会合報告 ITU-R SG5 WP5D会合(第22回)の結果について ―IMTに関する検討― もりした 前 総務省 総合通信基盤局 電波部 移動通信課 新世代移動通信システム推進室長 1.はじめに 国際電気通信連合無線通信部門(ITU-R)第5研究委員会 しん 森下 信 3.主要議題及び主な結果 3.1 WG General Aspects関連事項 (SG5:Study Group 5)の傘下の作業部会(WP:Working ・2020年以降の地上系IMTのビジョンに関する新勧告 Party)のうち、IMT(International Mobile Telecommu- M.[IMT.VISION]に関して、Key Capabilitiesにつ nications)の研究を所掌するWP5Dの第22回会合が、2015年 いて合意し勧告案の作成を終了、SG5に上程すること 6月10日から18日にかけてアメリカ(サンディエゴ)におい となった。 て開催された。 本稿ではその結果を報告する。 ・第5世代(5G)に相当するIMTの呼称の候補について、 “IMT-2020”で合意し、IMTの名称に関する決議56の 改訂案の作成を終了し、SG5に上程することとなった。 2.WP5D第22回会合の結果概要 ・2020年以降のIMT(5Gとそれ以降)の無線インタフェー ス勧告等の将来開発プロセスに関する原則について 今回の会合には、各国電気通信主管庁、標準化機関、 規定した新決議案[IMT.PRINCIPLES]の作成を終 電気通信事業者、ベンダーなど、27か国及び28の機関か 了し、SG5に上程することとなった。 ら合計164名の参加があり、日本代表団としては16名が参 ・2020年から2030年にかけてのIMTトラフィック推定に関 加した。 する新レポート案M.[IMT.BEYOND2020.TRAFFIC] 本会合では、入力文書は114件(日本からの寄与文書9 の作成を終了し、SG5会合に上程することとなった。 件を含む)を審議し、81件の出力文書を作成した。 ・特に利用者が端末でいつでもどこでもコンテンツを利 前回のWP5D第21回会合(2015年1月27日~ 2月4日、 ニュー 用するニーズの高まりにかんがみ、IMTシステムで取 ジーランド・オークランド)では、IMTの将来ビジョンに り扱われる映像・音声サービスを配信する性能に関す 関する勧告M.[IMT.VISION] 、IMT関連に関するITU-R る新レポート案M.[IMT.AV]の作成を終了し、SG5 決議等の見直し、IMTの周波数アレンジメントに関する勧 会合に上程することとなった。 告M.1036-4改訂、IMT-2000詳細無線インタフェース勧告 ・IMTの開発における無線通信部門の役割に関する決 M.1457及びIMT-Advanced詳細無線インタフェース勧告 議50の改訂案の作成を終了し、SG5に上程することと M.2012の改訂等の検討が行われた。 なった。 今回の会合においては、前回会合の結果を踏まえた検 ・Question77-7/5(IMT開発及び実用化における開発途 討が引き続き行われ、新勧告・報告等の展開並びに改訂 上国の要求の検討)の改訂案及びQuestion229-3/5(地 に向けた文書の作成や更新が行われた。 上系IMTの更なる開発)の改訂案の作成を終了し、 その結果、新勧告案M.[IMT.VISION]等、2件の新勧 SG5に上程することとなった。 告案、2件の勧告改訂案、5件の新報告案、1件の新決議案 及び2件の決議改訂案等の作成を終了した。 3.2 WG Technology Aspects関連事項 以下に今会合での主要審議結果について概要をWorking ・IMT-Advanced地上コンポーネントの特定技術を最新 Group(WG)ごとに紹介する。 のものに更新するため、LTE-Advanced無線インタ なお、WP5Dの審議体制は次ページの表のとおりである。 フェー ス 技 術 の 拡 張 機 能 の 追 記 等 を 行う、IMTAdvanced地上無線インタフェースの詳細仕様に関す る勧告(M.2012)の改訂案の作成を終了し、SG5に上 程した。 ITUジャーナル Vol. 46 No. 1(2016, 1) 55 会合報告 ■表.WP5Dの審議体制 Group WP5D 担当項目 議 長 ITU-R WP5D全体 S. BLUST(AT&T) 副議長:K. J. WEE(韓国) 、 H. OHLSEN(エリクソン) K. J. WEE(韓国) WG GEN(GENERAL ASPECTS) IMT関連の全般的事項 SWG-IMT HANDBOOK ・IMTハンドブックM.[IMT.HANDBOOK]の作成及びITU-D SG2との連携 B.Colman A. SOGLO(クアルコム) SWG-PPDR ・IMTのPPDR応用の研究 B. BHATIA(モトローラ・ソリューションズ) SWG-TRAFFIC ・2020年以降のトラヒック推定、市場要求、等に関する研究 C. EVCI(フランス) SWG-VISION ・2020年以降の地上系IMTのビジョンに関する研究 J. SONG(サムソン) DG Vision.Trends ・新勧告案M.[IMT.VISION]に向けた作業文書の作成(主要能力記述部分 J. STANCAVAGE(アメリカ) を除く) DG Vision.Capabilities ・新勧告案M.