15 年度「比較経済史」第1回講義 Resume ー講義の概要とスケジュール 本年度講義テーマ: ‘グローバリゼーション’と「資本主義」の行方 2015/04/11 (はじめに) 現在先進諸国の多くは市場経済に立脚した‘資本主義という経済システム’を採用している。政治的に は‘社会主義’を標榜している、中華人民共和国もベトナム社会主義共和国も、経済的には事実上‘資本 主義’を採用している。 市場経済の源流はある意味で歴史と共に古いともいえるが、それが発展し始めるとやがては‘資本主義 という経済システム'を生み出す。その初期においては民族主義(ナショナリズム)を背景とした「国民国 家」の枠内で、「国民経済」の形成と平行して形成されて行った。無論こうした見解には異論もあるが、 兎も角、土地・労働・資本といった生産要素(あるいは人・物・金という経済主体)は、基本的には「国 民経済」の枠内で循環しながら‘近代資本主義'という経済システムは成立して行ったのである。*(以下 講義で‘資本主義’という用語を使用する場合この‘近代資本主義’を指す) か? 「資本主義」という経済システムは先ず、西ヨーロッパ、特にイギリスを中心に(凡そ 15 ~ 6 世紀頃) 成立し、それはやがてヨーロッパ大陸諸国、新大陸のアメリカ合衆国、極東アジアの日本などに発展して 行った。他方でその波(Catch Up)に乗り遅れた、アジア、アフリカ、ラテン・アメリカ諸国・地域では、 先進資本主義諸国が発展する反面で、「低開発(Under Development)」が構造的に作り出され、発展の道を 閉ざされて行った。 世界的な規模で資本主義が展開し始めるのは、19 世紀以降のことである。中でも当初イギリスの植民 地として始まったアメリカ合衆国における資本主義の発展には目を見張るものがある。技術的には 19 世 紀半ばに、生産力面においては 19 世紀末にイギリスを凌駕し、第1次世界大戦後は世界資本主義の中軸 国となり、現在に至っている。 1980 年代末から 1990 年代初頭にかけて、それまでアメリカを中核とする資本主義陣営に対抗していた ソ連・東欧などの社会主義諸国が崩壊し、政治的には(自由)民主主義、経済的には資本主義を採用した。 ここに至って 1970 年代から進行し始めていた経済のグローバル化は一気に加速され、世界はグローバリ ゼーションの時代を迎える。 グローバリゼーションとはある意味世界の経済が「アメリカ型資本主義」に包摂されて行く過程である ともいえよう(T.フリードマンの『フラット化する世界』日本経済評論社が典型)。 そこで本年度の講義は“純粋資本主義”ともいわれる「アメリカ型資本主義」を中心に講義することに した。 その理由は ①市民社会・民主主義を基盤とし、市場経済を足場にいわば自生的に成立した唯一の資本主義である。か かる意味で、資本主義の純粋型とも「アメリカ型」の道ともいわれる。 ②現代の資本主義は古典派経済学やマルクス経済学が想定したような、 「生産力」 (だけ)ではなく「消費」 の動向が経済の動向を左右するようになっている。消費者資本主義とも現代資本主義とも呼ばれるが、そ の始まりはアメリカ資本主義である。 ③ 1929 年のアメリカ「大恐慌」を発端とする、1930 年代の世界的大不況は、文字通り資本主義の危機で あった。この時アメリカに始まった「ニューディール政策」(国家が市場経済に介入する政策→管理型資 本主義)は第2次世界大戦後の資本主義諸国のモデルとなり現在に至っている。 ④マルクス経済学では資本主義は内包する自己矛盾の故崩壊し社会主義(共産主義)へ向かうと想定され ている。ところが崩壊したのは資本主義ではなく社会主義の方であった。それれはアメリカの“フォーデ ィズム”や「福祉国家」に見られるように、資本主義の持つ自己矛盾を企業や国家が体制の内に取り込ん で行ったから他ならない。フランスに始まる「レギュラシオン学派」の指摘している所である。 ⑤現代の世界経済は<グローバリゼーション(Globalization)>の時代である。「近代資本主義」というシス テムが「国民経済」の枠を越え、生産要素あるいは経済主体は世界的規模で入り乱れ、「国民国家」の面 影はすっかり薄くなって来る。その先陣を切り・今日その先頭を走っているのは「アメリカ型資本主義」 である。 等々.... 《資本主義論に関して参考にした文献》 水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書)、岩井克人『21 世紀の資本主義』(ちくま書房)、 山田鋭夫『さまざまな資本主義』(藤原書店)、ピーター・ドラッガー『ポスト資本主義社会』(ダイヤモ ンド社)、ロバート・ライシュ『暴走する資本主義』(東洋経済新報社)他 1.