技術の窓 №1968 H26.1.23 LC/MS/MS による実用的な麦汚染カビ毒 一斉分析法 麦の赤かび病菌の一部はかび毒汚染を引き起こすことが知られています。麦を汚染する主なか び毒はデオキシニレバノールなど 5 種類がありますが、これらを一斉に高感度で分析できる手法 はありませんでした。そこで、高速液体クロマトグラフタンデム型質量分析装置(LC/MS/MS) を 用いて一斉分析可能な手法を確立しました。室間共同試験により妥当性が確認された実用的な分 析手法です。 ☆ 技術の概要 1. 高速液体クロマトグラフタンデム型質量分析装置(LC/MS/MS)を使用して、図1に示す 5 種類の麦汚染かび毒について一斉分析できます。各種かび毒について 30 分程度の測定時間で ppb(μg/kg)濃度レベルでの同時定量分析が可能です。 2. AOAC インターナショナルの「試験室間共同試験のガイドライン」を参照した室間共同試験 により妥当性が確認されています。 3. LC/MS/MS によるかび毒一斉分析法はこれまでに多数報告されていますが、5 種類の麦汚染 かび毒を一斉分析可能で室間共同試験により妥当性が確認された実用的な分析手法の報告例 は本手法が国内外を通じて初めてです。 O OH H H OH H3C O H H CH3 H HO H2C CH3 OH H 3C OH OH デオキシニバレノール (DON) CH 2 OAc CH3 O O C CH 2 H 3C O CH CH 3 ニバレノール (NIV) O O O C CH 2 O H2C O O O O HO CH3 OH H H3C O O O O H OH H H3C OH O OH CH3 CH 2 O CH C HO H H3C O CH 3 CH 3 O C CH 3 T-2トキシン(T-2) HT-2トキシン(HT-2) ゼアラレノン(ZEA) 図 1.麦を汚染する主要かび毒 XIC of -MRM (88 pairs): 371.090/280.900 amu Expected RT: 7.2 from Sample 9 (120301_ColabSampleA-670-Pre1-Bond1-4-6-4conc.) of 12030... 3.4e4 3.2e4 3.0e4 Max. 3177.3 cps. DON 9500 9000 負イオン化条件 2.6e4 2.4e4 ZEA 2.2e4 2.0e4 1.8e4 1.6e4 1.4e4 1.2e4 6000.0 NIV 4000.0 7.0 1.0e4 8000.0 8500 8000 7500 (B) Max. 9923.1 cps. 17.7 T-2 正イオン化条件 7000 6500 6000 5500 5000 4500 4000 3500 3000 HT-2 2500 2000 1500 1000 2000.0 0.0 XIC of +MRM (88 pairs): 484.252/305.000 amu Expected RT: 17.8 from Sample 11 (120301_ColabSampleA-670-Pre1-Bond1-4-6-4conc.) of 120... 9923 2.8e4 In te n s ity , c p s ピーク強度 3.6e4 (A) In te n s ity , c p s 3.8e4 ピーク強度 3.9e4 500 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 Time, min 11.0 12.0 13.0 14.0 15.0 16.0 17.0 18.0 19.0 20.0 0 1.0 2.0 3.0 4.0 保持時間 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 Time, min 11.0 12.0 13.0 14.0 15.0 16.0 17.0 18.0 19.0 20.0 保持時間 図 2.かび毒添加小麦(8-40µg/kg)の LC/MS/MS クロマトグラム ☆ 活用面での留意点 1. 行政部局でのリスク管理のためのモニタリング・サーベイランスに活用されています。 2. 詳細については、農研機構食品総合研究所食品安全研究領域化学ハザードユニット(TEL: 029-838-8085)にお問い合わせください。 (農研機構 食品総合研究所 門間美千子)
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