[IMT.VISION]に向けた作業文書の主要能力記述部分の作成 R. COOPER(イギリス) SWG-RA-15 PREPARATION ・2015年ITU無線通信総会に向けたITU-R 決議等の見直し J. LEWIS(サムソン) SWG IMT-AV ・IMTによる音声映像伝送に関する技術及び運用面の特性の研究 A. LEINO(NSN) WG SPEC スペクトラム関連 A. JAMIESON(ニュージーランド) (SPECTRUM ASPECTS) SWG-FREQUENCY ・IMT用周波数チャネル配置 Y. ZHU(中国) ARRANGEMENTS 代理議長:A. SANDERS(アメリカ) SWG-SHARING STUDIES ・周波数共用研究 M. KRAEMER(ドイツ) DG IMT.SMALL.CELL ・3.4-3.6GHz帯におけるIMTとFSSの共用検討、新報告案作業文書作成 J. JIAO(華為) DG TDD.COEXISTANCE ・2.3-2.4GHz帯における隣接するTDD周波数ブロック間の共存検討、新 A. KADYAN(インド) 報告案作業文書作成 DG IMT.MODEL ・共用検討に用いるIMTシステムモデルの新勧告案作業文書作成 R. AREFI(インテル) WG TECH 無線伝送技術関連 H. WANG(華為) ・IMT-2000無線インタフェース技術勧告(M.1457)及びIMT-Advanced 石川 禎典(日本) (TECHNOLOGY ASPECTS) SWG-IMT SPECIFICATIONS 無線インタフェース技術勧告(M.2012)の維持改定管理 SWG-RADIO ASPECTS ・無線関連技術(将来IMT技術動向、IMTに特化したCRS、基地局アンテ M. GRANT(アメリカ) ナシステム、 他)の研究、 グローバルサーキュレーション勧告(M.1579) の維持改定管理 DG Above 6 GHz ・新報告案M.[IMT.Above 6GHz]に向けた作業文書の作成 DG IMT ARCH ・新報告案M.[IMT.ARCH]に向けた作業文書の作成 A. SANDERS(アメリカ) SWG-OUT OF BAND ・不要輻射に関する勧告M.1580及びM.1581の改定管理、IMT-Advanced U. LÖWENSTEIN(ドイツ) EMISSIONS(OOBE) AH WORKPLAN の不要輻射に関する研究 R. RUISMAKI(ノキア) 代理議長:本多 美雄(日本) WP5D全体の作業計画等調整 H. OHLSEN(エリクソン) ・地上系IMT-2000詳細無線インタフェースに関する勧 ・6GHzから100GHz周波数帯におけるIMT技術フィージ 告(M.1457)の第13版に向けた改訂に関し、改訂ス ビリティに関する研究及び情報提供を目的とした新レ ケジュールを記載しているIMT-2000/6文書に来年の ポート案M.[IMT.Above 6GHz]の作成を終了し、 会合スケジュールを追加して改訂し、外部団体にリエ SG5に上程した。 ゾン文書を発出した。 56 ITUジャーナル Vol. 46 No. 1(2016, 1) ・IMTネットワークのアーキテクチャとトポロジーに関 ・3.4−3.6GHz帯におけるIMT小セルシステムとFSSと する新レポート草案M. [IMT.ARCH]の作成を終了し、 の共用検討に関する新レポートに向けた作業文書を SG5に上程した。 更新しキャリーフォワードした。 ・第1地域での694MHz以下における既存サービス保護 ・第1地域の694−790MHz帯周波数アレンジメントに関 に必要な694−790MHz帯のIMT移動局からの帯域外 する新レポートM.[IMT.ARRANGEMENTS]に関し 放射の制限に関する新勧告案M.[BSMS700] について、 ては、今会合では議論が行われなかった。 JTGで作成した文書で最終化し、一部反対があった ことを報告することを条件に新勧告案の作成を終了、 3.4 AH Workplan関連事項 SG5に上程した。 ・IMT-2020の開発に関して、作成文書の作業分担につ ・前回会合において、外部機関等に発出された、 “5G” に関する検討状況及び、2015年~ 2016年における検 いて審議が行われ、次回会合にキャリーフォワードさ れた。また、関連WGにおいて作業計画が策定された。 討計画についての情報提供を求めるリエゾン文書へ の各団体からの回答リエゾン文書についてまとめら 4.今後の予定 れ、次回会合にキャリーフォワードされた。 WP5D第23回会合は、中国(北京)で2016年2月23日か 3.3 WG Spectrum Aspects関連事項 ら3月2日に開催されることが予定されている。 ・2300−2400MHz帯におけるTDD周波数ブロック間の 共存に関する新レポート案M. [TDD.COEXISTENCE] 5.おわりに の作成を終了し、SG5に上程した。 ・無線通信規則(Radio Regulations)におけるIMTに 本会合にご出席いただき、長期間・長時間にわたる議論 特定された周波数帯のIMT地上コンポーネント導入 に参加いただいた日本代表団各位、会合前の寄書作成や のための周波数配置についての勧告M.1036の改訂案 審議に貢献していただいた関係各位には、この場を借りて の作成を終了し、SG5に上程した。なお、2GHz帯周 感謝申し上げる。 波数アレンジメントに関して、中国及びロシアから、 また、本稿執筆にあたっては、関係の皆様に、多大なる 同帯域でのIMTの地上及び衛星システム間の共用問 ご協力をいただき、改めて御礼申し上げたい。 題解決まで本勧告の採択には反対との意見が表明さ RA-15の結果を受けて、2016年2月に開催されるWP5D れた。また、第一地域の700MHz帯アレンジメントに 会合は、5G実現に向け、国際的協調を推進していく上で ついても、698−703MHzのアレンジメントについて、 最も重要な会合の一つであることから、今後の審議に向け ロシアから694MHz以下の放送業務保護の観点で反対 ての更なるご協力をお願い申し上げたい。 との意見が表明された。これらは、SG5会合で議論す ることとなった。 ■写真.SG5 WP5D第22回会合 会場の模様 ITUジャーナル Vol. 46 No. 1(2016, 1) 57
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