解答例

2015 年度前期
有機化学演習 第9回
カルボニル基への求核付加反応
1. アセトアルデヒドは酸触媒で処理すると環状の三量体を生成する(下図)。反
応機構を示しなさい。
(ヒント:カルボニル基の酸素が求核剤として働くと考
える。)
O
3
O
H+
O
H
H3C
O
O
O
OH
H+
H
H3C
H
H3C
H
H CH3
O
– H+
O
H
O
O
H3C
CH3
O
O
H
H
H3C
H3C
CH3
O
O
H
CH3
H
H
H
CH3
H
H
H3C
H
H3C
OH
H
H3C
CH3
H
OH
O
O
CH3
2. N–CH2–N という構造を持つ化合物(例:ヘキサメチレンテトラミン)は、
酸触媒で加水分解を受けてホルムアルデヒドを生成する。反応機構を説明し
なさい。
H H
N
N
N
N
N
ヘキサメチレンテトラミン
H H
N
H+
N
H3O+
NH
+
H
H
+
HN
H
– H+
O
H H
N
N
–
H
N H
N
N H
H
H2O
H H
N
H H
N
O
O
H
H H
N
H+
H H
H N
O
H
–
O
H
N H H
H
– H+ H
O H
H
H
O
3. アルデヒドやケトンと一級アミンによるイミンの生成は、pH = 5 付近が最も
速く、それより pH が高くても低くても遅くなる。理由を説明しなさい。
pH が高い領域では、四面体中間体に対するプロトンの付加が不十分なため、
水が脱離しにくく反応が遅くなる。pH が低い領域では、一級アミンがプロト
ン化を受けて求核性を失うため、反応が遅くなる。
4. 次の合成スキームの A
しなさい。
D に入る化合物を書き、各反応について簡単に説明
O
O
Br
HO
OH , H+
H
H3O+
C
Mg
A
H+
H
B
D
O
Br
H
HO
OH , H+
Mg
O
O
Br
(アセタールの生成
=アルデヒドの保護)
O
MgBr
O
(Grignard試薬の調製)
O
H+
H
OH
O
O
OH
(アセタールの H
加水分解)
O
(Grignard試薬の
求核付加)
H3O+
5. 下の反応スキームは、カルボニル基を CH2 に還元する Wolff–Kishner 還元
の例を示したものである。(1) A は C=N 結合、B は N=N 結合を持つ化合物
である。それぞれの構造式を書きなさい。(2) 最後のステップの反応機構を巻
き矢印で示しなさい。
O + H2N NH2
ヒドラジン
(2)
(1)
N
NH2
(3)
H
N
B
(C6H12N2)
(C6H12N2)
ヒドラゾン
アゾ化合物
H
N
NH
–OH
N H
A
– N2
H
H+
H
H
–OH
!
+ N2