2016年12月22日 投資情報室 (審査確認番号H28-TB257) REITレポート 回復傾向を強めつつある豪リート市場 豪リート市場の動向 豪リートは2016年8月1日を高値に11月15日にかけて約19%下落。その主な要因はトランプ氏勝 利後の米国金利上昇の余波を受けた豪金利の急騰にあるものと思われます。足元の豪リートは回復 傾向となっています(図表1、2)。 一時は年初来の上昇率が豪株式から大きく上方かい離し、一部で過熱感が指摘されていた豪リート ですが、足元は豪株式と同程度となっています(図表2)。 (図表1)豪・米10年国債金利 (%) 3.0 (図表2)豪リート・豪株式の推移 データ期間:2016年1月4日∼12月16日(日次) データ期間:2015年12月31日∼2016年12月16日(日次) 125 豪REIT 120 豪株式 2.6 115 110 2.2 105 1.8 100 95 1.4 米国10年国債金利 90 豪10年国債金利 ※2015年12月31日を100として指数化 1.0 85 1/4 4/4 7/4 10/4 (月/日) 15/12 16/3 16/6 16/9 (年/月) 米・豪の経済状況比較 米国経済は、消費者物価(CPI)が上昇傾向を示し、失業率がリーマン・ショック前の水準まで 低下する等、回復が鮮明となっています(図表3)。一方、豪経済はCPIが豪準備銀行(RBA) のインフレ目標を下回り、失業率も依然高水準にある等、力強さを欠いているようです(図表4)。 米金利に連動する形で上昇した豪金利は行き過ぎた状況にあると思われます。 (図表3)米国CPIと米国失業率 (%) 12 データ期間:2010年3月末∼2016年9月末(四半期) 米国CPI(前年同期比) 10 8 (図表4)豪CPIと豪失業率 (%) 7 米国失業率 データ期間:2010年3月末∼2016年9月末(四半期) 豪CPI(前年同期比) 豪失業率 6 5 4 RBAインフレ目標レンジ(2.0∼3.0%) 6 3 4 2 2 1 0 0 10/3 12/3 10/3 12/3 14/3 16/3(年/月) (使用指数)豪リート:S&P/ASX300 A-REIT指数、豪株式: S&P/ASX300 指数(どちらも配当除き・現地通貨ベース) (出所)図表1∼4はブルームバーグデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成 14/3 16/3 (年/月) ●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とする ものではありません。実際の投資等に係る最終的な決定はご自身で判断してください。●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成して おりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示 唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。●投資する 有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。●手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商品を 勧誘するものではないので、表示することができません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 商 号 等:ニッセイアセットマネジメント株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第369号 1/4 加入協会:一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会 米国利上げとリート市場 米連邦公開市場委員会(FOMC)は12月14日、1年ぶりに0.25%の利上げを決定しました。FOMC 参加者による2017年の利上げ回数見通し(1回0.25%の引上げ前提)は3回となっています。 米連邦準備制度理事会(FRB)は、リーマン・ショック前の2004年7月から2006年6月にかけて連続 17回の利上げを実施しました。この間、米国リートは調整を交えながら上昇を続けました。利上げに よってインフレが抑制され、米国リートの業績拡大が続いたことが背景にあるものと思われます(※米 国リートの賃料収益(賃料収入−費用)は2004年第1四半期から2006年第3四半期にかけ約47%増 加)。同期間、豪リートも調整を交えながら上昇を続けました。 (図表5)米国リートと米国政策金利 (ポイント) 600 (図表6)豪リートと豪10年国債金利 データ期間:2004年3月5日∼2006年9月29日(週次) 米国REIT(左軸) (%) (ポイント) 8.0 2,250 データ期間:2004年3月5日∼2006年9月29日(週次) 豪REIT(左軸) 米国政策金利(右軸) (%) 6.5 豪10年国債金利(右軸) 6.0 2,000 6.0 4.0 1,750 5.5 2.0 1,500 5.0 0.0 1,250 500 400 300 04/3 04/9 05/3 05/9 06/3 06/9(年/月) 4.5 04/3 04/9 05/3 05/9 06/9(年/月) 06/3 回復傾向が鮮明になりつつある豪リート市場 豪リートの回復傾向が鮮明になりつつあるようです。11月15日を底値に、足元は金利上昇にも関わらず 上昇するケースが多くなったように思われます。米国が利上げを決定し、一部不透明感が後退したこと の他、以下のような要因が想定されます。 ① 世界最大のリート市場である米国リートの復調 ② 豪リートの過去に比べて抑制された負債比率(負債額/総資産額) ③ 豪リート業績の緩やかな拡大観測 ④ 相対的に厚みのあるイールドスプレッド(豪リートの予想配当利回り−豪10年国債金利) ∼ ① 米国リートの復調 ∼ (図表7)米国リートと米国10年国債金利 (ポイント) 700 金利上昇を嫌気して下落した米国リートですが、 11月半ば頃以降は金利が急上昇しているにも関 675 わらず底堅い動きとなっています(図表7)。 米金利の上昇が行き過ぎているとの見方や、米 国リート業績の拡大観測等が背景にあるものと 思われます。 世界最大のリート市場である米国リートの復調 は、豪リートにも好影響を与えている可能性が あります。 データ期間:2016年10月3日∼12月19日(日次) 米国10年国債金利(右軸) (%) 3.0 米国REIT(左軸) 2.6 650 2.2 625 1.8 600 1.4 10/3 10/23 11/12 12/2 (月/日) (使用指数)米国リート:NAREIT ALL-EQUITY REIT指数、豪リート:S&P/ASX300 A-REIT指数(どちらも配当除き・現地通貨ベース) (出所)図表5∼7はブルームバーグデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成 ●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とする ものではありません。実際の投資等に係る最終的な決定はご自身で判断してください。●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成して おりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示 唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。●投資する 有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。●手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商品を 勧誘するものではないので、表示することができません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 商 号 等:ニッセイアセットマネジメント株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第369号 2/4 加入協会:一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会 ∼ ② 豪リートの抑制された負債比率 ∼ 豪リートの負債比率(負債額/総資産額)はリー マン・ショック当時は40%を超えていました。 その後財務体質の強化が進められ、2016年6月 末時点では30%を下回る水準まで低下していま す(図表8)。 レッグ・メイソン・アセット・マネジメント社に よると、豪リートの借入金利の8割程度は固定金 利化されているようです(変動金利に比べて、短 期的な金利変動の影響を受け難い)。 金利上昇が豪リート業績に与える影響は、過去に 比べて小さくなる可能性があるとの見方も、豪 リート回復の要因になっているものと思われます。 ∼ ③ 豪リート業績の緩やかな拡大観測 ∼ 2016年8月以降、豪金利(10年国債金利)が急 上昇していますが、2016年12月19日時点のブ ルームバーグ集計によると、豪リートの1株当り 配当(前年比)は2019年にかけて2∼3%程度の 緩やかな拡大が続く見通しとなっています(図 表9)。 (図表8)豪リートの負債比率 (%) データ期間:2005年6月末∼2016年6月末(半期) 45 40 35 30 25 05/6 08/6 11/6 14/6 (年/月) (図表9)豪リートの業績(1株当り配当)予想 データ期間:2016年∼2019年(年次) (%) 4.0 3.6 1株当り配当(左軸)(※) 116 前年比(右軸) 112 (※)2016年=100として指数化 3.5 3.1 108 3.0 2.4 3.0 104 豪リートの特徴の一つに、テナントとの賃貸契 100 約期間が日・米のリートに比べて長い点が挙げ られます。時価総額ベースで全体の半分程度 96 (2016年11月末時点)を占める商業施設系リー 2016年 2017年 2018年 2019年 トを例にとると、2016年6月末時点で平均6∼8 (注)すべてブルームバーグ予想(2016年12月19日時点) 年と日・米の商業施設系リートより数年長く なっています。賃貸契約や賃料改定までの期間 が長ければ、短期的な景気変動の影響を受け難 く、賃料も安定する傾向があるとされています。 (図表10)豪商業施設(SC)のテナント賃料 豪商業施設(ショッピングセンター:SC)の データ期間:2006年3月末∼2016年9月末(四半期) テナント賃料(1平方フィート当り)は、リーマ 150 シドニー メルボルン ン・ショック(2008年9月)や豪金融引き締め 140 (※)1平方フィート当りのテナント賃料 時(2009年10月∼2011年10月)でも大きく落 2006年第1四半期=100として指数化 130 ち込むことなく推移しています(図表10)。 トランプ次期大統領が2017年1月20日に就任後、 120 公約として掲げて来た政策をどの程度実行に移 110 すのか、現時点では不透明な要素が多いように 思われます。場合によっては世界経済が不安定 100 になる局面も想定されます。豪リート収益の相 90 対的な安定性が再評価されている可能性もあり 06/3 ます。 2.5 2.0 1.5 豪金融引き締め期 (2009年10月∼2011年10月) 08/3 10/3 12/3 14/3 16/3(年/月) (使用指数)豪リート:S&P/ASX300 A-REIT指数 (出所)図表8∼10はブルームバーグデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成 ●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とする ものではありません。