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自由論題 環境と政治
報告1
べ ユン(慶應義塾大学・非常勤講師)
韓国の低炭素グリーン成長戦略における省庁間の「調整」
――グリーン成長委員会を事例として――
"Coordination" of the Interagency in Korea's Low-Carbon Green Growth Strategy:
Case Study of Committee on Green Growth
本研究は、韓国の「低炭素グリーン成長」というビジョンにおいて、グリーン成長委員
会を事例とし、省庁間の「調整」について考察する。各政権のビジョンは政策基調(ドク
トリン)として宣言される。各省庁は政策基調の樹立のために政策形成をする一方、関連
省庁との合意形成のために諮問機関を活用する。他方、各省庁は政策形成と合意形成の過
程において、政権交代とともに諮問機関と省庁の「再編」をも伴う。
したがって本研究は、政権交代、諮問機関と省庁の「再編」において、各省庁が如何に
政策を形成し、関係省庁と合意形成に至ったのかその文脈とメカニズムについて述べる。
本研究の目的は、韓国の低炭素グリーン成長における省庁間の「調整」を明らかにするこ
とである。各省庁は各政権のビジョンと各諮問機関の「齟齬」との間、如何に「調整」し、
グリーン成長委員会において合意形成したのか。その手法と範囲を考察する。
本研究ではグリーン成長の概念が李明博政権の解釈による政策の基調だという視点に躊
躇する。持続可能な発展委員会の法的根拠である持続可能な発展基本法が、李明博政権に
制定されたものの、持続可能な発展委員会は金大中政権に設置し、ノ・ムヒョン政権と李
明博政権でも存続した後、改編されたのである。他方、各政権は政権の運営に当り、省庁
をも再編するのである。
本研究はグリーン成長委員会が政策課題を「創発」し、アクター間において、「共鳴」さ
れる「調整」の場となりつつあると仮説を設ける。各政権によって宣言されるビジョンは、
各省庁の政策形成と省庁間の合意形成において、政権交代とともに諮問機関と省庁の「再
編」をも伴う。この過程において、政権と各省庁、諮問機関は相互作用する中、政策の実
行と評価を行うからである。こうした「調整」のメカニズムは、再任が禁止されている一
方、強力な大統領制において、政権の正当性と政策の一貫性に関わると思われる。