相対的に堅調なインドルピー(対米ドル)

2016年11月29日
投資情報室
(審査確認番号H28-TB228)
新興国レポート
相対的に堅調なインドルピー(対米ドル)
主要新興国通貨の中でインドルピーが相対的に堅調(対米ドル)
 トランプ氏勝利後、米金利の上昇と米ドル高が進む。米ドル高で新興国の米ドル建て債務の
返済負担が増すとの懸念も
 米ドル建て債務比率(対外貨準備高)が他に比べて低いインドのルピーは相対的に堅調
∼
米金利上昇、米ドル高進行
図表1:米10年国債金利の推移
∼
 トランプ次期大統領が掲げる財政拡張的な政
策(10年間で過去最大となる1兆米ドルのイ
ン フ ラ 投資 、 法 人税 の 最 高税 率 を現行 の
35%から15%に引き下げ等)が、景気を刺
激すると共に財政赤字の拡大をもたらすとの
見方等から米金利が急上昇しています(図表
1)。
 主要な新興国通貨が対米ドルで下落していま
す(2016年11月24日時点、2016年11月8
日比)(図表2)。1)低金利下で新興国に
流れ出た資金が米金利上昇により米国に還流
するとの見方、2)トランプ氏の選挙期間中
の主張(メキシコとの境に国境を建設等)、
3)政情不安(トルコ等)の他、4)米ドル
高により新興国の米ドル建て債務の返済負担
が増すとの懸念も要因となっているようです。
その中で、インドルピーが相対的に堅調な動
きとなっています。
(%)
3.0
データ期間:2015年6月1日∼2016年11月23日(日次)
米10年国債金利
2.5
2.0
1.5
1.0
15/6
15/9
15/12
16/3
16/6
16/9 (年/月)
図表2:主要新興国通貨の騰落率(対米ドル)
-15
-10
-5
0
(%)
メキシコペソ
トルコリラ
南アランド
ブラジルレアル
マレーシアリンギ
インドネシアルピア
∼
新興国の米ドル建て債務額
∼
(※)2016年11月24日時点
(2016年11月8日比)
インドルピー
中国元
 国際決済銀行(BIS)の試算によると、米国以
外の企業(除く金融)が抱える米ドル建て債
図表3:米ドル建て債務残高(※)
務(ローンと債券額の合計)は、2016年3月 (兆米ドル)
データ期間:2000年3月末∼2016年3月末(四半期)
12
末時点で約9.8兆米ドル。その内、約3.2兆米
ドルが新興国となっています。
10
 5年前(2011年3月末)に比べて、新興国の
米ドル建て債務額は約46%増加しています。
これまでにBISや世界銀行等は、米ドル高が進
めば膨らんだ米ドル建て債務の支払い負担が
増加し、新興国経済に悪影響を与える可能性
があるとの警告を発しています。
合計(米国以外)
(内)新興国
8
6
4
2
0
00/3
出所)図表1∼2はブルームバーグ、図表3はBISのデータをもとに
ニッセイアセットマネジメント作成
03/3
06/3
09/3
12/3
15/3(年/月)
(※)米国以外の企業(除く金融)が抱える
米ドル建てローンと米ドル建て債券額の合計
●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的と
するものではありません。実際の投資等に係る最終的な決定はご自身で判断してください。●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作
成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資
収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。●投
資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。●手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商
品を勧誘するものではないので、表示することができません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
商 号 等:ニッセイアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第369号
1/2
加入協会:一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会
∼
米ドル建て債務額の外貨準備高比率
∼
図表4:主要新興国米ドル建て債務額の外貨準備高比率
 多くの新興国はアジア通貨危機(1997年)等
(%) 0
を踏まえ、緊急の事態に備えて外貨準備(中
トルコ
央銀行や政府等が通貨介入や公的な対外支払
い等のために保有する準備資産)を積み上げ インドネシア
てきました。しかし同時に、国内インフラ整
メキシコ
備等を目的に海外等から米ドル資金を積極的 ブラジル
に調達したことから、米ドル建ての債務も増
南ア
加しています。
 外貨準備高(米ドルベース)に対する米ドル
建て債務高の比率(2015年6月末時点)は、
国によって大きく異なります。インドの当比
率は他の主要新興国に比べて低く(図表4)、
インドルピーの下支え要因となっている可能
性があります。
50
マレーシア
100
150
200
(注1)2015年6月末時点
インド
(注2)比率=米ドル建て債務額
/外貨準備高(米ドルベース)
中国
(※)米国以外の企業(除く金融)及び政府が抱える
米ドル建てローンと米ドル建て債券額の合計
インドルピーや主要新興国通貨の今後の見通し
 他通貨に対する米ドル全面高が輸出関連企業等米国企業業績の重荷となる懸念も
 トランプ氏の通貨政策は現時点では不透明感が強く、今後の発言内容等によっては米ドル高
の修正が起きる可能性も
∼
米ドル実効為替レートが急上昇
∼
 トランプ氏勝利後の米ドル全面高により、米
ドルの実効為替レートが過去最高水準まで上
昇しています(図表5)。当為替レートの上昇
は米輸出関連企業等の業績に悪影響を及ぼす
可能性があります。トランプ氏は選挙期間中、
米ドル高は米経済に打撃を与えるとの発言を
行っています。今後の発言内容等によっては、
米ドルが売られ、インドルピー等新興国通貨
が反発に転じることも想定されます。
図表5:米ドル実効為替レートの推移
データ期間:2014年1月1日∼2016年11月18日(日次)
135
実効為替レート(※)
130
125
米ドル高
120
115
110
(※)貿易加重為替レートとも呼ばれる。
主要貿易相手国に対する個別為替
レートの加重平均
105
100
14/1
14/7
15/1
15/7
16/1
16/7(年/月)
 大統領選挙後の円高・米ドル安を見越して円
買い持ちとなっていた投資筋のポジション 図表6:円・米ドル市況と円の投機的ポジション建玉
(持ち高)整理が進んでいます(図表6)。円 (千枚)
データ期間:2015年6月2日∼2016年11月15日(週次) (円)
100
130
安米ドル高の勢いが今後弱まることになれば、
円安・米ドル高
円買い持ち
米ドル独歩高の動きが止まったとの見方から、
新興国通貨が買い戻される可能性もあります。 50
120
 新興国通貨全般が落ち着けば、外貨準備高に
比べた米ドル建て債務額比率の相対的な低さ
やモディノミクスの進展期待等を背景に、イ
ンドルピーに対する投資が活発化するものと
みています。
0
110
-50
100
米ドル買い持ち
-100
円・米ドル先物ポジション
円・米ドル
(※)シカゴIMM通貨先物のポジション
-150
15/6
15/8
15/11
16/2
16/5
16/7
90
16/10(年/月)
出所)図表4はBISとブルームバーグ、図表5∼6はブルームバーグデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成
●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的と
するものではありません。実際の投資等に係る最終的な決定はご自身で判断してください。●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作
成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資
収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。●投
資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。●手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商
品を勧誘するものではないので、表示することができません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
商 号 等:ニッセイアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第369号
2/2
加入協会:一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会