農業の新しい技術 No.389(平成 10 年 6 月) 分類コード 04−04 熊 本 県 農 政 部 天敵利用による夏秋トマト害虫の体系防除 農業研究センター 農産園芸研究所 病虫部 担当者:古家 忠 研究のねらい 高冷地の夏秋トマト栽培において、天井ビニルに紫外線除去フィルム(カットエースキリナイン) を用いるとマメハモグリバエの被害を軽減できる( 「農業の新しい技術 第 9 号」平成 8 年 4 月) 。そ こで、紫外線除去フィルムを用いたハウスにおいて、オンシツコナジラミに対して天敵のオンシツツ ヤコバチを放飼し、また、アブラムシ類の防除にクロロニコチニル系粒剤(ベストガード粒剤、アド マイヤー1 粒剤)の定植時植穴処理を行う体系防除を確立する。 研究の成果 1 紫外線除去フィルムを用いたハウスで、クロロニコチニル系粒剤の定植剤の定植時処理およびオン シツツヤコバチ 4 回放飼を組み合わせた体系防除は、オンシツコナジラミに対して高い防除効果があ る(図1) 。 2 体系防除区において、オンシツコナジラミに対するオンシツツヤコバチの寄生が確認されたことか ら、紫外線除去フィルム被覆は、オンシツツヤコバチの寄生活動に対して影響しない(図 2) 。 3 クロロニコチニル系粒剤の定植時植穴処理は、アブラムシ類の密度を長期間低く抑えた(図 3) 。 4 紫外線除去フィルム、クロロニコチニル系粒剤およびオンシツツヤコバチを組み合わせた体系防除 は、夏秋トマトの害虫に対して防除効果が高く、殺虫剤散布を低減できる。 普及上の留意点 1 紫外線除去フィルムには殺虫効果はないので、マメハモグリバエの被害葉の除去等の耕種的防除を 行う。 2 紫外線除去フィルム被覆下では、作物が軟弱徒長となる場合があるので、生育に応じた肥培管理を 行う。 3 オンシツツヤコバチ放飼前後の薬剤散布は、オンシツツヤコバチの活動に影響を及ぼすおそれがあ るので避ける。 10 体系防除区 8 粒剤 6 1 複 葉 当 た 成虫 4 蛹 2 0 り 10 個 体 数 対照区 8 6 4 2 0 図1 5月 7月 8月 9月 オンシツコナジラミに対する体系防除の効果(平成8年、清和村) ( 殺虫剤散布 ) オンシツツヤコバチ放飼 7 オンシツツヤコバチ 1株3複葉当たり個体数 100 粒剤 6月 6 粒剤 80 5 60 粒剤無処理区 無処理区 4 3 40 2 20 0 1 5月 6月 7月 8月 9月 図2 オンシツコナジラミに対する寄生率の推移 (平成8年、清和村、体系防除区) 0 4月 5月 6月 7月 図3 アブラムシ類に対する定植時粒剤処理の効果 (平成9年、農産園芸研究所) 体系防除区の処理内容 • 紫外線除去フィルム(カットエースキリナイン、厚さ 0.075mm)被覆面(図 1,図 2) • クロロニコチニル系粒剤(ベストガード粒剤)2g/株の定植時植穴処理(図 1,図 2,図 3) • オンシツツヤコバチ(EN−STRIP)トマト 30 株当たり 1 カードの 4 回放飼(図 1,図 2)
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