ウィークリーレポート 2016/12/05

ウィークリーレポート 2016/12/05-2016/12/09
市場の関心は一旦欧州イベントに移行か
週初に行われる憲法改正を巡るイタリア国民投票をはじめ、週央には ECB の理事会も予定され、市場の関心はいったん、
『トランプ相場』から欧州の政治・金融政策に移る見込み。これまで一方的に進んできた円安・株高の動きに変化は見られる
のかに注目。
(先週の振り返り)
ドル円相場は米国感謝祭明けの週初はやや軟調なスタートとなり調整のドル売りからスタート。ドル円は 111 円 36 銭の安
値を付け、これまで堅調だった日本の株式市場にも海外勢の利食い売りの動きが広がりました。その後は日銀による ETF
買いがあったことやその日の海外市場で欧州株が堅調さを維持し、前日下げていた原油価格にも大幅な買い戻しの動きが
あったことなどから調整は短期で収束しました。
再びドル円上昇の動きが加速したきっかけは市場関係者が注目していた OPEC 総会での減産合意でした。事前には合意
そのものについて懐疑的な見方も浮上し原油価格はじりじり下げる状態が続いていましたが、期待値が後退していた中で
の減産合意であったため、原油価格は一日で 10%程度急騰。小康状態だった米国金利上昇もインフレ懸念の再燃から再
び加速し、ドル全面高の中ドル円相場は合意翌日の早朝に 114 円 83 銭まで上昇しました。その後は米国雇用統計を控え
て一旦調整の動きとなりましたが 113 円台での底堅い値動きが継続しました。
米国雇用統計は非農業部門の雇用者数の増加が 17 万 8 千人とほぼ事前の予想通りとなり、指標自体は相場水準にあま
り大きな影響を与えませんでした。失業率は 4.6%に大きく低下したものの平均賃金はむしろ減少するなどまちまちな内容で
更なるドル買いにはつながりませんでしたが、7~9 月期 GDP 改定値の上方修正や好調な ISM 製造業指数など米国の経済
状況の良好さが確認され、12 月の FOMC での利上げが確実視される状況に変化はなさそうです。
(今週の見通し)
引き続きトランプ相場の持続を期待する声が強く、米国の利上げが確実と思われる状況の中でドル高円安基調に変わりは
なさそうです。週初のイタリア国民投票の結果次第では欧州の銀行株などが売られリスク回避的な動きが広がる可能性も
ありましたが、本日月曜朝の段階では円高はそれほど極端なものとはなっていません。またイタリア国民投票の結果は憲
法改正案の否決がある程度織り込まれており、ECB が不測の事態でイタリア国債が売り込まれた場合には買い支えに動く
意思表示を事前にしていることもあって混乱は短期で収束する可能性が高いでしょう。ただし、イタリアの政局が流動化し来
年には総選挙ということになれば来年の欧州の政治的なリスクイベントがもう一つ付け加わることとなりますので、その場合
はドル円の水準は 112 円 20 銭-115 円 50 銭程度の推移が予想されます。ただ、高値が更新されるというよりは現在の高値
圏での横ばいを見込んでいます。また、週央には ECB 理事会が予定されており来年 3 月で期限が到来する量的緩和策が
延長される見通しです。緩和策の延長はユーロ安要因ですが、一方で延長と同時に月次の債券買取量を減額するのでは
ないかという観測も一部であり、その場合はユーロの買戻しがドル安を牽引する可能性もあります。
いずれにしても米国発の値動きは FOMC を前に一旦止まり、欧州の政治・金融政策に市場参加者の関心が集中する週とな
りそうです。