ユーザインタフェース 第2回 ユーザ行動の分析と「看板」のデザイン ー まずは市場(ユーザ)を知り、 市場が望む商品を提供する ー Webページは 斜め読み される • ユーザはページの内容を読んで選ぶリンクをしっかり考えると、 Webページの製作者は思いがち • 実際には、気になる単語だけを見て、リンクを押し、ユーザはす ぐにそのページを立ち去る – 時速100キロで走る車から見える 看板 のようなもの • これには3つの理由がある。 理由その1:人はページを読まない。 ざっと見る(scan) のみ • たいてい、急いでいるから • すべてを読む必要がないことを知っているから • ざっと見るのが得意だから マイルチェックへのリンク 航空会社の ホームページ チケット購入へのリンク 理由その2:最良のものを選択するよ りも、満足できるものを選ぶ • たいてい利用者は、最初に目についた、そこそこ 満足できるものを選ぶ – 満足化(satisficing) = satisfying + sufficing H.Simon, Models of Man: Social and Rational, Wiley, 1957 – 人間はどのように意思決定しているのか G.Klein, Source of Power: How People Make Decisions, MIT Press, 1998 • • • • 消防隊の指揮官を調査 時間制約のため二者択一程度で意思決定していると想定 実際には、最初に思いついたプラン を問題ないかチェック 問題なければそれを選択。 我々が「満足化」で満足しているのはなぜ? Webを使うときに、そこそこ、満足できるもの で いいのは • 見当違いをしたって 厳しい罰 を与えられな い – 消防士ですら最良の選択肢を検討していない • 選択肢を比較検討 しても、結果はあまり かわらない • 推測して見当をつけることのほうが 楽しい 理由その3:人は仕組みを理解せず、 どうにか切り抜けるものである • 家電品を買っても説明書をじっくり読まない • とにかく使ってみて なんとか使えるようになる。 • その使い方が間違っていても 気にしない – GoogleやYahooの検索ボックスにURLを書く 誤った使い方を気にしないのは • 仕組みを知らなくても、問題はないから – 使えている限りは正しい使い方をしらなくてもよい • うまくいくとわかったら、それに 固執する から 「看板」ユーザインタフェース入門 • Webページはしょせん、ざっとしか見られない、 誤った使い方に耐え抜くべき「看板」か? – Webデザイナは苦労しても、報われないのか? – ユーザインタフェースなんて研究する必要ないの? • りっぱな看板 1. 2. 3. 4. 5. をつくる必要 → 5つの原則 各ページの階層をわかりやすくする 「慣習」を守る ページをエリアに分ける クリックできるものをはっきりさせる ノイズは最小限に抑える 原則1:各ページの階層をわかりやすく • 短時間で内容を理解させるには、ページ上の 項目が visual (一目瞭然)な階層をもつべき 3つのポイント • より重要なものが、より目立つ – 最重要項目は、大きいフォントで、太字で、目立 つ色で、余白を使い、ページのtopの近くにある • 論理的な関連物が、visual上も同じ層に – 同じ見出しの下、同じスタイル、同じエリアにある • 何がどれを含むかを示すのに入れ子を使う 階層構造の例 より重要なものが、 より目立つ 論理的な関連物が、 visual上も同じ層に 何がどれを含むか を示すのに入れ子 を使う 慣例を守る • どれが何か,何がどこにあるかがわかる • Webにも慣例(カテゴリ、探索ボックス、etc) • デザイナは自分だけのページを作りたがる エリアに分ける • 商品の写真 • 商品の情報 • 関連商品 余白が多い ので、エリア分けがよくわかる クリックできるものをはっきりさせる • Amazonでどれをクリックできるか一目瞭然か? 答えは Yes 下線で青字 もしくは ボタン • 下の検索ボックスで、どこを押して検索する? × SEARCH ○ SEARCH ノイズを最小限に • ケバケバしすぎるもの – すべてが大きいフォント – すべてがドぎつい色 – どこもがブリンク • 背景がうるさいもの – 不必要なアニメーション – 枠が太い、濃い • 大切な検索ボタンの枠が薄く、 • 「オークション」の枠は濃い ME(Magnitude Estimation)法 • Stevensによって提唱 • 刺激量 S に対する人間の心理量 R は次式に従う R=kSn k, n: 定数 [例] – Webページの空白部分の比率を変える.比率が小さいも のから大きいものへと徐々に変化させ,それぞれの比率 がエリア切分けの明確さをユーザに与えるかを調べる. – 果物ジュースの果肉の割合を変化させ,それを飲む人間 がどのような「飲みごたえ」を感じているかを調べる. ジュースの例 • 刺激量50を堺に,感覚量の変化が鈍くなっている. • 50以上の刺激を与えても,同じ感覚しか得ていない. • 果肉を50程度に抑えれば,少ないコストで大きな効果 Webページの空白についても同じ手法を用いることができるはず. k と n を求める実験 • いろいろな刺激(空白の割合)を,多くの被験 者(最低でも20人)に見せ,エリアごとの区切り の明確さを200点満点でつけてもらう. 中央値をとる • 各刺激に対して,すべての被験者が答えた区切 りの明確さの中央値をとる. – 突拍子もない反応をする被験者の影響を除去する – 中央値 • データが奇数のとき,小さい順に並べたとき中央に位置す る値 • 偶数のとき,中央に近い2つの値の算術平均 – 平均でもよいが,平均では大外れの値に影響される 恐れあり 刺激 刺激 刺激 順に並べると50,90, 90, 130なので,90が中央値 反応 R と刺激 S の対数をとる 等式 R=kSn k, n: 定数 (1) の両辺の対数をとると log R = log k +n ・ log S (2) ここで, y=log R, a=n, x=log S, b=log k とおくと y=a・ x + b R と S に各被験者の値を代入し,a と b の値を求めれば, k, n の値 が求まり,式(1)の式を同定することができる. 回帰直線を求める • 実験値を式(2)に代入し,グ ラフにプロット. • グラフにプロットされるすべ ての点からの距離の和が 最小の直線を求める • 最小二乗法 – 誤差の和はa, b の2次式 – これをa, bで偏微分し,とも に0となるとき,最小 – n=a, k =10 bだから R = k S n が確定
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