知の知の知の知 - 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会

い~な
あまみ
中 央
しらさぎ
さくら
大阪+知的障害+地域+おもろい=創造
知の知の知の知
社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所情報誌通算 1093 号 2012.12.23 発行
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つながる:ソーシャルメディアと記者
障害者アート、Tシャツに=石戸諭
毎日新聞 2012 年 12 月 22 日
ソーシャルメディアを結節点に新しい価値が生まれる。その実例を先月、大阪市内で見
てきた。同市内の障害者施設「コーナス」の西岡弘治さんらの作品をベースに、東京のフ
ァッションブランド「NUDE:MM」が作ったシャツやTシャツの展示会だ。大阪の小
さな施設で描かれた障害者アートがモードとつながり、各国のバイヤーも相手に販売へ打
ってでる。異色の組み合わせ、きっかけを作ったのはフェイスブックだ。
大阪市の広告業、笠谷圭見さん(43歳、http://www.pr−y.org/)は長男が軽度の
自閉症と診断されたことをきっかけに、福祉や障害者アートの世界を知る。コーナスを拠
点に写真集を作ったり、彼らの作品をフェイスブック上にアップしたりしていた。そこに
「NUDE:MM」のデザイナー、丸山昌彦さんから「Tシャツにしたい」とコメントが
付いたことが始まりだった。この時、丸山さんは作品の背景も、誰が描いたかも知らない。
笠谷さんは東京の事務所に行き、丸山さんと直接交渉した。2人が目標にしたのは「同
情を求めず、安直なデザインではなく、何も知らない人でも思わず手に取りたくなるよう
なものを作る」こと。障害者アートが多くの人の目に触れ、知ってもらう機会にすること
を重視した。コーナスの関係者も取り組みを後押しした。大阪での受注会だけで60人以
上からオーダーがあり、パリでも展示会を開いた。東京の有名セレクトショップからの注
文も届いている。まずは成功だろう。
福祉や障害者を巡る世界では、
「こんな困難な人が描いたアートが素晴らしい」といった、
美談に話題が集中してしまいがちだ。これだけでは業界や関係者の外にまで価値は広がり
にくい。今回の展示会で重要なのは、2人が市場で堪えうる商品を強く意識したこと、広
告やデザインといった専門分野で培った知恵を出し合って形にしていったことにある。こ
うした取り組みの積み重ねで社会はもっと豊かになる、と私は思うのだ。
【大阪社会部】
旧校舎に障害者施設開設 鷹栖共生会 福祉と交流の拠点に
北海道新聞 2012 年 12 月 21 日
「とわ北斗」に設けられたレストラン
【鷹栖】社会福祉法人鷹栖共生会(島畑光信
理事長)は20日、2002年3月に閉校した
旧北斗小(町内14線17号)を再活用した障
害者福祉施設「とわ北斗」を開設した。利用者
が古い家具の修復作業にあたる工房や、地域住
民の交流スペースなどを設置。障害者福祉と住
民交流の機能を兼ねそろえた地域拠点として、
10年ぶりに廃校舎に灯が戻った。
町が校舎と土地を同会に無償提供、同会が校舎の改修工事を進めていた。総工費は約1
億5千万円で、町が4500万円補助した。
施設では、障害のある利用者が古民具や家具のリフォームに取り組む。校舎内に専用工
房を設け、家具製作の経験があるスタッフの指導のもと、利用者約20人が作業にあたる。
修復した家具などは展示販売する。
また、じゅうたん敷きの部屋を地域住民の交流スペースとして開放。「道の駅のように気
軽に立ち寄れる空間をつくりたい」
(同会)として、誰でも利用可能なレストランと売店も
