椎骨動脈起始部閉塞で著明な側副血行路を認めた 1 例 68

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椎骨動脈起始部閉塞で著明な側副血行路を認めた 1 例
○岡野 真弓,曽根 利久,村松 志保美,平口 晶美,櫻井 由佳利
(市立島田市民病院 臨床検査室),村田 敬二(市立島田市民病院 脳神経外科)
【目的】小脳梗塞を繰り返し,塞栓源検索にエコー検査が有用であると考え
が認められたが,AcT が延長し近位狭窄パターンを示していた.コイル塞栓
られた椎骨動脈(VA)起始部閉塞の症例を経験したので報告する.
や VA 起始部の再開通の治療も検討されたが,まずは抗凝固療法を主体と
【症例】76 歳女性.2 日前よりめまいがあり呂律障害が出現し近医を受診し
した治療に変更し経過観察となった.
た.頭部 MRI で小脳梗塞を認め当院に紹介入院となった.正常洞調律,血
【まとめ】本例は左 VA 起始部が徐々に狭窄し側副血行路が発達,その後
圧 155/81,意識清明,顔面麻痺なし,構音障害軽度あり.入院時の MRA
起始部が閉塞して,側副血行路との間に血流がうっ滞し血栓ができ小脳梗
では左 VA は起始部での描出はなく,第4頚椎(C4)より末梢側では描出され
塞になったと考えた.入院時の頚動脈エコー検査では VA の血流が確認で
た.頚動脈エコーでは右総頚動脈,左外頚動脈にプラークを認め,左 VA
きた位置でパルスドプラ法を施行したが,起始部の閉塞や側副血行路は認
の PI 値 3.1 で遠位狭窄パターンを疑ったが,この時点では左 VA の起始部
識できなかった.血管造影後にエコーを再検したところ,起始部閉塞と側副
閉塞は認識できなかった.アテローム血栓性脳梗塞として選択的トロンビン
血行路を確認することができた.側副血行路から末梢を丹念に精査しパル
剤の点滴と抗血小板剤の経口投与を行うも,第 9 病日に小脳梗塞が再発し
スドプラ法を行った所,双方向性血流や近位狭窄パターンであったことから
たため,抗血小板剤を 2 剤とし第 15 病日に退院となった.退院 1 週間後に
本来であれば起始部閉塞も予測できたと思われた.エコー検査で VA は症
小脳梗塞を再発し再入院となった.原因精査のため行なった血管造影では
例により低形成や左右差があり全体像を把握することは難しい.側副血行
左 VA 起始部の描出はなく,muscle branch から V2 領域への描出を認め,
路が発達している場合,起始部の閉塞を見逃してしまうこともある.VA を観
一部造影剤が V2 から V1 に向かって逆流し pooling する像を認めた.側副
察する際はまず,起始部から末梢までの全体像を把握し,周囲のカラード
血行路及び血栓源精査のため,頸動脈エコーを再度施行した.左 VA は起
プラ信号や血流パターンにも注意することが大切であると思われた.
始部が閉塞し,3 本の側副血行路が認められた.C5~C4 に 1 本目の側副
【結語】椎骨動脈を観察する際は,閉塞や側副血行路も念頭におき検査す
血行路を認め,順行性と逆行性に流れる血流が認められた.C4~C3,C3
る必要がある.
~C2 の間にも側副血行路を認め,2 本目の側副血行路から末梢側は血流
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連絡先 0547-35-2111 内線 2158
動脈硬化症進展モデルと FMD の有用性
○妻屋 裕理子,大江 宏康,中田 晶子,高道小百合,南部 裕子,堀田 宏,酒井 佳夫
和田 隆志(金沢大学附属病院)
【目的】一般に提唱されている動脈硬化症進展モデル
値域、異常値域による 2 分位での各項目の測定値には有意差
(Circulation2006:113:2335-2362.)では FMD は動脈硬化
を認めなかった。【考察】今回の検討では、FMD による評
症の初期段階である血管内皮機能低下を反映すると言われ
価と、PWV、PS、ABI による動脈硬化症評価との明らかな
ている。今回われわれは、当院において FMD を測定した患
関連性を得られなかった。FMD 値は、年齢、性別、血糖値、
者を対象に、動脈硬化症検査項目の PWV、IMT の PS(プラ
血圧、喫煙、ストレス等様々な変動要因の影響を受けると考
ークスコア)、ABI との関連性について検討した。
【方法】2011
えられており、FMD 検査による血管機能の評価については、
年 4 月から 2012 年 4 月に当院で FMD 検査を受けた患者 71
さらなる検討が必要と考えられた。【結論】動脈硬化症進展
名(平均年齢 59.2 歳、男性 42 名、女性 29 名)を対象とした。
の評価における FMD 検査の有用性について、動脈硬化症患
FMD 値:5%<、PWV 値:1400>、PS:5>、ABI 値:0.9
者をコホートとした広範な検討が必要と考えられた。
<を健常値境界値として正規化換算値を算出し統計学的検
討(ANOVA)を行った。使用機器はそれぞれ FMD;UNEX
EF38G(ユネクス)、ABI/PWV;form(オムロンコーリン)、
PS;PHILIPS iE33(フィリップス)Aplio XV(TOSHIBA)
を用いた。【結果】正規化換算値による分散分析では FMD
と両側 ABI および左 PWV で有意差を認めた(図)。PS は
健常値域と比較して、中等度の動脈硬化を示す 5~10 では
FMD で有意差は認めなかったが、高度動脈硬化を示す 10
以上の症例では有意に FMD の低値を認めた。FMD と健常
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