Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
就任初日
注目は経済閣僚
2017年1月19日(木)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・12月米CPIは前月比+0.3%、前年比+2.1%と市場予想に一致。前年比伸び率は2014年6月以来の高水
準に到達した。コアCPIは前月比+0.2%、前年比+2.2%とこちらも市場予想に一致して加速を確認。
前年比伸び率は14ヶ月連続で節目の2%を超えている。FEDが重視するのはPCEデフレータだが、今
回の結果も一定の影響を与える可能性はあるだろう。なお、家賃の伸び率は前年比+4.0%に達した。
・12月米鉱工業生産は前月比+0.8%と大幅な増産。もっとも、伸びの大部分を説明しているのは、公益(+
6.6%)の急反発で製造業生産は+0.2%と小幅な増産に留まっている。製造業生産のモメンタム(3ヶ月前
比年率)は+0.7%と上向きに転じつつあるものの、その勢いはサーベイ指標対比で緩慢な状態が続いてい
る。
・1月NAHB住宅市場指数は67へと12月から3pt軟化したものの、依然として好調な領域で推移。この指標は
販売・着工など広範な住宅関連指標に先行性を持つ。足もとの住宅市場はモーゲージ金利上昇の逆風に持
ち堪えている模様。
(前年比、%)
5
米 CPI
115
鉱工業
110
4
コア
3
105
2
100
1
95
0
90
総合
15
16
製造業
85
-1
10
11
12
13
14
(備考)Thomson Reutersにより作成
米鉱工業生産
05 06 07 08 09 10 11
(備考)Thomson Reutersにより作成
17
12
13
14
15
16
17
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株市場はNYダウ続落、S&P500反発。米金利上昇で金融株が上昇した反面、原油価格下落を受
けてエネルギー株が軟調。政策不透明感もあり強弱区々の展開となった。欧州株も同様。WTI原油は
51.08㌦(▲1.40㌦)で引け。USD全面高が重荷となった。
・前日のG10 通貨はUSDが全面高。米指標が予想比堅調だったことに加え、イエレン議長が利上げシナリオ
を再確認したことなどから米金利上昇・USD高の展開。そうした中でJPYが最弱となり、USD/JPYは114半ば
へと急伸。EUR/USDも1.06前半へと水準を切り下げた。
・前日の米10年金利は2.430%(+10.4bp)で引け。イエレン議長が「2019年末までの利上げは年2・3回」
として利上げ計画を上書きしたことが背景。欧州債市場(10年)は総じて軟調。ドイツ(0.355%、+
3.4bp)、イタリア(1.961%、+4.6bp)、スペイン(1.448%、+5.6bp)が揃って金利上昇となった一方、
ポルトガル(3.837%、▲0.7bp)が小幅に金利低下。周縁国加重平均の対独スプレッドはワイドニング。
英国は1.336%(+2.7bp)で引け。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株はUSD/JPY上昇を受けて急伸(10:30)。日経平均は19000を回復。
<#就任初日 #通商政策 #商務長官>
・20日の大統領就任式が執り行われる。注目は現地時間正午(日本時間21日午前2時)に予定されている就
任演説。そこで具体的な経済政策について言及があるか否かは不透明だが、「米国第一主義」を雄弁に語
る文脈の中でメキシコ、中国に対する批判的な主張が目立ち、保護主義的な意向が示される可能性はある
だろう。
・また(演説とは別に)就任初日に発表される可能性がある経済政策は①TPPからの撤退表明、②NAFTA再
交渉もしくは脱退表明、③シェールガス・石炭等の生産規制撤廃、④中国の為替操作国認定など。これら
は何れも従来から繰り返されてきた主張ではあるが、 いざ「TPP撤退を表明」「NAFTA再交渉・脱退を
指示」といったニュースヘッドラインが踊れば、市場はリスクオフに傾斜しよう。
・反対に安心感が広がるとすれば、ロス次期商務長官など経済閣僚の発言が考えられる。ロス氏はCNNに
対し「トランプ氏がすべての輸入品に45%の関税を無理やり課すことはないが、交渉の材料として温存し
ておくだろう」と述べているほか、11月30日のテレビ番組では「関税は交渉の一部」と述べ、過激な政策
に距離を置く意向を示している。1月18日に行われた公聴会でも「中国は世界で最も保護主義的な国だ」
として対中強硬論を展開して対抗措置を講ずる構えをみせたが、関税については「複雑な案件だ」と明言
を避け、「関税には交渉の道具という側面と、必要ならルールに従わない違反者に罰則を科すという両面
がある」として具体的な言及はなかった。このようにロス氏の発言は一貫性があり、信頼に足る。
・こうしたロス氏の見解はトランプ氏の過激発言を中和する役割が期待される。ただし、ロス氏を含む経済
閣僚から現実路線への変更を示唆する具体的な計画がどのタイミングで出てくるかは分からない。政権発
足後はトランプ大統領の真意不明の発言よりも閣僚の発言に注目したい。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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