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自由論題 環境と政治
報告2
焦 従勉(京都産業大学法学部)
持続可能な地域実現と日中環境協力
Local Sustainability and Japan-China Environmental Cooperation
持続可能な社会、あるいは持続可能な開発(sustainable development)とはしばしば、
経済的繁栄と自然環境保護の両立と理解されている。しかし、一般的にこの二つの項目に
加え、社会的公正を含む、3つと考えられている。経済の economy、生態系の ecology、社
会的公正の equity の3つの「e」をとり、英語では3つの「e」と称される。
経済成長を続ける中国における持続可能な社会の実現を考える際、大気汚染、水質汚染、
土壌汚染、あるいは食の安全性といった環境問題および社会的公正が重要なキーワードで
ある。一方、かつて公害に苦しんだ日本の地域(富山市、水俣市、北九州市、四日市など)
は、中国が現在直面している前述の環境問題を克服し、持続可能な地域づくりに向けて、
住民・行政・企業がパートナーシップを結び、綺麗な自然環境を取り戻し、日本の環境先
進地域に変貌している。公害問題を克服したこれらの地域の持続可能性を実現するために、
経済成長と社会的公正が重要なキーワードになる。
東アジアの思想では、
「天人合一」という考え方があり、人間と環境の調和を重視する。
本報告は、かつての公害地域である北九州市が環境先進モデル都市に変貌したことに基づ
き、中国大連市に環境協力した事例を取り上げ、一般的な環境先進国・日本による技術協
力という枠組みを超えた、日本と中国両方の持続可能な地域実現について、その限界と可
能性を分析する。