ウィークリーレポート 2016/07/18-2016/07/22 提供:新生銀行 市場金融部 安倍政権の新経済政策への期待感、ECB 理事会の動向に注目 安倍首相の打ち出す新経済政策への期待感に伴うリスクオン・株高・円安の持続性。ECB 理事会が追加緩和を打ち出す かに注目。 (先週の振り返り) 7 月 10 日(日)に行われた参院選において自民・公明与党が快勝し、安倍首相が大型経済対策を打ち出す考えを表明し たことを受けて日経平均株価が大幅に上昇する中、ドル円は堅調に推移しました。英国では新しい首相が決定されるなど、 市場には少しずつ明るい材料が増え、市場心理が改善されるとアジア・欧州・米国株価は上昇し、ドル円は 100 円台半ばを 底値に上昇基調に入りリスク選好の地合いが継続しました。 週半ばには、安倍首相とバーナンキ前 FRB 議長の会談が開催され新経済政策への期待感が膨らむ中、ドル買い・円売 りが進みました。会談では特段目立った内容はなく、ドル円が売られる場面があったものの、英ポンドドルやユーロドルを中 心にクロス円も含め実需勢・投機勢共に押し目買い意欲が強く、ドル円は週後半にかけても堅調に推移しました。一時、菅 官房長官が「ヘリコプターマネー」政策を政府が検討している事実はないと述べたことが伝わると市場の期待感が弱まりド ル円は下落する場面もありましたが、終始底堅く推移しました。 週後半に入ると前内閣官房参与の本田氏が 4 月訪米時に永久国債の発行をバーナンキ氏と議論していたことが市場に 伝わり、安倍首相の打ち出す経済対策への期待感が更に高まったためリスク選好の流れが継続しました。週末に発表され た中国 GDP の内容が好感され豪ドルが急伸する中、豪ドル円が 81 円台半ばまで上昇し、それに連れてドル円は一気に 106.32 円の高値まで上昇する場面も見られました。また、注目されていたイングランド銀行の政策金利の政策据え置きの 発表を受けると、利下げ予想をしていた市場にはサプライズとなり、英国ポンドの買戻しが市場を引っ張る展開となって英ポ ンド円は 130 円台前半を底値に 143 円台まで約 13 円上昇する場面がありました。しかし、週末の海外時間にはトルコでク ーデターが発生したことで、一気にリスク回避の動きが強まりドル円は 104 円台後半まで下落、クロス円も大幅に下落して 週を終えました。 (今週の見通し) 7 月 21 日(木)に ECB 金融政策の発表を控えており、通貨安競争が牽制されている状況下、ECB 理事会が更なる追加 緩和策を打ち出し追加緩和の口火を切ることになるかどうかに最大の注目が集まります。今回の理事会においては先日の イングランド銀行同様に政策金利の据え置きを予想し、ドラギ総裁の会見においては今後のユーロ圏の経済動向次第では 更なる追加緩和を示唆する発言が出ると想定されます。ユーロドル相場では一時的に乱高下する場面はあるかもしれませ んが、引続き 1 ユーロ=1.10~1.12 米ドルのレンジにて推移すると予想します。 また、英国の「EU 離脱」の国民投票の結果を受けて欧州政治・経済情勢には不透明感が残っていますが、金融市場は 比較的落ち着きを取り戻している状態といえるでしょう。現時点では英国の EU 離脱という結果が実体経済に及ぼす影響を 見極めるには時間を要するでしょう。市場では先週末に発生したトルコのクーデターの影響を受けてリスク回避の動きが一 時的に強まっていますが、クーデター自体は早期に一旦鎮圧されており週明けの相場はリスク回避の動きが弱まり、再度 本邦の新経済政策と ECB 理事会に照準を当てた取引が進むでしょう。安倍首相の打ち出す新しい経済対策への期待感が 市場をサポートする好材料として挙げられ、株高・リスク選好の地合いが継続すればドル円相場も底堅く推移し英国国民投 票の結果が出る前の水準である 106.80 円台まで上昇する可能性もあります。一方、期待感で押し上げられている相場に は反落リスクも潜んでおり、新経済政策への期待が剥落するような発言が飛び出せば、失望感から一気にリスク回避の動 きが強まりドル円・クロス円共に円全面高の展開になる可能性もあります。
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