548 新潟医学会雑誌 第119巻 第9号 平成17年(2005)9月 と考えられた.性リンパ管腫と急性虫垂炎であった. 7 慢性的な腸炎症状に対してProbioticsが著 効を示した短腸症候群の1例 金田聡・広田雅行・内藤万砂文 長岡赤十字病院小児外科 症例は18歳男性.生後4日に腸回転異常症. 中腸軸捻転にて手術施行,小腸大量切除となり, 残存小腸4cm(Bauhin弁は残存)となった.以 降,在宅静脈栄養管理となる. 平成16年春頃より,慢性的な腹痛,下痢,腹部 膨満,発熱が出現した.禁食にて腸管の安静を 保ち,抗生剤,整腸剤投与などを行うも改善は認 めなかった.入院後,約1ケ月後よりProbiotics (BifidobacteriumbreveYakult3g/day)の投与を 開始したところ,約1∼2週間で慢性腸炎の症状 は改善し,食事をおいしく摂取できるようになっ た.便検査では,便中大腸菌が減少し,ビフィズ ス菌が増えていた.Probiotics投与開始後,腹部 症状の訴えはほとんどない. 8 急性虫垂炎を合併した腸間膜嚢胞の1例 近藤公男・大澤義弘 太田西ノ内病院小児外科 〔症例〕6才,女児 【主訴】腹痛,嘔吐 【現病歴】入院3ケ月前頃よりしばしば腹痛,嘔 吐の訴えあり.今回も腹痛,嘔吐で当院小児科入 院となった.臍右方から右下腹部にかけて庄痛あ るも筋性防御はなく,急性胃腸炎等を疑われ,保 存的療法を施行された.入院3日目になっても腹 痛が軽快しないため,腹部エコー,CTを施行.上 腹部から回盲部付近へ連続する10×10×5cm 大の嚢胞像を認めた.卵巣嚢腫等を疑い,同日開 腹手術を施行した.回盲部付近の腸間膜から上腹 部まで連続する嚢胞を認め,全摘した.また虫垂 は盲腸の後方に癒着しており,腫大はないが周囲 に膿苔の付着を認め,虫垂炎と診断,切除した. 術後経過は良好であった.組織学的所見は,嚢胞 9 特発性十二指腸穿孔と考えられた新生児腹膜 炎の1手術例 内山昌則・大滝雅博・長谷川正樹* 武藤一朗*・青野高志*・岡田貴幸* 長谷川潤*・角南英二*・加納恒久* 須田昌司**・飯澤正史** 高地貴行**・加藤智治** 県立中央病院小児外科 同外科* 同小児科** 帝王切開で生まれた在胎33週2日1942gの低 出生体重児,出生後から呼吸障害があり気管挿管 人工呼吸管理しPI中心静脈カテーテル挿入し栄 養管理していた.心維音が見られPDAと診断し 生後4日目よりインドメサシンを投与した.生後 5日夕頃より胃管より茶色旧血性の排液が一時見 られた.排便は良好であった.生後8日,軽度腹 満が有り腹部レントゲンを取った所,腹腔内遊離 ガス像があり,胃破裂,壊死性腸炎を疑い緊急開 腹手術を施行した.開腹すると大綱内にガスがあ り黄色の腹水が少量見られた.トライツ執帯から 肛門側の腸管は小腸,大腸共に穿孔や壊死部分は 見られなかった.また,胃の大湾側も異常なかっ た.十二指腸から胃の小脅内も浮腫状になってお り,十二指腸より後腹膜の腎かけて浮腫が著明で あった.十二指腸を受動し後腹膜を十分解放し検 索したが明らかな穿孔はみいだせなかった.後腹 膜からウインスロー孔,小網内,横隔膜下,ダグ ラスにドレiン入れ手術を終えた.術後抗潰瘍剤 の投与を行ない,3病日・気管挿管チューブを抜去, 8病日よりミルク投与開始し増量した.13病日頃 より無呼吸発件あるも,腹部異常所見なく15病 日ドレiンを抜去した.同日夜より呼l吸性アシド ーシス炭酸ガス貯留あり再挿管呼吸管理となっ た.喋下性肺炎,カテーテル感染を考え抗生剤に 加え抗潰瘍剤投与.