高齢者の血管イベントを予測するために3種類の非

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英文原著論文紹介 ④心血管
Efficacy of combined use of three non-invasive atherosclerosis
tests to predict vascular events in the elderly; carotid intima-media
thickness, flow-mediated dilation of brachial artery and pulse
wave velocity.
Nagai K, Shibata S, Akishita M, Sudoh N, Obara T, Toba K, Kozaki K.
Atherosclerosis 2013; 231: 365-70. PMID: 24267253
高齢者の血管イベントを予測するために3種類の非侵襲的動脈硬
化評価法を組み合わせることの有用性
柴田茂貴(杏林大学医学部高齢医学)
永井久美子/秋下雅弘/須藤紀子/小原聡将/鳥羽研二/神崎恒一
背景
1 .09 1 .50], p = 0 .002 per 0 .1 mm increase in mean
非侵襲的に動脈硬化の進行を評価するために脈波伝播
IMT)および baPWV(ハザード比= 1 .06[95 %CI:1 .01
速度(pulse wave velocity;PWV)
、頸動脈内膜中膜肥厚
1 .10], p = 0 .015 per 1 m/sec increase in baPWV)は
(intima-media thickness;IMT)
、血流依存性血管拡張反
将来の血管イベントの独立した予測因子であることが示
応
(flow mediated dilation;FMD)
の3種類の方法が広く
された。しかし FMD は 統計学的に有意な予測因子ではな
用いられている。われわれは以前に PWV、IMT、FMD こ
かった(ハザード比= 0 .85[95 %CI:0 .72 1 .01], p =
れら3つの方法を組み合わせることが既存の動脈硬化性
0 .062 per 1 % increase)。検査値で被験者を 3 群に分け
疾患を検出するうえで有用であることを明らかにした。
最 も 悪 い グ ル ー プ に 所 属 す る 数 を 予 測 因 子 と す る と、
しかし、3つの検査の組み合わせが将来の血管イベント
IMT、baPWV あるいは FMD 単独と比較してより検出力
を予測するうえでも有用であるかどうかは不明である。
目的
が高いことが示された(ハザード比=2.21[95%CI:1.42
3 .43], p = 0 .0004 for number of tests showing worst
tertile)。
3種類の方法を組み合わせることで、各々単独の検査
また receiver operatorating characteristic(ROC)curve
と比較して、より正確に将来の血管イベントを予測でき
より導かれた IMT および baPWV のカットオフ値(IMT:
るかを検討することを目的とした。
0 .98 mm、baPWV:19 .1 m/sec)を利用して患者を 4 群
方法・対象
2000 年 11 月∼ 2008 年 3 月に杏林大学医学部附属病院
高齢診療科外来を受診した 274 人の高齢患者を対象とし
に分けた場合、単独の検査より検出力が高くなることが
示された(オッズ比= 4 .9)
(図 2)。
考察
た。brachial-ankle(ba)PWV、IMT、FMD をすべての患
本研究では3種の非侵襲的動脈硬化評価法を組み合わ
者で測定し平均で41 28カ月間経過観察し、42人(15.3%)
せることで,各々単独の評価法と比べて高齢者の血管イ
の患者で血管イベントが発生した。
ベントの予測能力を向上させることが示された。これは
結果
50
により IMT(ハザード比= 1 .28[95 % 信頼区間< CI >:
3つの評価法を組み合わせることで既存の動脈硬化性疾
患の存在をより高率に検出できることを示した先行研究
IMT および baPWV では検査値で被験者を3群に分けた
と矛盾しない結果であった。
場合に,Kaplan-Meier 法による生存曲線において最も悪
本研究と同様に過去の研究において IMT や PWV は高齢
い群が血管イベントを発生する率が最も高いことが示さ
者の心血管イベントの独立した予測因子であることが示
れた(Log rank 検定)
(図 1 A,B)
。統計学的に有意ではな
されている。また近年、心血管イベント予測において2
かったが FMD でも同様の傾向を認めた(図 1 C)。また3
種類の非侵襲的動脈硬化評価法を組み合わせることの有
種類すべての指標で最も悪い群に属した場合に他と比べ
用性が示されている。本研究はそれらの先行研究を支持
て血管イベントを発生する確率が非常に高くなることが
するとともに、さらに 3 種類の評価法を組み合わせること
示された
(図 1 D)
。
が有効性を高めることを示した。
年齢および性別で調整された Cox 比例ハザードモデル
本研究においては baPWV と IMT は単独でも統計学的
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に有意な予測因子であったが、FMD 単独では有意な予測
因子とはならなかった。FMD は測定時間も長く、高度な
技術を必要とすることから、費用対効果を考慮した場合
英文原著論文紹介④
の意義を明らかにした(図 2)。
結論
には臨床的には PWV と IMT の測定だけで十分であること
IMT および baPWV の測定は、高齢者の将来の血管イベ
が示唆された。ACCF/AHA のガイドラインにおいても動
ントを予測するのに有効な手段であると考えられた。ま
脈硬化の評価法として PWV と IMT の測定が推奨されてお
た FMD を含めた3種類の検査を組み合わせることでより
り、本研究はそれを支持する。さらに ROC curve より得
検出力が高まることが示された。臨床で動脈硬化を評価
られた baPWV と IMT のカットオフ値を用いて対象を4
する場合は費用対効果を考慮し、状況に応じて適切な検
群に分けることで、血管イベントをより高率に予測でき
査を選択することが重要であることが示唆された。
ることを示しており、baPWV と IMT 両方を測定すること
図 1 ● 血管イベント発生割合
A 平均 IMT
(%)
100
B baPWV
(%)
100
無イベント生存割合
無イベント生存割合
IMT<0.84mm
90
0.84≦IMT<1.04mm
80
70
1.04mm≦IMT
60
p<0.05 by Log-rank test
50
0
20
40
80
16.6m/sec ≦ baPWV<21.1m/sec
80
70
baPWV≧21.1m/sec
60
p<0.01 by Log-rank test
0
100(カ月)
20
40
60
80
100(カ月)
D 最も悪い群に属した数
(%)
100
C %FMD
(%)
100
無イベント生存割合
無イベント生存割合
%FMD≧3.3
90
80
1.6≦%FMD<3.3
70
%FMD<1.6
60
0
20
40
80
80
1
2
70
60
40
60
0
90
50
p=0.052 by Log-rank test
50
90
50
60
baPWV<16.6m/sec
3
p<0.001 by Log-rank test
0
100(カ月)
20
40
60
80
100(カ月)
図 2 ● 患者を 4 群に分けた場合の無イベント生存割合(A)およびオッズ比(B)
A
B
6
80
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
70
Ⅳ
90
60
50
オッズ比︵p 値︶
無イベント生存割合
(%)
100
0
20
40
5
4
60
80
100(カ月)
Ⅰ: baPWV<19.1m/sec, IMT<0.98mm
Ⅲ: baPWV<19.1m/sec, IMT>0.98mm
2.9
(0.084)
3
2
1
p<0.05 by Log-rank test
4.9
(0.003)
p<0.0001
0
1.8
(0.399)
1.0
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅱ: baPWV>19.1m/sec, IMT<0.98mm
Ⅳ: baPWV>19.1m/sec, IMT>0.98mm
51