設け、施設利用者がウエーターを務めるなど、就労支援の場としても役立てる。
20日、施設内で開かれた開所祝賀会には谷寿男町長や利用者の家族、地域住民ら約1
60人が出席。島畑理事長は「福祉や地域活動の拠点として、地域の皆さんとともに歩ん
でいきたい」と話した。
(鈴木雄二)
ひと:岡松史明さん
電車の「どこでも柵」を開発した
毎日新聞 2012 年 12 月 21 日
神戸製鋼所の「どこでも柵」開発責任者・岡松史明さん
東大と共同開発してきた電車にあわせて乗降位置を自在に
変えられるホームドア「どこでも柵」の試作機を先月、一般公
開した。斬新なアイデアは注目を集め、全国の主要鉄道会社の
ほぼすべてが見学に訪れた。神戸製鋼所側の開発責任者として
「反響は予想以上。いかに駅でのホームドア設置が急がれてい
るか実感した」と語る。
視覚障害者などの転落事故が多発したことから、国もホーム
ドアの設置を推進している。しかし、鉄道会社の相互乗り入れ
が進んでいる首都圏などでは、扉の数の違うさまざまな種類の
車両が走っている。乗降位置が固定されている従来型では対応できない。
「どの車両にも対応できるホームドアを」
。無人運転の新交通システム開発で実績を持つ
同社は08年、同じ問題意識を持つ東大と勉強を始め、アイデアを出し合った。アコーデ
ィオンのように伸縮する蛇腹型、下からせり上がる昇降型など多様な案を検討した。その
結果、ドアを収納している戸袋を車両タイプに合わせて左右に動かす仕組みにたどりつい
た。来年には2次試作機を駅に持ち込み実地試験する。
電気技術者になるのが学生時代の夢だった。ホームドアの開発に携わり、
「前例のない難
題に取り組み、やりがいを感じた」
。命を救う柵をより多く取り付けてもらうため「従来型
に近い水準にコストを抑えたい」と意気込む。【三島健二】
【略歴】おかまつ・ふみあき 兵庫県出身。92年神戸製鋼所に入社し、03年から新
交通システム開発に従事。現在交通システム室課長。42歳
高齢者らの孤立死防げ 「見守りセンター」創設 当別町社協 民間事業者と連携
北海道新聞 2012 年 12 月 21 日
【当別】高齢者の孤立死が社会問題化する中、町社会福祉協議会は孤立死を未然に防ぐ
「とうべつ見守り安心センター」を創設した。町内の民間事業者と連携して情報を提供し
てもらい、地域住民に異変があった場合に素早い対応を目指す。
当別町では核家族化、高齢化に伴い、一人暮らしの高齢者や高齢者の夫婦世帯が増え、
孤立死に対する不安を抱えるお年寄りも多い。こうした中、孤立死につながりかねない異
変が各世帯に起きた際にすぐに把握できる態勢をつくろうと、町社協が中心となりセンタ
ー設立を進めていた。
具体的には、高齢者や障害がある人のいる家庭を対象に、
《1》数日間除雪されていない
《2》新聞や郵便物がたまっている《3》日中も電気が付けっぱなし《4》カーテンが日
中でも数日間閉めたまま―などの異変を事業者らが発見した場合、社協に連絡を入れる仕
組み。連絡を受けた社協は職員を派遣して状況を確認し、必要な支援を行う。
すでに、町や地域包括支援センター、障がい者総合相談支援センターをはじめ、介護事
業所、ガスや水道の各事業者、新聞販売所、郵便局、配送事業者などと承諾書を交わし、
情報提供の協力態勢を築いている。
これまでは民生児童委員や福祉委員が見守り活動を行っていたが、センター設立で各事
業者の協力を得ることで活動の強化を図る。社協担当者は「関係機関と協力して、住み慣
れた地域で安心して暮らし続けられる環境を整えたい」と話している。(田島工幸)
特別支援学校の技能検定拡大
中國新聞 2012 年 12 月 22 日
広島県教委は、特別支援学校高等部の知的障害の生徒を対象にした独自の技能検定を拡