その後経菅栄養も行いながら 呼吸管理し,体重増加がぁられ25病日抜管した. 術後6週目,体重2782gで退院となった. 学 会 記 事 549 が,未熟児での呼吸管理のストレス,血流障害, 【まとめ】急性下肢動脈閉塞を契機に遺残坐骨 動脈痛が発見された稀な症例を経験した.血栓閉 消化管内圧,薬斉はど多国子が関与した十二指腸 酒場穿孔と考えられ,新生児同疾患の特徴や治療 について検討した. 塞の原因は明確ではないが,遺残坐骨動脈の流速 は遅いとの指摘もあり,更に癌形成しているため, 今回の血栓形成の原因に遇残坐骨動脈痛が関与し 所見より新生児特発性十二指腸穿孔と思われる ていた可能性は否定できない.根治的治療法を考 えさせる1例であった. 10 食道癌放射線化学療法後に発生した食道気管 支瘻に対するダブルステントの1例 保坂 靖子・青木正・白石修一 橋本毅久・土田正則・林純一 中川悟* 新潟大学大学院呼吸循環外科 同消化器・一般外科* 症例は51歳男性.食道癌に対する化学放射線 治療後に食道気管支ろうを発症した.経菅栄養に より管理されていたが,誤囁性肺炎を繰り返すた めステント治療目的に当科に転院した.気管支か らのステントだけでは,食道からの逆流を防げな いと判断し,食道および気管支に一期的にステン トを挿入した.挿入後,咳嚇や呼吸困難と言った 症状は改善し,経口摂取も可能となった.ステン ト挿入後,約2ケ月で自宅にて喀血死した. 11 急性下肢動脈閉塞症を呈した遺残坐骨動脈癌 の1例 12 比較的まれな一時ペーシングワイヤーによる 右室穿孔の1治験例 竹久保賢・上原彰史・中山健司 浅見冬樹・島田晃治・大関一 県立新発田病院心臓血管外科・ 呼吸器外科 症例は91歳,女性.完全房室ブロックのため一 時ペーシングを施行.翌日にべーシング不良とな り位置変更を行ったところ心タンボナーデ出現 し,ショック状態となり当院搬入.同日,緊急手 術施行.ペーシングワイヤーによる右室穿孔を認 め,縫合止血を行った.一時ペーシングワイヤー による右室穿孔は比較的稀であり,報告する. 13 頸動脈エコーのMax−IMTによる術前リス ク診断 榛沢 和彦・名村 理・曽川 正和 小川勇一・葛仁猛・桑原淳 青木賢治・杉本努・山本和男 吉井新平・春谷重孝 立川総合病院心臓血管外科 坐骨動脈は胎児期下肢主要血管であろが,稀に 遇残し動脈癌や血栓形成の原因となる.今回我々 は急性下肢動脈閉塞症を呈した遺残坐骨動脈癌の 1例を報告する. 症例は72歳の女性,下肢痛 平成17年1月25 日左下肢蒼白に気づき,1月26日には左下肢痛出 現,1月27日当科受診.急性下肢動脈閉塞症疑い で緊急入院.同日緊急MRA施行し,当初大腿動 脈癌による下肢動脈の急性閉塞にて血栓除去,動 注力テ留置及び下肢筋膜減張切開術施行した. 林 純一 新潟大学第二外科 医療に関して社会的関心が高まっているが,術 後合併症と医療ミスとを混同されている場合も少 なくない.万が一に合併症が起きたとき,低い確 率だとしても術前にその可能性を具体的に説明し ておいた場合としなかった場合とでは患者本人や 家族の受け入れは全く異なる.頸動脈中内膜複合 体厚(IMT)の平均値はこれまでも動脈硬化の指 標として使用され,欧米では冠動脈疾患と関連す ることが報告されていたが日本での報告は少なか った.しかし日本でDM患者におけるプラーク病 変を含んだIMTの最大厚(Max−IMT)を測定 して比較した検討によりIMTよりもMax−IMT
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