Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
出口論は時期尚早
2017年1月24日(火)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・1月ユーロ圏消費者信頼感指数は▲4.9と12月(▲5.1)から0.2pt改善。雇用所得環境の改善を背景に緩や
かな持ち直し傾向にあり、域内消費の底堅さを示唆している。
0
消費者信頼感・小売売上
-5
(前年比、%)
4
3
小売売上高(右)
2
-10
1
-15
消費者信頼感
0
-1
-20
-2
-25
-3
-30
-4
10
11
12
13
14
15
16
17
(備考)Thomson Reutersにより作成 小売売上高太線:3ヶ月平均
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株市場は反落。この日発表された企業決算は概ね好調で市場予想を上回ったが、政策不透明感
などから売り優勢。欧州株も軟調。WTI原油は52.75㌦(▲0.47㌦)で引け。ベーカーヒューズ公表の米
稼働リグ数の増加で原油需給の緩みが懸念された。
・前日のG10 通貨はUSDが最弱となった一方、JPYが最強となった。USD/JPYは新規の材料に乏しいなか、一
日を通じて下落基調を辿った。24日日本時間早朝にはムニューチン財務長官が「強いドルは短期的にマイ
ナス」との見解を示したことが伝わり、112後半まで水準を切り下げた。
・前日の米10年金利は2.401%(▲6.6bp)で引け。株式市場が軟調に推移するなか、米債市場に資金流入。
欧州債市場(10年)は総じて堅調。米債ラリーに追随する格好でドイツ(0.363%、▲5.8bp)、イタリア
(1.991%、▲3.2bp)、スペイン(1.435%、▲7.0bp)が揃って金利低下。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は、欧米株の下落を受けて神経質な展開が見込まれる。特に自動車関連銘柄は、米国の通商政策に
対する不透明感が意識されそうだ。トランプ大統領は23日の朝方に日本との自動車貿易を「不公平」とし
たほか、生産拠点を米国外に移す企業に対して「非常に大きな国境税を課す」として強硬姿勢を貫いた
(寄付前に記述)。
・23-24日にかけて経済指標の公表はなし。
<#日銀
#景気見通し上方修正
#政策は現状維持>
・日銀は昨年 12 月会合で景気の総括判断を「わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている」として1年7ヶ
月ぶりに上方修正したばかりだが、18 日付けの日経新聞朝刊が報じたとこによると、今度は1月会合(30-31 日)
でGDP成長率の見通しを引き上げるという。これはGDP統計の基準改定というテクニカルな要因を一部反映
するものだろうが、本質的には景気に対する楽観的な見方に基づいた修正とみられ、日銀の慎重姿勢が和らいだ
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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様子が窺える。16 年度+1.0%、17 年度+1.3%、18 年度+0.9%とされて実質GDP成長率の見通しは 16、17
年度を中心に上方修正される見込みだ。
・一方、物価見通しは引き続き慎重な見方が維持される模様。コアCPIは為替・原油価格の安定を前提にすれば、
年後半にも0%台後半に伸びを高めると予想されるが、日銀は内生的なインフレ圧力が十分でないとの判断
から予想を据え置くとみられる。足もとでは、予想インフレ率(債券市場ベース)が+0.6%近傍まで上昇し
ているとはいえ、それは為替・原油など外生的要因が大きく、日銀に自信に与えるような事象ではないだろう。
賃金上昇率に目を向けてみても、良くも悪くも緩慢な伸びが続いており、日銀の見通しを上向かせるほどの勢い
はない。
・一部市場参加者は2016年11月以降の円安・株高および実体経済の好転を踏まえ、17年中にも日銀が出口戦略、す
なわち10年金利操作目標の引き上げを開始すると予想している。しかしながら、上述のとおりインフレ率の動向
は日銀に出口戦略を迫るほど加速しておらず、日銀もまた慎重な物価見通しを固持するとみられる。米10年金利
が早々に3%を突破するなどして、80兆円程度の長国買い入れで10年金利を抑え込むことが不可能になった場合
は別だが、日銀が自らの意志で出口に向かうことは想定しにくい。1月会合でも出口論を語るのが時期尚早であ
ることが確認されるだろう。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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