ヒカリモの不思議な生態の観察 茨城県立日立第一高等学校 生物部 発表者:大宮 悠(3 年) 指導担当:照沼 芳彦 ○はじめに ○結果 ヒカリモは, 不等毛植物門黄金色藻綱に属す 日立市の東滑川海浜緑地には複数の洞穴があ る淡水生の単細胞生物で長短 2 本のべん毛を持 り,泥,枯葉,雨水が溜まっている(図 3 左)。その つ。水中を鞭毛で泳ぐ状態と水面に疎水性の柄 いくつかに水面全体を鮮やかな黄金色で覆った を持って立ち上がる状態がある。さらに,水面 膜のようなものが観察された(図 3 右)。 に立ち上がったヒカリモが多数集まり,光を反 射させて黄金色に光ってみえる膜のようなもの を形成することから「ヒカリモ」と呼ばれてい る。日本各地で 4 月から 6 月,水の溜まった洞 穴などに見られる。東滑川海浜緑地のヒカリモは, 千葉県館山市沼地区と共に,冬場も含め,一年中黄 金色の反射が観察される数少ない群生地である。 定期的な発生地としては,北限にあたるとされて いる。そのほかに,千葉県富津市竹岡のヒカリモ は国の天然記念物,水戸市備前町のヒカリモは市 の天然記念物に指定され,保護されている。日立 市はこの東滑川海浜緑地のヒカリモを保護してお り,この研究は日立市の協力を受けて行っている。 図 3.公園内洞穴における膜が観察されないとき(左) と膜が観察されるとき(右) ヒカリモの黄金色の膜が形成されている洞穴 内の水を顕微鏡で見ると,水中をべん毛で泳ぐ 状態(以後, 「遊泳相」とよぶ)のヒカリモが観察 された(図 4)。次に,黄金色の膜をカバーガラス に張り付くけて顕微鏡観察したところ,水面に 立ちあがる柄を持った透明な球形の構造体(以 後,「外被構造」とよぶ)の中にヒカリモ(図 5) ○目的 水中を鞭毛で泳いでいた微生物が,水面に立 ち上がるということが本当にあるのか調べると が観察された(以後, 「浮遊相」とよぶ)。 ヒカリモ ↓ べん毛 ともに,水中をべん毛で泳ぐ状態と水面に柄を ← 外被構造 持って立ち上がる状態の 2 つの生活相を持つヒ カリモの生態を光学顕微鏡により観察していく。 図 4.ヒカリモの遊泳相の 顕微鏡観察 ○観察方法 10μm 5μm 図 5.ヒカリモの浮遊相の 顕微鏡観察 東滑川海浜緑(図 1)地内の黄金色の膜が確認 できる 3 カ所の洞穴(図 4)から水と膜を採取,光 本校の研究では,複数の浮遊相のヒカリモの 学顕微鏡を使って観察を行う。週 1 回程度,継 外被構造どうしが融合していく様子やヒカリモ 続的に観察する。 の遊泳相から浮遊相への移行が観察されており, それらについても報告する。 ○あとがき 本研究は,平成 22 年度から現在も続く「ヒカ リモ」の研究の基礎となるもので,さまざまな 図 1.東滑川海浜緑地の 風景 図 2.東滑川海浜緑地の 模式図と観察場所 機会に発表してきたものです。この研究に携わ った生物部の先輩方に感謝いたします。
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