地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 北方建築総合研究所 平成23年度 年報 研究期間:平成22~24年度(継続) 研究区分:一般共同研究 繊維系断熱材の長期断熱性能維持に関する研究 性能変化要因の分析・評価方法の検討 建物の長期的な性能を確保するためには、各種建材 の耐久性を把握し、必要に応じて部材を更新すること が重要です。一般にグラスウールは、初期性能が長期 にわたって維持されるものとして断熱設計が行われ ていますが、グラスウールを構成するガラス繊維や、 形状保持のために使用される樹脂バインダーの長期 的な性状の変化については現在十分な知見がなく、検 証が必要です。 本研究では、長期使用した断熱材の実態調査及び加 速劣化試験により、グラスウールの耐久性を検証し、 長期的に断熱性能を維持するための設計情報を構築 することを主な目的とします。 現場サンプリング 比較 加速劣化試験 評価方法の妥当性検証・劣化の再現性検討 長期断熱性能検証・評価方法提案 耐久性向上のための設計情報構築 図1 研究のフロー 本研究では主に現場サンプリング調査と加速劣化 試験の 2 つのアプローチから、グラスウールの長期断 熱性能検証を行います。現場サンプリング調査では、 解体や改修工事の現場からグラスウールをサンプリ 写真 1 グラスウール採取現場の例(昭和 49 年築) ングし、使用状況と性状変化の関係を確認します。加 速劣化試験では高温高湿条件下にサンプルを置き、長 期的な性状変化を再現します。一方で、性状変化を評 価するための試験方法を検討し、グラスウールが長期 的にどのように変化するのかを定量的に明らかにし ます。劣化が認められた場合には、そのメカニズムと 原因を探り、評価方法の提案や、耐久性向上のための 設計情報構築を行います。 写真 2 現場採取グラスウール 写真3 の電子顕微鏡画像 突き刺し強度試験状況 今年度は、性状変化を評価するための試験方法として、突き刺し強度試験、圧縮荷重試験、引っ張り試験、 熱伝導率測定、顕微鏡観察、SEM-EDX(エネルギー分散型 X 線分光法)の各方法を検討しました。 また、温度や湿度をパラメータとして、グラスウールを一定温湿度下に置いたときの性状変化を突き刺し 強度試験により継続的に評価していますが、通常グラスウールが使用される条件下で、性能に支障を及ぼす 変化を生じる結果は、現在のところ得られていません。 来年度はさらに実験データを蓄積し、グラスウールの耐久性向上のための設計情報構築を行う予定です。 昭和 40 年代~50 年代に建設された旭川市内の住宅を対象に、現場サンプリング試行調査を行いました。 北方建築総合研究所(担当グループ) 共同研究機関 採取されたグラスウールに目立った経年変化はありませんでした。 加速劣化試験では、高温高湿条件下でグ 硝子繊維協会 環境科学部環境グループ・構法材料グループ 居住科学部居住科学グループ ラスウールが膨張することが確認されましたが、熱伝導率への影響はいまのところ現れていません。評価方 法については、熱伝導率測定、顕微鏡観察、熱分析(DSC、TG)、反発力測定等、種々の方法を検討しま した。 25
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