大した。従来の清掃と接客の2分野に、流通・物流▽食品加工▽ワープロ―の3分野を追加。
計5分野にした。生徒の意欲を引き出すとともに、企業の採用に役立てる狙い。流通・物
流と食品加工の検定は都道府県で初めてという。
スーパーや弁当製造など、流通・物流と食品加工関連の企業が障害者の雇用に積極的な
ことから、県教委は3分野の追加を決めた。
流通・物流では商品陳列やラベル張り、顧客対応を、食品加工では米をといだり、野菜
を切って混ぜ合わせたりする技能をみる。ワープロは文書作成について審査する。最高は
1級。
3分野とも 11 月から今月上旬にかけて県内で初めての検定があった。食品加工で 23 人、
流通・物流で 52 人、ワープロは109人が、1~10 級のいずれかを取得した。
技能検定は2011年 11 月、県教委が清掃と接客の2分野で始めた。客観的な評価を設
けることで、企業が生徒を採用する際の目安にしてもらい、就職率を上げる狙いがある。
県教委の取り組みを、広島ビルメンテナンス協会(広島市西区)の沖敏朗事務局長は「検
定を励みに職場で役立つ技能を身に付けてもらうと、採用しやすい」と評価する。
県内の特別支援学校高等部の就職率は 11 年度、24・3%で全国平均の 25・0%(速報
値)とほぼ同じ。県教委は 14 年度、31・6%に高める目標を持つ。
県立大曲養護学校:陶芸班、福祉の店に大皿納品 民宿などから注文も /秋田
毎日新聞 2012 年 12 月 21 日
大仙市大曲西根の県立大曲養護学校(西嶋崇広校長)の高等部陶芸班(10人)が、N
PO法人障がい者自立生活センター「ほっと大仙」が運営する食事・喫茶店舗「ほっぺ」
に直径25センチの特注の大皿20枚を納品した。
美麗なホワイト皿は、専門店で十分使えるものを目指した本物志向の製品第1号。受注
が決まった後、形状や色合いなど双方で検討を重ねたという。底面に特注を表す「ほっぺ」
と「曲養」のロゴが刻印されている。
障害者らが調理室や配食サービスなどで働くほっぺは、市街地の一角の同市大曲中通町
1にある。製品は今月18日に納品され、洋食ランチの盛り付けなどで使用されている。
障がい福祉サービス事業所「ほっぺ」理事・管理者(施設長)の奈良克久さん(54)
は「校長先生から提案していただき、実現した。生徒さんが一生懸命作ってくれたもので
注文が増えれば、お互い幸せになる。障害者が働いていける、安心できる町にしていけた
ら」と笑顔で話した。
このほか、陶芸班には飲食店と民宿から2件の製作注文があり、商談が進んでいるのも
1件あるという。高等部担任の小嶋聖(ひじり)教諭(35)は「今後とも陶芸の質量を
拡充していきたい」としている。
【佐藤正伸】
障害者郵便割引不正:名誉毀損損賠訴訟
地裁
村木氏の請求棄却
「地検リーク」認めず−−東京
毎日新聞 2012 年 12 月 22 日
郵便不正事件で無罪が確定した村木厚子・厚生労働省局長(56)が「捜査情報を報道
機関に『リーク』し、社会的評価が低下した」として国に330万円の賠償を求めた訴訟
で、東京地裁は21日、請求を棄却した。堀内明裁判長は「
(村木局長を逮捕・起訴した)
大阪地検職員が報道機関に情報提供した事実は認められない」と指摘した。
局長側は「供述調書の記載と報道機関の記事が似ている」などとして、地検職員が捜査
情報を漏らしたと主張したが、判決は調書作成から記事掲載まで1週間以上たっており、
「その間に調書の内容を知り得た者の存在が否定できない」と退けた。【鈴木一生】
昨年度の養護者による高齢者虐待死は 21 人- いずれも自宅など・厚労省調査
キャリアブレイン 2012 年 12 月 21 日
家族や親族、同居人ら養護者による虐待で死亡した高齢者は、昨年度だけで 21 人いるこ
