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【2017年3月8日公開】
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~丸わかり! ロンドン発★欧州経済事情~
「松崎美子」が注目テーマを一刀両断!
『ユーロは動けない ECB から、
世論で動く仏大統領選へ』
執筆者:(ロンドン在住/元為替ディーラー)
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今週は金曜日にアメリカの雇用統計を控え、神経質な相場展開が予想される。そして、その前
日(3/9)には 6 週間ぶりに欧州中央銀行(ECB)の金融政策理事会とドラギ総裁の定例記者会見
が実施されるため、今回のコラムではそれを取り上げたいと思う。
●ECB 理事会に向けた事前予想
今回の金融政策理事会では、政策金利の変更はないであろう。ロイター社が実施したエコノミ
ストを対象としたアンケートでも、全員が据え置きを予想している。政策金利以外の見どころとして
は、以下の 3 点を挙げたい。
1)
2)
3)
3 カ月に一度発表されるマクロ経済予想【スタッフ予想】の内容
ドラギ総裁が記者会見の席で、インフレ率が 2%を達成したことについて、どのような見解を示
すのか
ユーロ圏全体のインフレ率が ECB ターゲットである 2%に達したことを受け、それでもマイナス
金利政策を継続することに対する整合性について
●スタッフ予想
スタッフ予想について書く前に、ユーロ圏消費者物価指数(HICP)2 月分の数字について先に触
れておこう。3 月 2 日(木)に発表されたこの数字は 2%となっていて、ECB のインフレ目標値である
2%に到達したのである。
チャート: 欧州中銀(ECB)ホームページ
http://sdw.ecb.europa.eu/quickview.do?SERIES_KEY=ICP.M.U2.N.000000.4.ANR&start=&end=&submitO
ptions.x=0&submitOptions.y=0&trans=N
資料:欧州統計局
http://ec.europa.eu/eurostat/documents/2995521/7895720/2-02032017-CP-EN.pdf/97184273-b9ae46e6-99be-e50321ce5fa8
ユーロ圏全体のインフレ率は 2%であるが、加盟国のドイツでは 2012 年以来久し振りに 2.2%、スペ
インでは 3%を記録し、ECB インフレ目標を超えた国が出てきた。果たして、今回発表される新しい
スタッフ予想では、2017 年のインフレ率予想、そして 2 年後の予想をどのような数字に修正するの
か、非常に興味がある。特に重要なのは、2 年後の予想であり、この数字が 2%以下のままであれ
ば、追加緩和の観測が依然として残ることを意味する。
●インフレ目標達成とマイナス金利継続の整合性
今年に入ってから顕著となってきたインフレ率の上昇。これは、ヨーロッパだけでなく、アメリカで
もイギリスでも同じ現象が起きている。その理由は、インフレ率は前年比で発表されるため、1 年
前のエネルギー価格のマイナス部分が消滅し、それがインフレ率全体の押し上げ効果となり、世
界的にインフレ率の上昇が観測されるようになった。ドラギ総裁はこれを理由に挙げ、今年に入っ
てからのインフレ率上昇は一時的な現象という見解を変えておらず、たぶん今回の定例記者会見
でも同様の見解を示すことが予想される。実際に一部のエコノミスト達の間では、早ければ今年第
4 四半期にもエネルギー価格のマイナス部分消滅が終了し、世界的なインフレ率の上昇にストッ
プがかかるという予想が出てきている。
しかし、ドイツ連銀のバイトマン総裁などは、「今年のユーロ圏インフレ率は、ECB のインフレ目標
を上回ることが恒常化してしまうことになりかねない。」と警鐘を鳴らしていて、インフレ目標を厳守
した物価安定の維持を責務とした ECB が、それを守れないばかりか、そのような状態にありなが
らも未だにマイナス金利を継続していることに対し、そうとう踏み込んだ議論をなされることが予想
される。
●動くに動けない ECB
今年は【欧州選挙年】という位置づけであり、来週 3 月 15 日(水)はオランダ総選挙が実施され
る。それを考慮すれば、少なくとも今週の ECB 理事会では、大きな波風は立てられない。もし今後
インフレ率が 2%を上回る状態が続いたとしても、ECB が金融政策の舵取りの変更を発表できるの
は、5 月 7 日(日)のフランス大統領選終了後最初の 6 月 8 日(木)理事会となろう。
当然であるが、フランスの大統領選で、ユーロ離脱を公約として挙げている国民戦線:ルペン候補
が大統領に当選した場合は、新たなユーロ危機が始まることは間違いないため、ECB は新たな頭
痛の種を抱え込むことを意味する。
このように今年の ECB は政治に配慮することが優先されるため、非常に動きづらい1年となること
は間違いないだろう。
●ここからのマーケット
フランス大統領選が終わるまでは、候補者の支持率に関する世論調査結果にユーロは一喜一
憂する動きとなろう。先週末に発表された世論調査では、4 月 27 日(木)に予定されている第一回
目の投票で、マクロン候補がルペン候補を追い抜くという結果が好感され、ドイツとフランスの長
期金利差(イールドスプレッド)が縮小し、安心感が広がり、ユーロは大きく買い戻された。
データ:数々の一般報道より
果たしてこのままマクロン候補が逃げ切れるかは誰にもわからないが、特に大きくルペン候補の
支持率が再上昇しない限り、「ユーロ/米ドル」は 1.06 ドルハイと 1.04 ドルミドルの間での動きにな
ると予想する。
チャート:筆者作成
-------------------------------------------------------------------------------【執筆者:松崎美子氏(ロンドン在住/元為替ディーラー)プロフィール】
東京でスイス系銀行 Dealing Room で見習いトレイダーとしてスタート。18 カ月後に渡英決
定。1989 年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店 Dealing Room に就職。1991
年に出産。1997 年シティーにある米系投資銀行に転職。
その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、
証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。
-------------------------------------------------------------------------------【本レポートの趣旨】
本レポートは松崎美子氏より発行されているレポートであり、情報提供のみを目的として
おります。
本レポート中のコメントは独自の見解に基づいたものであり、松崎美子氏、およびワイジ
ェイFX株式会社共にレポート中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明
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