ユーロ、一段安か底値形成か

株式会社 DZHフィナンシャルリサーチ
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週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)
February 19, 2016
円高懸念は同調されない
◆成長鈍化の要因は暖冬だけにあらず、日銀のマイナス金利幅拡大措置は常に視野に
◆米当局は利上げ先送りを示唆、円高けん制は支持されずドル円の上値は乏しいか
◆ユーロ高は一巡へ、ECB は 3 月にインフレ見通しを引き下げて追加緩和実施へ
予想レンジ
ドル円 110.50-116.00 円
ユーロドル 1.0950-1.1400 ドル
2 月 22 日週の展望
ドル円の上値は重いか。10-12 月国内総生産(GDP)1 次速報値は前期比-0.4%(年率換算-1.4%)
と振るわなかった。政府が指摘した通りに暖冬の影響で冬物衣料の販売が落ち込んだのは事実だが、
耐久財の不振も続くなど、後ずれした計画を消化した民間設備投資以外の主要項目は総じて弱かった。
寒の戻りやうるう年の日数換算で 1-3 月期は持ち直す可能性も指摘されるが、来年の消費再増税を見
込んだ駆け込み的な需要の増加が後押しするまでは鈍い成長が続きそうだ。景気への波及効果は別と
して、日銀によるマイナス金利幅の段階的な引き下げは常に視野に入る。
今週発表された 1 月の米鉱工業生産は予想以上に上振れ、川上のインフレ指標にあたる生産者物価
指数は回復の兆しを感じさせる結果だった。一方で 1 月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事
要旨では経済のダウンサイドリスク拡大やインフレ見通しの不確実性がはっきりと言及されており、
市場の 3 月追加利上げ見送り観測を後押しする内容。次回公表されるメンバーの金利予測も下方修正
されそうで、政策面を背景にドル高が盛り返す期待は持ちづらい。過度なリスクオフ相場は収束に向
かっているが、日本の円高けん制だけが国際的に同調される地合いでもなく、ドル円の反発力は当面
限定的か。
ユーロは次第に上値の乏しい展開も。独連銀は先日、同国の 2017 年までのインフレ予想を下方修正
した。2016 年度は従来の+1.1%から+0.25%へと大幅に引き下げており、欧州中央銀行(ECB)が 3 月
の理事会で公表するスタッフ見通しでも、域内の物価予測が確実に修正されそうだ。ドラギ ECB 総裁
は先日の議会証言で低インフレが続くなら追加緩和の用意があると言及した。米利上げ観測の後退や
日銀のマイナス金利導入で、ECB の金融政策に対する優位性が薄れていることも当局の行動を後押しす
ることになりそうだ。
一方でドラギ総裁は最近の欧州金融機関をめぐる投資家の懸念には懐疑的な姿勢も示している。一
部で報じられた不良債権が裏付けとなった資産担保証券の購入着手も明確に否定した。3 月に預金ファ
シリティ金利の一段の引き下げや、資産買い入れ策(QE)の継続に基づく技術的な調整は実施されそ
うだが、過大な期待は昨年 12 月のような失望にもつながりかねない。緩和策の導入時から一貫して主
張している加盟各国による構造改革や財政政策が、物価や成長見通しの改善に必要との見方も一層強
調するだろう。
2 月 15 日週の回顧
ドル円は急激な円高の巻き戻しから 115 円付近まで反発。産油国の原油生産調整に向けた動き出し
への期待、リスクオフムードの後退による株価の反発地合いもサポートになったが、ドル高が修正さ
れるなかで上値を伸ばしきれない展開。ユーロドルは追加緩和の可能性を再度示唆した ECB 総裁の発
言も意識されて 1.11 ドル割れまで失速。上げ基調は一服している。ユーロ円は円高圧力が和らぐなか、
ユーロの上値の重さに相殺されて直近安値圏で一進一退。(了)
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