欧州の国債金利上昇

2017年2月16日
投資情報室
臨時レポート
(審査確認番号H28-TB310)
欧州の国債金利上昇
○○○○○○○○
仏や南欧の国債金利上昇の背景には政治不安も
 欧州債券市場で各国の国債金利が上昇傾向(価格は下落)を強めつつある。
 ECB(欧州中央銀行)の量的緩和策終了が前倒しになるとの観測の他、フランスやイタリ
アの政治不安やギリシャの債務問題再燃懸念等も背景にあるものと思われる。
 懸念が先行し過ぎていると思われるが、大統領選挙といった政治イベントが近付くにつれ、
債券市場が不安定な動きとなる可能性も。
∼
欧州主要国の債券市場の動向とその背景 ∼
 欧州債券市場で各国の国債金利が上昇傾向を強めつつあります。イタリアの10年国債金利は、2月6日に
一時約1年7ヵ月ぶりとなる水準まで上昇。ドイツやフランスの同国債金利は昨年8月頃を底に上昇基調と
なっています。また、ギリシャは2019年4月が償還期限の2年国債金利が、一時10%台近辺まで上昇して
います。金利上昇の背景として以下の要因が考えられます。
① 原油高や景気の持ち直し等で物価が予想以上に上昇し、ECBの量的金融緩和策の終了が前倒しにな
るとの観測
② フランスの大統領選やイタリアの政局流動化懸念等を巡る政治不安
③ ギリシャへの金融支援を巡る不安再燃
図表1:独・仏・伊の10年国債金利推移
(%)
3.0
図表2:ギリシャ2年国債金利推移
データ期間:2015年1月2日∼2017年2月10日(日次)
(%)
16
データ期間:2016年1月4日∼2017年2月10日(日次)
フランス
2.5
14
ドイツ
イタリア
2.0
12
1.5
10
1.0
8
0.5
6
0.0
-0.5
4
15/1
15/7
16/1
16/7
17/1
(年/月)
(1)ECBの量的金融緩和策早期縮小観測
 ECBは昨年12月の理事会で、資産購入の期限を2017
年3月から2017年12月まで延長するとともに、2017年
4月以降は月間の購入額を800億ユーロ(約9.7兆円、1
ユーロ121円換算)から600億ユーロ(約7.3兆円)に減
額することを決定しました。
16/1
16/4
16/7
16/10
(年/月)
17/1
図表3:ユーロ圏消費者物価と失業率
(%)
10
 原油高や失業率の低下等にみられる景気の持ち直しで、
ECBの金融緩和策は、期限後の2018年以降、段階的に
縮小(テーパリング)に向かうとの観測が強まっている
ことが要因の一つになっているものと思われます。
データ期間:2013年1月∼2017年1月(月次) (%)
13
(※)失業率は2016年12月時点
8
12
6
11
消費者物価(前年同月比)(左軸)
4
10
失業率(右軸)
2
9
0
8
-2
出所)図表1∼3はブルームバーグデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成
7
13/1
14/1
15/1
16/1
17/1
(年/月)
●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的と
するものではありません。実際の投資等に係る最終的な決定はご自身で判断してください。●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作
成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資
収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。●投
資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。●手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商
品を勧誘するものではないので、表示することができません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
商 号 等:ニッセイアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第369号
加入協会:一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会
1/2
(2)フランスやイタリアの政治不安
図表4:ユーロ圏国別経済規模構成
 フランスは4∼5月に大統領選を控えています(第1回
目:4月23日、どの候補者も過半数の票を獲得できなけ
れば上位2名が5月7日の決選投票に臨む)。次期大統領
として有力視されていた中道・右派のフィヨン候補(元
首相)の家族に給与の不正受給疑惑が浮上し、EU(欧
州連合)に懐疑的な極右政党・国民戦線(FN)のルペ
ン党首の勢いが増していると言われています。
 イタリアでは、昨年12月の国民投票でレンツィ首相が求
める上院の権限を大幅に縮小する憲法改正案が否決され、
同首相が辞任を表明。その結果、議会の年内解散・総選
挙の可能性が浮上する等、政局の流動化懸念が強まって
いるようです。
 こうした政治不安が金利上昇の背景にあるものと思われ
ます。両国の経済規模はユーロ圏の中では比較的大きく、
政局の不安定化を嫌って金利が一段と上昇すれば、他の
周辺諸国に悪影響を及ぼす事態も想定されます。
(※)2015年時点
ユーロ圏19カ国、国内総生産ベース
図表5:政府債務比率の高い国々と比率
(3)ギリシャ支援を巡る不安の再燃
 ギリシャの政府債務残高は、2016年7-9月期時点で国内
総生産(GDP)の約1.75倍となっています。
 ギリシャへの金融支援を巡るユーロ圏とIMF(国際通
貨基金)の意見対立が鮮明化しているようです。IMF
が2月7日の報告書で、ユーロ圏に対し返済期限の大幅延
長等ギリシャ支援のための抜本的な債務軽減策の受入れ
を求めたのに対し、ユーロ圏が反発。金融支援の先行き
不透明感の高まりや政情不安に発展するリスクを嫌気し
た売りが金利上昇(価格下落)のきっかけとなっている
ようです。
 現在の支援が終了する2018年以降の追加の緊縮策や財政
赤字目標等を巡って、ギリシャと債権団との交渉が進ま
ず、追加融資の条件である「第二次審査」の完了が遅れ
ているようです。ギリシャでは、ECB等が保有する国
債の償還が4月に約14億ユーロ(約1,700億円)、7月に
約60億ユーロ(約7,300億円)控えています。その償還
資金対応のためのIMFと債権団との合意形成が急がれ
ています。
∼
今後の見通し
∼
 フランスやイタリアの政局の行方については現時点では
流動的な部分が多く、懸念が先行し過ぎている嫌いがあ
ります。再燃し始めたギリシャへの金融支援不安も、世
界経済への影響が考慮されて最終的にはIMFと債権団
が合意に達するものと考えています。
 今年欧州では、3月15日のオランダ総選挙をはじめ多くの
政治イベントが控えています。イベントが近付くにつれ
て、足元の状況のように債券市場の動きが不安定になる
ことも想定されます。
50
75
100
125
150
175
(%)
200
ギリシャ
ポルトガル
イタリア
キプロス
ベルギー
(※1)ユーロ圏19ヵ国対象
スペイン
(※2)対GDP比
フランス
2016年7-9月期時点
図表6:2017年の欧州の主な政治イベント
(2017年2月10日時点)
月
主な政治イベント
オランダ総選挙(15日)
3
英国の正式な欧州(EU)離脱手続き開始
(リスボン条約第50条発動)
4
フランス大統領選挙
5
フランス大統領選
7
ギリシャ債務返済のピーク
(約60億ユーロ)
9
ドイツ連邦議会選挙
第1回投票(23日)
決選投票(7日)
年内 イタリア総選挙実施(年前半)の可能性
出所)図表4∼5はeurostatのデータ、図表6は各種報道等を基にニッセイアセットマネジメントが作成
●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的と
するものではありません。実際の投資等に係る最終的な決定はご自身で判断してください。●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作
成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資
収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。●投
資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。●手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商
品を勧誘するものではないので、表示することができません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
商 号 等:ニッセイアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第369号
2/2
加入協会:一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会