とが、21 日までに厚生労働省の調査で分かった。いずれも自宅などでの事例で、介護施設
では虐待による死者は確認されなかった。また、自宅などでの養護者による高齢者の虐待
件数は、前年度よりわずかに減少したものの、相談・通報件数は 5 年連続で過去最多とな
った。
厚労省が 21 日に発表した「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する
法律に基づく対応状況等に関する調査」で明らかになった。同調査によると、家族や親族、
同居人といった養護者による自宅などでの高齢者虐待について、市町村などが相談・通報
を受け付けた件数は前年度比 1.3%増の 2 万 5636 件となり、5 年連続で過去最多を記録。
このうち、虐待と判断されたのは 1 万 6599 件(0.4%減)だった。
虐待の種類(複数回答)では、
「身体的虐待」が 64.5%で最も多く、以下は「心理的虐待」
が 37.4%、
「経済的虐待」が 25.0%、「介護等放棄」が 24.8%などの順となった。【ただ正
芳】
介護施設の高齢者虐待、1.5 倍に急増- 過去最多を 5 年連続で更新・厚労省調査
キャリアブレイン 2012 年 12 月 21 日
昨年度の介護施設における高齢者の虐待件数は、前年度の約 1.5 倍に急増し、5 年連続で
過去最多を更新したことが、21 日までに厚生労働省の調査で分かった。
厚労省の「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対
応状況等に関する調査」によると、介護施設の職員らによる高齢者虐待について、昨年度
に市町村などに相談・通報があった事例は 687 件で、前年度から 35.8%増加。このうち、
虐待と判断されたのは 57.3%増の 151 件だった。
虐待があった施設をサービス種別に見ると、特別養護老人ホームが 30.0%で最も多く、
次いで認知症高齢者グループホーム 24.0%、有料老人ホーム 12.0%、介護老人保健施設
11.3%などと続いた。虐待の種類(複数回答)では、要介護者に暴力を振るうなどの「身体
的虐待」が 74.8%で最多。以下は、要介護者に暴言を吐くなどの「心理的虐待」37.1%、
おむつを長時間にわたって交換しないなどの「介護等放棄」10.6%、
「性的虐待」4.0%など
の順となった。
虐待を行った職員の年齢は、
30 歳未満が 27.6%、
30-39 歳が 14.9%、
50-59 歳が 14.4%、
40-49 歳が 11.6%、60 歳以上が 7.2%などとなっており、若い職員が虐待に走りやすい傾
向があった。
一方、虐待を受けた高齢者の年齢は、85-89 歳が 21.0%、80-84 歳が 20.4%、75-79
歳が 14.6%、90-94 歳が 14.3%などとなった。男女別では、女性が 66.2%、男性が 33.8%
となっている。
施設での虐待が急増した背景について厚労省高齢者支援課では、高齢者虐待防止法の存
在や趣旨が次第に周知されたことで、これまでは虐待と見なされなかった行為も通報され、
虐待と判断されるようになったことがあるのではないかと分析。一方で、「今回の調査で、
すべての虐待が把握できているとは考えていない」
(担当者)として、今後も虐待の実態把
握や発生防止に注力する方針だ。
【ただ正芳】
「公園トイレ壊さないで」
大阪・泉佐野市 広報誌で呼びかけるも被害続く
産経新聞 2012 年 12 月 21 日
個室のドアが壊された長坂公園のトイレ=泉佐野市上瓦
屋(泉佐野市提供)
泉佐野市の公園のトイレで、窓ガラスが割られ
たり泥などで壁や床を汚されたりする悪質ない
たずらが相次いでいる。市は今夏から広報誌で
「破壊行為は犯罪」などと注意しているが、一向
