自由論題 アジアの経済・金融 報告1 奥田英信(一橋大学) カンボジアにおけるマイクロ金融機関の経営特性: 経営効率性の計測と主成分分析 Efficiency Analysis of Microfinance Institutions in Cambodia 途上国の経済発展において金融包括(financial inclusion)の重要性が近年よく指摘され るが、マイクロ金融機関はその点で重要な役割を負っている。またマイクロ金融機関の持 続的成長のためには、経営効率の改善と技術進歩が不可欠であると言われる。しかしなが ら、マイクロ金融機関は、本来の経営特性として貧困層へのアクセスを追求することが求 められるため、利潤拡大を第一義的な目的とできる他の金融機関と異なって、その経営効 率性の計測をどのように行うかは難しい。 本稿は、ラテンアメリカのマイクロ金融機関を対象とした Begona et al. (2007) “Microfinance institutions and efficiency” Omega, 35(2), 131-142 の分析手法を利用し、 マイクロ金融機関の本来の役割としての貧困層へのアクセスを踏まえつつ、カンボジアの マイクロ金融機関の経営効率と経営特性を明らかにした。分析は2段階で行われ、第1段 階では、カンボジア国立銀行の公表年次データを用いて、主要マイクロ金融機関の経営効 率性指標を包絡分析法(DEA)によって計測する。続いて第2段階では、第1段階で計測 した効率性指標を使った主成分分析を行い、各マイクロ金融機関の経営特性を解析した。 分析結果によれば、カンボジアのマイクロ金融機関は多様性に富んでいるが、 (1)大規 模なマイクロ金融機関は総合効率性がより高く、 (2)およそ3分の1のマイクロ金融機関 が貧困層へのアクセス指向的であり、(3)総合効率性が高いかつ貧困層へのアクセス指向 的なマイクロ金融機関は全体の5分の1程度であった。これらの結果は、マイクロ金融機 関の大規模化や貧困層へのアクセス強化が、カンボジアの金融包摂を更に進める上での政 策課題であることを示唆している。おくだ
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