実際の投資等に係る最終的な決定はご自身で判断してください。●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成して おりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示 唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。●投資する 有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。●手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商品を 勧誘するものではないので、表示することができません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 商 号 等:ニッセイアセットマネジメント株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第369号 3/4 加入協会:一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会 ∼ ④ (図表11)豪リートのイールドスプレッド 厚みのあるイールドスプレッド ∼ (%) 豪リートのイールドスプレッドは2016年12月 16日時点で2.14%となっています。豪金利の上 昇により11月末比で縮小したものの、過去平均 (2010年1月∼2016年11月)(1.90%)に比 べると厚みを持っています(図表11)。 8 データ期間:2010年1月末∼2016年12月(※)(月次) (※)2016年12月は12月16日時点のデータ 6 4 豪金利の上昇は行き過ぎであり、今後低下する 可能性もあると考えます。金利低下でイールド スプレッドが再度拡大するとの見方も支援材料 になっているものと思われます。 2 0 イールドスプレッド 豪REIT配当利回り 豪10年国債金利 -2 10/1 11/1 12/1 13/1 14/1 15/1 16/1(年/月) 豪リート市場の見通し 2016年8月から11月中旬にかけ、金利上昇で借入費用が増加するとの思惑から豪リートが売られ、利鞘 改善期待等から金融株(除くリート)が買われる状態が続いていました。その動きに変化が現われ始め ているようです(図表12)。豪金利上昇は行き過ぎとの見方や豪リート収益の安定性に対する再評価等 が背景になっているものと考えられます。 今後、経済実態等から判断して豪金利は行き過ぎた水準にあるとの見方が一段と強まることも考えられ ます。トランプ次期大統領が外交を巡って過激な発言を行い、先行き不安が高まる場合等にはリスク回 避の動きから債券が買われ(価格上昇・金利低下)、豪リートの支援材料となる可能性もあります。 豪リートは11月中旬に当面の底値を確認したものと考えます。今後、戻り待ちの売り等を消化しながら、 上下動を繰り返しつつ緩やかな上昇基調をたどるものと判断しています。 豪金利上昇で円安・豪ドル高が進行しました(図表13)。今後豪金利が低下する可能性もあり、豪ドル は対円で上値が重くなることも考えられます。 (図表13)豪ドル(対円)と日・豪金利差 (図表12)豪リートと豪金融株(除くREIT) データ期間:2016年3月31日∼12月16日(日次) 120 豪金融株(除くREIT) (円) 92 (%) 4.0 豪ドル/円(左軸) 豪REIT 115 データ期間:2016年1月4日∼12月16日(日次) 日・豪金利差(右軸)(※) 88 3.5 (※)豪10年国債金利−日10年国債金利 110 84 3.0 円安・豪ドル高 日豪金利差拡大 105 80 2.5 76 2.0 100 95 ※2016年3月31日を100として指数化 90 3/31 1.5 72 6/30 9/30 (月/日) 1/4 4/4 7/4 10/4 (月/日) (使用指数)豪リート:S&P/ASX300 A-REIT指数 豪金融株(除くリート): S&P/ASX300の同セクター指数 (出所)図表11∼13はブルームバーグデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成 ●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とする ものではありません。実際の投資等に係る最終的な決定はご自身で判断してください。●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成して おりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示 唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。●投資する 有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。●手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商品を 勧誘するものではないので、表示することができません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 商 号 等:ニッセイアセットマネジメント株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第369号 4/4 加入協会:一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会
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