に収まらず、泉佐野署にもパトロールの強化を要
請している。
市道路公園課によると、公園トイレを狙ったい
たずらが激しくなったのは1年ほど前から。約
8・8ヘクタールある末広公園(同市新安松)内
のトイレで、障害者用個室の便座カバーが取り外されたほか、男子用の天窓が割られてい
るのが見つかった。その後、スプレーによるとみられる落書きも発見された。
他の公園でもいたずらは続き、今秋ごろにはJR日根野駅前の日根野駅前1号公園(同
市日根野)で、泥を混ぜたトイレットペーパーが壁や床などに散乱していた。また今月に
は、長坂公園(同市上瓦屋)で、男女兼用の個室ドアと男子用の入り口ドアが壊され外さ
れる被害があった。
市は一連のいたずら行為を泉佐野署に報告し、パトロールの強化を要請。今夏からは全
戸配布の広報誌に2カ月に1回の割合でいたずら行為をやめるよう呼びかけ、12月号で
は「公園施設の破壊行為は犯罪」と強く訴えている。
市の担当者は「修理するのにも市民の貴重な税金が使われる。不届きな行為は一刻も早
くやめてほしい」と話している。
小5女子児童、給食後に死亡…アレルギー反応か
読売新聞 2012 年 12 月 21 日
東京都調布市の市立富士見台小学校で20日、5年生の女子児童(11)が給食を食べ
た後に体調を崩し、死亡していたことが警視庁調布署などへの取材でわかった。
女子児童には食物アレルギーがあり、同署は、アレルギーの原因となる食品を取ったこ
とによる急性反応「アナフィラキシーショック」で亡くなった疑いがあるとみて、死因を
調べている。
同署などによると、女子児童は給食後の20日午後1時20分頃、清掃時間中に体調不
良を訴え、救急搬送されたが、午後4時半頃亡くなったという。
女子児童はチーズや卵にアレルギーがあり、給食では、こうした材料を除いた特別食が
提供されていた。ほかの児童の給食には、チーズ入りのメニューがあったという。
【社説】児童養護施設 育ちの場に「家庭」を
中日新聞 2012 年 12 月 22 日
親と離れた子が暮らす児童養護施設が家庭的な場となるよう、国は集団生活型から小規
模型への改修を計画している。養育上の困難を抱えた子が増えている。職員を増やさない
と掛け声倒れになる。
小規模施設の先行例がある。埼玉県加須市の「光の子どもの家」。敷地にいくつもの「家」
が建てられ、四十五人の子どもが「家族」と見なされたグループに分かれて暮らす。同じ
職員が親のように養育を受け持ち、眠る時には本を読み聞かせる。食事も家庭ごとに。日々
の営みは実の親との関係が壊れた子にとって、再び人間関係を築くための大切な時間だ。
職員は子どもにとって「自分のためにいる愛着を受け止めてくれる人」となるからだ。
こうしたきめ細かな事業を行うには人手が必要だ。だが、国の職員配置基準は三十年前
から変わらない。
「職員一人に対し、子ども六人」
。諸外国に比べて低い水準だ。このため、
子どもの家では「職員一人でほぼ四人」となるよう、バザーなどを続けて、加配分の人件
費を捻出してきた。
児童養護施設を小規模型に作り替えるという議論は十年前、増え続ける虐待の合わせ鏡
として始まった。施設は全国に五百七十九カ所、その七割は二十人以上の集団生活型だ。
約三万人が保護されているが、半数以上は親から虐待を受けた子。核家族時代に養育でき
ない親が増え、その連鎖がまた虐待を生む。児童相談所に通告された虐待は年間六万件だ
が、施設に保護されるケースは一割しかない。施設が常に満杯だからだ。
家庭でより深刻な問題を抱えた子が選ばれるようにして入ってくるのに、脆弱(ぜいじ
ゃく)な職員体制では一人一人に向き合えない。厚生労働省もやっと来年度予算要求に施
設小規模化の整備費を盛り込んだ。だが、改修に数千万から数億円がかかる。二の足を踏
む施設も多い。