講義テーマ、日程 01-02[04/11] (01)講義の狙いと講義予定 (02)イタリア・ハンザ同盟・スペイン・ポルトガル-地中海貿易&北海・バルト海貿易と新大陸貿易 03-04[04/18] (03)オランダ- 17 世紀の覇権(ヘゲモン)と衰退 (04)イギリスー後進国イギリスの台頭 05-06[04/26] (05)イギリス-イギリスの産業革命 (06)ヨーロッパ諸国-大陸諸国の産業革命 -1- 07-08[05/02]→宗教意識と資本主義-映画鑑賞⇒予定[休講の場合もある] (07)『キャピタリズム マネーは踊る (CAPITALISM: A LOVE STORY)』 (08) 資本主義の精神-ウエーバーとゾンバルト→「資本主義」とは何か? 09-10[05/09]→イギリス産業革命を準備した「大西洋システム」とイギリスの黄金時代 (09)イギリス:大西洋システムとイギリス産業革命 (10)イギリス:19 世紀の黄金時代(パックスブルタニカの時代) 11-12[05/16]→アメリカ (11)アメリカ資本主義の諸特性-自然と歴史との観点から (12)アメリカ植民地の成立と独立革命-アメリカの建国 13-14[05/23]→アメリカ (13)アメリカの産業革命 (14)アメリカ「国民経済」の形成と「地域」の対立 15-16[05/30]→アメリカ (15)南北戦争とアメリカ資本主義 (16)南北戦争後のアメリカの再編-「北部」・ 「南部」・ 「西部」 17-18[06/06]→アメリカ・ヨーロッパ (17)1873 年恐慌と資本主義の変質-自由競争から独占へ (18)1920 年代アメリカの黄金時代と「現代資本主義」の登場 19-20[06/13]→アメリカ・ヨーロッパ (19) ビデオ鑑賞『映像の世紀③ 1920 年代のアメリカ』(NHK スペシャルより)[時間が取れれば] (20)1920 年代の世界経済-アメリカの繁栄と不安定 21-22[06/20]→アメリカ・ヨーロッパ (21)1930 年代「大不況」と各国の対応-アメリカ・ニューディル政策 (22)1930 年代「大不況」と各国の対応-ドイツ、フランス、ソ連 23-24[06/27]→アメリカ (23)1950 年代& 1960 年代-アメリカ資本主義の黄金時代 (24)1970 年代-パックスアメリカーナの崩壊とグローバリゼーションの始まり 25-26[07/04]→日本 (25)戦前の日本における資本主義の成立と発展(1) (26)戦前の日本における資本主義の成立と発展(2) 27-28[07/11]→日本&世界 (27)戦後の高度経済成長と「失われた 10 年」 (28)グローバル資本主義の時代 29-30[07/18]→世界&総括 (29)オリバー・ストーン監督『Wall Street』2010 年版(案)[時間が取れれば鑑賞] (30)総括:資本主義は何処へ行く *[講義回数・講義内容に若干変動があると思います] 2.評価方法-レポート1回+小テスト1回+出席回数を総合的評価する。 ①小テストについて 6 月 13 日(土)2 時限目に 1 時間程度実施する予定→エッセーに変更する場合もある。 ②レポートについて 7月 11 日(土)の授業時に教室で受理する。テーマ等は小テスト終了後指示する。 ・レポート未提出者及び小テスト未受験者は「評価不能」として‘E評価’とする。 ③出席について ・1/3 以上欠席した人は「評価不能」として‘E評価’とする。 3.参考書等の推薦(オーソドックスな経済史の教科書) 講義案作成に最も依拠したのは I. ウォーラーステイン『近代世界システム I ~Ⅳ』(名古屋大学出版会)で す。講義の構成は奥西孝至他『西洋経済史』(有斐閣アルマ)石坂昭雄他『新版西洋経済史』(有斐閣双書)、 秋本英一『アメリカ経済の歴史』(東京大学出版会)、三和良一『概説日本経済史: 近現代』(東大学出版 会)、R.ギルピン『グローバル資本主義』(東洋経済新報社)等に寄りました。他は講義時に随時紹介しま す。 【HP 開設のお知らせ】 4 月 1 日から 2015 年度「比較経済史」の HP を立ち上げました。 URL は:< http://www1.meijigakuin.ac.jp/~miyamoto/>です [スラッシュ(/)の後は‘チルダ’(~)] *講義への質問等 メールでお答え致します。 < [email protected] >へ連絡下さい。 Blog(http://blogs.yahoo.co.jp/mgumiyamoto2) 「比較経済史夜話」でも質問を受け付け、回答は公開します。 -2-
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