N-13 光書き込みによる記録・表示材料

光書き込みによる記録・表示材料
秋山陽久
ナノテクノロジー研究部門 分子スマートシステムグループ
つくば中央
研究のポイント
● 書き換え可能な、2種類の新しい光書き込み型の表示・記録材料の開発
● ①反射色によるカラー像の表示・固定化記録
● ②立体表示−3次元実空間に不透明な立体像を形成
研究のねらい
書き換え可能な像表示・記録材料の開発は省エネ省資源化に有用です。現在2種類の新しい表示・記録素子を開発し
ています。①発光・吸収によるカラー表示では、1画素で3原色を切り替えることは困難です。そこで、同一画素内の
色変化で効率よくカラー像を表現する記録表示フィルムを開発しています。②現在広く知られている立体表示は、フラ
ットな表示素子による立体視です。また、実空間に立体像を作り出す場合、ほとんどが裏の透けた透明像になります。
そこで、透明−散乱変化を起こす材料を開発して、不透明な散乱体による立体像表示の実現を目指します。
研 究 内 容
①コレステリック液晶の選択反射を用いると書き換え可能なカラー表示ができます。さらにガラス化する液晶を用い
ると、カラー像の固定化(記録)ができ、加熱により液晶状態に戻すことで何度でも書き換えが可能です。光書き込み
には光応答性添加剤が必要ですが、最近、効率よく反射色変化を起こす添加剤が見出されました。この材料は簡便に合
成でき、少量(2wt%)の添加と紫外線照射で3原色をすべて表現できます。書き込み時間は数秒程度であり、何度で
も書き換え可能で、カラー像は60℃の加熱でも安定であるという優れた特徴を有しています。
②ポリイソプロピルアクリルアミドは水溶液中で温度応答して透明−散乱転移を起こします。主鎖末端に比較的疎水
性の光応答ユニットを導入したオリゴマー水溶液では、室温付近で、比較的安定な直径1μmのコロイド粒子を形成し
不透明になることが分かりました。粒径は温度や光で急激に変化して、散乱状態から透明状態、透明状態から散乱状態
へ可逆的に切り替わりました。この性質により、立体的に光照射を行うことで実空間に像の書き込みができます。
関連特許情報:①特願 2008-086903「糖アルコール・・・」②特願 2006-089038「感温性高分子化合物」
図・光で書き換え可能な①液晶材料に書き込んだカラー像(左)と②高分子溶液に立体的に書き込んだ文字(右)