大人数の雑居部屋で子どもたちは安らげず、いじめも深刻という。職員による虐待もあ
る。国は法改正で施設内の虐待対策を講じてきたというが、昨年度は四十六件が報告され
た。職員の資質だけでなく、人手不足や居住環境の悪さも遠因となっている。
施設は原則十八歳で退所しなくてはならない「十八歳の壁」もある。ケアを必要とする
子は社会の姿を映す。里親制度の拡充も含めすべての子どもの発達を保障できる方策が急
がれる。自分で声を上げられない子を犠牲にしてはならない。
励ましのカレンダーいかが…福岡
読売新聞 2012 年 12 月 21 日
完成したカレンダーを手にする(前列右から)花田さん、田尻さ
ん、篠隈文男さん
福岡市南区のボランティア団体「ファイナルステージ
を考える会」は、同市在住の末期がん患者とその家族計
4人が描いた日本画をあしらった来年の卓上カレンダー
を製作し、販売を始めた。
同会はがん患者向けの「デイホスピス」を週1回続けており、収益金を運営費に充てる。
カレンダー(縦10センチ、横20センチ)は、1か月ごとに紙を入れ替える形式で、
各月には、カタツムリや紅葉した葉、サンタクロースといった季節感あふれる絵が、顔彩
を使って描かれている。
手がけたのは、子宮がんと闘う田尻トシエさん(70)、乳がん患者の花田和子さん(8
5)
、卵巣がんを克服しようとしている篠隈利子さん(69)と夫の文男さん(71)の4
人。
同会のデイホスピスは、同市南区横手2の清水クリニックで毎週水曜日に行われ、4人
も通っている。ボランティアスタッフが調理した昼食を一緒に食べた後、絵画や合唱、フ
ラワーアレンジメント、茶道などを楽しんでいる。
昨年6月から通う田尻さんは、1年前に生まれた初孫がすこやかに育つことを願って、
金太郎とこいのぼりを描いた。
「デイホスピスに来るようになって友達が増え、絵画という
趣味もできた。私たちの絵を見ることで、同じように病気で苦しむ人の励みになれば」と
話している。
カレンダーは1000円。購入申し込みは、同会のファクス(092・502・686
8)へ。
(本部洋介)
「薬の町」に歴史の証人 「杏雨書屋」が移転へ
読売新聞 2012 年 12 月 21 日
大正初期の道修町。右側が武田長兵衛商店(「道修町資料保存会」
提供)
杏雨書屋が移転する武田
薬品工業の旧本社ビル(右、
大阪市中央区道修町で)
「薬の町」として知
られる大阪市中央区
道修町に、薬に関する
資料館「杏雨書屋」
(大
阪市淀川区)が来秋、移転することになった。
これまでは研究者が中心に利用する施設だったが、移転後は一般向け展示も予定。製薬
各社の転出が続いて様変わりする道修町の歴史に触れる場になりそうだ。
資料館は、1923年の関東大震災で貴重な文献が失われたと聞き、武田薬品工業の創
業家・武田家が、医薬の資料を集め始めたのが始まり。武田家から文献3万点12万冊の
寄贈を受けた「武田科学振興財団」が78年、淀川区の同社大阪工場の一角に杏雨書屋(3
階建て、約1000平方メートル)を整備した。
収蔵品には、平安時代に中国の医学の古典を再編集した「黄帝内経太素」
(国の重要文化
財)や、江戸期に刷られた日本初の本格的西洋医学の翻訳書「解体新書」など貴重なもの
が含まれる。近年、資料の寄贈が相次ぎ、計4万点15万冊を所蔵し、手狭になっていた。
同財団が来秋、設立50周年を迎えることもあり、同社の前身・武田長兵衛商店があっ
た地に立つ同社旧本社ビル(5階建て)に資料館を移転することに。新資料館は約140
0平方メートルで、これまで一般公開は年2回だったが、常設展示も行う。淀川区の杏雨
書屋は移転準備のため、来年1~9月はいったん休館とする。
道修町周辺に集まっていた製薬、医療関係の企業は90年代後半頃から、本社機能を東
