A x A* x 9 Agenda 第3回 利息の計算 • 利子、利息、金利 • 利力 • 利回りの算出 • 年金 10 利子、利息、金利 経済学的には『将来時点における資金の 現在時点における相対的な価格』をいう 実際の金融取引においては ・金銭の時間的価値、 ・金融機関の提供するサービスの対価 ・債権の貸倒れに対する保証料 が合成されたものと観念される 金利と時間の関係は不可分である 利息は元本、金利、時間に依存する 11 用語の確認(1) ・利子:利息、(I):明確な区別なさそう ・利率:金利、(i):金、貨幣以外の貸借も 存在⇔物利、米利 ・元本:元金、(P):同上 ・期間、投資期間、預入期間、借入期間 (n) ・年利:利率は1年単位で表すことが慣習 12 用語の確認(2) ・単利:投資期間に比例した利息を付け る(付利)する方式。通常この方式をとる ことはない S=P+I=P(1+ni) ・PはSの現価、SはPの終価、SとPは時間 的に等価 ・複利:期間満了時に利息を元本に繰入、 その合計額を新たな元本とする方式 S P(1 i ) n 13 用語の確認(3) ・付利、転化:利息を付し元本に化す(元本 に繰り入れる) 転化は期間満了時におこなう ・転化期間:転化回数(k) 1年未満の場合:eg.1、3、6か月定期:1 年の間に複数回、転化する ・金利:年利(1年)を基準に表示する ・名称利率(i):年利として表示される金利 ・実利率( i ( k ) ):実際に付される利息を表す 利率 14 記号の定義 S P (1 i ) n Pv S n 1 v :現価率 1 i i d 1 v :割引率 1 i (1 d )(1 i ) 1 (1 i (k ) ) 1 i k k 15 利力(1) 転化回数kを多くする lim i (k ) k e 1 i (1 i (k ) k ) k e v 1 t then : k : t 0 k 16 利力(2) Stを時間(実数)tのもとに定義すると微分可能 微小区間tにおける利率は St t St St t t : t 0としたものを利力と定義 St t St t lim t 0 St t 1 dSt d log St St dt dt 17 利力(3) dSt t St dt d log St 1 dt dt log S t t 0 0 0 dt S0 (1 i ) S1 log log log(1 i ) S0 S0 1 1 18 利力(4) ・利力を定義することで連続空間である時 間t上を利息を利率を定義することができ る ・利力に時間tの添数を付すことで時間によ る関数と定義することができる ・従来の実務では t として利力(利率) は期間中不変との仮定のもと常数としてき た 19 利回りの算出(1) 保険会社、投資ファンドの資産の利回りを 算出する 既知データ:期始、期末、期中の資産残高、 投資収益(利息、配当金等) 一方、資産の増減要因は投資収益以外の 新規契約、解約等があり、 I S0 (1 i) では 求められない 1 1 I St dt St dt 0 0 に着目 20 利回りの算出(2) ハーディの公式 2I i S0 S1 I 日々平残方式 1 S dt 0 t 364 1 Sk 365 k 0 365 21 年金(1) ・あらかじめ定めた一定の期間(年金支払 期間(n)、終身、永久を含む)中、一定の 間隔(等間隔で年、月、日)をおいて継続 的に支払われる一連の金額 ・確定年金:支払いに条件がない ・生命年金:条件付年金の一種、所定の人 の生存を条件に支払う ・期始払年金:年金支払期間中、一定の間 隔の始めに年金を支払う ・期末払年金:一定の間隔の終わりに年金 を支払う 22 年金(2)記号の定義 an : n年期始払確定年金現価 an : n年期末払確定年金現価 sn : n年期始払確定年金終価 sn : n年期始末確定年金終価現価 f an : f 年据置n年期始払確定年金現価 23 年金(3) n n 1 v 1 v an 1 v v n 1 1 v d n 1 v 2 n an v v v i n (1 i )((1 i ) 1) 2 n sn (1 i ) (1 i ) (1 i ) i n (1 i ) 1 n 1 sn 1 (1 i ) (1 i ) i 24 年金(4)永久年金 1 a d 1 a i f f 1 f n 1 v f an v v v an an f a f f dan 1 v n 25 年金(5) 年k回分割年金(半年払、月払) 1 1 1 n n k n 1 (1 i ) (1 v ) 1 v an ( k ) (1 v k v k ) (k ) (k ) k i d 1 1 n n 1 (1 i ) 1 (k ) k k sn (1 (1 i ) (1 i ) k i(k ) an ( k ) a1 ( k ) an sn ( k ) s1 ( k ) Sn 26 年金(6) 連続年金:年k回分割年金の極限の場合 27 年金(6) 変動年金:年金額が変動する年金 累加年金:年金額が1,2,3,4・・と増加 していく期末払年金 1 nv ( Ia) n an d i 1 n ( Is) n sn d i n 28 年金(7) 年金額が r%単利逓増 期始払 an r ( Ia)n1 年金額が r%複利逓増 期始払 n 1 n 1 1 (1 r )v (1 r ) v (1 r ) v 2 2 1 r v 1 r v 1 rv (1 i) r n n n n rv=1のときはn 29 Question? お疲れ様でした 30
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