京に移転させる所が増加。東京と道修町の2本社体制を維持する武田薬品工業も2007
年4月、広報・IR部門を東京に集約した。同財団の横山巖理事長は「育ててもらった創
業の地に杏雨書屋が移るのは感慨深い。みなさんに広く知ってもらいたい」と話す。
大阪の歴史や文化に親しむ「船場大阪を語る会」会長で、道修町で生まれ育った三島佑
一・四天王寺大名誉教授(84)は「製薬各社が東京に移転するのをさみしい思いで見て
きた。研究成果も新資料館で公開すれば、道修町の歴史を学ぶ人が増えるだろう」と期待
している。
(山村英隆)
<道修町> 江戸時代に薬専門の株仲間が集まり、第1次世界大戦前後に西洋の薬を扱
う店が増えた。武田薬品工業、塩野義製薬、田辺製薬(現・田辺三菱製薬)が道修町御三
家と呼ばれ、町内には薬の神様をまつる少彦名(すくなひこな)神社もある。同神社に併
設されている「くすりの道修町資料館」によると、周辺の製薬、医療関係の企業は80年
代には300社近くあったが、現在は200社を切るほどだという。
家紋も縫います 岐阜の福祉施設が雑貨店
朝日新聞 2012 年 12 月 21 日
障害者の就労支援に取り組む光陽福祉会が開設した
「くらふと屋」。戦国武将の家紋などオリジナル商品
を扱う=岐阜市折立
障害者が就労支援で培った刺繍(ししゅう)
の技術を生かそうと、岐阜市の一般社団法人
「光陽福祉会」
(菊池利哉会長)が、ハンカチ
やタオルなどに名入れする雑貨店を開いた。
自動車用の合成皮革に戦国武将の家紋を縫う
オリジナル商品も開発。障害者の収入アップ
につなげる狙いだ。
法廷ブルース:「累犯障害」父の苦悩
毎日新聞 2012 年 12 月 21 日
「昨年8月の検査では軽度の知的障害、精神年齢は9歳4カ月と診断されています」。裁
判官に提出した証拠書類の内容を、若手弁護士が説明した。その前に座る細身の男は、無
表情だった。
32歳。スーパーで缶ビールの6本入りパックを盗み常習累犯窃盗罪に問われた。万引
きで裁きを受けるのは10年前から数えて5度目になる。罪を繰り返す「累犯障害者」。
「ビールを買って帰ろうと思い、買い物かごに入れました。でも、いろいろ考えている
うちにかばんの中に入れてしまった。しちゃ駄目だなというのは頭にありました」
弁護士は聞いた。
「なんで、いけないと思うんですか」。
「売り物、人の物だから」
4歳の時だった。落とした100円玉を拾おうと止まっていた車の下に潜り込んだ。車
が動き始め、頭をひかれた。障害が残り、中学は特別支援学級に通った。
「仕事終わったけん帰る」
。証言席に座った父親によると、息子は事件前にそう電話して
きたという。
「
『何もせんで、早う帰って来い』と言うたのに」
「何回も裁判所に呼んでしまって申し訳ないと思っています」
。息子は父に謝った。
傍聴席に戻った父親の隣に若い女性がいた。裁判官が男に尋ねた。
「結婚をするつもりで
すか」
「はい」
。男同様、知的障害がある女性は表情を変えず、答えた男の背中を見ていた。
刑務所を出て7カ月後だった男の事件に、執行猶予は付かない。
初公判から3カ月。裁判官は懲役2年2月を告げた。
「懲役3年以上」と法が定めた刑を
特別に減らした。善悪の区別を判断できたと認める一方「障害が犯行の背景にあった可能
性はある」とも言及した判決理由に、裁判官の苦渋は出ていた。だが……。
「悪いことやけん、するなと言ってるんですけど」。法廷で漏れた父親の苦悩を、刑務所
が消せるだろうか。
【遠藤孝康】
月刊情報誌「太陽の子」、隔月本人新聞「青空新聞」、社内誌「つなぐちゃんベクトル」、ネット情報「たまにブログ」も
大阪市天王寺区生玉前町 5-33 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所発行